社会の理解
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介護職に関する用語解説集をおまとめいたしました。

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テキスト内重要事項

第1章 人間の尊厳と自立

第1節 人間の多面的な理解と尊厳

人間を理解するといういこと
・人間の理解は、まず生活の営みの姿を知ることからはじまります。生活の営みとは、日々の暮らしをつくっている現実の状況です。

・介護職には、人間の多面的な理解が求められています。

・生命への畏敬とそんげんは、人間の無限の可能性に対して生じます。このような生命への畏敬と尊厳をもちつづけていれば、現実の困難な状況においても、よりよく生きるという理念が失われることはないのということです。



人間の尊厳の意義
・人間の尊厳とは、人間が個人として尊重されることを意味しています。


人権、そして尊厳を巡る歴史的経緯
・人権は、自由権と社会権(生存権)に分けて考えることができます。

人権、そして尊厳に関する諸規定
・日本において、尊厳に関する諸規定の中心となるものは日本語憲法です。

第2節 自立の支援

介護における自立
・介護職に求められる支援は、自分でできるようにすることのみを目標に行うものではありません。

・介護職にとって重要なことは、自立か依存かの二者択一的な判断をしてはならないということです。

・自立とは、他者の援助をうけるにしても受けににしても、自分の故魚津に責任を負うことであり、自らの能力に合った生活を自分で選択し、実践することです。


自立への意欲と動機づけ
・自立支援の意義は、介護を必要とする人の生活意欲を高め、その人らしい尊厳のある暮らしを支えることにあります。


自立した生活を支えるための視点
・自立支援では前提として、まず行為・行動を本人が行おうとする意欲を高めるための支援が重要です。

第3節 人権と尊厳

介護における権利擁護と人権尊重
・利用者一人ひとりを、個々独立した存在であり、それぞれに独自の人生を現在進行形で歩んでいる人間としてはっきりと認識することは、介護職として最も重要なことといえます。

・介護職は、利用者はそれぞれの日常生活において、その主体者であるということを絶えず念頭に置くことが重要です。

・介護職は、利用者の生活支援を通じて、その当事者や関係者の権利擁護の担い手としての意識と実践力を高めていくことが求められているのです。

第2章 介護保険制度の理解(社会の理解Ⅰ)

第1節 介護保険制度の創設の背景と目的

介護保険制度の創設をめぐる社会的背景
・介護保険制度が創設された背景には、
①人口高齢化が進行したこと、
②そのために介護や支援を要する高齢者が増えたこと、
③その高齢者の介護を家族だけでは、になえなくなったことなどがあげられます。

・人口の高齢化とは、総人口に占める高齢者(一般には65歳以上をさす)の比率が増えることです。

・様々な要因から、1990年代前半からは高齢者の介護を家族だけでになうには限界があるとの理解が進み、高齢者介護を社会全チアで支えようという、介護の社会化の機運が高まっていきました。


介護保険制度の基本理念
・介護保険制度の基本理念の中で、とりわけ重要なてんは、高齢者の尊厳の保持、高齢者の介護を社会的に支援すること(介護の社会化)と、高齢者の自立支援などであるといえます。

第2節 介護保険制度の基本的理解

保険者・被保険者
・介護保険制度の保険者は市町村および特別区です。

・介護保険制度の被保険者の要件に該当すれば法律により加入が義務づけられ、これを強制適用といいます。

・被保険者には、保険者の定める保険料を納付する義務があります。



保険給付の対象者
・保険給付を利用するためには、被保険者が保険事故に該当する状態になっていると認定されることが要件になります。

・要介護状態には5つの区分が、要支援状態には2つの区分が設けられています。

・第2号被保険者についていは、認定の条件として、要介護状態等が特定疾患に原因がある場合に認定されています。


保険給付までの流れ
・介護保険で保険給付を利用する手続きとして、
①要介護認定・要支援認定の過程、
②ケアマネジメント(ケアプラン作成)の過程の2つの過程があります。


保険給付の種類と内容
・保険給付は、介護給付と予防給付に大別されます(さらに、市町村の独自の給付を位置付けた市町村特別給付を設けている保険者もあります)。要介護者であれば介護給付を、要支援者であれば予防給付を、それぞれ利用することができます。


地域支援事業
・地域支援事業は保険給付とは別建ての事業であり、要介護予防・日常生活支援総合事業、包括的支援事業、任意事業の3つに分けられます。


介護保険の財政
・保険給付に必要な費用は、利用者の自己負担額を除いて、50%が公費(税)とされ、50%が保険料でまかなわれることになっています。

・第1号被保険者の保険料の徴収方法は2つあり、特別徴収と普通徴収という方式に分けられます。

・第2号被保険者については、加入する医療保険の医療保険料と一緒に介護保険料が徴収されます。

第3節 介護保険制度における専門職の役割

介護職の役割
・介護職は1人で何らかの支援をするという存在ではなく、他の専門職との連携や役割分担をしながら、いわばチームの一員として機能することが求められます。

・介護職は、他の専門職が気づかないような高齢者の訴えや望みをくみとり、それを本人に代わって周囲に伝えていくような代弁者としての役割も大切です。


介護支援専門員の役割

・介護支援専門員は、介護保険の要の存在ともいえると同時に、介護職とはいわば双方向の連携が求められる関係にあるのです。

・主任介護支援専門員は、主に地域内の介護支援専門員のスーパービジョンを担うとともに、地域内のさまざまな課題の把握とその解決のためのネットワークづくりを業務とします。

第3章 社会の仕組みの理解(社会の理解Ⅱ)

第1節 社会の生活の仕組み

家族
・アメリカの社会人類学者であるマードックは、人間社会に関する多数のデータ比較を踏まえ、家族の最も企保的なユニットとして夫婦と未婚の子どもたちからなる核家族の概念を提唱しました。


・現実の家族をその外面的特徴により分類する場合、「夫婦家族」「直系家族」「複合家族」という3つの分類が得られます。


地域
・地域がもつ空間的広がりに社会的なつながりや生活の共同が認められ、相対的なまとまりをもつ場合、それを地域社会と呼びます。


ライフスタイルの変化
・生命をもつものの一生の生活ににられる規則的な推移をライフサイクルといいます。

・個人の人生に焦点をあて、その人生の軌跡を家族歴・教育歴・職業歴・社会活動歴といった複数の経歴の束としてとらえるライフコースという概念が登場しています。

・ジェンダーとは、社会的・文化的に形成された性差、すなわち、その時代や社会における「男らしさ」や「女らしさ」とみなされるもので、私たちのライフスタイルの選択にも大きな影響を与えています。

第2節 地域共生社会の実現に向けた制度や施策

地域共生社会とは
・地域共生社会の実現に向け、介護職には、単に目の前にいる介護サービスの利用者だけではなく、その家族全体を丸ごととらえた支援、多職種との連携、地域づくりへの提言、施設や事業所における地域貢献への取組などが期待されています。


地域ケア包括システムとは
・地域包括ケアシステムの概念とは、介護が必要となったとしても、保健、医療、福祉といった専門的なサービスの切れ目ない提供とともに、ボランティアや近隣の友人知人からの助けも得ながら、住み慣れた地域で暮らし続けられることを目指すことだといえます。

・地域包括ケアシステムには、①医療、②介護、③予防、④住まい。⑤生活支援の5つの要素が含まれると考えられています。

第3節社会保障制度

社会保障の概念・範囲
・私たちが生活を送るうえで発生した問題に対して、制度を利用して対応する方法が準備されており、この制度が社会保障制度なのです。
・金銭の給付、医療の提供、社会福祉の提供の3つによって社会保障は構成されているのです。


社会保障の意義・役割
・人々が人生を送るうえで直面するであろう不測の事態を予測し、それに備えるべく設けられた制度が社会保障制度です。


社会保障の目的・機能
・社会保障制度全体に共通する普遍的な目的は、生活の安定・生活の保障と個人の尊厳の保持・自立支援です。

・社会保障の機能として
①生活安定・向上機能、
②所得再分配機能、
③家族機能の支援・代替、
④経済安定機能の4つがあげられます。


日本の社会保障制度のしくみ
・社会保障制度の負担と給付のしくみとして、社会保険方式と社会扶助方式の2つがあります。


医療保険
・医療保険とは、疾病などで治療が必要になった倍の医療費を保障するためにあらかじめ保険料を拠出しておくことで、実際に医療費が必要になった場合に一定部分を保険から給付するしくみのことです。

・被保険者がサラリーマン(被用者)の場合の医療保険を健康保険といいます。

・国民健康保険は自営業者、農林水産従事者、パート労働者、さらには無職や失業中の人々が被保険者となります。


後期高齢者医療制度
・後期高齢者医療制度の被保険者は、市町村に住所を有する75歳以上の後期高齢者です。


雇用保険
・雇用保険は、労働者の生活と雇用の安定をはかるために、失業の予防、雇用オジュタイの是正及び雇用機会の増大、労働者の開発とその向上、その他騒動者の福祉の増進をはかることを目的とした社会保険の1つです。

・雇用保険の保険者は政府であり、雇用保険の加入者、つまり被保険者は業種、規模にかかわらず全産業(一部任意適用もある)の労働者に適応され、事業主に被保険者の届出義務があります。


労働者災害補償保険
・労働者火災補償保険は、業務が原因であるか、もしくは通勤途中に起きた労働者の負傷、疾病、障害、死亡などに対してすばやくかつ公正な保護をするため、必要な保険給付ゃ社会復帰を促進するための事業などを行います。

・労働者災害補償保険は政府が管掌しており、被保険者という概念はありません。


公的扶助
・日本において公的扶助をになっている制度は生活保護です。


社会手当
 ・日本における社会手当は、児童手当、児童扶養手当、特別児童扶養手当、特別障碍者手当、障害児福祉手当、福祉手当から構成されています。


社会福祉
・日本の社会福祉法制は日本国憲法を根拠としつつ、福祉六法といった中心的な社会福祉を規定する各法と、それらを束ねる社会福祉法、さらにはそこから派生してきた諸法とからなります。

・地域福祉とは、福祉ニーズを抱えるような状態になったとしても、家族や近隣住民あるいは友人関係などといった社会関係を維持したまま福祉サービスを利用し、その利用者の福祉の向上を目指すものです。 

第4節 障害者総合支援制度

障害の種類と定義
・障害の定義については、濃く相手期には世界保健機関(WHO)が1980年に公表した国際障害分類(ICIHD)と、2001年にその改訂版として取りまとめられた国際生活機能分類(ICF)によって示されています。


障害者自立支援法から障害者総合支援法へ
・障害者総合支援法では、障害者の定義に新たに難病などを加え、従来の「障害程度区分」の名称を「障害支援区分」に改めるとともに、重度の障害者への訪問介護の対象を拡大し、共同生活を行うケアホーム、グループホームを一元化しました。また、障害者支援施設の障害者や精神科病院の精神障害者に加え、地域移行支援の対象者の拡大もはかられました。


サービスの種類と内容
・障害者総合支援法で提供されるサービスは、
①自立支援給付と
②地域生活支援事業の2種類に分けられます。


サービス利用の流れ
・自立支援給付のうち、介護給付については、障害支援区分認定を経たあと、訓練等給付は障害支援区分認定を経ずに、サービス利用希望者からの井奥と聴取をふまえて、サービス事業者と契約を結び、サービス利用を開始します。これを利用契約制度といいます。


障害者総合支援制度における事業者
・事業者は、提供するサービスごとに、市町村長あるいは都道府県知事による事業者指定を受けなければなりません。

・利用者本位のサービスを提供するため、苦情相談窓口を設けて、利用者からの様々な苦情を受け付けることが、すべての事業者に求められています。


障害者総合支援制度における組織・団体の機能と役割
・国は、市町村および都道府県に対する必要な助言、情報の提供、その他の援助を行うことが役割とされています。

・都道府県は、障害者基本法にもとづき都道府県障害者計画を作成し、審議会その他の合議制の機関の設置と運営をにないます。また、障害者総合支援法によりと都道府県障害福祉計画を、児童福祉法により市町村障害児福祉計画を作成し、それにもとづき障害福祉サービスや障害児通所支援などを実施します。障害者総合支援法においては基本的な制度運用の責任を持ち、身体・知的・精神(障害の発達を含む)の3障害を含め、基本的な障害福祉サービスの実施主体となっています。 

第5節 介護実践にかかわる諸制度

サービスの利用にかかわる諸制度
・日常生活自立支援事業は、認知症高齢者、知的障害者、精神障者などのうち判断能力が不十分な人が地域において自立した生活を送ることができるように、利用者との契約にもとづき、福祉サービスの利用援助などを行うものです。

・成年後見制度は、判断能力の不十分な成年者(認知症高齢者、知的障害者、精神障害者など)を保護する制度です。

・成年後見制度には、法定後見人制度と任意後見制度の2つがあり、法定後見人制度は、判断能力の程度など本人の事情に応じて後見、保佐、補助の3つに支援内容が分けられています。


虐待防止の諸制度
・高齢者虐待を防止し、高齢者の権利利益の養護と養護者の支援の促進を目的として、2005(平成17)年に高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(高齢者虐待防止法)が公布され、2006(平成18)年から施行されました。

・高齢者虐待は、「養護者に対する高齢者虐待」と「要介護施設従事者等による高齢者虐待」の2つに分けられています。

・高齢者虐待防止法では、高齢者虐待を発見しやすい立場にある機関および専門職は、早期発見に努めなければなりません。

・障害者虐待防止法の対象は、障害者基本法に定められている障害者です。障害者虐待防止法における障害者虐待とは、
①養護者による障害者虐待、
②障害者福祉施設従事者等による障害者虐待、
③使用者による障害者虐待、と規定されています。

・児童虐待とは、保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するもの)がその監護する児童(18歳に満たない者)に対して行う、
①身体的虐待、
②性的虐待、
③ネグレクト、
④心理的虐待の4つの種類の行為をいいます。


人々の権利を擁護するその他の諸制度
・秘密保持や個人情報保護は、1人の職員が守ればよいというものではなく、サービスを提供している事業所である組織も必ず守らなければいけません。


保険医療にかかわる諸制度
・近年の日本では、生活習慣病にならないための健康づくりが重視Sれています。


・生活習慣を改善して国民の健康を増殖し、生活習慣病を予防することに重点をおいた新しい健康づくりの総合計画として規定されたのが21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)です。


