防災グッズを買う前に考えたい、本当に役立つ災害への心構えとは
2025/06/10
防災対策というと、多くの人が真っ先に思い浮かべるのは防災グッズの準備ですね。確かに非常用の水や食料、懐中電灯などは大切です。でも実は、モノを揃えることよりも、もっと根本的で重要なことがあるのではないでしょうか。
私自身、何度か災害を経験する中で気づいたのは、本当に役立つのは「準備された心」だということです。どんなに完璧な防災グッズを揃えても、いざという時にパニックになってしまっては意味がありません。また、災害は私たちが想定している形でやってくるとは限りません。
今回は、防災グッズを買い揃える前に、まず考えておきたい「心の防災対策」について、少し違った角度からお話ししてみたいと思います。きっと「その発想はなかった」と感じる部分もあるのではないでしょうか。
1. 災害時の「想定外」を想定する思考法
防災対策を考える時、私たちはついつい「地震が起きたら○○する」「台風が来たら△△する」といった具体的なシナリオを想定しがちです。でも実際の災害は、そんな教科書通りには進まないものですね。
例えば、地震が起きた時に「まずは机の下に潜る」と習いますが、実際にはその机が倒れてきたり、そもそも机がない場所にいたりすることも多いでしょう。台風の備えで窓にテープを貼ったのに、予想とは違う方向から風が吹いて、思わぬ場所から雨が侵入してくることもあります。
大切なのは、具体的な対策を覚えることよりも「想定外の状況でも冷静に判断できる力」を身につけることです。これは一朝一夕には身につかない能力ですが、日頃の心がけで少しずつ鍛えることができます。
1-1. 日常の小さなトラブルを「訓練」と捉える
災害への備えというと大げさに聞こえますが、実は日常生活の中にも小さな「災害」は転がっています。電車の遅延、急な雨、スマートフォンのバッテリー切れ、エレベーターの故障など、予期しないトラブルに遭遇した時の自分の反応を観察してみてください。
イライラして文句を言うだけでしょうか。それとも、冷静に代替手段を考えて行動に移せるでしょうか。こうした小さなトラブルへの対応こそが、災害時の対応力を鍛える最高の訓練になります。
私の知り合いで、いつも冷静な人がいるのですが、その人は「トラブルが起きた時は、まず深呼吸して、今できることを3つ考える」という習慣を持っています。例えば電車が止まった時は、「①他の路線を調べる、②タクシーを探す、③連絡先に遅刻の連絡をする」といった具合です。
この思考パターンが身についていると、災害のような大きなトラブルでも、パニックにならずに対処法を考えることができるようになります。
1-2. 「完璧な準備」の罠から抜け出す
防災対策を真面目に考える人ほど、「完璧な準備」を目指してしまいがちです。あらゆる災害を想定して、考えられる限りの対策を講じようとする。でも、これは実は危険な考え方かもしれません。
なぜなら、完璧な準備を目指すと、その準備が通用しない状況に直面した時に、かえって混乱してしまうからです。「こんなはずじゃなかった」「準備していたのに役に立たない」という思考に陥り、対応が遅れてしまうのです。
むしろ大切なのは「準備は70%で十分、残りの30%は現場で考える」という心構えです。完璧ではない準備を前提として、その場その場で臨機応変に対応する柔軟性を重視する。これが、本当に役立つ防災の考え方だと思います。
実際、災害の現場では、事前に準備していたものよりも、その場で工夫して作り出したものの方が役に立つことも多いのです。
2. コミュニティの力を活かす「つながり防災」
個人の防災対策も大切ですが、災害時に本当に力を発揮するのは「人とのつながり」です。でも、ここで言う「つながり」は、町内会の防災訓練のような形式的なものではありません。もっと自然で、普段から築いている人間関係のことです。
災害時には、公的な支援が届くまでに時間がかかります。その間を支えてくれるのは、近所の人や知り合いです。でも、普段から挨拶も交わしたことがない人に、いきなり助けを求めるのは難しいですね。
だからこそ、防災対策の一環として「人間関係の構築」を考えてみるのはどうでしょうか。これは意外と盲点になりがちな視点だと思います。
2-1. 「弱さ」を見せることの意外な効果
日本人は自立を重視する文化があるため、「人に迷惑をかけてはいけない」「自分のことは自分で」という考えを持ちがちです。でも災害時には、この考え方が逆に足を引っ張ることもあります。
私が以前住んでいた地域で台風被害があった時、最も早く復旧したのは、普段から「ちょっと頼りない」と言われていた一人暮らしのおばあさんの家でした。なぜかというと、そのおばあさんは普段から近所の人に小さなお願いをしていて、みんなが「何かあったら声をかけよう」と思っていたからです。
一方で、「しっかりしている」と評判だった家庭は、周りも「あの家は大丈夫でしょう」と思って声をかけず、実際には困っていても助けを求めにくい状況になっていました。
適度に「弱さ」を見せることで、周りの人も手を差し伸べやすくなります。これは決して依存することではなく、お互いに助け合える関係を築くための重要な要素だと思います。
2-2. SNSを「情報収集ツール」として活用する
最近の災害では、SNSが重要な情報源になることが多いですね。公式な情報が出る前に、現地の生の声がリアルタイムで流れてきます。でも、SNSを災害時に活用するためには、普段からの「情報ネットワーク」作りが大切です。
