なぜ『VIVANT』は普通のドラマと違ったのか?これほど人を夢中にさせた理由を考えてみた

2026/10/17


2023年に放送された『VIVANT』は、日本のテレビドラマの中でもかなり異色の作品だったと思います。

そして2026年には続編も放送され、再び注目を集めています。

日本では毎年たくさんのドラマが制作されていますが、ここまで大きな話題になる作品はそう多くありません。

もちろん、人気俳優が出演しているドラマもあれば、ストーリーが面白い作品もあります。それでも『VIVANT』には、普通のドラマとは少し違うものを感じます。

一体、何がそれほど特別だったのでしょうか。

個人的には、単純に制作費をかけた豪華なドラマだったというだけでは説明できない気がしています。

今回は『VIVANT』がなぜこれほど人気になったのか、普通のドラマとの違いを考えてみたいと思います。


 1. 日本のドラマなのに日本のドラマらしくなかった

まず驚いたのは、そのスケールの大きさです。

日本のドラマといえば、刑事もの、医療もの、恋愛もの、あるいは企業を舞台にした人間ドラマなどが定番です。

もちろん、そうした作品にも面白いものはたくさんあります。

ただ、どうしても日本国内の限られた場所で話が進むことが多く、映像の雰囲気もある程度似てきます。

ところが『VIVANT』は違いました。

最初から海外の広大な風景が登場し、砂漠を車で走ったり、国境を越えたり、国際的な組織が関わったりします。

まるで映画を見ているような感覚でした。

日本のテレビドラマで、ここまで大規模な海外ロケを行う作品は珍しいと思います。

しかも、単に海外で撮影したというだけではありません。

物語そのものが世界を舞台にしているため、海外の風景が自然に作品の中に溶け込んでいます。

普段の日本のドラマでは味わえない非日常感があり、それだけでも見てみたいと思わせる力があったのでしょう。


 2. 何のドラマなのか簡単に説明できない面白さ

普通のドラマは、最初からある程度ジャンルが決まっています。

医療ドラマなら病院での出来事、刑事ドラマなら事件の捜査、恋愛ドラマなら登場人物の恋愛模様が中心になります。

視聴者も、だいたい何を見ることになるのか理解したうえで見始めます。

しかし『VIVANT』は、そもそも何のドラマなのかが簡単にはわかりませんでした。

最初は商社の誤送金問題をめぐる話だったはずなのに、いつの間にか公安や謎の組織が登場し、さらに国家規模の問題へと広がっていきます。

見ている側も、次に何が起こるのか予想できません。

この先の展開が読めないというのは、実はかなり大きな魅力だと思います。

最近は動画配信サービスなどで、好きな作品を好きな時間に見ることが当たり前になりました。

そんな時代に、毎週決まった時間に続きを見たいと思わせることは簡単ではありません。

『VIVANT』には、それを実現するだけの意外性がありました。


3. 登場人物を簡単に信用できない

『VIVANT』の面白さとして、誰が味方で誰が敵なのかわからない点も外せません。

普通のドラマでも裏切りや意外な展開はあります。

ただ、多くの場合は主人公の立場がはっきりしていて、視聴者は主人公の目線で物語を追いかけます。

ところが『VIVANT』では、主人公の乃木憂助自身にも大きな秘密があります。

一見すると頼りなさそうな人物なのに、実際にはまったく違う一面を持っています。

周囲の人物についても同じです。

親切に見えた人物が怪しく思えたり、敵だと思っていた人物にも別の事情があったりします。

そのため、登場人物の何気ない言葉や行動まで気になるようになります。

これが視聴者の考察につながったのでしょう。

単にストーリーを追いかけるだけではなく、自分でも推理しながら楽しめるわけです。

しかも、予想が外れたとしても、それがまた面白い。

ここまで視聴者に考えさせるドラマは、意外と少ない気がします。


 4. 豪華キャストが単なる話題作りで終わっていなかった

『VIVANT』には、堺雅人さん、阿部寛さん、役所広司さん、二階堂ふみさん、松坂桃李さん、二宮和也さんなど、主役級の俳優が何人も出演しています。

これだけの顔ぶれをそろえた時点で、かなり力の入った作品だとわかります。

ただ、人気俳優をたくさん出演させればドラマが面白くなるかというと、必ずしもそうではありません。

豪華な出演者なのに、肝心のストーリーが今ひとつという作品もあります。

その点、『VIVANT』はそれぞれの俳優に見せ場がありました。

堺雅人さんの繊細な演技、阿部寛さんの存在感、役所広司さんの重厚な演技など、俳優の個性が作品にうまく生かされていたと思います。

特に印象的だったのは、登場人物同士の緊張感です。

会話しているだけなのに、何か重大なことが起こりそうな雰囲気があります。

大きなアクションシーンだけではなく、人間同士のやり取りでも楽しませてくれる。

ここも人気の理由だったのではないでしょうか。