生活を支える諸制度
・生活保護は、都道府県・市町村の福祉事業所が行うこととされており、生活に困窮し保護を要する者(要保護者)の居住地を所管する福祉事務所が担当することとされています。

・福祉事務所が行った保護に関する決定について不服がある場合には、不服申し立てができます。

・低所得者、障害者、高齢者、母子世帯などに対し、その経済的自立と生活意欲の助長促進、在宅福祉と社会参加の促進をはかり、安定した生活を確保するための資金として、福祉資金を融資するのが福祉資金貸付制度です。

テキスト内重要事項

第1章 介護福祉士と介護の考え方(介護の基本1)

第1節 介護福祉士の役割と機能

社会福祉士及び介護福祉士法
・介護福祉職の定義規定は、「入浴、排泄、食事その他の介護」などを行うことを業とする者となっていたところを、2007(平成19)年の社会福祉士及び介護福祉士法改正で「心身の状況に応じた介護」などを行うことを業とする者に改められました。

・2011(平成23)年の社会福祉士及び介護福祉士法改正により、喀痰吸引等の行為が法的に位置づけられ、一定の条件の下に喀痰吸引等の行為が実施できることとされました。

・2007(平成19)年の社会福祉士及び介護福祉士法改正により、介護福祉士が守らなければならない義務規定が見直され、誠実義務については、個人の尊厳の保持と自立支援が明確に打ち出されました。


介護福祉士のキャリアパス
・実務者研修は、国家試験を受験しようとする実務経験者に対して受講が義務づけられている研修であり、「幅広い利用者に対する基本的な介護提供能力の修得」と同時に、「今後の制度改正や新たな課題・技術・知見を自ら把握できる能力の獲得」を目標として行われます。

・介護職のチームによるケアを推進するにあたっては、チームの中でリーダーの役割を担う存在が必要であり、その役割をになう存在として、一定のキャリアを積んだ介護福祉士が期待されています。

第2節 尊厳の保持、自立に向けた介護の考え方と展開

利用者に合わせた生活支援
・生活支援における介護サービスの目的とは、利用者のQOLを高めていくことにあります。


自立に向けた生活支援
・自立に向けた支援を目指す介護サービスを提供していくためには、生活の主体者としての利用者像を理解するよう努めていく姿勢が求められます。

・介護サービスにおいては利用者の心身の状態のみならず、その人の有する価値観や生活習慣、あいるいは生活史などを尊重した個別支援の視点が大切となってきます。


自立に向けたICFの考え方
・障害をただマイナスととらえるのではなく、生活機能の視点からのプラスの側面も含めて見直していこうとするICFの視点は、自立支援を目指す介護の基本視点と重なり合うものです。

・これからの介護のあり方は「介護」と「生活」を切り離すのではなく、要介護状態という利用者の生活像を受け入れつつ、どのような支援によりその人らしい生活の再構築をはかれるのかが重要な視点となります。


自立に向けたリハビリテーションの考え方
・利用者の尊厳を保持していくためには、要介護状態になっても自分のことは自分で出来るよう、リハビリテーションの視点をもった介護のあり方や専門職との連携が重要になります。


自立に向けた個別ケアの考え方
・「何ができるのか?」「何がしたいのか?」ということに関心を寄せて観察し、利用者一人ひとりの思いや意欲、生活習慣などを尊重した個別ケアの考え方を持つことが重要です。


介護の専門性
・生活とは、24時間365日続いていくものです。そのため、利用者に提供されるサービスは、途切れることなく、一貫して提供される必要があります。だからこそ、チームケアが重要になるのです。

・介護っは意図的に行うものであり、場当たり的に行うものではありません。意図的に行う介護は、介護を行うまでのプロセスを科学的思考にもとづいて説明する必要があります。

・介護は単なる作業ではなく、一人ひとりの利用者に個別的に対応する支援なのだということを、介護職員はきちんと説明できなければいけません。多くの人たちに介護の本質を理解してもらうためには、わかりやすいことばで表現し、適切に発言していく必要があります。

 

第3節 介護福祉士の倫理

介護福祉士としての倫理の必要性
・介護職の国家資格である介護福祉士に対しては、社会福祉士及び介護福祉士法のなかでさまざまな規定を設けて、高い倫理性を求めています。

・介護福祉士には、法律以外でも、専門職として守らなければならない行為規範があります。その行動規範を定めているのが倫理綱領です。

・介護福祉士としては、介護に関する知識と技術を備えていることはもちろん、介護を行ううえで根幹となる倫理について理解し、高い倫理性を養うことが社会的な責務ともいえます。

・介護現場においては、人間の尊厳をおびやかす状況が様々な場面で起こり得ます。なかでも、利用者の行動の自由をうばい、制限すること(身体拘束)は、その禁止が制度上でも明確に示されています。


日本介護福祉士会倫理綱領
・日本介護福祉士会は、1995(平成7)年に資格を持つすべての介護福祉士がめざすべき専門性と職業倫理を明文化し、日本介護福祉士倫理綱領を宣言しました。

第2章 介護福祉士による介護実践(介護の基本2)

第1節 介護を必要とする人の生活の理解と支援

「その人らしさ」の理解
・「その人らしさ」とは、利用者一人ひとりの個性であり、長い生活経緯の中でつちかわれた価値観やこだわり、プライドといったことを意味します。

・対人援助サービスとしての介護を考えていくうえで、もっとも配慮しなければならないのは、利用者本人が持つ個性であり、その背景にある生活の多様性です。

・利用者の「その人らしさ」を考えていくためにも、利用者が生きてきた時代と文化に興味をもち、関氏や社会の常識などを知っておくことが必要です。


高齢者の暮らしと生活の実際
・要介護状態にある高齢者の支援に際しては、介護予防といった観点ももちろんながら、利用者主体の介護を行う視点が求められています。

・要介護状態にある高齢者の支援に際しては、利用者の今持っている力をいかし、利用者自身が主体的な生活を送ることができるような生活支援の視点を持つことが大切です。


障害のある人の暮らしと支援の実際
・介護職の役割とは、障害や衰えによって生じる日常生活のさまざまな不便や不安を少しでも解消し、利用者本人が要介護状態にあっても、その人らしく暮らし続けていけるよう支援していくことです。


介護を必要とする人の生活環境の理解
・個々の利用者に適した生活環境を考えることは、まさに介護サービスの質そのものを考えていくことになります。

・利用者が不必要に不安に駆られたり、窮屈な思いをしたりしなくてすむ人的な生活環境を整えることも重要であるといえます。

第2節 介護実践における連携

多職種連携
・介護の実践における多職種連携の意義は、異なる専門性を持つ多職種がチームになって利用者を支え合うことによって、互いの専門職としての能力を活かして効果的なサービスを提供できる点にあります。

・チームとは、目標や方針を共有し、同じ方向へ向けて互いの専門性をいかしながら協力し合うグループです。

・チームアプローチとは、チーム援助を行うことをいい、多職種がそれぞれの専門的な視点でアセスメントを行い、目標や方針を共有し、それぞれが自分の専門性を発揮させて総合的に援助を行うことをいいます。

・チームを構成するメンバーは専門職だけではありません。家族も、近隣の人も、ボランティアも、達成すべき目標や方針を共有し、協力しあう人は皆、チームのメンバーです。


地域連携
・地域連携は、生活をしている場所や地域で、利用者の求める生活を支援するために行います。介護職が地域連携を行うことによって、チームアプローチが具体的に進み、協働の姿がみえはじめます。

第3節 介護における安全の確保とリスクマネジメント

事故防止と安全対策
・介護の現場では、利用者のプライバシーにどうしてもかかわらざるを得ないことが多く生じます。その場合、専門職として守るべき倫理に加えて、利用者に生じやすい事故などへの対策や、安全への配慮も重要になります。

・介護職は、利用者のリスクの回避に責任を負うことになります。それと同時に、利用者の尊厳の保持を実現しなければいけません。

・利用者の生活を支えるということは、そこで生じる利用者の生活上のリスクを未然に予測し、回避するための知識や技術、また、事故が起きたときにはその影響を最小限にとどめ、安全を確保する技術が求められます。

・施設では、組織的に事故防止、安全対策を行うために事故防止検討委員会やリスクマネジメント委員会などを設置しています。

・チームで連携して情報を伝え合い、判断をあおげる専門職同士の関係を柔軟に対応できる仕組みをもっている組織は、リスクに強い組織と言えます。

・介護事故が発生したときの家族への報告は、できる限り迅速かつ正確に行う必要があります。報告の遅れや、報告の不正確さは、家族との信頼関係に支障をきたすことがあります。


感染対策
・生活の場における感染対策は、何よりも「1ケア1手洗い」を徹底することが必要です。

・日ごろから感染対策を意識した介護を行っていると、感染症が発生したときに早めの対応につながり、被害を最小限に抑えることができます。

第4節 介護従事者の安全

健康管理の意義と目的
・介護職自身の健康状態が保てないと、介護サービスの質も低下し、利用者の状態に応じた介護ができんあかったり、思わぬ事故につながったりする可能性もあることから、介護職の健康管理はとてもたいせつです。


健康管理に必要な知識と技術
・日々の生活の中で健康を維持するためには、疲労を回復する力と、仕事や仕事以外の原因で生じる身体や精神(こころ)の疲労とのバランスをとり、過労を防ぐ必要があります。

・介護職は、仕事や人間関係から様々なストレスを受けるので、心の健康管理が必要です。


安心して働ける環境づくり
・日本における働く人の健康を守る法制度としては、日本国憲法のもとに、労働基準法や労働安全衛生法などがあります。
 

第3章 コミュニケーション技術

第1節 介護におけるコミュニケーション

コミュニケーションの意義、目的、役割
・介護を必要とする多くの高齢者や障害のある人は、何らかのコミュニケーション障害があり、自分の意見や要求を相手に伝えることが困難になっています。

・介護職がより有効な対人援助を行うためには、利用者をよく知ると同時に、自分自身をよく知ることが基本となります。


コミュニケーションの技法
・メッセージを伝える伝達経路(チャンネル)には、言語的チャンネルと非言語的チャンネルの2つがあります。すべてのチャンネルのうち、言語的チャンネルが2~3割であるのに対して、非言語的チャンネルは7~8割を占めます。

・コミュニケーションをさまたげる要因を雑音といいます。雑音には、物理的雑音、身体的雑音、心理的雑音、社会的雑音という4種類があります。


支援関係の構築と意思決定の支援
・介護職は、支援を行うなかでコミュニケーションの技法を用いて、利用者および家族と信頼関係(ラポール)を構築していくことが重要です。信頼関係が構築できると、豊かな相談場面につながります。

・意思決定の支援では、利用者が「自分で決めた」という思いになるように支援していきます。

第2節 介護におけるコミュニケーションの技術

話を聴く技法
・よく聴く技能は、傾聴といわれ、対人援助の基本技能であるばかりでなく、重要な価値感、姿勢、もしくは態度であるともいわれます。


利用者の感情表現を察する技法
・対人援助のなかで相手の思いを受け止め、それを相手に共感的に戻すためには、相手の思いを知ると同時に、自分自身の感情表出の傾向を知ることも必要です。


利用者の納得と同意を得る技法
・利用者の納得と同意を得る技法として、「明確化」「焦点化」「要約」の技法、さらに「直面化」の技法があります。


質問の技法
・閉じられた質問とは、「はい」または「いいえ」で答えられる質問、及び簡単に2~3の単語で答えられる質問です。開かれた質問は、相手に自由を認め、相手が自分自身の選択や決定による答えを見つけることをうながします。


相談・助言・指導の技法
・介護職は、利用者が自分の思いや状況を問題や課題として認識したり、周囲の人が問題に気づく前の「よくわからないもやもやした状態」のときに自然に思いを表現したりすることをうながし、それを受けとめる役割を果たしているといえます。


利用者の意欲を引き出す技法
・利用者の自己決定を尊重することは、利用者の意欲を引き出す死にも非常に重要です。


利用者と家族の同意を調整する技法
・利用者の意向を把握することは、介護を行ううえで不可欠なことですが、それほど簡単なことではありません。

第3介護現場における利用者・家族とのコミュニケーション

コミュニケーション障害の理解
・コミュニケーション障害とは、情報の受信から発信までの過程が何らかの支障によって適切にはたらかず、コミュニケーションをはかることができない状態を意味するものです。

・利用者と介護職の間で生じるコミュニケーションの障害の原因は、大きく分けて、
①生活環境に問題がある場合と、
②利用者のコミュニケーションにかかわる心身機能が何らかの原因で障害されている場合が考えられます。

・介護職がコミュニケーション障害について理解する目的は、介護の実践を通して生活支援を行うためであり、利用者との信頼関係を築くためです。

第4節 介護におけるチームマネジメントとコミュニケーション

チームマネジメントの理解と活用
・チームマネジメントとは、チームが移動するために必要な目標を設定し、目標達成のためにさまざまな資源を効率的に活用するしくみを整えることです。そのため、管理職やベテラン職員に限らず、新任職員もチームマネジメントに関わる大切な存在なのです。

・介護現場で行われているチームの取組の多くは、
①ケアの展開、
②人材育成・自己研鑽、
③組織の目標達成に分類できます。
 日常的なチームの取組が、3つの分類のなかでどのような意味を持つものなのかを考察するとともに、チームマネジメントを実践するうえで大切な視点です。

・人材育成・自己研鑽は、現場での実際の仕事を通しての学び(OJT)と、研究会や通信教育など、介護の現場を離れての学び(OFF-JT)の2つに分けることができます。

・目標管理・達成のしくみを組織・チーム的に作っていくことも、チームマネジメントの取組の1つです。


チームのコミュニケーションとは
・チームのコミュニケーションの目的は、チームの力を引き出すこと、チームによる支援を動かしていくことにあります。

・チームのコミュニケーションを進める具体亭な方法として、記録、報告、連絡、相談、会議があります。


記録による情報の共有化
・記録は、書いただけでは一方的なコミュニケーションで終わります。書いたものを受け止めて活用する関係があって、双方向のコミュニケーションが成り立ちます。
・介護職は業務として、利用者の理解を深めるための情報のほか、介護行為の具体的な事実とその根拠、実施後の利用者の変化などを記録します。

