豚舎のお悩み解決141『ピッカーや換気扇の洗浄』

今回は読者様からの質問にお答えする形で、私なりのアイディアをご紹介したいと思います。このほかにも、『農場周辺のクマ対策』や「種雄豚房につけるエアコンでガスと電気のものとどちらがランニングコストが低いか」という質問がありました。
 まず、クマ対策につきましては私も良い知恵がありません。種雄豚房につけるエアコンについては、コスト比較が難しいです。電気料金に比べてガスの単価が、地域や業者さんによって差があるからです。ただ、一つ言えることは、ソーラー発電と蓄電池のセットを補助金をうまく活用して導入できれば、電気の方がコストダウン出来ます。
例えば業務用の3,7kwエアコンを2台導入するのであれば、家庭用として一番普及している10kwのソーラーと蓄電池のセットがリーズナブルです。今年3月からスタートした国の補助金では、『令和6年度補正及び令和7年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金』により上限3,000蔓延まで補助があります。
さて本題です。夏になり豚はたくさんの水を飲みたがります。その水がピッカーから十分な量が出ていますか?皆さんの農場ではどれくらいの頻度でピッカーの洗浄を行っていますか。まず、ピッカーの吐水量が減る原因は大きく4つです。①餌やカビが溜まって芯棒の動きが制限されている。②鉄製の配管内部が錆びて、その錆がはがれてピッカーの後部の網又は穴を塞いでいる。③塩ビ管を補修した際のノコギリ屑がピッカーの後部の網又は穴を塞いでいる。④鉄分の多い井戸水を使っている農場では、水中の鉄分が錆となってピッカーの後部の網に付着している。①の原因はピッカーを外さなくとも掃除ができます。しかし、②~④の場合はピッカーを外して内部を洗浄しなければなりません。しかし、作業する間長時間にわたって給水を止めるのは豚にストレスを与えてしまいます。私がおすすめしたいのは、母豚用なら、1回に分娩舎へ移動する頭数分の予備ピッカーを買っておき、ストール又は分娩柵が空いたタイミングで、外して洗浄済みのものと交換することです。肥育舎や離乳舎では、1回の豚移動の豚房に付いている個数分を準備し、豚移動で豚房が空いたタイミングで交換します

図1

図2

ピッカーの洗浄ですが、プラスチック製のバケツまたは洗面器を用意して、クエン酸またはギ酸や酢酸を水で溶いたものを準備します。クエン酸の場合は、ぬるま湯1リットルに対して、大さじ2杯(約20g)溶かしてください。そこへ分解したピッカーを1日くらい浸けておきます。こうすると錆が落ちやすくなりますし、殺菌にもなります。次に網や水量調節用穴を固めの歯ブラシなどで擦りながら流水で洗い流しましょう。サビが頑固な場合はさびが溜まっている部分に直接クエン酸を適量振りかけてブラッシングしてください

図3

 次に換気扇の洗浄方法です。換気扇は防水タイプとそうではないタイプがあります。防水ではない換気扇のモーターに水がかかると漏電事故になりますからご注意ください。まずは自分の農場の換気扇が防水なのか、そうではないのかを確認し、アルバイトや実習生にもわかるように表示しておくことが肝心です。例えば、海外製のモーター直結駆動のプラスチック羽根のファンは防水です。国産でもモーター直結型畜産用換気扇は防水です。国産も海外性もベルト駆動タイプはモーターが防水ではないものがあります。モーター直結タイプでも防水ではないものがあります(図3)。防水かどうか不明な場合は、洗浄しないで、箒で清掃するようにしてください

図4

図5

防水タイプの換気扇であっても次の3点には注意してください。①洗浄ノズルの先端は換気扇のモーターから50cm以上離してください(ソーワテクニカのカタログより引用)。
また、カタログには『高圧洗浄対応』と書いてある機種でも実際の換気扇には図4のように張ってあるラベルに水に対する注意が書いてある機種は、モーターには洗浄水を直接当てないようにしてください②モーターの電線引き込み口(図5)の防水ゴムが破損している、又はひび割れている場合は洗浄しないでください。

見つけた場合は、ゴムブッシュを交換するか、またはネオシール(電気絶縁用粘土)で防水処理してください。もし、防水タイプの換気扇を洗浄した際に漏電ブレーカーが下がったら、モーターへの電線引き込み口の防水不良を疑ってみてください。

③換気扇を洗浄する際は必ず換気扇を止めてから行ってください。ウインドレス豚舎では洗浄作業中も換気扇を何台かは回さないといけません。その場合は、全部を一気に洗浄するのではなく、回すものと洗浄するものを交互に行ってください。
また、海外製の換気扇でプラスチック製のシャッターが豚舎の内側に付いているものがあります。この場合はシャッターを取り外してから換気扇の羽根を洗浄してください。プラスチックのシャッターも外して床に置き、ノズルの先端から2mくらい離して、シャッターの上方向から洗浄水をかければ高圧洗浄機でも洗浄できます。

図6

 大切な換気扇を洗浄によって壊さないよう、洗浄の注意点や手順は口で説明するだけではなく、何回かやって見せて教えることが重要です。