18歳で、まだ知らない4年間を選べと言われても

2026/10/16
大学選びは、本当に難しいと思います。

社会人になってからなら、「あの大学に行ってよかった」「別の大学にしておけばよかった」なんて、いくらでも言えます。でも、それは結果を知っているから言えることです。入学前の高校生に、同じような判断ができるかといえば、かなり無理がある気がします。

そもそも大学は、入ってみないとわからないことが多すぎます。パンフレットを見ればきれいな校舎が載っていますし、オープンキャンパスに行けば学生たちが親切に案内してくれます。就職実績や資格の合格率も調べられます。もちろん、どれも参考にはなります。ただ、それで自分がそこで過ごす4年間を想像できるかというと、また別の話です。

授業が面白いか。周囲の学生と話が合うか。気の合う友達ができるか。先生との相性はどうか。サークルに居場所が見つかるか。住む街を好きになれるか。こうしたことは、大学生活の満足度を大きく左右するはずなのに、事前にはほとんど確かめられません。同じ大学でも、学部や学科が違えば雰囲気は変わりますし、同じ学科でも入った年によって人間関係は違います。

考えてみれば、ものすごく大きな買い物を、試せないまま決めるようなものです。しかも大学の場合、お金だけでなく、時間もかかります。簡単に返品できるわけでもありません。

さらに厄介なのは、高校生自身もまだ自分のことをよく知らないという点です。

「将来何をしたいの?」と大人は気軽に聞きます。でも、17歳や18歳で、仕事の中身まで理解している人がどれだけいるのでしょうか。医者や教師のように仕事の姿を思い浮かべやすい職業でも、実際に働くとなれば想像と違う部分があるでしょう。まして、世の中には高校生が名前すら知らない仕事が山ほどあります。

興味があると思って選んだ学部が、入ってみたらそうでもなかった。逆に、何となく履修した授業が面白くて、将来の方向が変わった。そんなことも普通に起こりそうです。18歳の自分が考えた進路を、22歳の自分がそのまま望んでいるとは限りません。

それなのに、大学選びはその後の人生にかなり大きな影響を与えます。勉強する分野だけではありません。どんな人と出会うか、どこで暮らすか、就職活動でどんな選択肢が見えてくるか。大学名によって採用の入り口に差が出る場面も、残念ながらあるでしょう。出会った友人や先生の一言で、考え方が変わることだってあります。

もちろん、大学で人生のすべてが決まるわけではありません。卒業後に進路を変える人もいますし、働きながら学び直すこともできます。ただ、「あとからどうにでもなる」と言い切るのも、少し乱暴だと思います。進路変更にはお金も時間も必要ですし、誰もが同じようにやり直せるわけではないからです。

偏差値を基準にすればいい、という話でもありません。偏差値は受験の難しさを比べるには便利ですが、その大学が自分に合っているかまでは教えてくれません。知名度が高い大学なら安心かというと、そこに入って何をするかが見えていなければ、入学後に戸惑うかもしれません。

では、好きなことを優先すればいいのか。これも難しいところです。高校時代の「好き」は変わることがありますし、好きな学問と、その先の仕事が必ずしもつながるわけではありません。就職を優先すれば現実的に見えますが、興味の持てない分野を4年間学ぶのもつらそうです。

親の意見だって、簡単には無視できません。学費を出してもらうならなおさらです。親は親で、子どもの将来を心配して、安定した進路を勧めるのでしょう。でも、そのアドバイスも親自身の経験をもとにしたものです。時代が違えば、大学の評価も働き方も変わります。誰かの成功例をそのまま当てはめても、うまくいくとは限りません。

ネットで調べるほど迷うこともあります。「この大学はやめとけ」「この学部は就職できない」といった強い言葉は目に入りやすいものです。けれど、満足している人はわざわざ書き込まないかもしれませんし、不満を持った人の体験が全員に当てはまるわけでもありません。情報が増えた分だけ、正解が遠ざかるような感じさえします。

大人になった人が、自分の大学選びを振り返って「あの選択が正しかった」と言うことがあります。それ自体はいいと思います。ただ、そう感じられるのは、入学後の偶然や本人の努力も含めて、今の人生につながったからではないでしょうか。もし違う大学に行っていたとしても、そちらで別の出会いがあり、同じように「行ってよかった」と思っていた可能性もあります。

結局、選ばなかった大学での人生は、誰にもわかりません。比べようがないのです。


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だからこそ、高校生に「後悔しない大学を選びなさい」と求めるのは、少し酷な気がします。後悔するかどうかは、大学に入る前には判断できません。むしろ大切なのは、わからない部分が残ることを認めたうえで、今わかる範囲の材料を集めることではないでしょうか。

興味のある授業を調べる。通える距離や学費を考える。できれば在学生の話を聞く。卒業後にどんな道があるかを調べる。そのうえで、譲れない条件をいくつか決める。完璧な正解探しというより、「自分にとって納得できる理由」を少しずつ増やしていく作業なのだと思います。

そして、大学に入ってから選び直せる余地も、もっとあっていいはずです。学部をまたいで授業を受けたり、専攻を変更したり、途中で別の方向に進んだり。18歳の判断がその後の可能性を狭めすぎない仕組みがあれば、進学するときの重圧も少しは軽くなるでしょう。

大学選びは、人生の中でもかなり大きな決断です。だから慎重になるのは当然です。でも、人生に大きく影響する決断を、まだ世の中をほとんど知らない高校生がしなければならない。この構造そのものに、難しさがあるのだと思います。

「自分で決めたのだから自己責任」と片づけるのは簡単です。ただ、選んだ時点では見えなかったものが、あまりに多いのです。

大人になれば、過去の選択にはそれなりの説明をつけられます。でも、選ぶ前には未来の答え合わせなどできません。大学選びに悩む高校生を見たら、もっと迷って当然だと言える社会であってほしいです。僕自身、大学選びの難しさは、個人の決断力だけで解決できる問題ではないと思っています。