・介護職はもちろん、利用者にかかわる施設や事業所内の職員は、個人情報が外部にもれることがないように、適切な対応をとる必要があります。


報告・連絡・相談による情報の共有化
・介護の仕事は、1人で勝手に進めることはできません。したがって、報告、連絡、相談は、仕事をするうえで必要な行動ということができます。


会議による情報の共有化
・会議は情報共有の場であり、門ぢ亜解決の場でもあります。集まった人々の経験や知恵を集め、検討課題の解決を進めていく場です。

第4章 自立に向けた生活支援技術の基本(生活支援技術1)

第1節 生活支援とICF

生活支援とアセスメント
・生活支援を行うために必要なことは、介護を必要とする人の生活について現状を把握することです。

・生活を把握する方法とは、その人の生活全般について、観察・記録・コミュニケーション等の介護技術を用いて情報を得ることです。


ICFの視点とアセスメント
・ICFの構成要素のうち、特に活動は、利用者の日常生活に多くのかかわりを持つ介護職にとって、大切な視点になるものです。

・介護浴はICFが示す相互作用をよく理解し、多職種と連携しながら「している活動」「できる活動」を向上させ、「活動」「参加」を可能にし、「心身機能」によい影響をもたらすことが大切です。

第2節 居住環境の整備と福祉用具の活用

居住環境の意義
・居住環境としての住まいとは、家族をいつくしみ育て、人生の終わりまでをやすらかに過ごす場であり、ライフサイクルのどの時点においても住みやすく、人が安心して快適に生活ができる場であることが求められます。

生活空間と介護
・介護が必要な高齢者の生活支援では、生活してきた地域やそこでの暮らしに目を向け、生活から切り離さない介護を考え、生活の継続を図ることが重要です。


福祉用具の活用
・福祉用具の使用には、利用者の体型と福祉用具が適合していることが不可欠です。また、使用する環境に配慮して福祉用具を選定することが大切です。

 

第3節 移動・移乗の生活支援技術の基本

移動・移乗の介助を行うにあたって
・円滑な運動と移動は、快適な「生活行為」につながり、健康の維持・増進を可能にすると同時に、心身の健康が「生活行為」の前提にもなっています。

・ボディメカニクスとは、骨格や筋肉などの相互関係で起こる身体の動きのメカニズムです。ボディメカニクスを正しく応用することで、利用者・介護者双方の負担を少なくし、障害を起こさず、無駄な動作をすることなく介助することができます。


体位変換の介助
・体位変換を行うことで利用者は、安楽な体位の保持、同一体位の圧迫による血流障害の防止、筋や関節の拘縮予防、肺の各部位をいかした呼吸、排痰の促進といった効果を得ることができます。

・体位変換の介助を行う際に、介護職はまず自分自身が安定した姿勢をとることが前提となります。


車いすの介助
・車いすを利用する場合は、車いすの構造を理解したうえで、必ず安全に利用できるか確認することが必要です。


歩行の介助
・歩行の介助にあたっては、利用者の歩行状態を分析しつつ自立レベルを上げていく、利用者のペースに合わせて安全を優先する、利用者の活動範囲の拡大に向けてはたらきかけていくことなどが大切となります。

第4節 食事の生活支援技術の基本

食事の介助を行うにあたって
・食事の介護では、利用者に自らの意思でおいしく食べてもらえるよう、その人の食の嗜好性を尊重することから始めてみることが大切です。

・基本的な食事の姿勢としては、座位が保持できるいすを使用し、両足を床に、両肘をテーブルに、それぞれきちんとつけます。そして、誤嚥しないようにやや前傾した姿勢をとるのがよい姿勢といえます。


食事の介助
・利用者の状態に応じて、事前準備の段階から部分的にかかわってもらうことによって、自分自身の食事であるという思いをいただき、主体的に食事を楽しんでもらえるように介助します。

第5節 入浴・清潔保持の生活支援技術の基本

入浴の介助を行うにあたって
・浴室の設備が身体機能と合わない場合は補助具などを活用し、利用者が安全で安楽な入浴を行うことができるようにします。また、ヒートショックを予防するため、脱衣所と浴室の温度差がないように、室温にも配慮します。

・浴室は、転倒・溺水などの事故が多い場所です。入浴の介助を行うにあたっては、脱衣から着衣までの一貫した支援が必要になります。

・入浴中に異常があった場合、介護職はすみやかに医療職と連携をとることが大切です。


部分浴の介助
・手足を拭くだけよりもさっぱりとして利用者の満足度が高いため、手足が汚れた場合や体調が悪くて入浴できない場合などに手浴・足浴の介助を行います。

・洗髪は、頭部の皮膚と髪の毛を洗うことでよごれをとり、頭皮を刺激し爽快感を与え、血行の促進や毛髪の成長をうながす目的があります。


清潔保持の介助
・清拭には全身清拭と部分清拭があります。全身清拭は身体全体の清潔を保つことができて利用者の満足度も高いものですが、時間を要し、体力の消耗が大きいです。そこまで体力がない利用者には部分清拭を行います。

第6節 排泄の生活支援技術の基本

排泄の介助を行うにあたって
・排泄の介護は、利用者の生活の変化や精神的な影響を受けやすく、デリケートな部分の介護となります。

・排泄の介護が、いかに利用者と介護職の双方の精神的ストレスを与えるかをまず理解し、利用者に不愉快な思いやはずかしい思いをさせることなく、ゆくりと排泄できるよう環境を整えることが大切です。

・利用者の生活リズムや習慣に合った排泄の仕方を尊重することが、排泄の介護の始まりとなります。

第7節 着脱、整容、口腔清潔の生活支援技術の基本

身じたくの介助を行うにあたって
・身じたくは、自分らしさを表現する1つの手段であり、社会生活を快適かつ円滑にし、世親的満足感を得ることで社会性や生活意欲を高めるものでもあります。それを支援するということは、その人らしく生活をするための支援といえます。


衣服着脱の介助
・衣類着脱の介助に際して、利用者に片麻痺がある場合、脱健着患(脱ぐときは健側から、着るときは患側から)が基本となります。


整容の介助
・整容は個々の好みにそって自分らしく過ごしたり、個性を発揮しながら他者と交流し、社会生活を送ったりするためのものです。整容の介助では、個々の利用者のライフスタイルを尊重した関わりをもつことが、何よりも大切です。


口腔清潔の介助
・介護職が行う口腔ケアは、主に口腔清潔の介助(歯の清掃、口腔粘膜の清掃、義歯の清掃など)となります。

・口腔ケアは、歯周疾患や口腔粘膜疾患(口内炎など)の予防のみでなく、全身の感染症予防にも効果があるといえます。

 

第8節 家事援助の基本

生活と家事の理解
・家事援助のむずかしいところは、単に家事技術を提供すればよいわけではないという点です。人の生活は、それまで培ってきたその人の生活習慣、価値観やこだわりがあり、非常に個別性の高いものです。

・介護職の行う家事援助は単なるお手伝いではなく、1人の人間として利用者の尊厳を守りつつ、自立を支援し、その人らしい生活を継続できるように援助する役割をになっています。

・家事援助は生活を継続するための土台であり、居宅でも施設でも必要な援助です。

第5章 利用者の心身の状態に応じた生活支援技術(生活支援技術2)

第1節 環境整備と福祉用具等の活用

利用者に適した生活環境の整備
・自宅や施設など住まいの種類に関わらず、生活環境の整備は、生活の基盤をつくるうえで欠かせません。高齢者や障害者の生活上の困難の原因が、生活環境が十分に整備されていない点にあることも少なくありません。


利用者に適した福祉用具の選定
・福祉用具の意義はADLの自立や介護負担の軽減をはかることにとどまらず、活動や社会参加、自己実現、尊厳や権利の回復など、その人らしい生活を助ける道具・用具としても重要な役割をになうようになっています。

第2節 移動・移乗の生活支援技術

体位変換の介助
・一般介助を要する利用者の介助では、できる力もやっている能力を最大限に生かし、自立を支援していくことが大切です。
・体位変換の介助に際しては、全介助であっても利用者は常に受け身ではなく、介助を通して動作の自立をはかっていきます。


車いすの介助
・車いすの介助に際しては、介護職は十分に声かけを行い、利用者の患側を保護し、安全に移乗するプロセスを理解してもらいながら介助を行います。


安楽な体位の保持と褥瘡の予防
・安楽な体位とは、心身共にリラックスして心地よい状態にある体位のことです。その条件として、姿勢が安定していること、筋肉のエネルギー消費が少ないこと、内臓諸器官の機能をさまたげないことがあげられます。

・褥瘡とは、寝床で寝ている最中や車いすに座っている際、身体の骨の突出している部分の皮膚や皮下組織が持続的な圧迫を受けることで血液の循環障害が生じ、その部分の組織が壊死することをいいます。


歩行の介助
・歩行の介助に際しては、安全を第1に考え、原則として、麻痺があれば麻痺のある側をサポートするなど、安心感を与えながら介助を行います。

・利用者の心身の状態に合わせて杖による平地歩行、階段昇降、そして見守りによる杖なし歩行へと自立に向け、目標を徐々に高めていきます。


移動・移乗に関する福祉用具とその活用方法
・歩行における福祉用具の使用は他者に依存することなく、自らの力で自立できることが最大の効果となります。

・移動用リフトや移乗機器の適切な利用により、介護負担の軽減と、利用者の自立を高めることにつながります。

第3節 食事の生活支援技術

食事の介助
・食事の一連の動作のうち、麻痺や筋力低下などによる運動機能障害により困難な動作があっても、利用者のもっている力を活用できるような介助方法を身につけ、主体的に食事をしてもらうことは可能です。

・全介助の状態であっても、やむを得ない状態でない限り、ベッド上ではなく、食事にふさわしい場所で食事ができるように介助することが求められます。

・やむを得ずベッド上で食事をする場合は、座位の安定を保つためにベッドのギャッチアップ機能を活用し、膝の下にクッションなどを当てて姿勢を安定させます。


食事に関する福祉用具とその活用方法
・筋力の低下や麻痺、拘縮などによって上肢の運動機能に制限があるような場合は、自助具を活用することによって、それらの機能を補うと、自力で食事がしやすくります。


誤嚥・窒息の予防
・嚥下反射が上手くいかず、気管に食べ物が誤って入ることによって、誤嚥が起こります。

・誤嚥によって気管内に食べ物や異物がつまると窒息を起こすことがあります。

・安定した座位を保ち、やや前傾した姿勢をとると、誤嚥しにくくなります。


脱水の予防
・水分は食事や飲料などによって体内に補給され、尿や便、汗によって体外に排出されます。このバランスが崩れると脱水になります。

第4節 入浴・清潔保持の生活支援技術

入浴の介助
・下肢に力が入らなくても、支えるものがあれば立位や座位が取れる場合などは、手すりを設置したり、支える位置を工夫したりすることで主体的に入浴してもらうことができます。

・歩行、立位、座位を保つことが困難になった場合でも、機械浴槽(特殊浴槽)などの設備があれば仰臥位の状態での入浴は可能です。


入浴に関する福祉用具とその活用方法
・介護職は利用者の状態に合わせて適切な入浴介助が行えるように、用具の種類や効果などの知識も学んでおくことが大切です。

第5節 排泄の生活支援技術

排泄の介助
・車いすを使用している人にとって、トイレの便座への移乗動作は、立位の感覚を維持する機会になります。身体機能の維持のためにも、重要な行為といえます。


排泄に関する福祉用具とその活用方法
・ポータブルトイレを選定するにあたっては、利用者の身体状態に合わせた移動・移乗動作が安全・安楽にでき、安定した座位姿勢が保たれることが重要です。そのため、器具本体の安定性と座面の高さ、機能を基準に考えます。

・おむつ、パッドの種類を選択するにあたっては、各製品の特長を知り、利用者のADL、体型、排尿量、排尿リズムなどからおむつ・パッドの組合せを工夫し、利用者一人ひとりに合ったものを選択することが大切です。


頻尿、尿失禁、便秘、下痢、便失禁への対応
・尿失禁とは、本人の意思にかかわらず尿が漏れてしまう状態をいいます。

・便秘とは、便が結腸や直腸に長くとどまり便を排出する回数が減少し、水分量の少ない硬い便となるなど、便の排出が困難であったり、便が残っている感覚なおどを自覚したりする状態をいいます。

・下痢とは、水様便や泥状便、軟便など、水分の多い便が1日に何回も排泄させる状態をいいます。

第6節 着脱、整容、口腔清潔の生活支援技術

衣料着脱の介助
・衣料着脱の介助を行うときは、プライバシーの保護や保温のため、肌の露出をなるべく少なくしながら介助します。

・何らかの理由により座位が取れない時は、ベッド上で臥床したまま着替えることになります。その場合、前開きの衣服のほうが利用者にかかる負担が少なくなります。

・全介助であっても、可能であれば、利用者が衣服を選択できるようにはたらきかけたり、自力で行えることは協力してもらったりすることが大切です。

第7節 休憩・睡眠の生活支援技術

休息・睡眠の介助を行うにあたって
・心身ともに良好な状態で活動を続けるためには、からだの疲労を回復させて、こころをリフレッシュするための休息が必要になります。

・よい睡眠がとれれば、短時間で効果的に休憩をとることができますが、睡眠が量的に不足したり、質的に悪化したりすると、健康上の問題が生じてきます。


睡眠に関する用具とその活用方法
・安眠をうながすのに欠かせない技術としてベッドメイキングがあります。シーツのしわは利用者の寝心地や動きに影響するとともに、局所を圧迫し、血液の流れを悪くして褥瘡の要因になる危険性もあります。


睡眠とくすり
・睡眠障害は、心身機能だけでなく生活環境や日中活動との関連が深いため、どのような原因で起きたのか、生活全体をアセスメントしたうえで環境の改善をはかります。

・薬を服用するときは、普段の就寝時刻に合わせて飲みます。薬を飲んでも眠くならないからといって重ねて服用したり、勝手に量を調節したりしてはいけません。

第8節 人生の最終段階における介護の生活支援技術 

人生の最終段階における介護を行うにあたって
・終末期は、治療困難な状態であるという特徴から、医療だけでなくさまざまな症状や苦痛を軽減するための「ケア」が必要になります。

