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領域Ⅲ:こころとからだのしくみ


こころとからだのしくみ

 マズローは、人間の欲求を5段階に階層化した

 

 記憶には「短期記憶」と「長期記憶」がある

 短期記憶は、ごく短時間だけ情報を保持するもので、加齢の影響を受けにくい長期記憶は長期間にわたって情報を保持するものであるが、長期記憶のうち、エピソード記憶、特に比較的最近の出来事(近時記憶)については加齢の影響を受けやすい。意味記憶、手続き記憶、かなり時間が経過した出来事(遠隔記憶)については機能が低下しにくい。
 このため認知症の高齢者であっても若い頃のことはよく覚えている。

 記憶には、記銘保持再生の3過程がある

 記銘はある経験を覚えこむこと、保持はそれを蓄えておくこと、再生は必要な場合にそれを思い出すことである。記憶はこの3過程からできている。

 感情には、情緒・情動気分情操・価値観の3つの側面がある

  感情とは、事象や状況について意味づけを行う心理面における機能的概念である。
 悲しみや怒りなどの主観的な体験は、生理的機能や身体的な表出が現れることによって、他者に認知される。

 脳は、大脳小脳脳幹に大別される

 大脳には、大脳皮質大脳辺縁系大脳基底核がある。
 大脳皮質は、右半球と左半球に分かれ、それぞれが、
前頭葉側頭葉頭頂葉後頭葉の4部位に分かれている。

 前頭葉:思考、判断、記憶、計算
 
運動中枢:口、舌、手足の動きの調節
 
頭頂葉:皮膚、知覚等の感覚の調節
 
側頭葉:音、情緒、感情等の調節
 
後頭葉:視覚調節
 
運動性言語中枢:話す言葉の調節
 
感覚性言語中枢:言語理解

 肘関節と手関節の間を、前腕という

 肘関節から手関節(手首)までが前腕である。前腕には橈骨(とうこつ/親指側)と尺骨(しゃっこつ/小指側)があり、橈骨は高齢者が骨折しやすい骨である。
 なお、肘関節から肩関節までは
上腕という。

 高齢者には、脊椎圧迫骨折、橈骨骨折、大腿骨頸部骨折が多くみられます。

 膵臓は、外分泌腺ランゲルハンス島からなる

 外分泌腺は、消化酵素を十二指腸内へ分泌し、ランゲルハンス島は、インスリンやグルカゴンなどを分泌する。

 胸部と腹部は、横隔膜によって分けられる

 横隔膜は胸部下口を閉じる膜である。
 
横隔膜より上部が胸部(心臓や肺がある)、下部が腹部(消火器や生殖器がある)となる。

 腎臓は、背側にある

 腎臓は腰椎の左右に一対ある泌尿器であり、背側に位置している。
 なお、消化器は下図のように位置している。

 坐骨神経は、大腿部を走行している

 坐骨神経は、末梢神経の中で最も太く長い神経である。腰椎の下から始まり、大腿部を通って下肢の知覚や運動をつかさどる。

 橈骨神経は、上腕部から前腕部を走行している

 橈骨神経は、上腕部から前腕部親指側を通っている。上肢の知覚や運動をつかさどる。

 大腿四頭筋が収縮すると、膝関節が伸びる

 大腿四頭筋は膝関節の上部、大腿部の前面にあり、大腿四頭筋が収縮(縮む)すると膝関節が伸展(伸びる)する。
 このとき、背面にある大腿二頭筋は
弛緩(ゆるむ)している。逆に、大腿四頭筋が弛緩し、大腿二頭筋が収縮するとき、膝が屈曲する。

 上腕三頭筋が収縮すると、肘関節が伸びる

 上腕三頭筋は肘関節の上部、背面にあり、上腕三頭筋が収縮すると肘関節は伸展する。このとき、前面にある上腕二頭筋は弛緩している。
 逆に上腕三頭筋が
弛緩し、上腕二頭筋が収縮すると肘関節は屈曲する。

 大動脈は、左心室から出る

 血液の流れは次のようになっている。
 心臓は1回の
収縮で約70~100mlの血液を送り出す。赤血球が酸素運搬を担う。

 高齢者の高血圧症では、血圧の日内変動が大きく、正常なリズムを示さないことが多い

 高齢者の高血圧症では、血圧が動揺しやすくなるため、血圧の日内変動が大きくなったり、起立性低血圧症を生じやすい。
 また、高齢者では、動脈硬化の促進とともに収縮期血圧が
上昇し、拡張期血圧が低下して、脈圧が拡大する。

 不感蒸泄とは、皮膚や呼吸からの蒸発によって水分が失われるものをいう

 体温は、身体から水分を蒸発させて調節しており、この蒸発には、不感蒸泄発汗がある。不感蒸泄よりも発汗のほうが体温を大きく調節する機能がある。
 汗は、水とナトリウムなどの電解質を成分として含んでおり、
血液からつくられる。

