実際に豚舎を建設する場合は、大きく分けて養豚建築業者へ一括発注する方法と、部分発注の方法があります。部分発注とは、内部設備は養豚設備業者から購入して、
基礎は土木業者、本体建築は大工さん、電気工事は電気屋さん、設備工事は設備屋さんからそれぞれ見積もりを取って個別に発注する方法です。この方法のほうが安く上がる場合が多いですが、施主自身が現場監督をしなければなりません。ですから、地元で安くやってくれる業者さんとのツテがあるかどうかや、ある程度建築の知識も必要です。
実際私のクライアントさんで600頭収容のウインドレス・全面スノコ肥育豚舎を部分発注した方の例を挙げると、業者一括の場合約5,500万円かかるところを約4,500万円で出来ました。ただし、畜産クラスター事業などの国の補助を使う場合は、必ず一括請負発注にしなければなりません。このことを知らずに個別に見積を取ってからクラスターに申請しようとすると予算オーバーになってしまいますから注意して下さい。
【種豚の能力の違いによる建築コスト差】
補助事業を使って繁殖から肥育まで全て新築する場合は、ハイヘルスな高繁殖能力種豚に入れ替えることをお薦めします。例えば母豚400頭で1母豚当り年間出荷22頭、離乳後事故率6%、平均出荷日令180日の場合と、1母豚当り年間出荷26頭、離乳後事故率3%、平均出荷日令160日の場合を比較して見ましょう。
前者の場合1週間の離乳頭数は180頭で、離乳舎と肥育舎の合計収容頭数は4,500頭分必要です。
後者の方は1週間の離乳頭数は206頭で、離乳舎と肥育舎の合計収容頭数は4,532頭分必要です。
両方とも豚舎の建築工事費はほぼ同じです。これを建物や施設の法定耐用年数平均17年で計算してみましょう。
前者は年間8,800頭×17年で149,600頭。
後者は同様に年間10,400×17=176,800頭。
農場全体の建築コストは1母豚当り200~250万円です。中間を取ると母豚400頭農場は9億円です。これを先ほどの総出荷頭数で割ってみましょう。
前者は6,016円、後者は5,090円です。さらにハイヘルス豚は飼料要求率も良いし、薬剤費も少なくて済みます。
【終わりに】
養豚家が目指すべきものは見かけの豚舎建築費ではありません。最終的に肉豚1頭当りの生産コスト低減です。豚舎の仕様によって、光熱費や労務費も変わってきます。経費項目で言うなら減価償却費、光熱費、診療衛生費、飼育労務費、購入飼料費に影響します。ここをよく見極めて、「安物買いの銭失い」に陥らないように良く検討しましょう。誰でも初期投資コストは低く抑えたいものです。
しかし、私のお薦めは建てた後のランニングコストが安くなる設備投資をすることです。借入が多くなることを気する方が多いですが、相場が安くなって返済がきつくなった時は返済計画の見直しが出来ます。しかし、ランニングコストは簡単に減らせないものです。