春樹と美咲は結婚して5年になる夫婦でした。2人はとても仲が良く、休日には一緒に映画を観たり、旅行に行ったりと、充実した日々を送っていました。
しかし、最近になって2人の間に暗雲が立ち込めてきました。原因は春樹のいびきです。もともと春樹は少しいびきをかく傾向はありましたが、年齢を重ねるにつれていびきがひどくなり、今では毎晩のように轟音のようないびきをかくようになってしまったのです。
美咲は最初、春樹のいびきを我慢しようと耳栓をして寝たり、別の部屋で寝たりしてみました。しかし、いびきは耳栓をしていても聞こえてくるほど大きく、別の部屋で寝ても響いてくるほどでした。美咲は寝不足が続き、昼間も集中できず、仕事や家事に影響が出るようになりました。
「春樹さん、最近いびきがひどいわ。私も眠れないし、近所迷惑じゃないかしら」
美咲は春樹にそう訴えました。春樹は申し訳なさそうにしながらも、自分ではどうすることもできないのです。
「ごめん、自分でも困っているんだ。病院に行ってみるよ」
春樹はそう言って耳鼻咽喉科を受診しました。検査の結果、春樹のいびきは喉の粘膜が緩んでいることや舌の付け根が太くなっていることが原因で、睡眠時無呼吸症候群の可能性もあると診断されました。
一方、美咲も睡眠不足が続き、イライラが募っていきました。夜中にいびきで目が覚めると、春樹に対して「もう! どうにかしてよ!」と怒鳴りつけることもありました。2人の仲はギスギスし始め、会話も少なくなっていきました。
「ねえ、春樹さん。最近、私たち会話してないよね。いびきのせいで、お互いイライラしてるのかな」
美咲は不安そうに春樹に語りかけました。春樹もそれは感じていました。
「ごめん、僕のせいだね。いびきがひどくて、美咲が眠れないのは分かっているんだ。でも、どうすればいいか分からなくて・・・」
春樹は申し訳なさそうに首を垂れました。
「一緒に病院に行って相談してみようか。もしかしたら、治療法があるかもしれない」
美咲は春樹を励ましました。しかし、春樹はなかなか病院に行く決心がつかず、2人の問題は解決しないまま時間が過ぎていきました。
いびきは春樹の健康にも影響を及ぼし始めました。睡眠時無呼吸症候群の症状が疑われる春樹は、夜間に何度も呼吸が止まり、睡眠の質が低下していました。その結果、日中に強い眠気に襲われたり、集中力が低下したりと、仕事にも支障をきたすようになりました。
「このままではいけない」
春樹はようやく重い腰を上げ、本格的にいびきの治療に取り組むことを決意しました。しかし、その頃には美咲の心は限界に達しようとしていました。
「ねえ、春樹さん。もう別々に寝ようか。このままだと、私、壊れちゃいそう」
美咲は涙ながらに春樹に訴えました。春樹はショックを受けましたが、美咲の気持ちを考えて、それを受け入れました。
いびきは春樹と美咲の仲を悪くし、2人の生活を大きく変えてしまいました。春樹はいびきの治療を始める決意をしましたが、問題が深刻化するまでに時間がかかってしまったのです。