光熱費の削減

昨年は電気料金の値上げがありましたし、今年前半にはガソリンや軽油への政府補助の打ち切りによる値上げが予想されています。養豚場にとっても光熱費の負担増が重くのしかかってきています。今回は光熱費を下げるための一手段として、断熱材の施工と自家使用型太陽光発電をご紹介します。
断熱材については2022年12月号でもご紹介しましたので、簡単におさらいしておきましょう。夏は外気の熱を室内に通しにくくして、クーリングの効果を高める働き。冬は、室内の温度を外に逃がさないようにして、暖房費の節約に貢献します。ですから、寒冷地にある農場でも、温暖な地方にある農場でも、豚舎の壁や屋根、天井を断熱することが光熱費の節約になります。
古い豚舎の場合、屋根にも外壁にも断熱材が入っていない事多いです。そのような豚舎の場合は、ポリカダンナミを既存の屋根や外壁に重ね張りするのが最も簡単で施工費も安く済みます。但し、屋根や壁材を打ち付ける下地材が老朽化している場合には、既存の屋根材や外壁材を剥がして、下地材から交換しなければいけませんので、施工費は高くなります。
写真1は断熱材30ミリのポリカダンナミのサンプル
寒冷地では厚さ50ミリの方が良いでしょう。断熱ガルバよりも軽いので、畜舎等の建築基準特例に基づいて新しい豚舎を設計する場合にも、最適な屋根材・外壁材だと思います。耐荷重を少なく設計できるので、コストを抑えられます。外壁に断熱材を施工する場合の注意点ですが、外壁材の脇の部分や下端を断熱材がむき出しのままにしておくと、ネズミに囓られます
写真3
写真4
左の写真
写真5のように金属板で囲むように施工して鼠被害を防止してください。
次に自家使用型太陽光発電です。産業用太陽光発電(出力10Kwh以上の設備)の売電単価はFIT制度が始まった当初は40円/kwhだったものが、今や10円台前半です。一方電力会社から買う電気は、高圧受電(キューピクル受電)では23~24円/kwh(東京電力)です。東北電力では32~33円/kwhにもなっています。2年前までは17~18円/kwhでした。これに燃料費調整額も上乗せされます。燃料費調整額も値上げになっていますので、実質的電気料金単価は2年前の2倍近くになっています。だったら、太陽光発電設備を作って、日中は自家使用した方が1kwhあたりの電気料が安くなるのです。
では実際にどれくらい安くなるかの試算をしてみましょう。これは私のクライアント様農場(母豚300頭一貫)の例で試算したものになります。現在の契約は東京電力で契約種別は「高圧電力A」です。
図表6が月別のデマンドと使用電力量です。デマンド(30分単位の1日最大使用量)は79kwですが、デマンド値は季節によって変わります。一番少ない時期は63kwでした。しかし日ごとに見ると50kw~60kwぐらいでした。そこで太陽光発電設備の容量を50kwに設定しました。過大な設備を作ると、余った電力を売電できないので損をしますし、設備コストも多くなります。太陽光発電設備工事会社からの見積金額は、消費税抜き12,000,000円でした。太陽光パネルの保証は20年ですが、パワーコンディショナーは10年ですから、パワーコンディショナーの交換費用約80万円も合わせてみておかなければなりません。ですから設備費合計額は12,800,000円になります。
これを耐用年数20年で割ると、年間償却額は640,000円です・・・・(A)
これに償却資産税が年間約10万円(市町村によって変動有り)です。・・・・(B)
合計年間コストは(A)+(B)=740,000円・・・・(C)
50kw太陽光パネルの年間発電量は約55,000kwh(地域によって変動有り)・・・・(D)
全量自家使用できた場合は、(C)÷(D)=13.5円/kwhです。・・・・(E)
安全を見て8割自家使用できた場合は、(C)÷(D)÷0.8=16.8円/kwhです。電力会社から購入する単価が、燃料費調整額(17円と仮定)を加えて41円とすると、この農場の場合の1年間節約金額は、(41円-13.5円(E))×55,000kwh(D)×0.8=1,210,000円です。
この例ですと設備費の1,280万円は10年で元が取れる計算ですね。昨年3月までの電気料金単価ですと、補助金を当てにしなければ10年で元が取れませんでしたが、現在の電気料金単価では、太陽光公発電設備に補助が無くても10年で元が取れますから、是非ともチャレンジしてみてください。太陽光公発電設備の見積をどこに頼めば良いか分からない方には、ネットの検索ページで「タイナビNEXT」と検索して見てください。ここで見積請求すれば、その地域で工事可能な複数の業者へ一括で見積請求出来ます。