130万円の一曲。そして25年後のAI音楽
一曲に込めた、情熱と想い。
2026年6月7日。
私のオリジナル曲
『ヨルダンワインは酔わせない』の配信が決まった。
SpotifyやApple Musicなど、
世界中の人が聴ける場所に、自分の曲が並ぶ。
その連絡を見た時、ふと25年以上前のことを思い出した。
私は若い頃、小室哲哉に憧れていた。
TM NETWORK、globe、TRF。
あのシンセサイザーが鳴り響く世界に魅了され、
自分もシンセを弾きたいと思った。
当時所属していたのはA&Aという芸能事務所だった。
そこから、
徳間ジャパンから独立した服部さんが立ち上げた
P-ARTSという事務所へ、
将来有望な人材が流れていく仕組みだった。
有名なところでは、
恨み屋本舗の木下あゆ美
キッズウォーの坂田知美
がいた。
オーディションの時に、
木下あゆ美を見たことはある。
若い女性。
イケメンの男性。
テレビ映えする人。
売れそうな人。
そういう人たちが主役だった。
私は違った。
ボーカルスクールにも通った。
A&Aが提携している山名敏晴先生のスクールだ。
プロのシンガーソングライターで、
高木さやの「コーラが少し」のヒットでも知られている。
でも正直に言えば、
私は歌手になりたかったわけではない。
私が本当にやりたかったのは、
シンセサイザーだった。
だから、ボイトレばかりで楽器が無いので、
一応、先生のパソコンでDTMはできたが
音楽理論がパッパラパーなので、悟って。
自分で伏見にある
ヤマハポピュラーミュージックスクールへ通った。
誰かに言われたわけではない。
必要だから、自分で探した。
シンセサイザー45万円。
音楽ソフト入りノートパソコン35万円。
小室哲哉モデルのショルダーキーボード10万円。
ボーカルスクール15万円。
ヤマハミュージックスクール25万円。
合計130万円以上。
今思えば、かなりの金額だ。
そして、その結果。
私は山名敏晴ボーカルスクールのライブで、
自分のシンセサイザーを持ち込み、
globeの『Feel Like dance』を一曲だけ演奏した。
コード弾きだった。
小室哲哉には程遠かった。
それでも、その時だけは本気で小室哲哉になった気分だった。
130万円を使って、一夜限りの一曲。
費用対効果で言えば最悪である。
デビューもしていない。
有名にもなっていない。
P-ARTSへ進むこともなかった。
しかし不思議なことに、
30年以上経った今でも、その時のことを覚えている。
なぜだろう。
たぶん、本当に好きだったからだ。
人生は面白い。
私はその後、
会計を学び、
心理を学び、
カウンセラーになり、
本を書き、
事業者コミュニティにも入り、
様々な世界を見てきた。
音楽の夢は終わったと思っていた。
ところが2026年。
AIが作曲し、AIが歌い、AIが映像を作る時代がやってきた。
そして私は再び音楽を始めた。
今度は芸能事務所もいらない。
レコード会社もいらない。
オーディションもいらない。
誰かに選ばれなくても、
自分の作品を世界へ届けることができる。
最近、私はよく思う。
若い頃、自分が時代に追いつけなかったのではない。
時代が、ようやく自分に追いついたのだ。
『ヨルダンワインは酔わせない』は、一曲の歌に過ぎない。
大ヒットするかもしれないし、
誰にも知られないかもしれない。
それはわからない。
でも確かなことがある。
25年前。
130万円を使い、
一曲だけ『Feel Like dance』を演奏した青年がいた。
そして2026年。
その続きを生きている50代の男がいる。
人生に無駄な経験などない。
あの一曲は終わっていなかった。
25年の時を超えて、
今ようやく次のメロディーが鳴り始めたのである。
主宰 森