社会の理解
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社会の理解:問16

2021/09/25
2014(平成26)年4月から施行された障害者総合支援法の改正点に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい

1 障害程度区分が、介護保険の要介護認定に一元された。

2 共同生活援助が廃止され、共同生活介護が新設された。

3 地域移行支援の対象が、障害者支援施設等に入所する障害者に限定されることになった。

4 重度訪問介護の対象に、重度の知的障害者なども含まれることになった。

5 意思疎通支援を行う者を養成する事業が地域生活支援事業に加わった。

正解 : 4

1 障害程度区分と、介護保険の要介護認定は別物である。

2 共同生活援助は、障害のある者に対して、共同生活介護は、認知症高齢者に対してのサービスである

3 地域移行支援の対象が、現行の障害者支援施設等に入所している障害者又は精神科病院に入院している精神障害者に加え、保護施設、矯正施設等を退所する障害者に対象を拡大した。

4 設問のとおりである

5 意思疎通支援を行う者を養成する事業は市町村と都道府県の必須事業である。

障害者総合支援法における人権、尊厳に関する規定

(目的)
 第1条(略)障害者及び障害児が基本的人権を享受する個人としての尊厳にふさわしい日常生活又は社会生活を営むことができるよう、必要な障害福祉サービスに係る給付、地域生活支援事業その他の支援を総合的に行い、もって障碍者及び障害児の福祉の増進を図るとともに、障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与することを目的とする。 

障害者「自立支援法」から障害者「総合支援法」へ

 障害者総合支援法では、障害の定義に新たに難病などを加え、従来の「障害程度区分」の名称を「障害支援区分」に改めるとともに、重度の障害者への訪問介護の対象を拡大し、共同生活を行うケアホーム、グループホームを一元化しました。また、障害者支援施設の障害者や精神科病院の精神障害者に加え、地域移行支援の対象者の拡大もはかられました。

 さらに2018(平成30)年4月からは、障害者支援施設やグループホームから地域での一人暮らしへの移行を定期的な巡回訪問等により支援する自立生活援助や、就業に伴う生活面での課題に対応するため、事業所と家族の連絡調整を行う就労定着支援等のサービスが新たに始まりました。
 また、同じく2018(平成30)年4月から、介護保険制度と障害福祉制度の両方の指定を受けて高齢・障害分野のサービスを一体的に行うことのでkる「共生型サービス」が創設されました。

障害者総合支援法

 2012(平成24)年6月27日に公布された「地域社会における共生の実現に向けて新たな障害保健福祉施策を講ずるための関係法律の整備に関する法律」(平成24年法律第51号)により、従来の障害者自立支援法は、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(通称:障害者総合支援法)となりました。その主な内容は次のとおりです。
 

①目的・基本理念

 目的規定において、「自立」という表現に代わり「基本的人権を享有する個人としての尊厳」と明記され、障害者総合支援法の目的の実現のため、障害福祉サービスよる支援に加えて、地域生活支援事業その他の必要な支援を総合的に行うこととなります。また、2011(平成23)年7月に成立した障害者基本法の改正を踏まえ、新たな基本理念が法律に規定されました。

 

②障害者の範囲の見直し

 障害者自立支援法では、支援の対象が身体障害者、知的障害者、精神障害者(発達障害者を含む)に限定されていましたが、障害者総合支援法では一定の難病の患者が対象として加えられました。一定の難病とは、「難治性疾患克服研究事業」の対象である130疾患と関節リウマチとしています。難病の患者への福祉サービスにつきましては、これまでは補助金事業として一部の市区町村での実施にとどまっていましたが、障害者総合支援法の対象となることにより、すべての市区町村での実施が可能になりました。
 

③障害支援区分への名称・定義の改正

 現在の「障害程度区分」が知的障害、発達障害、精神障害の状態を適切に反映していないとの指摘を踏まえ、障害の多様な特性その他の心身の状態に応じて必要とされる標準的な支援の度合いを総合的に示すものとして「障害支援区分」へと改正されました。
 特に、知的障害及び精神障害につきましては、コンピューター判定(一次判定)で低く判定される傾向がありました。そのため、新法では区分の制定にあたり適切な配慮その他の必要な措置を講じています。
 

④障害者に対する支援の見直し

 障害者の高齢化・重度化に対応するとともに、住み慣れた地域における住まいの場の確保の観点から、「共同生活介護(ケアホーム)」は「共同生活援助(グループホーム)」に一元化されました。また、グループホームにおける新たな支援形態としまして、外部サービスの利用によるサービスが可能な「外部サービス利用型」が設定されました。「重度訪問介護」及び「地域移行支援」は、それぞれ利用対象が拡大されました。重度訪問介護は、これまでは重度肢体不自由者が対象のサービスでしたが、新たに重度の知的障害者及び精神障害者も利用可能となりました。地域移行支援につきましては、これまでは施設に入所している障害者及び精神科病院に入院している精神障害者が対象のサービスでしたが、「地域における生活に移行するために重点的な支援を必要とする者」も対象に追加されています。
 

⑤地域生活支援事業の見直し

 法律の目的に、地域生活支援事業による支援を行うことが明記されたことを受けて、市区町村及び都道府県が行う地域生活支援事業の必須事業に新たな事業が追加されました。
 市区町村が実施する地域生活支援事業の必須事業としては、

  • 障害者に対する理解を深めるための研修・啓発
  • 障害者やその家族、地域住民等が自発的に行う活動に対する支援
  • 市民後見人等の人材の育成・活用を図るための研修
  • 意思疎通支援を行う者の養成(手話奉仕員の養成を想定)
  • が追加されました。
     都道府県が実施する地域生活支援事業の必須事業としては、

  • 意思疎通支援を行う者のうち、特に専門性の高い者を養成し、または派遣する事業(手話通訳者、要約筆記者、触手話及び指点字を行う者の養成または派遣を想定)
  • 意思疎通支援を行う者の派遣に係る市区町村相互間の連絡調整等広域的な対応が必要な事業

⑥サービス基盤の計画的整備

 障害福祉計画に必ず定める事項に「サービス提供体制の確保に係る目標に関する事項」と「地域生活支援事業の種類ごとの実施に関する事項」を加えるほか、いわゆるPDCAサイクルにそって障害福祉計画を見直すことを規定する等、サービス提供体制を計画的に整備するための規定が設けられました。
 また、自立支援協議会の名称につきましても、地域の実情に応じて定められるようにするとともに、当事者や家族の参画が法律上に明記されました。
 

⑦検討規定

 障害福祉サービスのあり方や支給決定のあり方等幅広い内容について、法律の施行後3年を目途に検討を行い、その結果に基づいて所要の措置を講ずることが規定されます。具体的には、

  • 常時介護を要する障害者等に対する支援、障害者等の移動の支援、障害者の就労の支援その他の障害福祉サービスのあり方
  • 障害支援区分の認定を含めた支給決定のあり方
  • 障害者の意思決定支援のあり方
  • 障害福祉サービスの利用の観点からの成年後見制度の利用促進のあり方
  • 手話通訳等を行う者の派遣その他の聴覚、言語機能、音声機能その他の障害のため意思疎通を図ることに支障がある障害者等に対する支援のあり方
  • 精神障害者及び高齢の障害者に対する支援のあり方
  • が追加されました。