びっくりの読書体験──おすすめ名著をご紹介

2020/06/09

おすすめ名著①
『2001年宇宙の旅』

今もSF作品のMY金字塔

 この作品を初めて読んだのは、発表されてから17年ほど経ってから。確か同名の映画作品をあらためて書き下ろし版だ。
 映画の方はあまりに有名なので、興味ある人には、ぜひ一度見てくださいということで置いておくとして、書き下ろし版の本書を紹介したい。難解とされた映画の細かい設定や背景が手に取るようにわかってきたのは、ある種の感動だった。もちろん、小説版も何度も読み返して少しずつ進むという感じだったが。
 スタンリー・キューブリックと知恵を合わせた映画の書き下ろし版であるため、本書の中にもその閃きが多分に織り込まれ、SFの世界の金字塔であることはいうまでもないが、スピリチュアルな世界においても金字塔と言える作品だろう。
 原始人類が、姿の見えない存在に導かれるように、動物の骨を道具に使う描写は、書き下ろし版でも実にリアルで意味深。一人で進化し、文明を築いたと思っていた思考に一撃を与える意図でもあったのだろうか。昨今の(もちろん昔からあるが)UFOブームの中で、よく「宇宙の知的生命体は、我欲の進化に盲進する人類に警鐘を鳴らすため飛来してきた」と言われることがあるが、まさに本著はその元祖だ。
 21世紀の未来に月面において、再び人類は導かれる。その中で、明かされる肉体を持つ知的生命が、意識の存在に変容していくプロセスは読むものを圧倒する。
 印象的かつ衝撃のラスト。人類は一体どうすればいいのか。少なくとも自分たちに知性をもたらした知性にはまだまだ追いついていないことは確かだ。その答については読者となって考えていただきたい。


著者:アーサー・C・クラーク
出版社:ハヤカワ文庫SF

おすすめ名著②
『猿の惑星』

ショッキング&エロチック

 ①で紹介した『2001年宇宙の旅』同様、世界に衝撃を与えた作品の小説版であるが、①と決定的に違うのは、本書が映画より先に発表されたオリジナル作品であるだけでなく、とても映画では描けない世界になっているところだ。
 勝手ながら映画を知っているという前提で書かせていただく。映画では西部劇と中世を足して2で割ったような文明社会を持つ猿と原始人のような野生人類が描かれているが、どう考えても無理がある。映画を見たのは小学生の時だったが、小学生の脳で考えてもこの点が疑問だった。
 その疑問は、原作小説を読んだことで一気に解消し、この作品の奥深さに一気に引き込まれることになる。
 近未来の世界で、恒星間飛行に挑戦した主人公たちは、はるか800年光年彼方の惑星に着陸するところから物語は始まる。小説の中では、人類は完全な動物として描かれており、言葉を話さないのはもちろん、一切の道具も使えず、ましてや衣類など一切身につけていない。男も女も、大人も子供も生まれたままの姿で自然の中を走り回っている。これは当時でもとても映像化できるものではなかっただろう。
 猿との関係もそうだ。猿は人間を完全に野生動物として扱い、娯楽のための狩猟の獲物であり、猟銃を使って容赦なく撃ち殺し、その屍体を狩の成果として広場に並べて、雌猿たちは、獲物の品定めをし、雄猿たちは獲物をバックに記念撮影とくる。
 映画でも少しだけこのシーンはあったが、あれがギリギリかと思う。そして生け捕りにされた人間たちは、実験や生態観察用、動物園用などさまざまな用途に応じて売りさばかれる。人間を完全に動物にすることで、ここまで容赦のない描写ができたものだと感心する。
 そして、裸の男女がいるというだけでなかなかの刺激だが、生態観察の中で、男女というより雌雄が性交というより交尾をする様もなかなかリアルである。猿に囚われた主人公たちが檻の中で、パートナーと交渉する場面もある。
 こういう場面だけでなく、宇宙旅行を科学的に描いたところもこの小説のすごいところ。読んでいくうちに一体何がなんだかという感じで引き込まれていく。ラストは映画とは違った衝撃を与えてくれる。


著者:ピエール・ブール
出版社:創元SF文庫
びっくりの読書体験──おすすめ名著をご紹介

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