・尊厳を保持しながら最期をその人らしく生きるためには、本人の希望する生き方、死に方を最大限尊重するための周囲の理解と協力が欠かせません。終末期のQOLを高めて生きることを支えることは人の生と死を支援することであり、生活全体への深く関わる介護技術になります。


人生の最終段階の介護
・介護職は終末期を迎える利用者に対して無理な励ましなどはせず、利用者の表情やしぐさ、行動の中から微妙ンあ変化に気づく感性が求められます。そして、なるべく苦痛が少なく、やすらかな死を迎えられるような援助が大切になります。

・利用者、家族がもつ身体的、精神的な苦痛を軽減するためには、専門的なチームづくりも必要です。チームケアで大切なことは、チームで情報を共有し、チームメンバーが共有した考え方をもって、一致した方針のもとに援助を行うことです。


介護職、家族への支援
・終末期の介護では、一生懸命になるあまり、介護職自身が利用者、家族の不安や悲しみを1人でかかえこんでしまうこともあります。介護職は自分自身へのケアも忘れてはいけません。

・終末期の介護では、介護職は家族のこころの揺れや動き、無力感、どうにもならないことに対する怒りなどを理解することが大切です。そして、ともに死を迎え入れるこころの準備や、死後に後悔が残らないよう、かかわる人たちが常日ごろから情報を共有することです。

テキスト内重要事項

第1章 介護過程の基礎的理解(介護過程1)

第1節 介護過程の意義と目的

根拠に基づいた介護の実践
・利用者が希望する生活の実現に向けて、意図的な介護を展開するためのプロセスを介護過程といいます。これは、介護を進めていくうえでの手順や経過と言い換えることができます。

・介護過程を展開することにより、客観的で科学的な根拠に基づいた介護実現が可能になります。

・介護過程の展開は、利用者一人ひとりについて尊厳の保持や自立支援の視点に基づくため、利用者を主体とした個別ケアの実践を可能にします。

・介護過程の展開は、多職種および介護職同士が協働・連携して、利用者に適切な介護サービスを提供することがでます。


介護過程の過程の必要性
・介護過程は、一般的に「アセスメント→計画の立案→実施→評価」の4段階で構成されています。

 

第2節 介護過程の展開

介護過程の展開イメージ
・介護過程は一方通行の直線的なものではなく、終結に至るまでの間は何度でも循環していくことが特徴です。


アセスメント
・アセスメントの第一歩は、情報の収集にあります。

・情報の収集にあたっては、まず、基本的な情報を正しく把握する必要があります。

・介護過程では、ICFの視点にもとづいた情報の収集により、利用者の全体像を全人的にとらえることが重要になります。

・客観的観察とは、介護職が事実をありのままに観察することです。

・主観的観察とは、利用者が思っていることや考えていること、つまり利用者の主観を観察することです。主観的観察は、介護職が利用者から会話等を通じて引き出さなければ得られない情報です。

・情報を収集したあとに行う作業としては、情報の解釈があります。事実の全体像が見えてくるまでは、見たり聞いたりしたままの、意味付けのない情報としてとらえるようにします。そのうえで、介護に関する知識を活用しながら情報を解釈していきます。

・情報の解釈、関連付け、統合化という作業は、利用者の生活のしづらさが何に起因しているのかを明らかにする作業といえます。そのためには、具体的な思考過程として、情報同士をつなぎ合わせて仮説の検証をしていくことになります。

・介護過程でいう課題とは、利用者が望む暮らしを実現または継続するために、解決しなけらばならない困りごとのことであり、介護上の問題(生活課題)と位置付けることもできます。


計画の立案
・アセスメントを通じて、利用者が望む暮らしを実現または継続するために、解決しなければならない困りごとが明らかになったことを受けて、次の段階としては、介護計画を立案します。
実施介護過程における介護計画をふまえ、利用者の安全性、快適さ、そして自立に配慮した介護技術の実施が大切になります。


評価
・介護過程で重要となるプロセスの1つが評価です。ここでいう評価とは、介護サービスを提供した音の評価(evaluation/エバリュエーション)のことであり、事前評価(assessment/アセスメント)とは異なります。

・評価の結果、このまま同じ形で介護を続けても利用者の抱える課題が解決につながらないことから明らかになった場合には、介護計画の修正が求められます。

第3節 介護過程とチームアプローチ

介護過程とケアマネジメントの関係性
・ケアマネジメントとは、高齢や障害があることによって地域社会における自立した生活が困難になったとしても、医療、保健、福祉などのさまざまな社会サービスを利用することで、その人らしい生活の継続ができるように支援するしくみのことをいいます。

・ケアマネジメントの中核的な役割をになうのがケアマネージャーであり、介護保険法上では介護支援専門員と呼ばれています。

・介護支援専門員が作成するケアプランは、利用者の生活全体を支える計画となります。ケアプランに位置づけられたサービスを提供する事業者(施設の場合は「職種」)は、ケアプランの目標達成に向かって援助を実施します。この時介護職の場合は介護過程を展開することになります。

・個別サービス計画の立案においては、その計画がケアプランとどのようにつながり、介護職としてどのような役割を果たすことが求められているのかを意識する必要があります。


介護過程とチームアプローチ
・利用者の生活の支援は、ケアマネジメントのプロセスにそって行われます。したがって、そこには利用者を中心としたケアチームが形成され、チームアプローチが実践されることになります。

・専門職ごとに支援や把握している情報が異なることを十分に理解し、利用者の望む生活の実践を支えるためには、どのような専門職とどのように連携すればよいのかを常に意識してかかわる必要があります。

テキスト内重要事項

第1章 介護に関するからだのしくみ(こころとからだのしくみ1)

第1節 移動・移乗に関連するからだのしくみ

基本的な姿勢
姿勢は、臥位、座位、立位に分けられます。



基本的なからだのしくみ
・移動するためには、臥位から座位、立位と姿勢を変換していく必要があります。

・歩行は、立位姿勢を保ちつつ、両側の下肢を相互に軸足にしながら、反対側の下肢を前に振り出す動作です。

・車いすは、座位の姿勢で上肢や下肢の力を駆動力として利用し、移動するものです。したがって、自走で利用するには、安定した座位姿勢がとれること、車いすを駆動する力や関節の動きがあることが必要です。

第2節 食事に関連するからだのしくみ

基本的なからだのしくみ
・食事の動作には、先行期、準備期、口腔期、咽頭期、食道期といった段階があり、これを摂食嚥下の5期といいます。

・消化とは、取りこんだ食べ物を栄養をの状態で吸収することをいい、吸収とはこの栄養素を小腸の粘膜などから取り入れ、血液やリンパ液のなかに送りこむことをいいます。

栄養とエネルギー
・栄養素のなかで、たんぱく質、脂質、糖質(炭水化物)、ビタミン、ミネラルの5種類を5大栄養素といいます。 
 

代償的な栄養摂取法
・代償的な栄養摂取法は、機能障害、狭窄や炎症などで口から食べることが困難、あるいは不可能な場合に、必要な栄養や水分を取り入れるために実施されます。 

・経鼻経管栄養は、鼻から細い管を胃まで挿入し、流動食や水分を流入する方法です。

・経口栄養法、経管栄養法の適応がむずかしい場合は、抹消点滴、中心静脈栄養法といった注射による栄養・水分などの補給をおこないます。

第3節 入浴・清潔保持に関連するからだのしくみ

基本的なからだのしくみ
・皮膚は大きく分けて表皮と真皮、皮下組織から成り立っています。

・発汗は視聴下部にある体温調節中枢が、自律神経を介して汗腺に指令を出すことで起こります。汗が皮膚を濡らし、蒸発するときに体熱を放散し、体温を調節します。

・大量に発汗したときには脱水を避けるために水分を補いますが、失われているのは水分だけでないので、塩分や電解質も補給する必要があります。

・皮膚の汚れには、
①外部からつくよごれ、
②皮膚からのよごれ、
③頭皮からのよごれ、
④体内から排出されたものが付着することによるよごれがあります。


入浴と清潔保持の意味
・からだを清潔にするのは人間の基本的欲求の1つです。清潔にする方法として最も効果的なのが入浴です。

第4節 排泄に関連するからだのしくみ

基本的なからだのしくみ
・トイレに移動し、便座に座るなどの体勢になってはじめて、脳から排尿してもよいという指示がでます。それまで伸びていた膀胱は縮みはじめ、同時に尿道括約筋がゆるんで、尿は尿道を通って出ていきます。尿をためることを蓄尿、尿を出すことを尿排出といいます。

・トイレで排便の体勢がとれると、少しのいきみをきっかけに、内肛門括約筋と外肛門括約筋がゆるみ、直腸は収縮することによって、便を輩出します。これが便排出です。

・人工膀胱(尿路ストーマ)とは、尿管、膀胱、尿路の病気や、近くにある子宮や腸の病気の治療のために、使えなくなった尿管や膀胱の機能を代替するものをいいます。

・人工肛門(消化管ストーマ)とは、腸の病気や腸の近くにある臓器(膀胱や子宮など)の病気の治療のために、腸を腹部に固定する手術をして、そこから便を輩出するものをいいます。

第5節 着脱、整容、口腔清掃に関連するからだのしくみ

基本的なからだのしくみ
・頭髪には伸びるリズムである毛周期といわれるものがあります。人の毛は、1本1本がそれぞれの周期をもっているので、通常では一度に全部抜け落ちるようなことはありません。

・爪には、主に指先を外部から保護する、ゆびをさせる、手足の動きを助ける機能があります。この機能によって、人は物をつかみ、身体を支えることができています。

・口腔内には、歯や舌があります。口腔は食べ物を取り入れ、味わい、かみくだき、嚥下しやすくなるという働きがあるほか、呼吸器の一部にもなっている重要なからだの構造の1つです。

・口臭には、生理的なものや食べ物によるもの、疾患によるものなどがあります。


着脱、整容、口腔清掃の意味
・身じたくを整えるということは、その人なりの自己表現を維持することつながることであると理解することが重要です。その人らしい身じたくは、やる気や自信を生み、生活を活性化させるという効果につながります。

第6節 休息・睡眠に関連するからだのしくみ

基本的なからだのしくみ
・こころとからだには、休息が必要です。休息は、こころとからだの疲労を回復させて、もとの活力ある状態に戻すと同時に、リフレッシュすることで明日への活力を養います。

・睡眠は一時的に意識を低下させることで脳を休息させて、こころとからだを整備します。

・活動しているときは、交感神経がはたらき、心拍数が増加して、筋肉が緊張します。一方、リラックスしているときは、副交感神経がはたらき、心拍数が減少して、筋肉が緩み、からだを休ませます。この2つの神経の働きにより、自律神経のバランスが保たれています。


こころとからだのしくみ
・ストレスを感じたまま眠ると、良質な睡眠は得られません。寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなって何度も目が覚めたりするのは、ストレスが交感神経を刺激して、こころとからだが興奮している状態になっているからです。

第2章 心身の構造・機能と介護における観察のポイント(こころとからだのしくみ2)

第1節 人間の心理

人間の欲求の基本的理解
・生理的もしくは心理的不均衡が内部に生じ、それを回復するための行動に駆りたてる内的な動因を、要求または欲求と呼びます。


こころとからだのしくみの基礎
・学習とは「経験による比較的継続的な行動や認知の変化」と、心理学では定義されています。つまり、人間は学習を通じて行動を変化させることができるということです。

・記憶の過程は、
①外界の情報を入力し記銘する、
②記銘した情報を頭の中に保持する、
③保持した情報を必要に応じて想起するという段階をふみます。

・人は物事に注意を向けたり、言葉を記憶したり、状況を理解し判断するなどして自分の周囲の環境を認知しながら生活しています。

・人間の感情は、日常生活において、行動の原動力となり、行動を支配する重要な役割を果たしています。

・人の行動は、行動を起こす何らかの理由、必然性があって発生します。その何らかの理由により、「~したい」「~しよう」と思う気持ち(意欲)が行動に結びつきます。その行動を起こし、行い続ける過程ないし働きを動機づけといいます。

第2節 人体の構造と機能

生命の維持・恒常のしくみ
・体温は、一般的に腋窩ではかる場合が多いですが、ほかにも口腔(舌下)、直腸(肛門)、耳腔内でもはかることができます。

・呼吸数をはかるときは、手を利用者の胸、もしくはお腹の上に軽く置いて、1分間、その働きを数えます。

・脈拍をはかるときは、人差し指、中指、薬指の3本をそろえて、指の腹を動脈に当ててはかります。

・血圧は年齢、性別、時間差、運動、気温、食事、睡眠、感情の変化などによって測定値がかわります。また、体位によっても変動します。


人間の身体のしくみ
・人体の60%は水分で、そのほかは小さな細胞でできています。人体を構成する細胞の数は、40兆~70兆個といわれています。

・同じ形態もしくは類似した性質を持つ細胞同士が集まり、特定の役割を営むものとして組織があります。いくつかの組織が集まると気管を形成します。

・人体には、約200個の骨があるとされています。全身の骨は互いに結合して骨格をつくっています。

・骨と骨をつなぐ連結部分が関節です。関節には、可動性(動く)と支持性(支える)という2つの働きがあります。

・筋肉を収縮し、関節を屈曲や伸展させることでからだを動かしています。また、筋肉には呼吸運動や消化器官の蠕動運動などのはたらきもあります。

・人間の神経は中枢神経系と末梢神経系に分けられます。中枢神経系は脳と脊髄からなり、末梢神経系のはたらきを調節します。末梢神経系は刺激や興奮を伝える脳脊髄神経と自律神経に分けられます。

・感覚器には眼、耳、鼻、舌、皮膚に代表される、視覚器、聴覚、平衡感覚器、嗅覚器、味覚器、外皮があります。それぞれ外部からの刺激をうけとります。

・内分泌とは、導管を持たない分泌腺が分泌物を直接血液中に出すことをいいます。導管を持たない分泌腺を内分泌腺といい、そこでホルモンを分泌しています。
・心臓は上部の心房と下部の心室に分けられ、それそれ心房中隔、心室中隔によって左右かけられ、2心房、 2心室にからなります。

