対策教室

領域Ⅰ:人間と社会


人間の尊厳と自立

 人間の尊厳は「人間として尊ばれるべき誇り」という意味で、人権ともいわれる。

 人権の思想は、18世紀のメリカ独立宣言(1776年)やフランス革命における人権宣言(1789年)に明記され、20世紀にはいると、人権の具体化のために社会権がうたわれ、ドイツのワイマール憲法で生存権が明記された。

 すべての人は生まれながらにして自由であり、尊厳と権利について平等である

 第二次世界大戦後、1948昭和23)年に国際連合が世界人権宣言で「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳権利とについて平等である」と宣言した。また、1975昭和50)年の国連総会で採択された障害者の権利宣言には、「障害者は、その人間としての尊厳が尊重される生まれながらの権利を有する」と明記されている。

 日本国憲法第25条では、生存権が保障されている

 わが国において人間の尊厳は、日本国憲法の基本的人権の尊重(第11条)、個人の尊厳(第13条)に明記されており、また、第25条では基本的人権を日常生活の面で具体化した生存権が保障されている。

 福祉サービスの基本理念は、「個人の尊厳の保持」である

 社会福祉法第3条に、福祉サービスは、「個人の尊厳の保持」を旨とし、利用者が健やかに育成され、また「能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように支援するもの」であるよう規定してある。そのほか、障碍者基本法、介護保険法、社会福祉及び社会福祉法などでも尊厳の保持を明記している。

 自立生活運動(IL運動)は、従来の障害者援助のあり方を批判し、障害者の自己決定を主張した。

 自立生活運動(Independent Living Movement)は、1960年代に、アメリカの障害を持つ大学生が始めた運動で、ADLの自立重視や専門的援助者の障害者支援のあり方を批判し、障害者の自己決定権を主張した。ノーマライゼーション思想と共に広まり、わが国でも展開されている。

 糸賀一雄は、『この子らを世の光に』を著し、知的障害児施設『近江学園』を設立した

 糸賀一雄は、『この子らを世の光に』の中で、生まれながらにしてもらっている人格発達の権利を徹底的に保障せねばならないと訴え、人間の発達する権利とその保証を目指す発達保障について主張した。また、知的障害児を療育するしせつとして「近江学園」を設立した。

 福祉サービスの基本理念は、「生前県の保持」である

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福祉サービスの基本理念は、社会福祉法第3条において「個人の尊厳の保持」を旨とすることが示されている。

 糸賀一雄は、『この子らに世の光を』を著し、知的障害児施設「近江学園」を設立した。

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糸賀一雄は、「このこら世の光」を著し、日本初の知的障害児施設「近江学園」を設立した。

 

ぼやき…
 
『この子らに世の光を』ではなく、『この子らを世の光に』ですって。「を」と「に」の順番が入れ替わっているわけですが…。「出題者、性格悪いんちゃう??」と、思わず関西弁で突っ込みを入れたくなったのだ。
 それはともかく、『この子らを世の光に』だと、象徴的な存在?彼らの生活ベースが世の中の基準的な意味合いに感じます。
 『この子らに世の光を』だと、太陽の光も当たらぬ暗い部屋で監禁でもされてるんですかね??的な意味合いに感じてくるから日本語って面白いと、今更ながら思うのです。

介護における尊厳の保持・自立支援

 アドボカシーとは、利用者の権利を守り、利用者の立場に立って代弁することである

 アドボカシーは、一般に代弁または権利擁護などと訳されるもので、自分の権利を主張し行使することが困難な人(高齢者、障害者、児童など)のもつ権利が侵害されないように、本人に代わって援助者が代弁することによって側面的に支援することをいう。 

ソーシャルインクルージョンとは、すべての人を社会の構成員として包み込み、共に支えあうという理念である

 ソーシャルインクルージョンの理念とは、障害のある人も障害のない人も、すべての人々を孤独や孤立、排除や摩擦から守り、同じ社会の構成員として包み込み、健康で文化的な生活の実現につなげるよう共に支えあう社会を目指すことである。

