ハエ・害鳥・ネズミ対策

【ハエ対策】

梅雨に入ってハエの発生が多くなっている農場があります。皆さんの豚舎では大丈夫でしょうか。今月は豚の健康や労働環境を害する、ハエ・害鳥・ネズミの対策についてのお話しです。私は仕事柄いろいろな環境の農場へ訪問します。するとほとんどハエやネズミのいない豚舎もあれば、ハエだらけで人が作業するのにも苦になって耐えがたい豚舎もあります。では、その違いは何でしょうか。大きく分けると設備と管理です。設備のチェックポイントは、豚の糞がたまったまま動かない場所がないか。あるとそこからウジが湧きます。例えば離乳舎や肥育舎の通路と豚房の間が鉄柵の場合は、通路に糞がはみ出します。このような構造の豚舎では、最低2日に1度は通路に溜った糞を除去しましょう。豚房が全面スノコなら動噴で洗い流すのが最も簡単で衛生的にも良いです。写真1のように、通路と豚房の間が隙間の無いパネルの豚舎では、通路にはみ出す糞は少なくなります。

写真3

写真4

餌こぼしはある程度は餌箱の管理で少なくはできますが、写真3のように餌こぼしの少ないタイプの餌箱に変えることで、管理が楽になります。
写真4は餌箱の食い口に餌を出しすぎているために、隅の方の餌が腐敗している例です。ここからもハエが発生します。

↑図5

↑図6

図5はパイプフィーダーを2つの豚房の柵内に取り付けている例です。給餌器と通路の間隔が狭いと給餌器に糞をされやすくなります。それを放置するとそこからハエが発生します。給餌器を取り付ける場合は通路と壁の中間ぐらいに設置する事をお薦めします。
図6は豚房の中央に給餌器を設置した例です。この給餌器は餌こぼしも少なく、給餌器の下に隙間が無いので餌や糞が詰まることもありませんのでお薦めです。
 次にスクレーパー式の豚舎では古くなるとOパイプ掃除片が無くなってOパイプの中に糞や餌が溜ったままになっている例があります。ここもハエの発生源になります。Oパイプ掃除片が付いているかどうかの点検は定期的に(年に2回以上)行うようにしましょう。
また、スクレーパーで掻き出した先に集糞所がある場合ですが、基本的に毎日コンポストや堆肥盤に運んで下さい。集糞所に糞が溜りっぱなしになっていて、そこからウジが湧いている農場があります。
 糞尿混合ピットの豚舎では、基本的に水が動いていればウジは涌きません。しかし、表面にスカムが固まって溜っている場合や、大量の餌がこぼれて固まっている場合などはそこがハエの発生源になります。これは管理の問題ですから、このような状態にならないように毎日観察するクセをつけましょう。
 
【害鳥対策】
 養豚場に侵入して被害を及ぼす鳥は主にカラスと雀です。カラスは豚の餌だけではなく、分娩舎内の死亡子豚や胎盤もついばみますから危険度は高いと思います。
 改正された衛生管理基準に従って防鳥ネットを設置しましょう。しかし、暑くなると出入口扉を開けっぱなしにしている農場があります。そのような農場ではカーテンのようにスライドして開け閉めできるネットを張って下さい。
 カーテン豚舎の場合に、ネットはカーテンの外側と内側のどちらが良いかという相談を受けたことがあります。防鳥ネットは破損することが多いので、修理しやすい側に設置するのが良いと思います。
 また、以前TGEが流行したときは渡り鳥の糞による感染が疑われたことがあります。豚舎の周りに落ちた鳥の糞を踏んだ靴で豚舎内に入って作業をすると感染する可能性があります。豚舎の中外では長靴交換を励行するようにして下さい。

写真7

【ネズミ対策】


一旦ネズミが住み着いた豚舎からネズミを完全に排除する事は至難の業です。ネズミの生息数を減らすには、
①ネズミの通り道(足跡や糞がある場所)に粘着トラップを仕掛ける。
②豚舎外から進入してくる隙間を埋める。害を減らす工夫としては、電気の配線がケーブルむき出しであるならば、電線管を通した配線にやり直すことです。そうすれば漏電による火災のリスクを減らすことが出来ます。
 また、豚舎を新築や増改築するときはネズミの侵入経路を無くする工夫を是非行ってください。スクレーパー式豚舎ならば糞の排出は、立ち上がりスクリューコンベアとし、横送りから立ち上がりに接続する部分には蓋をしてネズミが侵入できない構造にすることです(写真7参照)。
 カーテンなどの開閉部分の下側にはネズミ返し板を付けて侵入を防止してください。尿配管も豚舎内に溜め槽を作って、そこからポンプアップするようにしておけば、尿配管からの侵入も防止できます。
 私のクライアント様農場ではこのような対策をしたストール舎があります。直ぐ隣の肥育舎にはネズミがいるのに、このストール舎には建ててから10年来ネズミがいません。
 設備と管理の工夫で、ハエや害鳥やネズミから大切な豚くん達を守ってあげましょう