「換気の改善と暑熱対策」

 今はまだ新型コロナウイルス対策に神経を使わざるを得ませんが今年も間もなく暑い季節がやってきます。地球温暖化の影響でしょうか毎年のように猛暑が襲ってきます。
かと思えば、冬は極端に寒い日が続いたり、桜が満開の時期に雪が降って寒くなったりと、1年中寒暖の差が激しくなっています。ですからカーテンの開閉だけで豚舎の換気を調整している豚舎では、予想外の気候変動により豚が調子を崩すと言うことが多く見受けられるようになりました。
 そこで今回は、カーテン豚舎にクーリングパドと順送ファン、排気ファンを設置して換気を良くする対策をご紹介します。
コントロールの基本は
・冬の厳寒期はカーテンを全部閉めて入気ファンで陽圧最低換気  隙間風やスクレーパーピットからの吹上を防止するためにこの方式が良い
・初春と晩秋の日較差が大きい季節は温度制御インバーターで陰圧換気・初夏と初秋はカーテンの開閉で自然換気として電気代の節約
・盛夏はカーテンを全部閉めてクーリングパド使用でトンネル換気この制御方法は、私の経験から導き出した、最も低コストで豚にとってベストの環境を手間を掛けずに作り出す方法です
図1は、分娩舎や子豚舎などの天井がある豚舎の設計です。↓ ↓ ↓
図2はストール舎や肥育舎などの天井の無い豚舎の例です。↓ ↓ ↓
まず、冬場の最低換気ですが、これをないがしろにしている豚舎が多いです。温度だけを優先して、換気をせずに閉めきっていると、臭気と湿気が溜って結露ビシャビシャの不快な環境になってしまいます。
これは、豚の呼吸で出る水蒸気と糞尿から発生するアンモニアが溜るからです。表1が豚の体重別に必要な最低換気量です。
環境を良くする基本は、換気を優先して、それでも寒ければ暖房をするか断熱をよくするかの対策をする事です。最低換気を司る換気扇は天井のある豚舎では家庭等の壁取付け型換気扇を使います。
写真1の様に天井裏から室内に空気が送られるように取付け、風が真下に来ないように導風板を自作して取り付けます。
天井の無い豚舎では、トイレファン(パイプファン)をサイドカーテンと軒下の間の壁面に取り付けます。パイプの長さは順送ファンに近くまで風が届く長さにします。順送ファンをインバーターでゆっくり回すことにより、外からの寒い入気が拡散されます。換気扇のサイズと台数は、豚舎に収容する頭数と大きさによって、表1を参考に決めます。例えば、離乳舎で1室300頭だとすると、
0.057×300=17.1㎥/分。写真1のファンの仕様を見ると882㎥/時=14.7㎥/分なので、これ1台で良い事になります。
次に、夏用のトンネル換気ファンですが、ファンの台数はやはり、表1を参照にして最大換気量と頭数を掛け算して計算します。例えば肥育豚300頭収容の豚舎ならば、6×300=1,800㎥/分です。羽根径1mの排気ファン(有圧換気扇)で0.4kwタイプは換気量が330㎥/分なので、6台必要です。
しかし豚舎の妻側幅が狭くて換気扇6台が並ばない場合は、1.1kwタイプがお薦めです。これなら換気量が530㎥/分あるので4台で間に合います。換気扇の制御方式は手動ON-OFFではなく温度制御にした方がよいです。
さらに全部の換気扇が一斉にON-OFFするのではではなく、1室4台の換気扇ならば、2台はインバーターで0%~100%まで温度比例型調整、残り2台はインバーター系統がフル回転になってもっと温度が上がったらONになるという制御がベストです。

図3

図3がそのコントロールパターンです。夏でも1日の中で急に温度が上がったり下がったり数る事があります。手動ON-OFFではこのようなときに対応が遅くなってしまいます。
図4は、私が設計販売しているマックファンコムCJ型の設計図です。
図4
換気扇メーカーが販売しているコントローラーで安いものは、制御が単純で、きめ細かな制御が出来ませんので、制御盤を選ぶ時は注意が必要です。
私の設計では1台の制御盤で順送ファンと排気ファン両方制御出来ます。
順送ファンは温度調節器による比例制御(排気ファンと連動)と非連動の単独手動回転数設定の切替が出来るようにしてあります。
この設計図を使って、お近くの電気屋さんに製作を頼んで頂いても結構です。自動温度制御の換気制御盤は30万円前後の価格になりますが、長い目で見て豚の健康と発育が良くなることを考えると安いものです。
是非この記事を参考に、1年中快適な飼育環境作りに役立てて頂ければ幸いです。