災害時にいきなりSNSで情報を求めても、なかなか有用な情報は得られません。普段から地域の情報を発信している人をフォローしたり、地域のハッシュタグをチェックしたりして、情報収集のルートを確保しておくことが重要です。
また、自分も情報の発信者になることを考えてみてください。災害時に「○○地区は停電していません」「△△スーパーは営業中です」といった情報を発信することで、地域全体の助けになります。
ただし、SNSの情報は玉石混交です。デマや不正確な情報も多く流れるため、情報の真偽を見極める力も必要になります。複数のソースで確認する、公式アカウントの情報を優先するなど、普段から「情報リテラシー」を鍛えておくことも防災対策の一つと言えるでしょう。
2-3. 「助ける側」になる準備も忘れずに
防災対策というと、「自分が助けられる」ことばかり考えがちですが、「自分が助ける側」になる可能性も考えておく必要があります。災害時には、誰もが被害者であると同時に、他の人を助けることのできる支援者でもあるからです。
例えば、自分の家が無事だった場合、近所の被災した人に何ができるでしょうか。スマートフォンの充電を提供する、お湯を沸かしてあげる、子どもの面倒を見る、情報を共有するなど、小さなことでもできることはたくさんあります。
また、自分の専門知識やスキルが、災害時に役立つ場合もあります。医療関係者なら応急処置、IT関係者なら情報収集や発信の支援、語学が得意なら外国人被災者の通訳など、普段の仕事や趣味が災害時の支援活動につながることもあるのです。
「助ける側」になる準備をしておくことで、災害時に自分自身も前向きな気持ちを保ちやすくなります。被害を受けて落ち込むだけでなく、「自分にもできることがある」という気持ちを持てることは、精神的な支えになるはずです。
3. 「日常」を災害後も続けられる仕組み作り
災害対策の最終目標は、災害が起きても「できるだけ普段に近い生活を続けられること」だと思います。命を守ることは大前提ですが、その上で、仕事や学習、趣味や人間関係など、大切にしている日常を可能な限り維持することが、長期的な復興につながります。
でも、これは単に物資を備蓄しておけば解決する問題ではありません。むしろ、普段から「日常を続けるための仕組み」を意識して作っておくことが重要です。
3-1. 「デジタル断食」で見えてくる本当の必需品
現代の生活は、電気やインターネットに大きく依存しています。災害時にこれらが使えなくなった時、私たちはどれだけ対応できるでしょうか。これを知るために、たまに「デジタル断食」をしてみることをお勧めします。
一日だけでも、スマートフォンやパソコンを使わずに過ごしてみてください。最初は不便に感じるかもしれませんが、だんだんと「本当に必要なもの」と「あれば便利だけど、なくても困らないもの」が見えてきます。
私が試してみた時に気づいたのは、情報収集の手段が意外と限られていることでした。普段はスマートフォンで何でも調べていましたが、それが使えないと、ラジオや新聞、人との会話が主な情報源になります。災害時のことを考えると、これらのアナログな情報収集手段を日頃から活用しておくことが大切だと感じました。
また、娯楽についても考えさせられました。普段はスマートフォンで動画を見たり、ゲームをしたりして時間を過ごしていましたが、それができないと、読書や散歩、人との会話など、よりシンプルな楽しみの価値を再発見できました。
3-2. 「最低限の快適さ」を確保する工夫
災害時だからといって、すべてを我慢する必要はありません。むしろ、適度な快適さを保つことで、精神的な安定を維持し、より良い判断ができるようになります。問題は、何をもって「最低限の快適さ」とするかです。
これは人によって大きく異なります。ある人にとっては温かい飲み物を飲むことかもしれませんし、別の人にとっては好きな音楽を聴くことかもしれません。大切なのは、自分にとって「これがあると心が落ち着く」というものを把握しておくことです。
私の場合は、文字を書くことでした。災害時でも日記を書いたり、考えをまとめたりすることで、混乱した状況でも冷静さを保てることに気づきました。そのため、防災用品の中には、必ずペンと紙を入れるようにしています。
また、災害時の「快適さ」は、物だけでなく「習慣」からも生まれます。例えば、毎朝のストレッチ、夜寝る前の読書、食事前の感謝の言葉など、普段から大切にしている習慣を災害時でも続けられるよう工夫しておくことで、心の安定を保ちやすくなります。
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まとめ
防災対策というと、つい「モノの準備」に目が向きがちですが、本当に大切なのは「心の準備」だということがお分かりいただけたでしょうか。想定外の状況でも冷静に対応できる思考力、人とのつながりを活かした助け合いの仕組み、そして日常を続けるための工夫。これらは、防災グッズを買うよりも時間はかかりますが、確実に私たちの「災害への強さ」を高めてくれます。
災害は確かに恐ろしいものです。でも、適切な心構えと準備があれば、必要以上に恐れることはありません。むしろ、災害への備えを通じて、普段の生活をより豊かにしたり、人とのつながりを深めたりすることもできるのです。
完璧な防災対策などありません。でも、今日からできる小さな一歩はあります。まずは日常の小さなトラブルを「訓練」と捉えることから始めてみませんか。そして、近所の人との挨拶を増やしたり、たまにはデジタル機器を使わない時間を作ったりしてみてください。
こうした積み重ねが、いざという時の大きな力になるはずです。防災対策は、特別なことではなく、より良い日常生活の延長線上にあるものなのです。