豚舎のお悩み解決139『夏場の節電対策』

光熱費の高騰が続いていますので、養豚場にとっても電力費の負担増が重くのしかかってきています。今回はキューピクルが無く低圧受電している、比較的小規模な養豚場の電気料金低減対策を紹介します。世の中には様々な節電器具や節電情報が出回っていますが、業者にお願いすると高額になってしまう。また、偽情報におどらされて効果が出ないなどの被害もあります。小規模農場にとってはこれが大きな痛手になってしまうこともあります。そこで今回提案するのは、①ON-OFだけの換気扇にインバーターを取り付ける。②非常用発電機の利用。③電子ブレーカーへの変更。④自家使用型太陽光発電の利用、です

写真1

図表2

①のインバーター制御への変更ですが、晴れた日中は全速力で回し、あまり暑くない日や夜間は風力を弱めることで、豚の健康増進と節電の一石二鳥になる方法です。単純にブレーカーと換気扇の配線の間にインバーターを繋ぐだけなので、電気工事店に頼まなくとも自分たちでできるものです。ただし、電気の保安基準に沿った電線の太さや、配線方法にする必要があります。
まずはインバーターの容量を決めて購入することです。一般的なメーターファンには200w(0.2kw)400w(0.4kw)750w(0.75kw)タイプがあります。それが何台つながっているかを数えて掛け算します。例えば0.4kwが6台でしたら2.4kwです。インバーターの規格は0.4→0.75→1.5→2.2→3.7なので、この例では2.4kwより大きい3.7kwタイプを使うことになります。インバーターは国内の主な通販サイトで購入できます。「インバーター 三相200V 〇.〇kw」のキーワードで検索すると出てきます。もし、現在設置されている換気扇のワット数がわからない場合は、換気扇が繋がっているブレーカーのアンペア数を見て、それ以上の定格出力電流値のインバーターを選定します。ブレーカーが15Aなら3.7kw、10Aなら2.2kw、5Aなら0.75kwインバーターを選定します。
取付方法ですが、理想的にはインバーターをプラスチックボックスに入れて取り付けます(写真1)。配線方法は図表2のとおりです。ブレーカーからインバーターまでの電線はVVF1.6(Fケーブル、電線直径1.6mm)を使うと配線しやすいです
②の非常用発電機の利用は、ブレーカーの容量がいっぱいになって、キューピクル受電への変更を勧められているけども、その初期費用数百万の負担が重くて踏み切れないという農場にお勧めの方法です。すでに非常用発電機を備えている農場でしたら、夏場用に追加設置する換気扇を、電力会社からの電源にはつながずに、発電機だけで動かすように配線してもらいます。こうすることで、電力会社との受電契約は増やすことなく換気扇を増やせます。まだ非常用発電機を持っていない農場には、可搬型ディーゼル発電機の購入をお勧めします。購入と配線を全部電気工事店に依頼すると高額になりますので、発電機の購入だけは自分で通販サイトから買うことをお勧めします。発電機は電灯(単相100-200V)と三相200Vを同時出力できるタイプがおすすめです。メーカーでは新ダイワ(やまびこ)がおすすめです。停電時に水道や給餌ラインまで回すことを考え、母豚200頭一貫でしたら最低25KVA型、ウインドレス豚舎があるなら45KVA型が良いでしょう。ヤフーや楽天などの通販サイトでも購入できます。参考価格は、DGM25MKC-Dが170~200万円、DGM450MKが220~250万円(いずれも楽天市場で消費税・送料込み)です。 
③ブレーカーへの変更もブレーカーの容量がいっぱいになって、キューピクル受電への変更を勧められているけども、その初期費用数百万の負担が重くて踏み切れないという農場にお勧めの方法です。受電契約が50KVA以上になるとキューピクル受電にしなければなりません。キューピクル無しの「低圧動力」では従来型のブレーカー契約ですと、最大で125Aです。50KVAになる最大電流は、
50×1000÷200V÷√3=144.5Aです。しかし、普通のブレーカーには145Aという規格はありません。125Aの上は150アンペアです。そこで、125Aでも足りなくなった農場での対策は、(1)換気扇がMAXで回る時間帯は浄化槽のブロワーなどをタイマー運転にして停止させる。(2)電子ブレーカーに変更して、最大使用可能電流値を増やす。の二つになります。電子ブレーカーにすれば、145Aまで使用可能になります。
電子ブレーカーを販売している業者には、ぼったくり業者もいるという情報があります。安心して購入できる業者の一つとして「みんなの電子ブレーカー」というサイトをネットで検索してみてください。本体価格20.9万円(税込み)と良心的な価格を公開しています。このほかにブレーカーの交換工事費と電力会社への申請が必要になります。これは地元電気工事店に依頼してください。手数料は合わせて数万円必要です。
④自家使用型太陽光発電の利用。
従来のシリコン型太陽光パネルは価格が安くなってきました。しかし、重いので豚舎の屋根に載せられないという問題がありました。一方、軽くて曲がるのが特徴のペロブスカイト太陽電池はまだ価格が高いし、耐用年数が短くて実用性はまだまだです。そんな中でも救世主が現れました。「ぺらぺら太陽光」というものです。厚さは3mmで、重量は従来型の1/4です。建物の壁面やスレート屋根にも施工できるそうで、アンモニアなどの臭気による腐食にも強いものです。春と秋の日中使用電力をカバーできる容量の太陽光パネルを設置することが、最も費用対効果を得られます。太陽光発電は春と秋に発電量が多くなりますが、養豚場では最も消費電力が少ない季節です。このときに発電容量がオーバーしてしまうと、その分は売電できませんから無駄になってしまいます。もし、お近くの太陽光発電設備販売代理店で「ぺらぺら太陽光」の取り扱いが無い場合は弊社にお問い合わせください。設置には設備投資資金が必要ですが、電気料金のコストダウン金額以下にリース料を設定してくれる工事業者がありますので、そのような業者へ依頼するのが賢明です。