仔豚の保温を最適化する

 今年の冬は暖冬になるのでしょうか?東北地方では初雪の便りが例年よりも遅くなっています。とはいえ分娩舎や離乳舎では仔豚の保温が必要な事に変わりはありません。新しく豚舎を作るときや暖房設備を更新するときは、どうしても目先のイニシャルコストに目が行きがちです。しかし、ランニングコストや、作業性も無視してはいけません。ただ、イニシャルコストは業者から見積を取って比較すればすぐに分かりますが、ランニングコストや作業性は簡単に計算することは出来ません。ランニングコストや作業性は実際に使っている人に聞くのが一番分かりやすいですが、豚舎の形式や気候が異なる場所ではそのまま参考には出来ません。今回はイニシャルコスト、ランニングコスト、作業性の3点を含めた総合判断の手助けとなる情報をお届けします。

【分娩舎】
分娩柵には保温箱付きのものと無いものがありますが、どちらのタイプでも母豚の快適温度が18~20℃なのに対して、哺乳中子豚の快適温度は25~28℃であることに変わりはありません。保温箱無しの分娩舎の場合は、この母豚スペースと仔豚スペースの温度差を付けにくいものです。また、分割授乳やワクチン接種などの仔豚に対する処置を行う上でも、保温箱は仔豚を閉じ込める為に役立ちます。保温箱無しの分娩柵が改造可能ならば保温箱設置の改造をお薦めします。仔豚は背脂肪よりも腹脂肪の方が薄いので、床が冷たいと腹冷えをおこし、下痢しやすくなります。ですから、床面から暖めることが仔豚の健康面からも暖房効率の面からも有益と言えます。一昔前まではガスブルーダーが一般的でした。これは分娩舎自体の断熱が乏しいため、ブルーダーで仔豚スペースを暖めるのと同時に部屋全体も暖める2役を担っていました。しかし、断熱のしっかりしたウインドレス豚舎では、ガスブルーダーほどの火力は必要なくなりましたので、コルツヒーターや保温ランプの使用が一般的になりました。コルツヒーターやランプの方がガスブルーダーに比較して火災のリスクが少ないこともメリットです。通常コルツヒーターは、強、弱、切りの3段階調節になりますが、従業員の管理技術が低いと、この温度調節が適切に行われないケースを見かけます。
 
写真1
気温が高くなっても強のままで、仔豚がコルツヒーターの下を避けて寝ている
写真2
気温が下がっても点灯されずに仔豚が重なって寝ている
写真3は快適は例
一方、床暖房では温湯式と電熱パネル式があります。室温に連動して制御出来るタイプを設置すれば、過剰な暖房や暖房不足は防げます。管理の手間も正常に動いているかどうかをチェックするだけでOKです。電熱パネルはサーモスタット内蔵で一定温度を保つようになっていますので、電球式保温ランプやコルツヒーターよりもランニングコストを低く抑えることができます。さらにコントローラーが付いていて設定温度も自由に替えられるタイプや、保温箱とパネルヒーター、保温ランプとコントローラーがセットになった商品もあります。後者の方が導入コストは高くなりますが、管理の手間やランニングコストは少なくなります。キューピクル受電をしている農場であれば100V電源の単価が安いので100V仕様の電熱器具を多用しても問題ありません。床暖房は仔豚の生理に叶っているとはいえ、電熱パネルは電線を豚やネズミに囓られて断線やショートによる火災のリスクもあります。
豚舎の新築や分娩柵の更新の時は温湯式床暖房を是非検討して欲しいと思います。これなら故障や火災のリスクが少なく、温度管理も楽です。注意すべき点はオールアウト時にお湯のバルブを締めたままで、開け忘れている事、ボイラーの燃料切れぐらいでしょう。また、ボイラーや循環ポンプが故障すると全豚房の暖房が途絶えますので、コルツヒーターや保温ランプとの併用をお勧めします。私のクライアント様農場の実績では、10月の旧分娩舎(カーテン豚舎)のガスブルーダー燃料費は1豚房当り2,518円、床暖分娩舎(ウインドレス)のボイラー燃料代は1,147円でした。床暖分娩舎ではコルツヒーターも使っていますが、その電気代は1豚房当りおよそ600円(300Wで2日150Wで5日点灯)です。床暖豚舎の方が暖房費が3割安くなっていました。豚舎形式や使用方法によって変動しますので、あくまでも参考の一つとして下さい。
【離乳舎】
離乳舎での暖房はガスブルーダーとガス温風ヒーターが主流でしたが、最近新築する離乳舎では温湯式床暖房と温湯式輻射熱暖房(デルタパイプなど)の組み合わせを採用するところが多くなりました。分娩舎と同じく離乳舎でも床暖房は設備コストが高いですが暖房効率が良いこととメンテナンスが楽なことが利点です。ガス温風ヒーターのみを使う場合は室内の上部と豚の生活スペースの温度差が2~4℃になってしまいます。ガス代の安いアメリカならまだしも日本においては燃費効率が良くありません。床暖房を採用する豚舎では跳ね上げ式パネルを取り付けて、離乳後の一定期間は中屋根を掛けたような状態にして保温スペースを作ってやります 

写真4フラップ設置で快適に

こうすることで豚が寝るスペースのみを適温にしながら暖房費を節約することが出来ます。
また最近ではグループシステムの採用で1豚房の収容頭数が40~50のところが多くなっています。オートソーティングを使ったウィーン・ツー・フィニッシュ豚舎では1豚房400~500頭になっています。このような豚舎では、換気制御盤で燃焼のON-OFFをコントロール出来るガスブルーダー(I社のG12Ascoなど)が便利です。これは直径14mの範囲の床面を暖房できるもので、ガス温風ヒーターよりも安価です。写真5~7は仔豚が寒がっている離乳舎の例です。このような豚舎では保温箱を自作するか、跳ね上げ式保温パネルを設置しましょう。そして床面にはゴムマット又はコンパネを敷いてあげましょう。ゴムマットでもコンパネでも仔豚の体感温度は変わらないという研究データもありますので、農場によって使いやすい方を選んで下さい
写真5~7仔豚が寒がっている例