佐多岬
(周辺の自然や歴史も)

バイク乗りには特別な場所
 バイク乗りの僕にとっては、佐多岬は特別な存在で、大学時代カワサキZ2(RSナナハン)に乗っていたときは、鹿児島と関西とをバイクで行き来し、四国の足摺岬、室戸岬、九州では平戸など海岸線を岬に向かって潮風を受けながら走るのが好きだった。

 大隅半島の自然を本格的に巡ろうと思ってまず考えたのは佐多岬。そして照葉樹原生林の会や日本自然保護協会で稲尾岳周辺の環境保全などに関わったことで、その周辺も含め、いろんな意味で興味を持った。

 佐多辺塚に核廃棄物処分場建設の話が持ち上がったときも、この豊かな自然に対して風評被害を含め、ここに住んでいる私たちがこの宝を守っていくべきだと心に決めた。それはこの雄大な自然の中で住まわせてもらっている者の責務でもあるとも感じている。下の写真は南大隅の照葉樹。
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建国佐多神話・2月の御崎祭り
 佐多岬周辺には、建国佐多神話と言われる伝説や伝承がある。御崎神社の神さまは、伊邪那岐命(イザナギノミコト)の御子であり、その祭神は、伊邪那岐(イザナギ)、伊邪那美(イザナミ)、底津少童命(ソコツワダツミノミコト)、中津少童命(ナカツワダツミノミコト)、表津少童命(ウワツワダツミノミコト)である。

 2月の御崎祭り、10月の御崎詣りは、昔は大隅一円から多くの人々が麓の家々に民泊しながら、険しい道のりを歩き、時には海から上がり、巡礼のように参拝に出かけたと言われている。御崎神社のある御崎山にはミサキシバという霊木があり、祭りでは神がおうつりになり、災いを払いよけられると信じられていて、参拝した人々は身の守りになるとしてその枝を持ち帰ったという。御崎祭りは地域の人たちによって伝承されているが、大隅半島でそうしたしきたり、慣習がなくなってしまっているのは寂しい。

 佐多岬灯台を眼下に見下ろす聖地から、黒潮がぶつかる太平洋と東シナ海を結ぶ大隅海峡を望む。太古から南方と本土を結ぶ重要な場所でもあり、遥か遠きに思いを馳せると、海の神々にまつわる建国佐多神話はロマンをも感じさせる。写真は2012年の御崎神社と御崎祭り
佐多周辺の豊かな自然、
蘇生する日本有数の照葉樹林帯
 日本全国の自然の森は、高度成長期に多くが伐採され、杉や檜の人工林が植えられたが、この大隅半島南部、特に太平洋側の稲尾山系の人工林は、その特有の潮風や強風等でその後50年余経って、自然林としての照葉樹林帯が蘇生してきている。

 照葉樹の森は、こんもりと深い緑が動植物の命を育み、水瓶となり栄養素たっぷりの山水が流れ込む平野に豊かな土壌を与え、地域の豊かさを創り出す根源でもある。宮崎県綾町は、そうした照葉樹の森を人の手で100年掛けて取り戻そうという運動が続けられているが、この稲尾山系では、森の持つ自然の力で、自らが蘇生し、照葉樹の森が復活している。

 2009年、東京大学院教授で日本自然保護協会専務の大澤雅彦教授らが、そうした日本有数の照葉樹林を調査するため、船間港から漁船をチャーターし佐多岬沖近くまで、海から森を眺め、その蘇生ぶりに感嘆の声を上げていた。(2009/08/14)
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圧倒されるその照葉樹林帯にいざ
足を踏み込む。守っていく責務
 大隅半島、特に南大隅の森は、世界遺産の屋久島や、世界自然遺産候補の奄美大島とはまた別の植生があり、日本の南限や北限、陸続きであるがゆえの植物群も存在。固有種も残されている。

 日本列島がいったん氷河期に入り、日本の森が消滅していったとされる時期から、この南大隅の森がまた、長い時間を掛けて北上し、現在の日本の森をつくり上げていった、言わば今の日本の森のルーツでもある。