・血液は体重の7~8%を占めています。血液を構成する成分は、固形成分(赤血球、白血球、血小板)と体液成分(血漿)に分けられます。

・体の外から入ってくる病原微生物(細菌やウイルスなど)や体内で発症したがん細胞などを、異物として認識し、攻撃し排除するからだのはたらきを免疫といいます。


ボディメカニクスの活用
・ボディメカニクスとは、骨格や筋肉及び内臓器官などの相互関係で起こるからだの動きのメカニズムになります。

第3節 移動・移乗における観察のポイント

移動・移乗を阻害する要因の理解
・さまざまな原因により、物事に対する関心や何かに取り組む意欲が低下する場合があります。物事に対する関心や何かをやろうとする意欲は、人が移動するうえでの基礎になるものです。

・長期間の臥床や活動の低下にともなって2次的に生じる機能低下を廃用性症候群といいます。


変化に気づくための観察ポイント
・活動量の低下や、そのきざしにいち早く気づくことは、生活の不活性による機能低下を未然に防ぐことにつながります。

・動作の変化やからだの異常を把握することで、転倒を予防したり、動作の負担に気づき、いち早く対応できたりすることがあります。

第4節 食事における観察のポイント

変化に気づくための観察のポイント
・誤嚥が繰り返されると、誤嚥性肺炎を引き起こし、時に死にいたることがあります。

・義歯がゆるい場合や、大量の食事を一口でほおばる行動がみられる利用者には、十分に注意を払います。


医療職との連携のポイント
・治療食は、医師の指示により食洗が発行されています。また、薬剤を併用していることも多いので、利用者の状態を踏まえたうえで介助することが必要となります。

・疾患があったり、経管栄養を実施したりしている場合、合併症発祥のリスクが生じるので十分な観察が必要となります。

第5節 入浴・清潔保持における観察のポイント

入浴を阻害する要因の理解
・介護職は、高齢者に多い皮膚の変化と特徴を知り、入浴、清潔保持の介助方法に留意します。

・家庭内における不慮の事故死のなかでも、浴槽内の溺死、溺水は非常に多く発生します。部屋間の温度差、お湯の温度差には十分な注意が必要です。


変化に気づくために観察のポイント
・脱水傾向にある場合、水分の吸収時間を考慮し、入浴の30分ほど前に水分を摂っておきます。水分を失うとぼんやりとしてくるので、入浴中の表情にも気をつけます。

・脱衣所での衣服の着脱、浴室での座位、浴槽内での姿勢について、確認します。浴槽内でしっかりと座位姿勢が撮れていない場合、姿勢がくずれ、頭の重みで沈む場合があるので、注意が必要です。

第6節 排泄における観察のポイント

排泄を阻害する要因の理解
・筋力低下、運動麻痺、足腰の痛み、病気のために安静にしなければならいなどの理由から、1人で排泄行為を行うことが困難になることがあります。

・安易におむつを使用したり、できることを介助してしまうことは、利用者の残された能力をうばってしまうことにもなりかねません。

・「トイレが近い」状態を頻尿といいます。また、尿が漏れることを尿失禁、尿を出しにくいことを尿排出障害といいます。

・便秘とは、排便が順調に行われず、排便回数が少なくなり、便性が硬く、排便に苦痛をともなう状態です。その原因により機能性便秘と器質性便秘に分けられ、さらに細分されます。

第7節 着脱、整容、口腔清潔における観察のポイント

身じたくを阻害する要因の理解
・認知症のある人にパジャマから日常福に着替えてもらう、食後の歯磨きをしてもらうという、利用者がいつも行っている身じたくを介護職が介助することが、QOLの維持向上、健康の維持につながります。


変化に気づくための観察のポイント
・衣類着脱の介助は、利用者の全身を確認するうえで重要な機会となります。


医療職との連携のポイント
・高齢者にかゆみはつきものという考え方は、疥癬などの感染症を見逃すことにもなりかねません。全身の皮膚の状態をよく観察し医療職と連携することが重要になります。

・口臭や出血がある場合は、歯周病の可能性があります。日ごろからの歯磨きで改善できる場合と、できない場合があります。

第8節 休息・睡眠における観察のポイント

睡眠を阻害する要因の理解
・一般的に、年をとると必要な睡眠時間は短くなる傾向があります。高齢者の場合、運動量が低下してエネルギーの消費が少なくなるため必要な睡眠量も減量します。

・老化によりからだの予防能力が低下すると、不眠の原因になることもあります。

・身体疾患にともなうかゆみや痛み、呼吸困難があると、睡眠が妨害され、不眠をもたらすことがあります。

・睡眠と覚醒に関するさまざまな病気を睡眠障害と呼びます。睡眠障害の中で最も多いとされているのが、不眠症です。


変化に気づくための観察ポイント
・必要な睡眠が十分にとれているかどうかは、日中の眠気の有無で判断できます。実際の睡眠時間が短めでも、日中の眠気がなければ必要な睡眠がとれているといえるでしょう。

第9節 人生の最終段階のケアにおける観察のポイント

終末期の理解
尊厳を大切にしながら過ごすことの支援は、人生の中で大切にしてきたことや日々の生活でのこだわりなど、一人ひとりの価値観を知ることから始まります。週末ケアは、アセスメントを通した個別性の理解から始まるのです。

・人生の最終段階における医療、ケアの決定プロセスでは、状況の変化に伴い気持ちが揺れ動くことも想定して、話し合いはくり返し行われることが重要になります。


こころのしくみ
・人の価値観が多様であるように、死に対する考え方も人それぞれ異なります。死生観には物事の考え方や価値観が反映されます。


終末期から危篤状態の変化の特徴
・終末期の変化を早期に発見し、適切に対応するためには、最も身近な介護職が日々の状態を観察するとともに変化の状況を記録し、迅速に報告することが大切です。


死後の対応
・医師が死亡診断するまでは、死亡しているとは認められないため、死の徴候を観察したときは、すみやかに医師へ連絡する必要があります。


医師職との連携のポイント
・終末期の苦痛には、身体的苦痛だけでなく、精神的、社会的、霊的(スピリチュアル)な苦痛があります。


家族へのケア
・終末期の介護では、現状を受け入れられないまま本人と死別することのないように、家族の悲嘆へのケア(グリーフケア)も大切です。

・本人の自己決定をうながすことは、死ぬ瞬間まで人間としての尊厳を全うするための重要な視点といえます。

第3章 老化に伴うこころとからだの変化(発達と老化の理解1)

第1節 こころの変化と日常生活への影響

老化が及ぼす心理的影響
・「高齢者とは…」という一律な考え方はステレオタイプと呼ばれ、一人ひとりの号令者の個別的な心理的理解の妨げになる場合があります。

・同じ年齢であれば、だれでも同じように、老化による機能低下が生じていると考え、対応することは誤りです。

・社会からの老化に対する否定的な情報は、高齢者自身のイメージに対して否定的な影響を強めると考えられています。

・老年期の社会的関係の変化の特徴として、喪失体験があげられます。特に配偶者との人間関係が重要な位置づけとなっている場合に、その死別は残された高齢者に大きな影響を与えます。


自己概念と生きがい
・自己を実現したいということは、人間の欲求の特徴の1つであり、自己の才能、能力、可能性を十分にいかし、みずからを完成させ、なし得る最善を尽くそうとすることを求め間ます。それが生きがいにつながります。

・生活の全体像を考えるための1つの指標としてQOLがあります。QOLとは、ある個人の生活全体としての継続的な質の高さに着目する考え方です。

第2節 からだの変化と日常生活への影響

加齢にともなう身体機能の変化と日常生活への影響
・人の生理的な機能は、成長していく過程の中で、機能を最大限に発揮したあと、少しずつ低下していきます。これは、人が生きる過程においてほとんどすべての人にみられ、生理的老化と呼ばれています。


さまざまな機能の変化
・加齢にともなう身体機能の低下や病気、喪失体験などによるストレスが、高齢者の感染症やがんの罹患率を高める要因になっています。

・視力が低下することによって、近くのものがぼやけて見えるようになります。これを老視(老眼)といい、だれにでも訪れる老化現象です。

・唾液分泌量の減少も咀嚼に影響します。されには、食べ物をかみ砕くときに必要な咬筋力、唇や頬の筋力なども加齢とともに低下します。

・高齢者の場合、消化酵素が減少するために消化、吸収機能がおとろえます。また、胃壁の運動や長官の蠕動運動の低下も加わり、消化管内の食物停滞時間を延長させます。

・急に立ち上がったときの立ちくらみや、興奮して高くなった血圧も、若い人のようにすぐには戻りません。したがって、姿勢の変化時には起立性低血圧を起こしていないかを確認することが大切です。

・気管内は繊毛細胞と粘液が異物を外に排出する作用がありますが、高齢になると、その機能も低下し、咳嗽反射も低下するため、誤嚥しても吐き出せず、誤嚥性肺炎の危険性が増加します。

・加齢とともに筋線維の萎縮が進み、筋量に比例した筋力を発揮できなくなります。脚の伸展力は70歳では男女ともに20代の50%にまで減少します。

・高齢になると、骨をつくる骨芽細胞よりも骨を破壊する破骨細胞のはたらきが活発になり、骨密度(骨量)が低下します。その結果、海綿骨の中に空洞が増え、もろくなります。この状態を骨粗鬆症といいます。

・産熱と放熱のバランスが崩れることにより、熱中症の危険性が増します。発汗時には水分を十分にとることが必要です。

・一般的に新しいものを覚える能力、計算、暗記などの学習能力など、生まれながらに持っている流動性知能は加齢とともに低下するといわれています。一方で、判断力や理解力などの経験や学習で獲得された結晶性知能はほとんど変化しないといわれています。

第4章 老年期の発達、成熟と健康(発達と老化の理解2)

第1節 人間の成長・発達

発達の定義
・発達とは、年齢を重ねる中で心身に生じる変化と定義されます。

・一般的に、加齢に伴って生じる身体的、生理的変化(身長や体重の様に量的に増加する現象)を成長といい、成長が一定水準に到達することを成熟といいます。


発達段階と発達課題
・発達の過程において、発達現象や特徴を示す区切り(区分)を発達段階と呼びます。

・現在では、人間は一生涯発達しつづけるという生涯発達の考え方をもとに、誕生から死に至るまでの過程をいくつかに区分して、各段階における発達の特徴を理解する方法が広く支持されています。

・発達課題とは、それそれの発達段階において達成することが期待される課題をいいます。

第2節 老年期の発達・成熟と心理

老年期の定義
・人は法律などに規定されて高齢者となるばかりでなく、生物学的な身体機能の変化や、心理学的な変化も経験しながら、老年期という人生の中の1つの段階に到達します。老年期という発達段階は、心身の老化と社会的な役割の喪失への適応が課題となる段階であるといえるでしょう。


老年期の心理的改題と適応
・老年期における家庭内での役割の変化や、退職に代表される社会的な役割の喪失は、高齢者の存在感や生きがいの変化、喪失にもつながるといわれています。


要介護状態と高齢者の心理
・要介護状態にともなうADLの低下により、生理的欲求や安全欲求が充足されにくい状態になります。


・要介護状態は自律的な行動を制約することが多いため、人間関係や社会的活動が縮小しやすくなります。


不適応状態を緩和する心理
・欲求が充足されない状態(欲求不満の状態)が継続すると、心理的な不適応状態が生じやすくなります。それを緩和し、心理的適応(安心、満足など)を得るためのこころのはたらきのことを適応機制(防衛機制)といいます。

・無力感や依存心は、介護の工夫によって、できる限り防ぐ必要があります。

第3節 高齢者に多くみられる症状・疾病等

高齢者に多くみられる症状・訴えとその留意点
・腹痛の原因となる病気のうち高齢者で留意したいものは、腸閉塞(イレウス)、消化性潰瘍(胃潰瘍や十二指腸潰瘍)、大腸腫瘍の3つです。

・胸の痛みがあらわれた場合、まず疑うのは心臓や肺を流れている血管の病気です。そのなかでもっとも重要なのは、心筋梗塞、大動脈瘤乖離、肺梗塞(肺血栓、塞栓症)の3つです。

・高齢者では関節や骨の疼痛が問題になります。特に多い症状として、腰痛や膝の関節痛があります。

・体重減少や食欲不振があらわれる消化器疾患として、胃潰瘍、胆嚢がん、大腸がんの頻度が高いようです。

・浮腫(むくみ)があらわれる理由の1つに、血管のはたらきの弱まりがあります。

・慢性の咳の原因で最も多いのは閉塞性換気障害と言われる病態です。病名としては慢性気管支炎、または肺気腫のことで、この2つの病気を合わせて慢性閉塞性肺疾患(COPD)といいます。

・心不全を引き起こす病気で多い原因は虚血性心疾患と高血圧性心疾患です。

・呼吸不全の原因としてもっとも多いのは閉塞性換気障害を起こす慢性閉塞性肺疾患(COPD)です。在宅で酸素を吸入する在宅酸素療法(HOT)の主因です。

・高齢者が熱中症をおこしやすい身体面の原因は、発汗機能と口渇感覚の低下にあると考えられます。

・飲水量が少なかったり下痢などで水分が失われると脱水状態になります。乾燥による唾液の減少、口腔内や皮膚のかさつきは大事なサインです。また、尿量、尿回数の減少や尿の色が濃くなっている点にも注意が必要です。


介護を要する高齢者によくみられる病気・病態
・生活習慣病に含まれる疾患としては、運動・活動状態や食生活と密接な関連のある糖尿病、高血圧症、脂質異常症(高脂血症)、痛風(高尿酸血症)、アルコール性肝炎などが代表的なものです。

・生活習慣病のなかでも、がん(悪性新生物)、心疾患(心臓病)、脳血管疾患(脳血管障害、脳卒中)は日本の死因の上位を占めている病気です。

・介護保険制度において、40歳以上65歳未満の第2被保険者が要介護人知恵を受けるためには、要介護状態等の原因である身体上または精神上の障害が、介護保険法施行令で定める16の疾病(特定疾病)によることが要件とされています。

第5章 認知症の基礎的理解(認知症の理解1)

第1節 認知症ケアの理念と視点

認知症ケアを取り巻く状況
・施設における認知症ケアでも、在宅における認知症ケアでも、認知症の人が社会の一員として、地域社会とのかかわりを継続でき、地域社会の中で生きがいを感じられるように支援していくことが大切です。


