電動機器のトラブル対処法

写真1:制御盤内部

読者の方より「給餌ラインの制御盤などで、マグネットスイッチのサーマルが飛んだ(トリップした)ときの対処法を教えて欲しい」という相談を頂きました。豚舎では、給餌ラインはじめ、スクレーパー、換気制御盤、コンポ、浄化槽など、さまざまな電動機器の制御盤があります。それらの機器が過負荷で止まることは、よくあることです。今月号では、その時の正しい対処方法を解説いたします。
写真1は換気制御盤の内部です。写真2が電磁開閉器(マグネットスイッチ)です。マグネットスイッチの一部として写真では下の方の部品がサーマルリレーと呼ばれるものです。この部品の役割は、モーターに流れる電流を監視し、設定以上の電流が流れるとマグネットスイッチをOFFにして、モーターへの電気を止めます。その動作が起こった表示として、リセットボタンが飛び出します。 

表1

表1がモーターの定格電流(最大使用電流)とそのモーターに対応するサーマルリレーの中央値です。例えば換気扇などは0.9kwのものがあったり、0.4kw換気扇2台を0.75kw用マグネットスイッチで制御したりすることがあります。このような場合は、制御盤メーカーの方で、最適なサーマルチ値に設定して納品されます。ですから、使用する側が勝手にサーマルのダイヤルを回すと、モーターの焼損や火災に繋がりますので、やめて下さい。
また、もう一つよくやりがちな間違いは、「試しに少し回してみよう」とマグネットスイッチの真ん中を強制的に押しつけてモーターに電気を送ること。モーターは、何らかの原因があって過負荷になっているわけですから、その原因を取り除かないまま動かすことは機械の破損に繋がります。まずは止まった原因を探すことが先決です。例えば給餌ラインでしたらリミットが働かなくて餌が詰まってしまったとか、餌タンクからの落とし量が多すぎて重くなったとかが良くある例です。換気扇では、ビニールや紙袋などが引っかかっている。スクレーパーや送糞スクリューでは、ボルトや鉄筋などが落ちて引っかかっている。曝気槽のブロワーでは散気ノズルが汚泥や異物で詰まってしまった。水中ポンプでも汚泥や石などが詰まって止まることがあります。
 
制御盤の中に複数のマグネットがあって、過負荷表示ランプが1個だけの場合は、どのサーマルが動作したのかが一見して分からない場合があります。その探し方は、まず第1に制御盤内のメインブレーカーを下げる(切る)。それは、止まった原因を解決しないまま再稼働させると危険だからです。次に制御盤内のサーマルリレーのリセットボタンを1個ずつ押していきます。正常なサーマルは、押してもふわっとした感触だけです。過負荷で動作したサーマルはリセットボタンを押すと「カチッ」と音がして押し込まれた状態に留まります。次にそのサーマルがどのモーターを制御しているのかを調べます。説明書や回路図を見ても分からない場合はメーカーへ問い合わせるのが一番良い方法です。休日や時間外等でメーカーと連絡が付かない場合は、電気に詳しい人に聞く。それも出来ない場合は、対処法が分かるまで待つことが良いでしょう。サーマルが動作しなかったマグネットを1個ずつ押してみてどのモーターが動くかを一つずつ確認する方法もありますが、複数のモーターを同時に動かさないと正常に動作しないシステムもありますから、思わぬ2次トラブルを招く危険もあります。ですから、この方法はお薦めしません。
次にサーマル値を変えるのが正解のケースについて説明します。例えば換気扇を交換したけど同じものが買えなかったから別のモデルにしたケース。換気扇のモーターに定格電流が書いてありますので、それに対応したサーマル値にして下さい。また、汚水処理などで水中ポンプの容量を変えた場合、0.4kwを0.75kwにした。あるいは逆に0.2kwに減らしたケース。この場合はサーマルリレー自体を、あるいはマグネットスイッチごと交換する必要があります。容量を大きくした場合は、電線やブレーカーの許容電流も間に合うかどうかを電気工事師とよく話し合って対応して下さい。
 また、曝気槽の散気ノズルを交換したときにブロワーのサーマルが飛ぶまたはブレーカーが落ちるというケースが実際にありました。今までよりも気泡が細かいノズルに替えたところ、空気抵抗が増したので、ブロワーの負荷が増えたのです、各散気ノズル1つずつにストップバルブが付いていて、今までは絞って使っていまし。それを全開にしたところ、ブロワーの負荷が減ってサーマルがトリップ(動作)しなくなりました。以上、具体例も挙げて解説しましたが、電気設備は使い方を誤ると故障や事故に繋がるものです。農場スタッフ全員で正しいトラブル対処方法を共有して下さい。