出荷トラックと防疫

昨年12月に山形県でCSFが発生しました。ワクチン接種を実施していても穴があると病気は侵入してきます。侵入経路として、屠場と出荷トラック経由はリスクが高いとされています。そこで今回は出荷トラックの洗浄消毒や防疫ルール作りについてご紹介します。
出荷手段を大きく分けると自社トラック運搬か、運送業者委託かに分かれます。まず、自社トラックで自社の従業員が運転する場合です。母豚100頭~500頭規模の農場でこのパターンが多いのではないでしょうか。まずはトラックの保管場所は農場敷地外に設けることです。経営者の自宅と豚舎が隣接してる場合では区別が難しいと思いますが、幸い今年度から豚舎周囲へフェンスの設置が義務づけられました。この中がいわゆる防疫管理エリアです。出荷トラックの保管場所はこの防疫管理エリア外に設置しましょう。
運転席を清潔に保つため、助手席の床にプラスチックトレーを置いて、そこに屠場で使用する長靴を置きましょう。屠場ではその長靴を使用して助手席側から乗り降りして下さい。通常、トラックには荷台の下に小物入れ用の箱があると思いますが、木製ならば不衛生になりがちなので、ステンレス製に交換して下さい。そこに屠場で使用するつなぎ服やエプロン、手袋等とビニール袋を入れます。ビニール袋は屠場で使用した作業着等を入れて帰ってくるのです。小物入れボックスを清潔に保ち病気を持ち帰るリスクを少なくするためです。また、充電式の電動噴霧器も備えて下さい。噴霧器の容量はトラックの荷台と下回りに消毒剤を満遍なく掛けることができる容量にします。4t車なら5リットル、大型車なら背負い式の10リットルタイプが良いと思います。噴霧器には、屠場へ行く前にあらかじめ規定倍率に薄めた消毒液を入れておきます。
これをどのように使うかと言いますと、屠場の洗車場にある洗車機には消毒液に噴霧機能が無い場合があります。あったとしても過信してはなりません。屠場から車庫へ帰ってくる途中のどこかでトラックを停車して、持参した噴霧器で荷台と下回りと、使用した長靴に消毒をかけて下さい。
トラックは次回使用までに乾燥させて下さい。例えば気温が低くて翌日までに自然乾燥が難しい場合は、車庫に入れてから荷台にジェットヒーターを置いて乾燥させるなどの工夫が必要です。病原体を死滅させるには消毒も大事ですが、有機物を残らず洗い落とす洗浄と、乾燥が重要です。
また、屠場へ豚出荷に行った社員は、その日は農場内(防疫エリア内)の作業に戻らないようにするのがベストです。もし農場内の作業に戻る場合は、防疫エリア外でシャワーを浴びで着替えてから農場内ヘ戻るようにしましょう。
次に肉豚出荷を運送業者へ委託するケースです。委託している運送業者が前述したような防疫ルール通りに作業をしているのならば良いのですが、その保証はありません。ですから、屠場へ行くトラックは農場内に入れないような工夫が必要です。そのためには。肉豚中継所(デポ)を防疫エリア外に設置することがベストです。


図1はデポを防疫エリア境界に設置するレイアウト例です
 図2は防疫エリア外と一般公道との中間に設置したレイアウトです。農場とデポの間に一般公道がある場合は場内トラックもナンバーを取得して車検を受ける必要がありますので、経費が余分にかかります。ですからデポの位置は防疫エリア(豚舎敷地)から公道までの間の取付け道路(正確には農場敷地内)がベストです。どちらのケースでも一方が場内トラック接続口で反対側が屠場へ行くトラックの接続口とします