今年も期せずして高豚価が続いていますので、設備投資を継続されている農場も多いのではないでしょうか。私のクライアント様でも畜産クラスターの補助事業を活用して豚舎整備を行っている、または計画されているところが多くなりました。そこで時々議論になるのが、屋根材や外壁材、天井材に何を使うかです。丈夫で長持ちを優先させるかコストを優先させるかで意見が分かれるところですが、私はイニシャルコストが高くなっても長持ちする素材を使うほうが賢いと思います。
特に屋根材や天井材は修理や交換が難しいものですから長持ちする素材を選んだほうが、長い目で見れば低コストになると思うからです。銀行借り入れの金利も安い時代なので、借金を増やしてでも良い素材を選んだ方が得策です。
【屋根材】
一般的に断熱材付きガルバリウム鋼板(丸波または角波)を使うことが多いようです。断熱材の厚さは、その土地の気候にもよりますし、天井有りか無しかでも変わってきます。
木造豚舎の法定耐用年数は17年ですが、実際は1度建てたら25年~30年ぐらい使っている農場が多いでしょうし、その位使いたいものです。ガルバリウム鋼板でも10年くらい経過すると錆びて穴が開いたりしてきます。さらに長持ちを期待するのであればZAM鋼板をお勧めします。ZAMとは亜鉛6%・アルミ3%添加マグネシム合金をメッキした鉄板の事です。亜鉛5%混合アルミ合金メッキであるガルバリウム鋼板より5~8倍長持ちします(メーカー発表値)。価格は断熱材の厚みにもよりますが、断熱ガルバ材の2~3倍します。補助事業で豚舎を作るのでしたら断熱ZAM材を採用することをお薦めします。
一方、昔は多く使われたスレートも根強いファンがいます。スレートは錆びませんから長持ちですが、断熱効果はありません。しかし、天井に断熱材を使うのであれば、屋根はスレートで安く済ませることが出来ます。
豚舎よりも腐食しやすいのが浄化槽の機械室やコンポハウスです。こちらはZAMにするよりも、片面が樹脂板の断熱材を張った上にポリカ波板を張った方が低コストで長持ちすると思います。
【壁材】
排気用換気扇を取り付ける側の壁材は腐食しやすいですから、ガルバリウム鋼板よりもZAM鋼板のほうをお薦めします。豚舎の長辺サイドはカーテンまたは壁になります。カーテン豚舎の方が低コストですが、これからの時代は壁にしてウインドレス豚舎にすることをお薦めします。
理由その1、ネズミやスズメ、ハエや蚊などの有害生物の侵入を防止できますので、伝染病の侵入リスクの軽減にも役立ちます。ハエ対策が全く不要なわけではありませんが、薬剤散布の量や頻度が少なくて済みます。
私のクライアント様農場ではウインドレス豚舎にして全くハエがいない状態を保っている方がいます。本当に快適に仕事が出来ます。一方、ハエだらけの豚舎では、顔にハエがまとわりついて仕事にならない農場もあります。そのような豚舎では豚もしょっちゅうハエを払っているので安眠できないでしょう。
理由その2、断熱効果が歴然と違いますので、夏や冬の発育低下が少ないです。確かに換気扇を回す電気料はかかりますが、発育が良い分、豚舎の回転が速いので、年間出荷頭数を増やせます。カーテン豚舎でも夏は閉めきってクーリングバドを使ったトンネル換気をしている所もあります。私の経験では、ウインドレス豚舎では外気温が35度になっても室内は30度以下に抑えられていますが、カーテン豚舎では同条件下で32度~31度までしか下がりませんでした。
【天井材】
分娩舎や離乳舎は天井有りの豚舎が一般的ですが、ストール舎や肥育豚舎は天井無しの豚舎の方が多いように思えます。関東以西の気候なら肥育舎の天井は要らないという人もいますが、私は是非とも天井付きの豚舎をお薦めします。それはなんと言っても綺麗に洗浄消毒が出来るからです。天井が無ければ梁の上に埃が溜り、やがてカビも生えてきます。
オールインオールアウトで回すのが理想ですが、部分アウト式でも空いた豚房をキチンと洗浄消毒して次のロットを導入していれば、おのずと事故率は減り、発育も良くなります。私のクライアント様農場でも歴然と効果が出ており、提案した私もホッとしています。