 船から見た照葉樹林帯もその広がりに感嘆の声が上がったが、その森に一歩踏み込んでみると、そこには、別世界のような命に満ち満ちた世界が広がっていた。(2009/08/15)
さらに稲尾山系生態調査
 蘇生している照葉樹の森をさらに生態調査するため、稲尾山系に入る。山頂から200㍍ごと、階層的に10㍍四方のプロット内全植物を記録、その後、定期的に生態調査に入ることになる。(2009/11/14)
神々しい照葉樹林に魅せられ
その後、大隅半島の照葉樹林帯、高隈山系や国見山系の金弦の森など調査。神々しい照葉樹林。(2012/01/21)
スリリングで病みつきになり
そうな佐多岬トレッキング
 潮風を受けながら海沿いをテクテク歩くトレッキングも楽しい。さたでい号の発着地点となる田尻港近くの海岸線沿いに崖越えをしながら、歩いていける限界地点、本当の本土最南端まで行くスリリングで病みつきになりそうな佐多岬トレッキングがある。

 出発地点は、 田尻港から砂浜を横目に車道を10分弱、南の方角に歩き、海岸線に入って、小石混じり、そして一面珊瑚が散りばめられた白い海岸を進んで、さらには鬼の洗濯板のミニチュア版のようなゴツゴツとした岩場をひたすら歩く。

 海中公園のある田尻沖は黒潮が真っ先に流れ込む海域で、沖には枇榔(びろう)島が浮かび、枇榔やソテツなどの暖帯性植物が茂る山が迫っている。

海岸線の右手は崖地が迫り、通行に障害となる難所の岩場が数カ所ありスリリングなコース。特に満潮時は海岸線が通れるスペースが限られてくるので急傾斜の崖越え・山越えはかなりの体力とコースを選択する判断力を要し、最南端地点へ到達出来たときの達成感、満足感は何とも言えない。特に海岸線を進みながら、断崖の絶壁には国の特別天然記念物のソテツが自生、難所の崖越えではロープを頼りにそのソテツを目の前にして進む場所もあり、この佐多岬ならではの風景。

 逆に干潮時は、海岸線をなんなく通れ、女性でも楽しみながらトレッキングでき、海岸線の岩場を潮風を受けながら歩くのも気持ちいい。メンバーを見ながら、干満をよく調べて日時を選択するとより楽しめる。
海岸線を通れない岩場を乗り越えるため、国の天然記念物そてつの間を縫うように登っていきます㊤。独特の海岸線と砲台あるいは機銃台座のあったであろう石積み跡も(左側に小窓がある㊦)。
ソテツが群生している森㊧と、本当に歩いていける本土最南端の絶壁の上で休憩㊨。右側に灯台があります。
 

 
この美しい森を守るのは
わたしたちの責務!
 南大隅町に核廃棄物処分場建設計画が浮上してきたとき、この美しく貴重な森を死なせてはならないと呼び掛け、県内外から多くの人が集まりました。

 この綺麗な海岸線のどこか、陸から見えないところに船で核廃棄物を運んできて、埋めようという計画ということも聞きました。入江が幾つも重なる風光明媚なところに処分場ということで集まった皆でこの美しい自然を守っていこうと誓い合いました。(2012/09/09)
佐多辺塚小学校跡に集まり、水面下で進んでいた処分場計画について説明があり現状を知りました㊤。入江が見える佐多射撃場にも小さな子供を連れた母親の姿も見え、この子どもたちにこの美しい自然を残したいと訴えていました㊦。


 
迫力満点の洞河原の滝!
 佐多辺塚へ向かい、打詰林道入口近くの洞河原地区にある洞河原の滝。目の前に滝があるため、全容を観るのは難しいが、花崗岩巨体の岩盤上を落差約50㍍で流れ落ちる迫力のある滝。しぶきを浴びながら見上げる滝は存在感がある。


 
稲尾岳山頂にある稲尾神社
の近津宮例祭
 自然に恵まれた佐多辺塚打詰の白佐神社では、年一回の例祭が行われ、棒踊りが奉納されました。佐多郡の近津宮神社が御崎神社の近津宮、この白佐神社は稲尾岳山頂にある稲尾神社の近津宮で、棚田の連なる海岸線に神社があり、昔、この海からこの辺塚に平家の落人が渡ってきた…という口伝があるようです。(2012/09/23)
 

 
また連れてって!と言われる
佐多岬トレッキング
 佐多岬トレッキングが楽しい…といろいろ話していたところ、連れていってと言われ案内しました。今回は岩場で結構楽しみました。(2012/12/07)  まずは岩場からスタート。
女性にはちょっと大変な岩場超え…
波にさらわれそうな場所もクリアし、ちょっと海の幸もいただき美味しくランチ。
眼の前が佐多岬灯台、歩いていける本当の最南端までたどり着きガッツポーズ…
 
