新聞やテレビなどマスコミで何度も紹介されたので、すでにご存じの方も多いでしょう。平成16年10月から、東京都では敷金返還トラブルを防ぐ目的で「賃貸住宅紛争防止条例(通称、東京ルール)が施行されました。これは、退去時の敷金返還に関する説明責任をアパートオーナーの側に義務づけたもので、つまりは入居者の故意や過失で部屋を傷つけた場合のほかは、原状回復や設備の取り替え費用はすべてオーナーが負担するというものです。もちろん、これは東京に限った話ではなく、全国的なスタンダードとなることが予想されます。
これ以外にも、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(平成23年改訂)でも「入居者ではなくオーナー負担」という方針ははっきり示されていて、それに準じた判例も次々とあらわれています。
また、アパートが圧倒的な借り手市場となる中で、そもそも従来のように高額の敷金・礼金を設定していては入居者が集まらないという現実もあります。そう考えると、オーナーをとりまく経営環境は今後ますます厳しくなると考えられます。
アパート経営の現状を考えても、これらリフォーム費用をすべて負担していては、ほとんどのアパートが実質赤字に転落するのではないでしょうか。つまり、これまで想定していた「家賃収入が毎月これだけで、経費がこれだけで、利益がこれだけで……」という収支計画がもう通用しない時代なのです。おそらく今後、従来と同じ収支計算で運営してきたアパートは続々と限界を迎え、確実に立ち行かなくなると予想されます。