 マズローの欲求階層説では、最下層にあるものは自己実現の欲求である。

×
 最下層は生理的欲求であり、自己実現の欲求は最上層である。

 運動性言語中枢(ブローカ中枢)は、言語を理解する機能を果たしている。

×
 運動性言語中枢(ブローカ中枢)は、話す言葉の調節を行う。 

 右肺は上葉・下葉からなり、左肺は上葉・中葉・下葉からなる。

×
 右肺は上葉・中葉・下葉、左肺は上葉・下葉からなる。

 酸素を含んだ血液は、肺静脈を通って心臓の左心房に入り、左心室から大動脈を通って全身を巡る。


 心臓は、1回の収縮で約70~100mlの血液を送り出している。 

 高齢者の高血圧症では、血圧の日内変動が大きい。


 高齢者の高血圧症では、一日の中で血圧が変動する日内変動が大きく、リズムも一定でないことが多い。


日常生活に関連した こころとからだのしくみ

 高齢者は咳反射が低下し、誤嚥を起こしやすくなる

 咳反射とは、誤って気管に異物が入った場合に、その異物を排出するために激しく咳込むことをいう。
 高齢者は、この咳反射の機能が低下しているため
誤嚥誤嚥性肺炎を起こしやすい。

 食物を認知して口に入れ、咽頭と食道を経て位に入るまでの過程を、摂食・嚥下という

 ◆摂食・嚥下の5分類

 高齢者の便秘は、便の排出力の低下によって起きることが多い

 高齢者の便秘は、腸の蠕動運動が弱くなることや、排便するときに使う腹筋腸管筋の緊張が緩んでくることなどによって便の排出力が低下して起こることが多い。
 便秘を予防する効果的な方法として、適度な
運動、定期的な水分摂取、規則正しい食事などがある。

 高齢者の下痢は、短時間で脱水電解質の異常を招く

 高齢者の下痢は短時間で脱水電解質の異常を招くため、水分の補給に努めることが重要であり、症状によっては主治医に連絡することも必要である。また、高齢者は加齢により肛門括約筋が弛緩しており、下痢の際に便失禁を起こしやすいため、十分に配慮する。

 入浴には、生理的効果心理的効果社会的効果がある

 入浴により、生理的効果(心肺機能や利尿作用の促進、感染予防等)、心理的効果(爽快感の獲得、リラックス効果等)、社会的効果(清潔保持により社会参加がしやすくなる等)などの効果が得られる。また、入浴には、温熱作用、静水圧作用、浮力作用の3つの作用がある。
 42度以上の
高温による入浴は、筋肉が収縮する。

 レム睡眠では、身体は眠っているのに脳は覚醒に近い状態である

 睡眠には、レム睡眠ノンレム睡眠を約90分間周期でくり返すリズムがある。
 
レム睡眠では、身体は眠っているのに脳は覚醒に近い状態であり、夢を見ることが多い。ノンレム睡眠は身体も脳もぐっすりと眠っている状態である。
 良い睡眠のためには、生活にメリハリをつけ、身体を動かし、生活リズムを整えることが大切である。

 高齢者は、日中を活動的に過ごすことによって睡眠が促進される

 高齢者の不眠の原因としては、①日中の活動不足、②昼寝のしすぎ、③夜間頻尿、④疼痛やかゆみによる入眠困難や覚醒、⑤睡眠薬(入眠導入剤)の乱用などが挙げられる。
 日中できるだけ
離床し、活動的に過ごすようにこころがけることは、睡眠を促すために有効である。

 睡眠時無呼吸症候群では睡眠の質が低下し、日中に過度の眠気が起こって日常生活に支障をきたす

 睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が停止したり、喉の空気の流れが弱くなったりする病気で、睡眠中に10秒以上の無呼吸(呼吸が止まること)または低呼吸(呼吸による換気が50%以下に低下すること)が1時間に回以上ある場合に診断される。

 臨床的な死の3大兆候は、心停止自発的呼吸停止瞳孔散大である

 死の定義は、生物学的な死(生理機能が不可逆的に停止)、法律上の死(死亡診断書の発行)、臨床的な死(3大兆候の確認)によって異なる。
 危篤状態になると、呼吸は深さや間隔が乱れ(チェーンストーク呼吸、肩呼吸、下顎呼吸等になる)、体温・血圧・脈拍の低下、チアノーゼ、喘鳴などの兆候が表れる。

 キューブラー・ロスは、終末期の患者の心理過程を「否認」「怒り」「取引」「抑うつ」「受容」の5段階に分けた 

 ◆死の受容の5段階

 死の直前には、チェーンストークス呼吸肩呼吸などがみられる

 終末期になると、呼吸の深さや間隔が乱れ、死の直前には、チェーンストークス呼吸、肩呼吸、下顎呼吸、鼻翼呼吸がみられる。

 悲嘆反応は、感情的反応認知的反応行動的反応生理的・身体的反応に分類できる

 死別による悲嘆反応は、①感情的反応(絶望や不安など)、②認知的反応(個人の現存感や自己批判など)、③行動的反応(探索行動や過行動など)、④生理的・身体的反応(食欲低下や睡眠障害など)の4つに分類できる。

 ボウルヴィが提唱する「喪の仕事」では、死別の過程を
①感情麻痺の時期、
②思慕と探索の時期、
③混乱と絶望の時期、
④脱愛着と再起の時期の4段階に区分しています。

 レム睡眠は、身体も脳もぐっすりと眠っている状態である。

×
 レム睡眠は、身体は眠っているのに脳は覚醒に近い状態である。身体も脳もずっすりと眠っている状態は、ノンレム睡眠である。

 臨床的な死の3大徴候は、心停止、自発的呼吸停止、瞳孔縮小である。

×
 臨床的な死の3大徴候は、心停止、自発的呼吸停止、瞳孔拡大である。