豚舎のお悩み解決135「作業動線に優れた豚舎間の通路」

豚舎間の豚移動は、経験の浅い従業員にとってはとても大変な仕事の一つと言えます。豚舎と豚舎が離れている場合は、トラックに乗せて運ぶとか籠に入れてフォークリフトで運ぶ、などの手段が必要です。地面を歩かせるのは防疫的に好ましくありません。今回は、既存の豚舎間へ豚通路を新設するアイディアや、豚舎内部の動線を考慮した豚舎設計のアイディアをご紹介します。

図1

 図1は豚舎(建物)間に車両が通る道路がある場合のうち、豚舎の床面の高さと道路がほぼ同じレベルの場合です。豚舎間通路はコンクリート舗装にします。車両のタイヤが通る部分のみを低くして豚舎間通路の床面よりも10cmぐらい低く施工します。豚移動時はここに縞鋼板などで作った蓋をします。そして通路の両サイドは可動柵を取り付け、洗浄消毒してから豚を移動します。このようにすれば、衛生的にかつ、楽に豚移動することができます

図2

図3

図2と図3は豚舎(建物)間に車両が通る道路がある場合のうち、豚舎の床面と道路で高低差がある場合です。図2の例では両方の豚舎の出入り口に跳ね上げ式ブリッジを施工するものです。ブリッジの柵の先端をワイヤーで結んでおき、ウインチで上げ下ろしできるようにしておくと便利です。ブリッジの足は常に垂直方向に向くように支持バーを設置します。支持バーの支点の位置は、水平にした時と跳ね上げた時の位置から二等辺三角形の頂点になる位置にします。このようにするとブリッジ跳ね上げた時には足が邪魔にならず、ブリッジを下ろしたときに垂直に立つのでブリッジが安定します。図3の例ではブリッジに車輪を付けて移動できるようにして、使わないときは豚舎脇に寄せておく、という使い方です。

図4

図5

図4は、農場敷地内の空き地に離乳舎を新築したレイアウト例です。建築コストを考えれば図5の方が安いです。通路面積も図5の方が少ないので、移動はこのアウトの方が楽です。では、なぜ図4のレイアウトで建てたかというと、立地が温暖な平野部で敷地の形状が縦横とも同じくらいの長さなので、図5のレイアウトにすると1室の間口が狭くなってしまいます。そうすると夏場のトンネル換気時の入気面積を十分に確保できなくなり、室内を30℃以下にすることができなくなるからです。

図6

図6は、母豚350頭、新築繁殖農場のレイアウト例です。こちらも土地の形状が台形なので豚舎レイアウトに苦労したところです。母豚移動の距離も子豚移動の距離も最短になるように工夫しました。農場の出入り口は図の左下方向なので、防疫的にも一番守りたい離乳舎を一番奥にしています。この豚舎は畜舎等の建築基準特例に準拠して設計しましたので、豚舎間通路は全て屋根と壁があり、野鳥や野生動物が入らない構造にしています。豚移動の時は豚舎のドアを開放しますので、野鳥が入るリスクが伴います。既存の豚舎に後から連絡通路を作る場合は、ぜひとも壁と屋根を作ることをお勧めします。

図7

図7は母豚500頭スリーセブン、グループ生産システムの離乳舎肥育舎のレイアウト例です。こちらも子豚の移動距離が最短になるように工夫しています。通路部分を少なくすることにより、畜舎等の建築基準特例に準拠できるように、通路込みの合計面識が3,000㎡以下に収めています。離乳舎は1室865頭収容。肥育舎は3室構成で、1室865頭収容です。図のような離乳舎1室+肥育舎3室の建物を2組作ると生後182日齢まで肥育できるシステムになります。離乳舎には6週間ごとに離乳子豚を受け入れます。離乳舎から肥育舎には6週間ごとに移動するようになります。