5. SNSで考察することまで楽しみになった

『VIVANT』の人気を考えるうえで、SNSの存在も無視できません。

放送が終わると、Xなどでさまざまな考察が飛び交いました。

「あの人物は本当に味方なのか」「あの場面には何か意味があるのではないか」といった話題が次々に出てきます。

面白いのは、ドラマを見終わっても楽しみが終わらないことです。

普通なら放送が終われば、また来週という話になります。

しかし『VIVANT』の場合は、放送後にほかの人の意見を読んだり、自分の考えと比較したりする楽しみがありました。

そして、次の放送で答え合わせをするわけです。

2023年の第1シーズンでは、初回の世帯視聴率が11.5%だったのに対し、最終回は19.6%まで上昇しました。

最初から全員が注目していたというよりも、放送が進むにつれて人気が広がったことが数字からもわかります。

作品そのものの面白さに加えて、視聴者同士が話題を共有できたことも大きかったのでしょう。

テレビドラマでありながら、インターネットとの相性が非常によかった作品だと思います。


 6. 派手な物語なのに人間ドラマとしても面白い

もう一つ重要なのは、『VIVANT』が単なるスパイアクションではなかったことです。

海外ロケや銃撃戦、謎の組織といった要素だけなら、海外の映画やドラマにもたくさんあります。

むしろ、そうした分野では海外作品のほうが規模の大きいものも珍しくありません。

では、なぜ日本の『VIVANT』がこれほど支持されたのでしょうか。

その理由の一つは、物語の中心に家族や親子の問題があったことだと思います。

壮大な話が展開していても、最終的には人間の感情に戻ってくるのです。

父親と息子の関係、信頼と裏切り、何を守ろうとするのかという問題。

こうしたテーマは、日本の視聴者にも理解しやすいものです。

映像は海外の大作映画のようでも、物語の根本には日本のドラマらしい人間関係が描かれています。

この組み合わせがよかったのではないでしょうか。

派手な映像だけでは長く見続けるのが難しくても、登場人物の感情に興味が湧けば、最後まで見届けたくなります。


7. わかりにくさを弱点ではなく魅力にした

一方で、『VIVANT』が誰にとっても見やすい作品だったかというと、そうではないと思います。

登場人物が多く、組織の関係も複雑です。

途中で少し見逃すと、話についていけなくなることもあります。

普通なら、これはドラマにとって弱点になるはずです。

テレビは幅広い年代の人が見るものですから、できるだけわかりやすいストーリーのほうが受け入れられやすいと考えられます。

ところが『VIVANT』は、あえて複雑な物語を展開しました。

そして、その複雑さが考察する楽しみにつながったわけです。

もちろん、難しい話にすれば人気が出るというものではありません。

難しいだけで面白くなければ、視聴者は離れてしまいます。

『VIVANT』の場合は、複雑な話の中にも驚きや感動があり、視聴者を引きつける仕掛けが用意されていました。

簡単に理解できないからこそ、もう一度見たくなる。

そんな作品だったように感じます。


 8. 日本のテレビドラマにもまだ可能性があると思わせた

個人的に『VIVANT』を見て感じるのは、日本のテレビドラマもまだまだ面白い作品を作れるのだということです。

最近はNetflixなどの海外ドラマを気軽に見ることができ、映像作品の選択肢が非常に増えました。

それだけに、日本のテレビドラマが以前ほど特別な存在ではなくなっているようにも感じます。

しかし『VIVANT』は、テレビドラマでも本気で大きな作品を作れば、これほど話題になるのだと示してくれました。

もちろん、すべての作品に莫大な制作費をかける必要はありません。

小規模でも面白いドラマはたくさんあります。

ただ、似たような設定や展開の作品が増えている中で、思い切って今までとは違うことに挑戦した点には大きな意味があったと思います。

2026年には第2シーズンが始まり、さらに大きな物語が描かれています。

今後も『VIVANT』のように、視聴者の予想を超えてくるドラマが増えてほしいものです。


まとめ

『VIVANT』が人気になった理由は、一つだけではないと思います。

壮大な海外ロケ、豪華な出演者、予想できない展開、登場人物の秘密、SNSでの考察、そして人間ドラマとしての面白さ。

それらがうまく重なったからこそ、多くの人を夢中にさせたのでしょう。

ただ、私が特に大きかったと思うのは、久しぶりに「来週はどうなるんだろう」と思わせてくれたことです。

今は好きな動画をいつでも見られる時代です。

そんな中で、毎週同じ時間にテレビの前で続きを楽しみにする。

一昔前は当たり前だったドラマの楽しみ方を、『VIVANT』がもう一度思い出させてくれたような気がします。

結局のところ、どれだけ映像技術が進んでも、人が夢中になるのは続きが気になる面白い物語なのかもしれません。


VIVANTFAN