 利用者の自己決定権を、尊重する

 介護を必要とする人が自分の意思で自分の生き方を決めれるよう、自己決定を最大限尊重する。また、自己決定が難しいと思われる場合でも、自己決定できるようできる限り支援する。

 Check!
自己決定は、個別援助の原則の1つですが、あくまでも
自己決定の能力の有無や公共の福祉に反しない限りにおいて尊重されます。




ぼやき…
『意思(いし)と意志(いし)』の違い。
初見、意思という漢字は誤字だと思ったのだ。と申しますか、意思の漢字が読めなかったのだ。『いそう』と読んでしまった…。
 それはさて置き、
『意思』…考え 思い(法律)、「意思の疎通を欠く、個人の意思を尊重、意思表示」
『意志』…成し遂げようとする心(心理学)、「意志が固い、意思を貫く、意志薄弱」
このように情報を整理してみると、同じ読み方でも漢字表記?漢字表現次第では、受け取るニュアンスが違ってくるから面白いですね。

 自立支援の観点に立つ場合、介護者は手助けをしすぎないようにする

 自立支援を行う際には、利用者本人の意思を尊重し、意欲を引き出すことが重要であり、利用者の残存能力をできる限り活用して伸ばすことが大切である。すなわち、介護者が過剰な手助けをすることは、利用者の自立を妨げることになりかねない。


権利擁護

 日常生活自立支援事業の実施主体は、都道府県社会福祉協議会または指定都市社会福祉協議会である

 日常生活自立支援事業は、社会福祉法に基づく福祉サービス権利援助事業として位置づけられている。
 窓口業務などは市区町村社会福祉協議会に委託することができる。
 日常生活自立支援儀業の対象は、認知症、知的障害、精神障害などがあることによって、判断能力が十分でないため、適切な福祉サービスを受けることができないが、事業の契約内容については判断できる程度の者となっている。

●日常生活自立支援事業の主な支援内容
生活支援…   ・介護保険サービス事業者と契約締結の援助
        ・要介護認定に関する申請手続の援助
行政手続…   ・行政手続きの代行
日常的金銭管理…・通帳や印鑑等の預かり
        ・預金の引き出し
        ・公共料金、福祉サービス利用料、家賃の支払

書類等の預かり…・大切な書類の保管

 日常生活自立支援事業を実施する専門職には、専門員と生活支援員がある

 日常生活自立支援事業において、専門員は、支援計画の作成や契約の締結に関する業務を担当し、生活支援員は、支援計画に基づいて実際の支援を行う業務を担当する。専門員は原則常勤、生活支援員は非常勤となっている。

 日常生活自立支援事業では、苦情解決のため、運営適正化委員会を設置する

 運営適正化委員会は、①「福祉サービス利用援助事業」の適正な運営と、②福祉サービスの利用者からの福祉サービスに関する苦情解決(相談、助言など)のために、都道府県社会福祉協議会または指定都市社会福祉協議会に設置されている。

 成年後見制度には、任意後見制度と法定後見制度がある

 任意後見制度は、現在は判断能力が十分である人が、将来判断能力が不十分になった場合に備えて、あらかじめ任意後見人を選定し、契約しておく(任意後見契約)制度である。
 
法廷後見制度は、現に判断能力が低下している人のための民法に規定された制度であり、親族市町村長などの申立てにより、家庭裁判所が後見人を選定する。

 法定後見制度には、後見、保佐、補助の3類型がある

 法定後見制度には、後見、保佐、補助の3類型があり、本人の判断能力に応じて決定される。
後見…判断能力を喪失しているもの
保佐…判断能力が著しく不十分なもの
補助…判断能力が不十分なもの

 法定後見は、家庭裁判所が後見開始の審判をし、後見人を選任する

 法定後見制度は、親族や市町村長などの申立てにより、家庭裁判所が後見開始の審判をし、後見人保佐人補助人を選任する。

後見人…すべての法律行為に関する代理権、取消権を有する
保佐人…民法の特定行為に関する同意権、取消権、家庭裁判所の審判を受けた法律行為に関する代理権を有する。
補助人…家庭裁判所の審判を受けた法律行為に関する同意権、取消権、代理権を有する

