聞く力

2020/12/06
心をひらく35のヒント

聞く力

聞く力
心をひらく35のヒント
著者/阿川佐和子
文春新書

 あの、
ビートたけし氏が「アガワさんと話すと、ついしゃべりすぎてしまう」と脱帽してしまった阿川佐和子さんの聞く力!
 
勝手なツッコミです。なぜ
「聴く」ではなく、「聞く」の漢字を使っているのだろうと疑問を、実は今抱いた…。その疑問を抱きながら「まえがき」に目を通してみると、ふと仮説が思い浮かんだのだ。その仮説とは、
・「聞く」…話す人側の言語
・「聴く」…話を耳にする人側の言語

これだとちょっと自分でも分かり辛いので、別の切り口。
・「聞く」…相手か話したいことだけを話させる
・「聴く」…相手が解決したい悩みを話させる

 ん~、なんだろ?
「聞く」=漫才をするかのような感じで、気持ちよく相手をしゃべらす姿勢
「聴く」=相手の立場に寄り添う、共感する感じで質問したり、疑問点を投げかけたりする。
 なんかさ、「聴く」は重い話。「聞く」はライトな感じ、ポップさ、気兼ねなく会話が広がる話。そんな仮説が思い浮かんでいるのだ。


 「聞く力 心をひらく35のヒント」の著者、阿川佐和子さん。
 彼女を紹介することばに「頑固おやじから普通の小学生まで、つい本音を語ってしまうのはなぜか。インタビューが苦手だったアガワが、1000人近い出会い、30回以上のお見合いで掴んだコミュニケーション術を初めて披露する―。」と、あります。

また読者からの反響で
「面白かった!私にも真似ができるかも」
「”知ったかぶりをしない”。就活中の息子に勧めたい」
「実践的な内容なので、営業にとても役立ってます」
「”質問の柱は3本”で婚活に挑戦します」
「”面白そうに聞いたら”妻の機嫌がよくなりました」
「反抗期の娘との会話が弾むようになりました」
「聞き上手になれば、毎日が楽しくなる」

などなどと、本の帯に紹介文が記載されてます。



 ではでは、もくじを見ていきますと

Ⅰ 聞き上手とは
1.インタビューは苦手
2.面白そうに聞く
3.メールと会話は違う
4.自分の話を聞いてほしくない人はいない。
5.質問の柱は3本
6.「あれ?」と思ったことを聞く
7.観察を生かす
8.段取りを完全に決めない
9.相手の気持ちを推し測る
10.自分ならどう思うかを考える
11.上っ面な受け答えをしない


Ⅱ 聞く醍醐味
12.会話は生ものと心得る
13.脳みそを捜索する
14.話が脱線したときの戻し方
15..みんなでウケる
16.最後まで諦めない
17.素朴な質問を大切に
18.お決まりの話にならないように
19.聞きにくい話を突っ込むには
20.先入観にとらわれない


Ⅲ 話しやすい聞き方
  1. 相づちの極意
  2. 「オウム返し質問」活用法
  3. 書体ん面の人への近づき方
  4. なぐさめの言葉は2秒後に
  5. 相手の目を見る
  6. 目の高さを合わせる
  7. 安易に「わかります」と言わない
  8. 知ったかぶりをしない
  9. フックになる言葉を探す
  10. 相手のテンポを大事にする
  11. 喋りすぎは禁物?
  12. 憧れの人への接し方
  13. 相手に合わせて服を選ぶ
  14. 食事は対談の後で
  15. 遠藤周作さんに学んだこと―あとがきにかえて

 ふむふむ、「聞き上手とは」「聞く醍醐味」「話しやすい聞き方」の3つのパートに分かれていて、どうすれば相手が気持ちよく話せるか?のアガワエッセンスが詰まっている感じです。でね、前書きの話に戻るんだけど、東日本大震災以降、何の役にも立てない自分自身にもやるせない気持ちを抱えながら日々を過ごす阿川さんに、津波に遭い命からがら生を綱井だ当時22歳の女性の体験談を耳にします。

「被災地に足を運びたい思いは山々なれど、どこへ行って何をすればいいのかわからない」の質問に対し、22歳の女性はこう答えました。
 「行くなら訪ねてほしいところがあります」と。
そのひとつが避難所。避難所の人たちは話をする相手がいない。なぜなら、家が壊れた話を訴えたところで、みんな同じ目に遭っているから、誰も驚かないのです。
 また、家族を失い、自ら九死に一生の体験をしながらも、その話をすると「ああ、私はもっと怖い体験をした」との言葉がかえってきます。誰も親身になって耳を傾けれない状況ではないの。だからこそ
 「だからこそ、避難所に行って話を聞いてあげてください。来てくれたというだけで、孤独じゃないってわかるから。自分が忘れられていないと氣づくから」

 そしてもうひとつ訪ねてほしい場所が「いまだ身元の判明しない遺体が放置されている遺体安置所と、津波に呑まれたお墓だと彼女は言葉を挙げました。
 この話を耳にしたアガワさんは、すぐさま「行く!」と決心したわけではないけれども、「『聞く』だけで人様の役に立つんだ」ということを知り、なんだか胸のつかえが一気に下りた思いでいっぱいになりました。


 
なぜ「聴く」ではなく「聞く」の漢字を選択したのか?僕なりの答えはこれです。

 
 会話の窓口、きっかけが「聞く」この「聞く」の延長線上に「聴く」がある。

 なんて言いましょうか、いきなり「聴く」の姿勢を取られると小さな親切、大きなお世話的な感じがして嫌悪感を覚えるのだ。頼んでもないセールストークに付き合わされる感覚があったり、価値観の押し付けであったり、誰も信者がいない教祖様に見えてきたり。



聞くことの重要性
 『きく』という作業は、誰もが1日に何度となく、まるで呼吸をするごとく、自然に行っていることでしょう。たとえば
・道を聞く
・値段を聞く
・講義を聴く
・おしゃべりを聞く
・愚痴を聞く
・自慢話を聞く
・いい加減に聞く
・熱心に聞く
・迷惑そうに聞く
etc…
聞き方にもいろいろな種類、場面、背景があります。
 また、同じ場所で同じ話を共有したにもかかわらず、いっしょにいた人とその後の記憶に残っている言葉、感情、解釈が異なっていることもありますよね。

 なんだかね、「聞く」も「聴く」も、結果的には情報を引き出すコミュニケーションだと思うのだ、でもさ大きな違いがあるのでは?
 と、よくわからない思考回路の迷路にはまっていくのですが、結びとして心に刺さった文章がこちらです。

 同じ話も新しい話も、おかしい話も感動的な話も、人に話をきくことで、自分の心をときめかせたいのです。素直な気持ちで好奇心の赴くまま人の話を聞いたとき、聞き手は自分の記憶や気持ちをそこに重ね合わせ、必ず何かを感じ取るはずです。そして、聞かれた側もまた、語りながら新ためて自分の頭を整理して、忘れかけていた抽斗(ひきだし)を開け、思いもよらぬ発見をすかもしれません。
 そういえば、あの上司の話は必ず長くなるから、いつも適当に聞き流していたけれど、明日は少し我慢して耳を傾けてやるかな。あるいは、おばあちゃんの昔話は毎回、同じだから「ああ、聞いた聞いた、その話」とさえぎってきたけれど、さまにはゆっくりきいてあげようかな。

 この文節を読んで、ぼくはこの「聞く力 心をひらく35のヒント」を買ってしまったのだ。