日本の労働生産性は調査記録が残る1970年以降、先進7カ国(G7)諸国で断トツ最下位の状態が続いている。政府は、この問題を重要課題として「働き方改革」を掲げ、生産性向上を目指している。
世界で、一番労働生産性の高い国はアイルランド、2位はルクセンブルク、3位は米国。日本は21位で、アイルランドの45%、米国の61%しか成果があがっていない。(G7の中ではずっと最下位)
(労働生産性=従業員1人当たり、または1時間当たりに生み出す成果。2020年8月経済産業省データ)
日本企業は社員数が多く、労働時間が長い。本来なら生産性は高くなっても良さそうなものだが低いのはなぜか?
それは諸外国と比較すると非製造業や企業の間接部門(ホワイトカラー)の生産性が低い傾向にある点や、高い人件費と労働時間の長さが生産性を下げているからだといわれている。
先進国の多くは工業国として成長するが、その後、発展途上国に追いつかれ、国際競争力が低下すると言うのを繰り返してきた。
競争力の低下を防止するには2つの選択肢がある。
ひとつはアメリカのように消費を中心に経済を発展させる、いわゆる内需経済にシフトして経済を発展させるやり方だ。
この方法では、景気拡大を背景とし、可処分所得を貯蓄ではなく消費に回していくことで経済が発展する。その結果、アメリカでは失業率も低下し日本を逆転して経済発展につなげることができた。
もうひとつは、ドイツのように極めて付加価値の高い工業に特化するやり方だ。
ドイツは競争力を失った分野から次々と撤退し、医療器機やバイオ、重電など、極めて付加価値の高い分野にリソースを集中し、英語の語学力も生かして海外展開も進めてきた。
その結果ドイツのGDP(国内総生産)は日本の7割強しかないが、輸出は日本の2倍以上もあるというのが現実であり、製造業の分野でも日本はドイツに差をつけられている。
しかし、日本の場合、米国型消費経済への移行を目指し内需拡大を模索したが、米国とは逆に可処分所得のほとんどを貯蓄に充てたため消費には結びつかず、その結果失業率もアメリカより増え、可処分所得も逆転されてしまった。
その結果、日本は消費大国にも、製造業大国にもなれないまま今に至ってしまったことが原因で生産性が伸び悩む最大の原因となってしまった。
企業規模別従業員一人当たり付加価値額(労働生産性)は、大手企業で1380万円に対し、中小企業は550万円と大手の約40%だ。
しかし、そんな中でも各業種において、
すなわち、同じ中小企業でも、大企業に打ち勝つほどの労働生産性を手に入れている会社と、低い労働生産性に終始している会社に二分されている。
そのカギとなるのはIT導入によって中小企業の労働生産性を飛躍させているかどうかということだ。
中小企業でも売上げを見た場合、IT投資をしている企業はしていない企業に比べ、製造業で2.6倍。卸売業で1.9倍の差がある。
ここで中小企業におけるITの利活用状況を見てみよう。
このデータから、特に赤枠の分野でITがあまり活用されていないことがわかる。
つまり、この赤枠部分のITを使いこなせれば、労働生産性を高めて、大きな利益へと結びつけられるのだ。
しかし、この部分を補ってくれるITシステムを調べると、複数の大手メーカーからもう販売されているのだ。それでは、なぜこの部分のITの活用が進んでいないのか?
それは、