本土最南の山、摺ヶ丘
 登山のガイドブックに本土最南の山として紹介してある摺ヶ丘。佐多岬ロードパーク入口近くから登る山で、山頂の景観はあまり良くないが、山頂近くに機銃台座の石積みが今でも残っている。(2013/11/13)


 



 
佐多の冬の風物詩
コラーゲンたっぷり「キダカ」!
 佐多の食と言えば…、7つの浦を巡る「御崎祭り」でも神様を少しでも引き止めるためにご馳走をふるまうが…、その中でも「キダカ(うつぼ)」はなくてはならない素材であり、冬の風物詩でもある。

 初冬の日差しの中、昔は各家庭でも産後の女性が母乳を出すために食べていたほどで、地域のあちらこちらで「キダカの天日干し」が見られ、キダカ特有のまだら模様が美しく映える。

 昔から各ある行事のたびに重宝され、特に運動会などでは「キダカがないと始まらん」と、精の出る庶民の味として親しまれてきた。

 今は、ウツボ漁師も少なくなってきたが、間泊の松元良治さんは、「海のコラーゲン」として、うつぼスライスを商品化している。 写真は松元さんがウツボを捌く様子、味噌煮料理とうつぼスライス。

美しい自然守ろう!
 佐多辺塚の核廃棄物最終処分場建設候補とされている砕石場跡で、南大隅を愛する会や、県内外で活動をしているメンバーがその現状視察のため2016年11月24日、現地を訪れ、地域住民から現状を聞き、また集会所で地域を守るための今後の活動方針など確認し合った。

 同地区は超高齢化で残り少ない住民の大半は75歳以上で、その家族も都会へ住むなどして、消滅集落に近づいていることに目をつけた業者が、地域のお年寄りにアプローチし印鑑をついてもらっているなどの情報、現地には地域に無い神社のお札が収められた小さな祠が建てられている(写真㊦㊧)ことなどに危機感を募らせていた。


 
住んでいるおおすみを
もっと知ろう!
おおすみ観光未来会議に関わるメンバーが中心となって自主的に集まり、大隅半島をもっと知ろうと各地区を見て回っており、今回、佐多地区で開催。
田尻港から船をチャーターし、天気が良ければビロウ島に上陸する予定があいにくの荒れ模様で、島の周辺を眺め、佐多岬を海側から、海流がぶつかりあって渦がまく様子を観るなどした。
また、さたでい号にも乗船し、眼の前の佐多の海から採取した海水で塩を作っている「楽塩」工場も見学するなど知見を広げていた。(2017/06/28)


新しい佐多の名物に「岩ガキ」
 佐多岬産夏の岩ガキ祭りが、2017年8月1日(水)~12日(土)まで旧佐多岬有料道路入口の左側広場(南大隅町佐多馬籠896ー3)で、1日限定50人でスタート。1日は駆けつけた南大隅町の森田俊彦町長や大隅地域振興局の堀之内健郎局長らが、新たな名物の佐多産岩ガキの誕生を祝した。

 南大隅町では、町の農水産物を「食べて旅して南大隅」などで特産品としてPRしているが、今回、町で獲れるウツボや岩ガキを特産品にと取り組みが行われ、岩ガキは2年ほど前から「佐多岬産」として育ててきたが、今回、出荷できるほどの大きさになり、まずは佐多でこの「岩ガキ祭り」を行うもの。3年ものはもっと大きくぷりぷりになる。

 この日は、岩ガキセット(3個)1800円、おにぎり(2個)100円、キビナゴ1串(10尾)100円、味噌汁100円で販売。
 問い合せは、おおすみ岬漁業協同組合、電話0994〈27〉3001、FAX0994〈27〉3254。


 
佐多岬展望台と遊歩道
ステキに整備
 グランドオープンした佐多岬展望台と展望台までの遊歩道。今後は車椅子でも行けるよう整備され、また駐車場南側からも灯台を見下ろすことが出来るようになった。

 遊歩道も灯台守官舎跡や海岸まで降りていけるよう整備されたので、景色を見ながら、歴史をも感じながらゆっくりと佐多岬を楽しめるようになった。

 2019年3月24日にはそのお披露目があり、多くの市民、県内外からの観光客が押し寄せた。