豚舎のお悩み解決138『今からでも間に合う夏場対策

近年は真夏日や猛暑日が10年前に比べて明らかに多くなっています。豚舎の夏場対策もより強化する必要が出てきました。しかし資材の価格や工事費が高騰している状況が続いていますので、少しでも少額投資でできる対策をまとめてみました。
豚舎の暑さ対策は主に、①風を送る、②室温を下げる、の組み合わせです。室温を下げる方法にも、直接室内の空気を冷やす方法と、直射日光や屋根又は天井からの輻射熱を少なくする方法があります。2023年4月号でも『今からでも間に合う夏場対策』と題して寄稿していますので、バックナンバーをご参照いただければ幸いです。今回は送風量を増やす方法を具体的にご紹介したいと思います

図表1

まず、ウインドレス豚舎では、換気扇の台数を増やす、またはハイパワーの機種に交換することです。まずは現在の豚舎に付いている換気扇の換気量が足りているかを図表1を参照して確認してください。有名豚舎建設メーカーが作った豚舎でもこの基準より少ないことがほとんどです。私の設計も以前はこれよりも少ない基準にしていましたが、ここ数年の猛暑を受けて基準を見直しました。

図表2

図表3

次に、自社農場の現在の換気量不足分を補うためにはどれくらいの換気扇増設が必要かを計算します。図表2と図表3をご覧ください。これは肥育豚舎の例です。既存の換気扇はソーワテクニカの0.4kwメーターファンです。カタログで風量を確認すると20,700㎥/hです。この単位は1時間当たりの立方メートルですから、1分当りに換算するには60で割り算します。輸入物換気扇の場合は豚舎を建設した会社へ問い合わせてください。離乳舎のように複数の異なる機種の換気扇が付いている場合は、それぞれの機種の換気量(風量)を調べて合計してください。現在設備の合計換気量が出たら、図表1に示した最大換気量に最大収容頭数を掛け算して目標換気量を計算します。そして目標換気量から現在設備の換気量を引き算すると不足分(追加必要)換気量が計算できます。

この追加分をどのようにして補充するかは、豚舎の状況によります。換気扇を追加するスペースがあるのでしたら、同じ換気扇を追加するのが良いでしょう。追加設置するスペースが無いのでしたら、能力の大きな換気扇に交換しましょう。図表3の例では、既存のファンが0.4kwなので、同じサイズの0.75kwタイプに交換する計算をしてみました。すると、既存10台全部を交換して、さらに1台追加必要という計算になりました。換気扇を追加するスペースが無ければ、追加しなくても交換前の1.3倍の風量になります(図表3の項目M)ので、改善効果は出るでしょう。換気扇を交換した場合は、制御盤の改造も必要になります。ブレーカーやインバーター、配線の交換又は増設が必要となりますので、詳細は電気工事会社へ相談してください。 

図4

図4は換気扇追加分の配線例です。既存の配線には手を加えずに、増設した分を新たに1つの系統として配線します

図5

写真5

図5と写真5は追加した分の換気扇を簡単に温度制御でON-OFFする回路の製作例です。マグネットスイッチは追加する換気扇のワット数合計よりも大きな容量のものを使ってください。追加した換気扇が0.4kw型2台でしたら1.5kw容量のマグネットスイッチです。

図6

写真6

写真6は1mファンの下のスペースに80cmファンを追加する予定の豚舎です。
また、ウインドレス豚舎では換気扇(排気ファン)だけ追加しても入気口(インレット)の開口面積が足りなければ効果は半減します。クーリングパド設置豚舎ではパドの面積を増やすことが最も効果的です。しかし、今から工事依頼しても今年の夏対策には間に合わないでしょう。来年のパド追加を見越して、今年は壁に穴だけあけて、そこに防鳥ネットを張って使うのが良いでしょう。豚舎の妻側の幅が足りなくてパドを増設出来ない場合は、図4のように、豚舎の側面へ増設することをお勧めします。トンネル換気の場合は入気側(パド近く)よりも排気ファン付近が2℃ぐらいの温度が高くなります。ですからパドを追加する場合は、豚舎側面の中間付近に設置するとよいです。ここからも涼しい空気が入るので、豚舎内の温度差が少なくなります