認知ケアの理念
・認知症の人が人間らしい生き方をできるかどうかは、介護職やまわりの人たちがどれだけ認知症の人の尊厳を保っているかにかかっています。


認知症ケアの視点
・その人を中心としたケアとは、本人にできる限りの自由を保障することです。

・認知症の人にかかわるということは、その物語に参加することですが、その物語を勝手に書き換えることではありません。

・認知症の人とコミュニケーションをはかるときに大切なことは、本人が考え、思っている「現実」を否定するのではなく、それを認めて、共感的に受け入れることです。

第2節 認知症による生活障害、心理・行動の特徴

認知症ケアはなぜ「人」と「生活」に焦点をあてる必要があるのか
・認知症の人が自立した生活を継続するためには、認知機能の障害(一般的には、中核症状と呼ばれる)と「人」の両面を理解した支援が重要になります。


認知症の中核症状
・病気の進行にともなってあらわれる中核症状とBPSD(行動・心理状態)をしっかりと把握することで、目の前の認知症の人をよりよく理解することができます。


BPSD(行動・心理状態)
・初期の認知症の人の精神症状としてとくに注意しなければならないのが、不安感と焦燥感、抑うつ気分です。


意識障害の理解
・認知症ケアの現場でもっとも重視しなければならないのが、意識障害(混濁)です。認知症と意識障害は、本来まったく別のものですが、多くの場合で合併するために、BPSDを診ていくうえで、常に注意が必要になります。


生活障害の理解
・認知機能障害に関連して、生活するうえで今までできていたことができなくなる生活障害と呼ばれる状況も同時に起こります。生活障害は認知機能障害である記憶障害、実行機能障害、見当識障害に関係して引き起こされます。

第3節 認知症の人や家族へのかかわり・支援の基本

認知症に人にかかわる際の前提
・介護職は自分の特徴や傾向をしったうえで、他者とのかかわり方を調整していく必要があります。

・介護職は認知症の人の言っていることに耳を傾けて聴くことが大切です。

・介護職は認知症の人の穏やかな部分も、混乱している部分もすべてを受け入れることが大切です。

・介護職は認知症に人に対して非審判的態度をとることが大切です。

・介護職は認知症の人が大切にしている生活スタイルやこだわりなどを最大限に尊重することが大切です。


実際のかかわり方の基本
・認知症の人とのかかわりでは、相手の気持ちを読み取ることが大切です。


家族への支援
・ひとくくりに家族介護者としてとらえるのではなく、1人の人として、心理状態や今の家族状況によく耳を傾けいっしょに考えていく姿勢が必要です。

・認知症の人も家族も最もQOL(生活の質)が高くなる選択を支援することが、介護職による家族支援の基本姿勢として求められます。

・レスパイトケアとは、自宅で介護をする家族に、一時的な休息や息抜きを行う支援のことです。レスパイトケアが行われることで、介護職との関わりも増え、介護にかかわる助言を受ける機会も増加します。

・介護職は家族に対して具体的で実用的な、試すことができる助言を心がけます。

 

第6章 認知症の科学的理解と支援の実際(認知症の理解2)

第1節 医学的側面からみた認知症の理解

認知症とは
・認知症とは、成人になってから起こる認知機能の障害のために通常の生活に支障をきたした状態をいいます。

・認知症は、高齢になるにつれて出現率が増加します。

・健康な人が経験するもの忘れは、体験の一部を忘れるというものです。ところが、認知症にみられるもの忘れは、体験全体をすっかり忘れることが特徴です。

・認知症に似た症状を示すせん妄とは、意識障害に興奮状態が加わって落ち着かなくなり、さらに幻覚が起こる状態をいいます。


認知症の診断
・臨床の現場では、診断の効率化と客観化をはかるため、一定の設問項目から構成される評価スケールが用いられています。


認知症の原因疾患とその病態
・アルツハイマー型認知症では、発祥の時期は明確でなく、いつともなくもの忘れが始まり、ゆっくりと進行していきます。

・アルツハイマー型認知症の経過に起こる認知機能の低下は、決して直線的に低下するのではなく、ある時期では一時的な安定状態がみられます。

・65歳以前で発症した認知症を若年性認知症と呼んでいます。高齢発症の認知症と比較して遺伝的な要因の関連が多く、症状の進行が速い傾向があるといわれています。


認知症の治療と予防
・認知症の前段階と考えられる軽度認知障害(MCI)群を対象として、回想法や音楽療法など脳活性リハビリテーションといわれる具体的な試みがなされています。

第2節 認知症の人への支援の実際

認知症のアセスメント
・認知症ケアでは、認知症の人の行動を単に問題や症状ととらえる(評価的理解)のではなく、行動の背景を推測することで行動の意味をとらえ(分析的理解)認知症の人が自分の心配事や気がかりなことを理解しようとしていると理解すること(共感的理解)が重要です。


中核症状へのかかわり方の実際
・認知症の人は記憶が薄れていくことへの不安や焦りから、混乱し怒りの感情をあらわすこともあります。本人の訴えを受けとめ、安心してもらうことが大切です。


BPSD(行動・心理症状)へのかかわり方の実際
・安心できる環境であれば、認知症であっても、その人らしく生活を送ることができます。積雪な環境が提供されているか、健康状態は良好か、1人の人として尊厳ある介護が行われているか、介護職はこまめに立ちどまり振り返ります。


環境の整備
・環境には、その人がおかれている状況や物理的な環境、その人のまわりにいる人とのかかわり、介護サービスのあり方、そして過去から現在、未来までの時間などがあり、すべてが認知症の人に影響を与える要素になります。


認知症ケアにおけるチームアプローチ
・認知症ケアに関わる多職種の人たちが、支援目標を統一してかかわっていくためには、チームでアプローチすることが必要です。


認知症の人へのさまざまなアプローチ
・ユマニチュードは「基本の4つの柱」と「5つのステップ」によるケアを行うことによって、ケアを受ける人に「人間である」という意識・尊厳を回復してもらうことを目標と
しています。

地域生活の支援
・認知症の人や家族を支えるためには、介護保険や医療保険などにもとづいた公的サービスだけでなく、地域を基盤とする資源の創造、共有が求められています。また、認知症の本人や家族も単なる支援される対象ではなく、それぞれのもつ力が出せるようにするという視点も重要です。

第7章 障害の基礎的理解(障害の理解1)

第1節 障害者福祉の理念

国際障害者分類と国際生活機能分類
・2001年に、国際障害分類(ICIDH)に代わるものとして国際生活機能分類(ICF)が世界保健機関(WHO)により正式に決定されました。

・ICFでは、環境因子と個人因子をより重視した形で、「心身機能・身体構造」「活動」「参加」という3つの次元を提案し、それらが相互に影響しあうモデルが提案されています。

・1981年の国際障害者年以降、障害者運動による当事者主体、エンパワメント、自己選択と自己決定といった考え方が支援の中心的な位置を占めるようになってきました。


障害者福祉の基本理念
・WHOの定義によって、リハビリテーションは、理論的に、医学的リハビリテーション、社会的リハビリテーション、教育的リハビリテーション、職業的リハビリテーションの専門的な分野に明確に分類されました。

・障害者福祉におけるエンパワメントでは、病気や障害をかかえつつも利用者(障害者)の健康や強さ(ストレングス)の側面を重視する援助視点でとらえることが大切です。

第2節 障害による生活障害、心理・行動の特徴

身体障害による生活上の障害と心理・行動の特徴
・手引き歩行は、手引きする介護職と視覚障害のある人がいっしょに歩行する方法です。

・日常生活において、視覚障害のある人に対する介護は、身辺、家事、情報収集など、広範囲に及びます。

・聴覚障害のある人は、音声や周囲の物音が聞こえにくくなるだけでなく、音声が聞こえても何を言っているかわからない、音声を聞き誤るといったことが起こります。

・言語障害のある人は、家族や友人、仕事上の付き合いのある人とのコミュニケーションがむずかしく、発祥前の関係性を維持することに支障が出ることがあります。

・運動機能障害のある人のなかには、自信を失い、自分の持つ力に気づけていない人も多くいます。そのような場合、本人の持つ力や可能性に気づいてもらえるような視点からの支援が必要です。


知的障害による生活上の障害と心理・行動の特徴
・知的障害のある人には、知的機能の発達状態をふまえた支援を行うことと同時に、ライフステージに応じた生活体験ができるように支援することも重要です。


精神障害による生活上の障害と心理・行動の特徴
・精神障害のある人の生活上の困難には、疾患や能力障害のみならず、多様な要因が挿画に関連します。支援者は生活環境を調整しながら、生活の中で療養を助けていく視点を持つことが重要です。


高次脳機能障害による生活上の障害と心理・行動の特徴
・高次脳機能障害のある人には、症状を正しく理解するとともに、発症前の生活背景やどのような生活を望んでいるのかをふまえて、支援の目標を具体化していくことが重要です。


発達障害による生活上の障害と心理・行動の特徴
・安心した生活のためには、発達障害のある人を正しく理解し、彼らとの関係を調整したり、環境を整えるなどの適切な支援をしていくことが重要です。


難病による心理・行動の特徴
・難病のある人は症状が悪化したり、長期にわたって療養したりすることへの不安が生じやすくなります。身体的側面、心理的側面および生活面、それぞれの側面からアセスメントすることが必要です。

第3節 障害のある人や家族へのかかわり・支援の基本

家族の理解と障害の受容支援
・家族支援においては、家族介護の肩代わりをする支援だけではなく、家族自身の社会参加や自己実現に対する支援もあり、その延長線上に障害のある本人の生活の継続支援があるということに着目していく必要があります。

・障害の受容の主体は「障害のある人」が考えられていますが、価値観の転換を考えるならば、障害の受容の主体には家族や社会(環境)も含まれることが考えられます。


介護負担の軽減
・介護職は、障害のある人と家族の支援において、セルフヘルプグループの形成、発展を支えていくことを意識する必要があります。

第8章 障害の科学的理解と支援の実際(障害の理解2)

第1節 医学的側面からみた障害の理解

視覚障害
・視覚障害を引き起こす眼疾患のうち、白内障は水晶体が白く濁っている状態にあるもので、緑内障は何らかの原因で眼圧が上昇する病気です。


聴覚・言語障害
・聴覚障害は、音が伝わる経路のいずれかに障害が起きることで生じます。伝音性難聴になると、今まで聞こえていた音が、聞こえなくなったり、聞こえにくくなります(聴力レベルの低下)。感音性難聴になると、聴力レベルの低下を示すとともに、正確に聞き取る能力も低下します。

・言語障害では、言語機能レベルの障害として、言語発達障害や失語症があげられます。失語症とは、大脳の言語の理解と表現にかかわる部位が障害をうけることで、いったん獲得されてた言語機能に障害が生じた状態をさします。


運動機能障害
・肢体不自由とは、上肢や下肢、体幹の継続的な運動機能障害を指し、その程度は身体障害者福祉法などに規定されています。


心臓機能障害
・心臓機能障害にはいくつかの原因があります。日常よく遭遇する疾患には、虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)と心不全があります。


呼吸器機能障害
・呼吸器機能障害のおもな症状は、呼吸困難感、咳、痰の増加、喘鳴などがあります。治療法として、薬物療法、酸素療法、気管切開による気道確保、人工呼吸療法などがあります。


膀胱・直腸機能障害
・ストーマとは、手術でつくる排泄口です。がんの切除後や外傷により、本来の排泄口から排泄できない場合に、腹部から直接排泄します。尿路ストーマと消化管ストーマがあります。


小腸機能障害
・小腸機能障害は、小腸が疾病の治療のために広く切除されたり、疾患そのものによって消化吸収がさまたげられ、必要な栄養維持が困難になり、日常生活に支障をきたした状態です。栄養維持のための手段として中心静脈栄養法や経管栄養法が行われています。


肝機能障害
・肝臓機能障害は、ウイルス性肝炎、自己免疫性肝炎などによって、肝機能の低下が起こり、日常生活に支障をきたした状態です。


知的障害
・知的障害の原因は多岐にわたっており、
①生物医学的要因、
②社会的要因、
③行動的要因、
④教育的要因があげられています。


精神障害
・精神障害(疾患)のうち、総合失調症は、発症後の経過や病気のタイプにより多様で個別的な症状を引き起こし、再発や安定の波をくり返すことがあります。また、気分障害は、生活環境上の変化やストレスが発症の契機となることが多いとされています。


高次脳機能障害
・高次脳機能障害が生じる原因には、脳の血管の異常によって生じる脳血管障害(脳卒中)が最も多く、背景に生活習慣病がある場合もあります。


難病
・難病の定義は「発病の機構が明らかでなく、かつ、治療方法が確立していない希少な疾病であって、当該疾病にかかわるkとにより長期にわたり療養を必要とすることとなるもの」と規定されています。

第2節 障害の特性に応じた支援の実際

アセスメントの視点と個別支援
・同じ障害がある利用者に対して、介護職はアセスメントをしっかりと行い、個別支援をする必要性があります。


障害のある人がふつうに暮らせる地域づくり
・障害がある人がふつうにくらせる地域づくりを進めるために、介護職は専門職としての立場だけではなく、地域住民の1人としての取り組みも求められています。


地域におけるサポート体制
・行政に代わってアウトリーチを中心に生活実態の把握と課題調理を実施しているのが、相談支援専門員と呼ばれる障害分野の相談支援事業者です。

・支援機関がチームを組むことで、支援の継続性と連続性が生まれ、切れ目のない支援体制が構築されることになります。このチームアプローチを生み出しているのが個別の支援会議といえます。

・2012(平成24)年に施行された障害者自立支援法改正において、サービス等利用計画対象者の拡大、支給決定プロセスの見直し、基幹相談支援センターの設置等がうたわれ、相談支援事業の役割も細分化されました。

テキスト内重要事項

第1章 医療的ケア実施の基礎

第1節 医療的ケア

喀痰吸引制度(社会福祉士及び介護福祉士法の改正)
・介護福祉士等が実施可能となった行為の範囲は「喀痰吸引その他の身体上又は精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者が日常生活を営むのに必要な行為であって、医師の指示の下に行われるもの(厚生労働省令で定めるものに限る。)」です。

