一方、床暖房では温湯式と電熱パネル式があります。室温に連動して制御出来るタイプを設置すれば、過剰な暖房や暖房不足は防げます。管理の手間も正常に動いているかどうかをチェックするだけでOKです。電熱パネルはサーモスタット内蔵で一定温度を保つようになっていますので、電球式保温ランプやコルツヒーターよりもランニングコストを低く抑えることができます。さらにコントローラーが付いていて設定温度も自由に替えられるタイプや、保温箱とパネルヒーター、保温ランプとコントローラーがセットになった商品もあります。後者の方が導入コストは高くなりますが、管理の手間やランニングコストは少なくなります。キューピクル受電をしている農場であれば100V電源の単価が安いので100V仕様の電熱器具を多用しても問題ありません。床暖房は仔豚の生理に叶っているとはいえ、電熱パネルは電線を豚やネズミに囓られて断線やショートによる火災のリスクもあります。
豚舎の新築や分娩柵の更新の時は温湯式床暖房を是非検討して欲しいと思います。これなら故障や火災のリスクが少なく、温度管理も楽です。注意すべき点はオールアウト時にお湯のバルブを締めたままで、開け忘れている事、ボイラーの燃料切れぐらいでしょう。また、ボイラーや循環ポンプが故障すると全豚房の暖房が途絶えますので、コルツヒーターや保温ランプとの併用をお勧めします。私のクライアント様農場の実績では、10月の旧分娩舎(カーテン豚舎)のガスブルーダー燃料費は1豚房当り2,518円、床暖分娩舎(ウインドレス)のボイラー燃料代は1,147円でした。床暖分娩舎ではコルツヒーターも使っていますが、その電気代は1豚房当りおよそ600円(300Wで2日150Wで5日点灯)です。床暖豚舎の方が暖房費が3割安くなっていました。豚舎形式や使用方法によって変動しますので、あくまでも参考の一つとして下さい。
【離乳舎】
離乳舎での暖房はガスブルーダーとガス温風ヒーターが主流でしたが、最近新築する離乳舎では温湯式床暖房と温湯式輻射熱暖房(デルタパイプなど)の組み合わせを採用するところが多くなりました。分娩舎と同じく離乳舎でも床暖房は設備コストが高いですが暖房効率が良いこととメンテナンスが楽なことが利点です。ガス温風ヒーターのみを使う場合は室内の上部と豚の生活スペースの温度差が2~4℃になってしまいます。ガス代の安いアメリカならまだしも日本においては燃費効率が良くありません。床暖房を採用する豚舎では跳ね上げ式パネルを取り付けて、離乳後の一定期間は中屋根を掛けたような状態にして保温スペースを作ってやります