トランプの金融政策

          1.OBBB法
          2.GENIUS法
             
3.CLARITY法

1.OBBB法
The One Big Beautiful Bill Act

 2025年7月4日成立

トランプ氏の政策を網羅した米国の大規模な法案

2025年5月22日に下院で可決、2025年7月4日成立
※7月4日はアメリカ独立記念日American Independence Day

OBBB法とは、トランプ米政権が掲げる「ひとつの大きく美しい法案(One, Big, Beautiful Bill)」の略称。2025年7月に成立した複数の減税・歳出削減策を盛り込んだ包括的な法律です。主な内容として、第一次政権で成立した所得税減税の恒久化、低所得者向け医療保険や食料補助への制限、国境警備費用の増額、バイデン政権のクリーンエネルギー関連税控除の撤廃、残業代とチップの課税免除、そして不公正な外国税を課す国への報復措置(セクション899)などが含まれています。

第899条
米国に対して「不公正な外国税」を課す国々の居住者や法人に対し、米国での課税率を引き上げることで報復措置を講じることを目的とした条項。
特定の税が、米国人または米国法人に不均衡な経済的負担を課すと財務長官が判断すれば不公正国と認定可能。2025/06/03


法案の主な内容

・減税の恒久化
第一次トランプ政権が2017年に成立させた減税措置(個人所得税減税など)を恒久化し、2025年末での期限切れを回避します。


・歳出削減
低所得者向け医療保険(メディケイド)や食料購入援助(SNAP)の支給要件を厳格化し、歳出を削減します。

・経済刺激と財政調整
財政調整措置の枠組みで成立させ、財政悪化懸念を回避し、経済を下支えする目的があります。

・クリーンエネルギー税控除の見直し
バイデン政権下で導入されたクリーンエネルギー関連の税額控除を撤廃・大幅に見直しました。

・国境警備・移民対策の強化
国境警備テクノロジーの拡充などに資金を投じ、不法移民対策を強化します。

・残業代・チップの課税免除
残業代やチップに対する課税を免除する措置が盛り込まれました。

・不公正な外国税への報復措置
アメリカに「不公正な外国税」を課す国に対して、課税率を引き上げる報復措置を講じることが可能です。


OBBB法の目的と影響

・経済活性化と財政規律のバランス
減税による経済刺激効果と、歳出削減による財政改善を目指しています。

・政権の公約実現
トランプ大統領が掲げた政策公約(減税、歳出削減、国境管理強化など)を網羅的に盛り込み、実現を目指しています。

・社会的分断の可能性
低所得者層への支援を削減することで、社会の分断が深まる可能性も指摘されています。 

【英語字幕/日本語訳付き】キャロライン報道官、圧巻の応答にもはや記者たちの反撃を寄せつけない!

2.GENIUS法
Guiding and Establishing National Innovation for U.S. Stablecoins Act
2025年7月18日成立

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アメリカでステーブルコインの規制枠組みを定めるための法律

2025年7月17日に下院可決、2025年7月18日に成立
米国のステーブルコインに関する包括的な連邦規制枠組みを確立する米国の法律です。この法律は、ステーブルコイン発行者に対し、米ドルと同価値の準備金を100%保有すること、準備金の開示、監査の義務化、そしてマネーロンダリング防止策の実施などを義務付けるものです。米国のデジタル資産分野で初めての連邦法であり、ステーブルコイン市場に透明性と安定性をもたらすことを目的としています。
すべてのステーブルコインの発行者は、米ドルまたは米ドルの短期国債による100%の準備金の保有を義務付けられ、毎月その準備資産の構成を公開し、発行残高が500億ドル(約7.4兆円)を超える場合は年次監査を義務づけられる。2025/07/23 
ステーブルコイン:stayble coin
価格の安定性を目的に設計された暗号資産(仮想通貨)。ビットコインなどの一般的な暗号資産が価格変動の大きさに課題があったのに対し、ステーブルコインは米ドルや円などの法定通貨や、金などのコモディティ価格に連動(ペッグ)させることで、安定した価値を保つことができる。これにより、決済手段としての実用性を高めることができる。 


主なステーブルコイン発行者

テザー(Tether :USDTステーブルコイン
サークル(CircleUSDCステーブルコイン 
ジーニアス法の主な内容

・1対1の裏付け義務
ステーブルコイン発行者は、発行するステーブルコインの価値と同額の米ドル、または米国の短期国債といった低リスクの準備金を保有することが義務付けられます。

・準備金の公開と監査
発行残高が一定額を超える場合、準備金の詳細を定期的に公開し、年に一度は監査を受けた財務報告書を提出する義務が生じます。
 
・監督機関
連邦準備制度理事会(FRB)と通貨監督庁(OCC)がステーブルコインの発行者を監督する。


・利回りの禁止
ステーブルコイン発行者が保有者に利息や利回りを支払うことが禁止されています。
背景と目的

市場の急成長への対応
急速に拡大するステーブルコイン市場を規制し、潜在的なリスクに対応するため、議会として初の包括的な規制を導入したものです。 

規制の不確実性の解消
これまで規制が不明確だったことで、米国のブロックチェーン開発者のシェアが減少する一因となっていました。GENIUS法は、この不確実性を解消し、米国がデジタル資産分野で主導権を取ることを目指しています。

・資家保護
発行者が破産した場合でも、ステーブルコインの保有者が準備金から優先的に返金を受けられるように定めています。
ジーニアス法の意義

・ステーブルコインの信頼性向上
準備資産の保有義務や規制により、ステーブルコインの信頼性を高め、金融システムへの統合を促進する。

金融イノベーションの促進

ステーブルコインの利用を促進し、金融サービスにおけるイノベーションを加速させる。

・米ドルの国際競争力強化
ステーブルコインの利用拡大を通じて、米ドルの国際的な地位を強化する。 
今後の影響

・ステーブルコイン市場の活性化
規制が明確になることで、健全なステーブルコインの発行が促進され、市場の信頼性と普及を後押しすると期待されています。

・国際的な基準への影響
米国の規制スタンダードが事実上の国際基準となり、各国のステーブルコイン規制にも影響を与える可能性があります。

・DeFi市場への波及
ステーブルコインの利回りが禁止されたことで、利回りを求める投資家が分散型金融(DeFi)市場に回帰する可能性があり、DeFiの役割がより重要になるとみられています。
 
DeFi:Decentralized Finance

日本語では「分散型金融」と訳され、中央集権的な管理者を介さずにブロックチェーン上で提供される金融サービス全般を指します。スマートコントラクトと呼ばれるプログラム技術を用いることで、暗号資産の貸し借り(レンディング)、取引(DEX)、保険などの金融サービスが、銀行や証券会社を介さずに利用できます。

3.CLARITY法
The Clarity Act of 2025
2025年6月11日 米下院農業委員会、デジタル資産規制法案「CLARITY法案」を可決