対策教室

領域Ⅱ:介護


介護過程の概要

 介護過程とは、最適な介護を実施するための一連のプロセスである

 介護過程とは、個々の利用者に対して最も役に立つ介護を提供するための一連のプロセスである。
 介護過程では、①利用者の抱えている介護上の課題を把握(
アセスメント)②その解決のためにどのような介護を行うかを計画実施、④その後、実施した介護の効果について評価(モニタリング)し、その介護を終了するか、継続するか、別の方法に変えるかを考える。
 この過程を繰り返すことで、利用者により良い介護を提供することができる。

 利用者の情報集には、プライバシーに配慮し、個別性を理解する観察力が必要である

 情報収集するには、偏見や先入観を持たず、徐々に接することにより得られる情報もあり、無理に聞き出そうとすることは避ける。ICFの視点に基づいて、「できること」「 していること」を確認し、課題解決の可能性がある情報を整理することなどが必要である。

 アセスメントにより、利用者の解決すべき課題が明確になる

 アセスメントとは、利用者の介護が必要な状況や状態の情報を収集し、そこから利用者が抱える真のニーズを把握し、解決するべき課題を明確にすることである。情報の解釈には多角的、専門的な視点が必要である。

 アセスメントし、生活課題を明らかにすることが支援の根拠となる

 収集した情報を基に、利用者の抱えている生活課題とニーズ(どのような支援を必要としているか)について分析する。
 
生活課題とは、利用者の望む生活を実現するために解決すべきことである。生活課題が複数ある場合は、生命の安全や生活の安定、生活の質(人生の豊かさ)に着目して優先順位を決める。

 モニタリングとは、実施された援助の効果を評価することである

 モニタリングでは、実際に行った援助が、利用者の課題の解決のためにどの程度効果があったのかを評価する。
 評価の結果、問題が未解決であったり、新たな課題が発見されたような場合は、
再アセスメントを行って、再び援助を開始する。

 介護計画は、利用者や家族の同意を得て目標と実施計画と方法を共有し実施可能となる

 介護計画は、利用者や家族に対して説明責任(アカウンタビリティ)と文書による同意が必要である。介護計画を実施した結果の評価は、利用者の生活課題がどの程度解決したのか、目標の達成度を明らかにすることである。
 
経過記録を残し、モニタリング(評価)し、介護過程は引き続き展開される。


 

 介護計画の作成にあたっては、5W1Hを踏まえて具体的に立案する

 5W1Hとは、When(いつ)、Where(どこで)、Who(誰が)、What(何を)、Why(なぜ)、How(どのように)のこと。
 介護計画の作成にあたっては、利用者のニーズなどを把握したうえで、これらを踏まえて具体的に立案する。また、利用者や利用者の家族も閲覧することを踏まえ、わかりやすい言葉を使用する。


 

 利用者のニーズをつかむには、セルフケア能力の判断が大切である

 セルフケア能力とは、利用者自身がどれくらい自分の身の回りのことができるか、という能力である。基本的に、利用者が自分ではできないことを介護従事者が支援するのであるから、何ができないかだけでなく、何を行っているか、何ができるかの把握も大切である。

 介護計画の目標は、実現可能で具体的なものとする

 介護計画は利用者にとって実現可能なものであり、具体的に、介護従事者がどのようなサービスを提供するかが明確であることが大切である。そうでなければ、計画は実行性のない絵に描いた餅になってしまうからである。
 支援目標は、
長期目標と、それを達成するための短期目標を設定する。


 

 介護過程におけるアセスメントの段階で、介護計画が作成される。

×
 アセスメントの次の段階が、介護計画の作成である。

アセスメントの意味

 アセスメントは、「課税」「査定」「税額」といった意味の英語【assessment】から来ているカタカナ用語です。日本では主に、客観的に「評価する」「査定する」という意味で使われています。
 

看護・介護のアセスメント

 患者の情報には、体温や血圧・脈拍などのデータなどの「客観的情報」と、患者が感じている痛みや不安・不調などの「主観的情報」があります。このような患者の状態を分析・評価することを「看護アセスメント」といいます。

 看護の現場では、これらの情報を基に患者の状態に合ったケアプランを作成します。介護の現場でも同様に、介護対象者やその家族と面談を行い、まずは本人の心身の状態や日常生活の状況といった情報を収集する必要があります。これが「介護アセスメント」です。

 評価では、利用者に対して設定した目標がどの程度達成できたかを確認する。


 評価の結果、問題が未解決であったり、新たな課題が発見されたような場合は、再アセスメントを行い、再び援助を開始する。

 介護計画に長期目標を設定した場合には、短期目標は設定しない。

×
 介護計画には、長期目標と短期目標の両方を設定する必要がある。


介護過程の実際

 援助の効果については、ADLだけでなく多面的に評価する

 援助を実行した後に、援助の効果について評価する(モニタリング)。その際、日常生活動作(ADL)がどのように変化したかだけでなく、生活の質(QOL)が向上したかを含め、多面的に評価することが求められる。

 観察のポイントは、利用者の身体的側面認識・心理的側面行動面の3つである

 高齢者や障害者は身体状況に変化を起こしやすいため、観察が必要であり、介護活動の出発点は観察であるといえる。

《観察ポイント》
身体的側面…身体に何らかの違和感、症状・障害がないか
認識・心理的側面…利用者本人が身体状況や生活環境についてどう考えているか
行動面…利用者の生活にどのような制限や不自由さがあるか

 訪問介護計画は、サービス提供責任者が作成する

 訪問介護計画は、サービス提供責任者が作成する。訪問介護計画には、利用者の日常生活全般の状況や希望を踏まえた上で、訪問介護の目標、その目標を達成するための具体的なサービスの内容などが記載されている。利用者又は家族に説明し、利用者の同意を得て確定する。

 介護計画は、定期的にモニタリングを実施し、必要に応じて変更する

 定期的にモニタリングを実施し、利用者の心身状態や生活環境の変化、要介護度の変更、利用者の希望などによって、介護計画の内容を変更することを検討する。
 介護計画の見直し、変更を行う際は、
サービス担当者会議ケアカンファレンス)を行い、利用者や家族の意向と専門職などの意見を聞き、利用者や家族に説明し文書において同意を得る。