・医師の指示のもとに行われる行為は、
①口腔内の喀痰吸引、
②鼻腔内喀痰吸引、
③気管カニューレ内部の喀痰吸引、
④胃ろうまたは腸ろうによる経管栄養、
⑤鼻腔経管栄養です。

・喀痰吸引については、咽頭の手前までを限度とするとされています。

・胃ろうまたは腸ろうによる経管栄養の実施の際には、胃ろう・腸ろうの状態に問題がないことの確認を医師または看護職(保健師、助産師、看護師および准看護師)がおこないます。

・経鼻経管栄養の実施の際には、栄養チューブが正確に胃の中に挿入されていることの確認を医師または看護職(保健師、助産師、看護師および准看護師)がおこないます。


医行為について
・「喀痰吸引」と「経過寧要」は医行為の範囲内に含められます。

・医行為は、「医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為」「医師の医学的判断および技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、または危害を及ぼす恐れのある行為」とされています。

・医療をになう医師、看護師等は、免許を持っているだけではなく、利用者が自身の生命や健康をかけて信頼していることに対して謙虚にこたえなくてはなりません。

・自立した生活のためには、自分にかかわる事柄については、自分で決定できること(自己決定)が必要です。

・個人情報とは、生存する個人に関する情報であって、氏名、生年月日等により特定の個人(本人)を識別できるものです。

・インフォームド・コンセントとは、治療等を受ける本人が、その説明を理解したうえで、同意することをいいます。

・自分の能力をできるだけ発揮して自分らしく生きることを自立した生活ということができます。

・すべての人が、それぞれに「自立した生活」を営むことにかけがいのない価値を等しく認め、一人ひとりのあり方を尊重しようという考え方を個人の尊厳といいます。

・医療法は医療を提供する理念として、「医療は、生命の尊厳と個人の尊厳の保持」を旨として行われるべきであると定めています。

第2節 安全な療養生活

喀痰吸引や経管栄養の安全な実施
・リスクマネジメントとは、リスクを回避すること、あるいは起こり得る結果を最小に抑えることであり、予防対策と事故対策について対策を立てておき、確実に実行できるようにします。

・ヒヤリハットとは、アクシデント(事故)にはいたっていないが、事故寸前の危険な状況で、ヒヤリとしたこと、ハッとしたことなどをさします。

・アクシデントとは、利用者の身体上の損傷の程度が大きく、濃厚な治療を要する場合などをさし、利用者に対する大きな影響があります。

・利用者の状態や 機器等の状況が「いつもと違う」と気付いた時点で、迅速に医師や看護職に連絡・報告して、医師・看護職とともに確認することが必要です。


救急蘇生
・救急蘇生は病気やけがにより、突然に心停止、もしくはこれに近い状態になったときに胸骨圧迫や人工呼吸を行うことにより急変した人の命を守り救うための必要な知識と手技のことです。

・応急手当の目的は、「救命」「悪化防止」「苦痛の軽減」です。

・急変した人を救命し、社会復帰をさせるために必要となる一連の行いを救命の連鎖(チェーン・オブ・サバイバル)といいます。

・「生命の連鎖」を構成する4つの輪とは、心停止の予防、心停止の早期認識と通報、一次救命処置(心肺蘇生とAED)、救急救命士や医師による高度な救命医療を意味する二次救命処置と心拍再開後の集中治療です。

・気道の確保とは、口・花から吸入された空気が気道を通っては今ではいる道を確保することです。

・心室細動の際に機器が自動的に解析を行い、必要に応じて電気的なショック(除細動)を与え、心臓の働きを戻すことを試みる医療機器のことをAED(Automated External Defibrillator;自動体外式除細動器)といいます。

第3節 清潔保持と感染予防

感染予防
・感染とは、病気のもとになる細菌やウイルスが人の体の中に入り込んで、そこで増え続けることをいいます。

・①感染源、
②生体の防御機構(人間がもつ病気を防ぐはたらき)の低下、
③感染経路がそろうことで感染が起きます。

・手洗いは「1つののケアごと」に「ケアの前後」に行います。


介護職の感染予防
・使い捨て手袋は1回のケアごとに交換することを徹底し、同じ利用者のケアであっても、ケア実施後には使い捨て手袋を外して手洗いを行い、新しい使い捨て手袋を使用して別のケアを行います。


療養環境の清潔、消毒法
・医療廃棄物とは、医療行為の際に使用したあとの注射器や針、ガーゼや脱脂綿、中―部類などのことです。


消毒と減菌
・消毒とは、病原性の微生物を死滅させること、または弱くすることです。

・減菌とは、すべての微生物を死滅させること、また除去することです。

・滅菌物を使用する前には、
①滅菌済みの表示、
②滅菌物の有効期限(使用期限)、
③開封していないことを確認します。

・次亜塩素酸ナトリウムは、汚染したリネン類の洗浄や食器類の洗浄消毒に有効です。家庭用に販売されている液体の塩素系漂白剤、殺菌剤(洗濯用、キッチン用、哺乳びんの殺菌用など)などに使用されています。

・アルコールは、皮膚消毒としても一般的で、70%の消毒用エタノールを使用します。部屋のドアノブ、吸引等のケアに必要な物品を並べる大頭の清掃にも有効です。

・塩化ベンザルコニウムや塩化ベンゼトニウムは、速乾性の手指消毒液として使われており、器材の消毒等でも利用します。

第4節 健康状態の把握

健康状態を知る項目(バイタルサインなど)
・観察では、測定器具を使わなくても、その人と話をする、外観や行動をよくみるだけでも、多くの情報を得ることができます。

・バイタルサイン(vital signs)は「生命(vital)徴候(signs)」のことをいい、異常の早期発見のための重要な観察項目であり、一般的には体温、脈拍、呼吸、血圧をさし、場合によっては意識の状態も含めます。

・正常体温(腋窩体温)は成人で36.0~37.0℃未満です。体温は基礎代謝の影響を受け、乳幼児では高く、高齢者では低めになります。また、外気温にも影響を受け、午後2~6時がもっとも高くなり、運動や食事、精神的興奮によって上昇する傾向にあります。

・心臓の収縮により血液が動脈に送りだされ、体表近くの血管壁がその弾性によって拍動し、脈拍として触れることができます。性状は成人で1分間に60~80回程度ですが、運動や入浴、食事のあとには増加するので注意が必要です。

・呼吸とは、肺において酸素を取り入れ、二酸化炭素を排出するはたらきであり、外呼吸(肺呼吸)と内呼吸(組織呼吸)からなります。1分間に12~18回程度の規則的な呼吸が正常の目安とされています。

・血圧とは、心臓が全身に血液を送り出すときに動脈壁を押し出す圧力のことです。血圧には個人差や1日のなかでの変動があり、その人の正常値を知ることが何より重要です。
1つの基礎として、WHO/交際高血圧学会ガイドラインでは、収縮期(最大)血圧が120~129㎜Hgかつ拡張期(最小)血圧が80~84㎜Hgを正常血圧、収縮期血圧が120㎜Hg未満かつ拡張期血圧が80㎜Hg未満を至適血圧、収縮期血圧が140㎜Hg以上または拡張期血圧が90㎜Hg以上を高血圧としています。

急変状態について
・急変状態とは、急激に意識の状態が悪くなる、呼吸が浅くなる、脈拍が弱くなる、それまでにない強い痛みを訴える、苦痛の表情が強くなるなど、通常の介護では対応しきれない状態で、救急車、もしくは医師や看護職にすぐに連絡をしなければならないうようなものをさします。

第2章 喀痰吸引(基礎的知識・実施手順)

第1節 高齢者および障害児・者の喀痰吸引概論

高齢者および障害児・者の喀痰吸引概論
・空気を吸うと、空気は、口・鼻→咽頭→喉頭→気管→肺(気管支→肺胞)の順番で取り込まれ、肺胞から血液中に入ります。

・空気の出し入れによって体内への酸素の取り込みと二酸化炭素の体外への吐き出しをするはたらきを喚起といいます。

・呼吸状態については、呼吸の回数が増えたり減ったりしていないか、呼吸の音の異常を感じるか、呼吸の仕方はおかしくないか、苦しさを感じていないかを観察します。
・呼吸の回数は、正常の場合、成人は1分間に約12~18回程度、乳児では約30回/分、5歳児では約25回/分といわれています。

・正常な呼吸の音は、スース―といった空気の通るかすかな音が聞こえる程度です。空気の通り道である口・鼻・咽頭・喉頭・気管・気管支などで、空気のとおりが悪くなった場合に、呼吸の音が変化します。

・正常な呼吸の仕方は、安静時には胸部や腹部が、呼吸に合わせて比較的一定のリズムでふくらんだり縮んだりします。このリズムが速くなったり、呼吸の間隔が不規則に長くなったり短くなったりする場合は、体内の酸素が非常に不足してきた状態を示している可能性があります。

・ちりや異物をとらえた余剰な分泌物を痰といいます。

・痰が貯留して空気の通り道をふさいでいる状態を気道閉塞といいます。

・喀痰吸引は、吸引機につないだ管(吸引チューブ)を口や鼻から挿入して、痰を吸い出します。口の中から管を挿入する場合を口腔内吸引、鼻の穴から挿入する場合を鼻腔内吸引といいます。

・喀痰吸引が必要な状態とは、痰が増加している城代、痰がかたくなり、排出しにくい状態をいいます。

・何らかの理由で換気が十分にできなくなった状態の人に対して、人工的に換気を補助するために人工呼吸器を装着します。

・長期間、人工呼吸器を装着する場合には、手術により気管に穴をあけて気管カニューレを挿入し、人工呼吸器を装着します。

・人工呼吸器を装着して呼吸の維持・改善をする治療を人工呼吸療法といいます。気管に空気を出入りさせる穴をあけて(気管切開)、チューブ(気管カニューレ)を挿入し、そこからホース(蛇管)を通して空気を送り込む侵襲的な人工呼吸法と、口・鼻又は鼻のみをマスクでおおい、そのマスクを通して空気を送り込む非侵襲的な人工呼吸方法があります。

・気管カニューレ内部の吸引とは、気管カニューレからはみ出さない深さまでの吸引をいいます。

・子どもにとって吸引は、吸引チューブの挿入の際の違和感や、機械、吸引時の音の大きさなど、恐怖と苦痛をともなう処置であるといえます。事前に子どもの理解力に応じた説明を行い、心理的準備(プレパレーション)が行えるように援助します。

・苦痛をともなったりする「吸引」に対する利用者の気持ちは、療養生活の中で日々変化します。利用者の気持ちを受けとめるとともに、その変化にも留意しながら接しましょう。

・療養経過にそって家族の気持ちを把握し、その思いを関係職種間で共有できるように、適宜、情報を提供していくことが望まれます。

・本来、気管に入らないはずの食べ物が気管に入り込み(誤嚥)、その食べ物から細菌による炎症(誤嚥性肺炎)を起こすこともあります。

・利用者に起こり得る危険な状態としては、呼吸状態が悪くなる、顔色が悪くなる、嘔吐する、出血するなどがあります。

・緊急を要する状態であると気づいた時の報告相手や報告内容については、事前に緊急時対応のマニュアルとして利用者・家族・医師・看護職と共有しておきます。医師・看護職との報告内容は、「いつ・どこで・だれがまたは何が・どのように・どうしたか・どうなったか」を明確に伝えます。

・呼吸状態や顔色が悪くなった場合、嘔吐がみられたり、痰の色が赤く出血が疑われたりするばあいには、吸引をただちに中止します。

第2節 高齢者及び障碍児・者の喀痰吸引実施手順解説

高齢者および障害児・者の喀痰吸引手順解説
・吸引機は、掃除機のような機械です。痰などを口腔内・鼻腔内、気管カニューレ内部から吸い出します。吸引機の内部、つまり吸引瓶や接続チューブのは陰圧になっているので痰を吸い出し、吸引機の中に吸い込むことができます。


・吸引器については、接続部位がしっかりと接続されているかどうか、ホースや吸引瓶に穴があくなどしていないかどうか確かめることが大切です。

・吸引チューブの清潔保持方法には、消毒液の中に保管する浸漬法と、消毒液を用いないで保管する乾燥法とがあります。

・喀痰吸引は、利用者から要請に応じて必要になり実施する場合と、看護職らによって必要な状態と判断されて実施する場合とがあります。

・吸引が必要な状態を判断するにあたっては、口腔内の状態に加え、全身状態も観察しておく必要があります。一人ひとりの利用者の状態や前後のケア(食後・体位変換後や入浴前後など)の状況によって、吸引の必要性は異なりますので、事前に看護職に確認をしておく必要があります。

・吸引を行うごとに観察を行い、普段と変わりないことを確認することが大切です。口腔内の状況は、朝など定期的に、看護職が観察し、異常がないことを確認していますが、吸引の実施前には再度、実施者の目で観察することが重要です。普段と違うこと、気になることなどの異常を発見したら、速やかに看護職に連絡・報告します。

・鼻腔内吸引の場合には、ベッドは水平から10~15度程度挙上させた状態が吸引チューブを挿入しやすいといわれています。また、利用者に顎を少し上げてもらうと、吸引ty-部がスムーズに進みやすいでしょう。

・気管カニューレ内部の吸引の場合は、気管カニューレ部分が見えやすく清潔にチューブが挿入でき、利用者の安楽が保てる角度にベッド挙上を調節します。

・「吸引実施準備」として、①医師の指示書、看護職の指示、引継ぎ事項の確認、②手洗い、手指消毒、③必要物品の確認と設置があります。

・吸引実施前には、必ず、医師の指示、ならびに看護職からの吸引に関する指示・引継ぎ事項を確認します。

・吸引前の留意点として、①説明と環境整備、姿勢と整える、②利用者の状態観察があげられます。

・吸引の手順における注意点は、清潔の保持です。順番を間違えると、消毒液や保管駅すべてが汚染されることになります。吸引中に注意すべきことは、吸引の時間・挿入の深さ・吸引圧です。医師の指示書に記載されている時間で、決められた挿入位置とします。特に口腔内・鼻腔内は、咽頭手前までとし、原則、病原性の微生物はいない下気道に分泌物を落としこまないように注意しましょう。