 任意後見契約の発効に関する申立ては、本人、配属者、4親等内の親族などが行う

 本人配属者4親等内の親族などが家庭裁判所に申し立て、任意後見契約の発効時に家庭裁判所が任意後見監督人を選任したうえで、任意後見受任者が任意後見人として認められる。任意後見監督人は、任意後見人の不正や権限の濫用を防ぐため、任意後見人を監督する。

 養護者による虐待により生命や身体に重大な危機が生じている高齢者を発見した者は、速やかに市町村に通報する義務がある

 高齢者虐待防止法(高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律)により、養護者による虐待を受けたと思われる高齢者を発見した者は、高齢者の生命や身体に重大な危機が生じている場合、速やかに市町村に通報しなければならない。また、養護者による虐待が疑われる場合、速やかに市町村に通報するように努めなければならない。

 高齢者虐待防止法では、虐待者を養護者と養介護施設従事者等に区分している

 養護者とは、高齢者の世話をしている家族、親族、同居人等を指す。養介護施設従事者等とは、養介護施設はたは養介護事業等の業務に従事する者を指す。

 高齢者虐待防止法では高齢者虐待を5種類に分類している

身体的虐待…身体に外傷が生じる暴行(外傷が生じる恐れがあるものも含む)を加えること
心理的虐待…暴言や拒絶的な対応など著しい心理的外傷を与える言動を行うこと
介護等放棄…衰弱させるような著しい減食、長時間の放置、養護者以外による虐待行為の放置など養護を怠ること(ネグレクト)
性的虐待…わいせつな行為をすることやさせること
経済的虐待…財産の不当な処分などによって、高齢者から不当に財産上の利益を得ること

 障害者差別解消法は、障害者に対する「不当な差別的扱い」を禁止し、「合理的配慮」を行うことを義務付けている

 ◎「不当な差別的扱い」とは、正当な理由なく、障害者を障害者でない者より不利に扱うことをいう。
<具体例>
・サービスの提供を拒否したり、条件をつけたりする
・募集や採用にあたって、募集の対象から排除したり不利な条件を付す
・賃金、配置、昇進、降格、教育訓練などの項目で不利な条件を付す

◎「合理的配慮」とは、生活に支障が生じないように、一人ひとりの障害特性にあわせて行われる個別的な配慮や支援のことをいう。
<具体例>
・物理的環境への配慮(車椅子利用者のために段差に携帯スロープを渡す、高い所に陳列された商品を取って渡すなど)
・意思疎通の配慮(筆談、読み上げ、手話などによるコミュニケーション、わかりやすい表現を使って説明するなど)
・ルールや慣行の柔軟な変更(障害の特性に応じた休憩時間の調整など)

 障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)は、2016(平成28)年に施行された。

対象

国の行政機関・地方公共団体等

民間事業者(非営利事業者を含む)

不当な差別的取扱い

禁止

禁止

合理的配慮

法的義務

努力義務

 利用者に対する身体拘束・行動制限は、原則として禁止される

●介護保険施設の指定基準で禁止されている身体拘束となる行為。

①徘徊防止のためにいすやベッド等に縛りつける
②転落防止のためにベッドに縛りつける
③自分で降りられないようにベッドをで囲む
④チューブを抜かないよう四肢を縛る
⑤皮膚を掻くなどを抑えるためミトン型の手袋をさせる
⑥車いすなどからずれたりしないようY字帯などをつける
⑦立ち上がりを妨げるようないすを使用する
⑧おむつ外しなどを制限するため介護衣(つなぎ服)を着せる
⑨他人への迷惑行為を防ぐためベッドなとに縛りつける
⑩落ち着かせるため向精神薬を過剰に服用させる
⑪自分であけられない居室等に隔離する

 障害者虐待防止法では、虐待者を、養護者、障害者福祉施設従事者等、使用者に分けている

 2012(平成24)年に施行された障害者虐待防止法(障害者虐待の防止、障害者の擁護者に対する支援等に関する法律)では、障害者虐待を①養護者によるもの、②障害者福祉施設従事者等によるもの、③使用者によるものに分けて規定している。

