豚舎のお悩み解決134『安価な冬場対策』

今回は、比較的古い豚舎を対象とした、今からでも間に合う安価に出来る冬場対策です。1つ目はカーテン豚舎への断熱材追加張り。2つ目は子豚の保温スペース。3つ目は陽圧方式の最低換気です。豚舎が老朽化したので建替えしたいけれど、餌高と資材高で、建替えを先延ばししている農場は多いことと思います。今年は豚価が良かったので、補修や軽微な改築ぐらいは出来るかなと考えている方々にはちょうど良いと思われる冬場対策です。
夏場対策を優先して、豚舎の側面の床面から軒の梁まで全面をカーテンにしている豚舎では、カーテンが古くなってくると防寒対策が必要になってくるものです。このような豚舎にお薦めなのが、下半分にポリカダンナミ等の断熱材付外壁材を張ることです。カーテンは外さずにカーテンの内側にポリカダンナミを横長に張るのです。

写真1

写真2

写真3

写真1が施工前の様子、写真2が施工後の写真です。横向きに張るのは、ポリカダンナミのサイズが幅1,040mmで長さが8,100mmまであるので、横向きの張った方が施工は楽なのです。農場従業員の手だけで施工できます。横向きにするので、高さが1,040mmになります。中間の固定が無いと風でバタつくので、中間に1本下地木材を入れます(写真3)。縦方向の固定は、上、中間、下の3箇所をビス留めします。これで冬場の保温効果は増しますが、夏場には今までよりも風の通りが悪くなります。換気扇を追加するとか、ドリップクーリングを追加するなどの夏場対策も合わせて行う必要が生じます。

写真4

2つ目は子豚の保温スペース作成です。カーテン豚舎では、ガス温風ヒーターなどで室内全体を暖房するのは効率が悪くなります。保温箱の様な保温スペースを、木材やコンパネで製作しましょう。写真4は離乳舎用に製作したものです。脇の板と天板を垂木にビス留めして、豚房の隅に固定します。これで上下左右後ろの5面で囲まれた保温箱になります。

図5

箱がずれないように天板の角3点を豚柵に針金で固定してあります。側板の下端はL型金具をボルト止めし、そのL型金具をJ型金具でスノコに固定します(図5)。

図6

写真4では天板に穴を開けてそこへコルツヒーターを吊して使っている例ですが、パンヒーターを使う場合は、図6のように、天板の穴はパンヒーターの直径よりも大きくします。そしてパンヒーターが天板穴の中央に固定できるように針金で固定します。このようにすれば火災の心配は少なくなります

図7

また、天板は設置せず、コンパネ1枚だけで風よけ壁にする場合は、図7のようにします。豚房パネルの上に垂木を渡し、針金等で固定します。コンパネは垂木にビス留めします。コンパネの下部(床接地部)は図5と同じようにL型金具とJ型金具でスノコに固定します。

図8

3つ目は陽圧による最低換気です。断熱が貧弱な古いカーテン豚舎では、冬になると完全に閉めきって、臭気濃度が高くなりがちです。暖房器具がガス温風ヒーターやガスブルーダーのみの場合はなおさら二酸化炭素濃度も高くなります。最低換気とは、豚が呼吸で消費する酸素を供給できる最低限換気の事です。まず天井がある豚舎では、図8のように天井に直径5mmくらいの穴を多数開けます。そして褄側壁に天井裏へ向かって入気する換気扇を取り付けます。換気扇はインバーターで風量を調節出来るようにすると良いです。これで天井裏へ外気を押し込み、天井裏で少し暖まった外気が天井に開けた穴から室内に入ってきます。室内からの排気はカーテンの隙間やピット下(スクレーパー式の場合)出て行きます。夏場はインバーターを逆転運転にして、天井裏の暖まった空気を屋外へ排出します。

図9

天井が無い豚舎の場合はダクトファンを使います。図9のように、外壁に穴を開けて、外気をダクトファンで送り込みます。ダクトの穴は水平方向に向けます。これは、冷たい風が豚に当たらないようにすることと、室内の空気を攪拌する目的があります。ダクトファンもインバーターで風量調節出来るようにします。1年中使う事で、ビニールダクトがしぼむことが無く、鼠の食害を防止できます。