・吸引実施にともなう利用者の身体変化(バイタルサイン・呼吸状態・顔色など)として
①呼吸状態、全身状態、吸引による弊害・貯留物残留の有無の確認、
②パルスオキシメーターによる酸素飽和濃度の確認、
③経鼻経管栄養チューブの確認、
④人工呼吸器回路、口鼻マスクの確認を行い、入り・看護職へ報告します。


・吸引実施後には、痰の色、粘性、臭いを毎回確認します。

・吸引実施中・実施後の利用者の状態や、吸引したものの量、性状等については、異常の有無にかかわらず、看護職に日常的に報告して、連携をはかります。

・一連の吸引が終了したら、吸引必要物品は、次の使用に備え、清潔に保管します。洗浄用の水(水道水、滅菌精製水)、浸漬用消毒液、吸引チューブは、使用頻度などを考慮して定期的に排液を捨てて、洗剤で洗浄して流水でよく洗い流します。

・物品の後片付けにあたっては、日常的に使用しやすいように配置し、機材等は、事故予防や故障予防のためできる限り速やかに点検し片付けます。

・痰を出しやすくするには、①重力、②痰の粘性、③空気の量と速さが大切と言われています。

・体内の水分が不足している状態では、気道粘膜も同様で、痰も硬く、繊毛運動機能がはたらかないことになります。身体全体の水分バランスを整える健康管理が必要になります。気管切開をしている場合は、口や鼻の加湿機構があろ、ありませんので、気道に適切な加湿が必要となります。

・喀痰吸引が必要な人の場合には、仰向けのままで長時間寝ていると、背側の肺の奥に、痰が溜まってしまいます。重力を利用した痰を出しやすくする姿勢(体位ドレナージ)をとることで、少しでも痰を出しやすくします。具体的には、痰が溜まっているほうを上にした姿勢をとります。

・吸引の実施前後に利用者の状態が変化していると感じた場合、速やかに医師及び看護職へ報告する必要があります。①利用者の吸引前の状態と吸引後の変化、②顔色、呼吸状態、はなじや口腔内への血液等の流れこみの有無等、③いつもと違う、何かが変というときには、医師・看護職に報告します。

・あらかじめチーム内で綿密な打ち合わせを指定し・看護職や家族と情報を共有し、在宅の場合はすぐに電話ができるように、連絡票の場所や内容を必ず確認します。

・記録のポイントは「いつ? どこで? だれが? どのように? どうしたか? どうなったか?」について、主観を交えず客観的事実を誰が読んでも同じ場面・状態をイメージできるように書き、他者へ伝えることです。
 

第3章 経管栄養(基礎的知識・実施手順)

第1節 高齢者および障害児・者の経管栄養概論

高齢者及び障害児・者の経管栄養概論
・消化器系は、体内に栄養や水分を取り入れるために、食物を機械的かつ科学的に分解(消化)し、栄養や水分を吸収し、残渣物の排泄をになう器官の集まりです。

・食物を食べて飲みこむことを嚥下といい、
①嚥下は食物の認識、口への取りこみ、
②咀嚼・食塊形成、
③咽頭への送りこみ、
④咽頭通過、気道通過といったプロセスを経て行われます。

・口腔には上下の顎骨。頬、舌、歯、その周辺の粘膜、筋肉が含まれます。

・咽頭は、口腔と食道の中間の部分で、食物の経路であり、鼻腔から喉頭への空気の通り道として気道の一部でもあります。

・食堂や約25cmほどの長さの管状の気管です。3ヶ所の生理的狭窄部があり、食道がよくつまるのはこれらの箇所です。

・胃は食物を蠕動運動によって胃液と混ぜ合わせながら消化しかゆ上に変化させます。消化した食物は、通常食後3~6時間で十二指腸へ移送されますが、炭水化物が最も速く、次いでたんぱく質食、脂肪食の順で長くなります。

・小腸は、胃の幽門に続く長く6~7、の管状の器官で、十二指腸・空腸・回腸に区別されます。消化と吸収にかかわるもっとも重要な部分です。

・肝臓は1日に約500~1000mlの短銃を分泌して、消化を助けるはたらきをするほか、胃や腸から戻ってくる血液中に含まれている栄養の処理、貯蔵、中毒性物質の解毒、分解、排泄、血液性状の調節身体防衛作用などのはたらきをしています。

・胆嚢は、肝臓で分泌される胆汁を濃縮してためておきます。十二指腸に胃内容物が到着すると排出されます。胆汁の役割は、脂肪の消化吸収を間接的にうながすことです。

・膵臓には2つのはたらきがあり、1つは食物の消化を促す膵液を分泌することです。もう1つは血液中のブドウ糖の(血糖値)を調節するホルモンを分泌することです。ランゲルハンス島とよばれる内分泌細胞からインスリンとグルカゴンというホルモンが分泌されます。

・大腸は、小腸から吸収された残り物から、前半部で水分および電解質を吸収して糞便を形成し、後半部で蓄積、排便します。

・げっぷとは、胃内のガスが食道を逆流して口から吐き出されることです(別名:おくび)。胃内にガスが貯留した状態で体位を変えるなどすると、げっぷとともに胃の内容物の逆流(嘔吐)が起こることがあります。経管栄養を注入後は、しばらく上体を起こしておく、背部を軽くたたくなどして、ガスの排出をうながすようなケアが必要です。

・しゃっくりとは、胃底部の膨満や冷たいものを飲みこんだ際に、横隔膜が刺激されて起こる現象です。経管栄養注入の刺激で起こることがあります。

・胸やけとは、前胸部から胃部に残るジリジリと焼けるような不快な感じのことです。脂肪や炭水化物を多量に摂取したときや、胃酸が食道に逆流して起こります。経管栄養を実施する際は、上体を起こす等の姿勢を整え、逆流を防止する工夫が必要です。

・嘔気は胃の内容物を吐き出したいといおう切迫した不快感、いわゆる吐き気です。嘔吐は胃の内容物が実際に吐き出されることです。経管栄養時に嘔気・嘔吐がみられた場合は、ただちに注入を中止し、窒息や誤嚥の防止に努め看護職にすみやかに連絡する必要があります。

・下痢とは、糞便の水分量が増して、液状の糞便を排泄することです。腸蠕動の亢進、腸の水分吸収力の低下や懲役の分泌亢進などで起こります。

・便秘とは、排便の回数が少ない、便の量自体の減少、水分が少なくかたい便、排便困難、残便感や腹部が張った感じ等の状態の組合せであり、自然な排便のリズムが乱れ、便が長時間町内にとどまり、不快に感じる状態です。経管栄養時にみられる便秘の原因として、水分不足、食物繊維不足、運動不足、腸蠕動機能の低下などがあげられます。

・経管栄養とは、口から食事を摂ることができないあるいは摂取が不十分な人の消化器官内にチューブを挿入して栄養剤(流動食)を注入し、栄養状態の維持・改善をはかる方法です。

・嚥下障害が起こると必要な栄養や水分の摂取不足が生じます。嚥下反射の低下により、食物や口内残渣物、唾液等が気道へ流入し、誤嚥性肺炎を引き起こすことも問題になります。

・胃ろう経管栄養は、手術(内視鏡)により腹壁から空腸にろう孔を造設し、チューブを留置して栄養剤を注入します。

・腸ろう経管栄養には、手術(内視鏡)により腹壁から空腸にろう孔を造設し、チューブを留置して栄養剤を注入する方法や、造設した胃ろうからカテーテルを通し、その先端を十二指腸または空腸に留置し栄養剤を注入する方法があります。

・経鼻経管栄養は、左右どちらか一方の鼻腔から咽頭、食道を経ていないにチューブを挿入留置して、栄養剤を注入します(十二指腸または空腸内に留置する場合もあります)。

・半固形化栄養剤は、胃ろうまたは腸ろうによる経管栄養で用いられます。

・経管栄養による下痢の原因には、注入速度、経管栄養剤の濃度、不潔な操作等があります。

・経過栄養チューブ挿入部のスキントラブルは、QOLを損ねる大きな要因になります。起きやすいスキントラブルは、栄養チューブがあたっている部分にびらんや潰瘍が生じることです。

・子どもの経鼻経管栄養は、消化管の消化、吸収能力は保たれているものの、経口摂取が困難である場合や経口摂取では十分な栄養摂取が困難な場合、あるいは経口摂取では誤嚥の危険げある場合、食欲不振や術後のために経口摂取をいやがる場合に用いられます。

・子どもの経鼻経管栄養は、胃食道逆流現象(胃の内容物が食道に戻ってくる現象)などにより、嘔吐しやすい状態であったり、誤嚥性肺炎がくり返し起こったりする場合に用いられます。

・子どもの経管栄養で使用するチューブは子どもの成長段階や体型によりサイズの違いがあり、医師によって決定されたものを使用します。子どもの皮膚はデリケートであることから、子どもによって使用するテープの種類や幅に違いがあります。また、子どもは、無意識に手を顔にもっていくことがあるため、耳の後ろにかけて固定するなど固定方法にも違いがあります。

・経管栄養を行っている人は、一般的に免疫力や体力が低下していることが多く、簡単に感染してしまうことがあり、清潔や衛生面には十分な注意が必要です。

・経管栄養を実施している利用者の人生観や家族の意向を尊重しながら細心の注意を払って経管栄養を行う必要があります。

・経管栄養を実施している利用者の場合では、口腔から何も摂取されていないときがあります。口腔内の清潔ケアは、利用者の感染予防のみならず、爽快感を与えることに重要な役割を果たします。食事を摂っていなくても、しっかりと行うことが大切です。

・利用者と家族に接するときには、利用者の人生観や家族の意向を尊重しながら細心の注意を払って経管栄養を行う必要があります。

・経管栄養の実施に際しては、注入後しばらく半座位を保つことが必要です。姿勢に対する苦痛、意識や呼吸状態の変化、腹部膨満感や腹痛・嘔気・嘔吐などがないかを確認します。

・経管栄養時に想定されるトラブルは、経管栄養チューブの抜去、経管栄養チューブからの出血や嘔吐、利用者の状態のいちじるしい変化などがあります。

・医師、看護職へ報告するときには、「いつ・どこで・誰がまたは何が・どのように・どうしたか・どうなったか」を明確に伝えます。必ず利用者の状態の変化を報告します。

・事前に緊急時の連絡先について連絡網を用意して、関係者・医師・看護職と共有しておき、誰が何を報告すべきか整理しておきます。

第2節 高齢者および障害児・者の経管栄養実施手順解説

高齢者および障害児・者の経管栄養実施手順解説
・経管栄養の必要物品を清潔保持するために、栄養剤の注入終了時には毎回、使った物品は洗浄と消毒を実施します。

・経管栄養の実施にあたっては、医師の判断により、利用者の状態に応じて看護職が実施した方がよい場合や、看護職といっしょに実施するなど必要な指示を確認します。

・栄養剤は、原則として常温保管ですが、ミキサー食や半固形栄養剤を自宅や施設で作成した場合などは、新鮮な状態で保存できるように注意します。

・経管栄養の実施にあたっては、利用者のその日の状態を観察します。バイタルサインの状態、排便の状況、排尿の状況、意識状態、腹部の針や違和感について、利用者と会話をしながら、いつもと違う腹部の状態がないか確認し、利用者の訴えを聴きます。異常な状態があった場合は、医師または看護職に相談します。

・胃ろう(腸ろう)経管栄誉の場合は、ろう孔周囲の状態や挿入されている胃ろう(腸ろう)栄養チューブの抜け、固定状態の異常などがあれば、看護職に相談します。

・経鼻経管栄養の場合は、利用者に挿入されている経鼻経管栄養チューブの位置を確認し、経管栄養チューブの抜けや口腔内での停留、蛇行、利用者からの咽頭の違和感などの異常状態があれば、看護職に相談します。

・経管栄養を実施する際は、イリゲーターに日光があたらないように、ベッドの位置調整や遮光を行います。

・経管栄養の実施にあたっては、点滴スタンド等の高さを、原則として胃部から液面まで50cm程度上から滴下できるように調整し、周囲の環境を整えます。

・腹部の膨満感や張り、胃部のむかつきの有無などを利用者に確認し、いつもと違う状況が確認された場合は、医師・看護職に連絡します。

・経管栄養の実施にあたっては、注入した栄養剤が逆流し、肺に流れこむことが無いよう、医師・看護職の指示に従って、半座位の姿勢に体位を整えます。

・経管栄養の実施にあたっては、必要以上に肌の露出がないようにスクリーンやカーテンで利用者のプライバシーの保護に努めます。

・経鼻経管栄養では、看護職が、挿入されている栄養チューブが胃に到達しているか確認します。

・クレンメを開きながら、指示通りの滴下数に合わせるため、栄養点滴チューブの点滴筒の滴下と時計を見ながら、1分間の滴下数を合わせます。注入速度が速いと、下痢や急速な高血糖症状を引き起こすことがあります。一方、注入速度が遅いと利用者の拘束時間が長くなり、活動が制限されてしまいます。看護職に確認して調整します。

・注入中、注入直後は、利用者の表情や状態の変化を観察します。痰のからみが強い場合や、陶器や嘔吐がある場合は、注入を一時中止して様子をみます。むせ込み、嘔気・嘔吐が出現した場合は、医師・看護職に連絡します。

・注入後は、腹鳴(お腹が鳴る)の違和感や、腹部の膨満感を訴える場合があります。医師・看護職にそうだんします。

・注入中の利用者に変化がる場合は、いったん注入を止め、医師・看護職に連絡します。

・嘔吐や食道への逆流を防止するため、注入終了後も、上半身を起こした状態を30分から1時間は保ちます。

・注入後は、利用者の呼吸状態や体温などの変化を観察し、異常な状況があれば意思・看護職に連絡します。

・口腔内のケアは消化器感染症を予防することになります。毎回の食後の口腔内清掃は、利用者にとって爽快感を促すことになります。また食物残渣の有無を確認するタイミングとしても重要です。

・胃ろう(腸ろう)栄養チューブは、1日に2~3回、回転させ、癒着や圧迫を防止しますが、介護職が実施することはできません。医師、看護職、家族が実施します。

・栄養剤の注入の記録では、実施時間、栄養剤の注入方法、栄養剤の種類、内容、量、注入時間や利用者の状態、表情、意識状態などを、実施後すみやかに記録します。最後に実施者の氏名を記入します。