 障害者虐待防止法では、障害者虐待を5種類に分類している

身体的虐待…身体に外傷が生じる(外傷が生じるおそれのあるものを含む)暴行を加えることや、正当な理由なく身体を拘束すること
性的虐待…わいせつな行為をすることや、わいせつな行為をさせること
心理的虐待…著しい暴言や拒絶的な対応など、著しい心理的外傷を与える言動を行うこと
介護等放棄…著しい減食、長期間の放置、養護者以外の同居人による虐待行為の放置など養護を著しく怠ること(ネグレクト)
経済的虐待…障碍者の財産を不当に処分することなど、障害者から不当に財産上の利益を得ること

 使用者による障害者虐待の通報・届出先は、市町村または都道府県である

 養護者による障害者虐待や障碍者福祉施設従事者等による障害者虐待の通報先は市町村であるが、使用者による障害者虐待については、市町村だけでなく、都道府県にも通報・届出をすることができる。
 使用者による障害者虐待を受けた障碍者本人も、その旨を市町村や都道府県に届け出ることができる。

 障害者虐待の防止などを図るため、市町村障害者虐待防止センター都道府県障害者権利擁護センターが設けられている

  市町村障害者虐待防止センターや都道府県障害者利権擁護センターは、障害者虐待防止法に基づき、障害者虐待の防止、虐待を受けた障碍者の保護、障害者虐待に関わる通報、届出の受理などを行うために設けられている。
 市町村障害者虐待防止センターや都道府県障害者権利擁護センターの業務は、委託することもできる。
市町村障害者虐待防止センター
都道府県障害者権利擁護センター
・障害者虐待に係る通報や届出の受理
・障害者や養護者に対する相談、指導、助言
・障害者虐待の防止や養護者に対する支援に関する広報などの啓発活動
など
・使用者による障害者虐待に係る通報や届出の受理
・市町村相互間の連絡調整、市町村への情報提供
・障害者虐を受けた障害者に関する各般の問題や養護者に対する支援に関する相談
など

 

日常生活自立支援事業の実施主体は、都道府県社会福祉協議会または指定都市社会福祉協議会である。


 日常生活自立支援事業は、社会福祉法に基づく福祉サービス利用援助事業として位置づけられている。

 法定後見制度には、後見、保佐、補助の3類型があり、本人の経済力に応じて決定される。

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 後見、保佐、補助の3類型は、本人の判断能力に応じて決定される。
 

 養護者による虐待が疑われる高齢者を発見した者は、程度を問わず、速やかに市町村に通報しなければならない。

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 高齢者の生命や身体に重大な危険が生じている場合には速やかに市町村に通報しなければならず、虐待が疑われる場合は速やかに市町村に通報するよう努めなければならない。
 

ぼやき…
 「ちょっと、あんまり意味が分からないんだよな~」ってなのが第一印象。重大な危険とそうでない危険の差や区分って何なんだろう??と言うか、『重大な危険』と言葉を濁すのではなく、具体的に事例の説明や判断基準を公表して欲しいのよね。
 それはさて置き、この設題のひっかけ箇所は、生命や身体に重大な危険が生じている場合には速やかに市町村に通報する義務があるが、虐待だと疑われる程度ならば市町村へ通報するか否かは、その人の価値観や気分次第ってことになるんですかね??
 また、生命や身体の他に、財産に対する虐待?財産に対しては虐待ではなく詐欺事件として取り扱われるのかな??
 知識の深堀のきっかけと成り有難いのですが、なんだかモヤっとした気持ちになったのよね。

 障害者差別解消法で規定する民間事業者には、非営利事業者は含まれない。

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 障害者差別解消法で規定する民間事業者には、NPO法人などの非営利事業者が含まれる。
 

 利用者に介護衣(つなぎ服)を着せることは、身体拘束・行為制限に該当する。


 おむつを外すことなどを防ぐため利用者に介護衣(つなぎ服)を着せることは、身体拘束・行動制限に該当する。