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対策教室
領域Ⅲ:こころとからだのしくみ
9⃣ 認知症の理解
認知症
の基礎
認知症
への支援
認知症の基礎
認知症とは、
脳の器質的障害
などによって生じ、記憶力などが低下するものをいう
ICD-10(国際疾病分類10版)では、認知症を「通常、慢性あるいは進行型の
脳疾患
によって生じ、記憶、思考、見当識、理解、計算、学習、言語、判断など多数の
高次脳機能
の障害からなる症候群」と定義している。
認知症は、認知症の症状を引き起こす
原因疾患
によって分類される
認知症には、認知症の症状を引き起こす
原因疾患
があり、主要なものは
変性
疾患と
脳血管
障害に分けられる。
このほか、外傷性疾患、感染症、内分泌代謝性疾患によるものなどがある。
認知症では、
記憶力
、
計算力
、
理解力
、
判断力
が低下する
認知症の知的な障害としては、
記憶力
の低下、
計算力
の低下、
理解力
や
判断力
の低下などが見られる。
認知症では、認知機能障害のほかに、徘徊・不潔行為・収集癖などが生じることも多く、社会生活上の障害となる。
認知症では、日時、場所、人物などがわからなくなる
見当識障害
が起きることがある
認知症の場合、日時・場所・人物などがわからなくなる
見当識障害
を生じることがある。
例えば、自宅に居るのに「家に帰る」と言って出かけようとしたり、日付がわからなくなったり、亡くなった人に「会いに行く」と言ったりする。これが
見当識障害
である。
本人は、見当識障害などを自覚していない。
認知症では、脳の
病変
により、
知的機能
が低下する
認知症では、単なる老化に伴う記憶力の低下とは異なり、脳の病変によって知能全般の低下が生じる。
主な症状として、認知機能の障害がある。
知能の低下は、
血管性認知症
では脳梗塞や脳出血によって脳細胞の一部が壊死するために生じ、
アルツハイマー
型認知症
では、脳の萎縮のために生じる。
認知症は、
生活障害
を引き起こす
認知症になると認知機能が低下し、
生活障害
が引き起こされる。
初期には、家事・買物・金銭管理などの
手段的日常生活動作
(
IADL
)の障害が生じる。
認知症の介護は、「認知症の人の
生活
を支える」という視点で接することが求められる。
高齢者の認知症の程度は、「
認知症日常生活自立度
」で表される
アルツハイマー型認知症では、
エピソード記憶
や
近時記憶
の障害が著しい
アルツハイマー型認知症は脳の
変性
(萎縮)により起こるもので、初期症状として
健忘
(物忘れ)がみられる。
エピソード
記憶(出来事そのものの記憶)や、
近時
記憶(最近の記憶)の障害が著しく、進行すると、
見当識
障害、注意障害、遂行機能障害、失認、失効などが加わり、社会的認知機能も障害される。
血管性認知症は、
脳血管障害
(脳出血・脳梗塞など)が原因となって発症する
血管性認知症の特徴的な症状として、会話や動作が
緩慢
になる、反応が鈍くなる、意欲や自発性が
低下
するなどがある。
大脳基底核に病変がある場合は、
パーキンソン症状
(振戦、無動、固縮、小刻み歩行など)などの
運動障害
を伴う。また、感情のコントロールがつかず、すぐに泣きだしたり、怒ったりする
情動
(
感情
)
失禁
もみられる。
前頭側頭型認知症
の認知障害は、
改善が困難
である
認知障害のうち、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症、うつ病、甲状腺機能低下症など
脳
の器質的な疾患によるものでない場合には
原因疾患
の治療によって改善が可能であるが、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症などの場合は改善が困難である。
レビー小体型認知症は、
初期
から生じる
幻覚
、特に
幻視
が特徴である
レビー小体型認知症は、脳の神経細胞に特殊なたんぱく質(
レビー正体
)が蓄積することによって起こる。
症状としては、記憶障害などの認知症の症状に加え、
パーキンソン症状
や
幻視
がみられる。幻視は比較的初期から現れ、
具体的
で
鮮明
であることが特徴である。
慢性硬膜下血腫では、
転倒
による
脳打撲
があった
2~3か月後
くらいに、
頭痛
や
もの忘れ
の症状がみられる
慢性硬膜下血腫の原因には
転倒
による
脳打撲
があり、打撲時は痛みのほかは症状が見られない。
打撲後、数週間から3ヶ月後くらいに頭痛や、もの忘れの症状が生じる。
若年性認知症とは、
65歳未満
で発症する認知症をいう
若年性認知症は、65歳未満で発症する認知症であり、作業能率の低下など、
実行機能
の障害が先行して生じる場合がる。
若年性認知症の原因疾患としては、アルツハイマー病や
血管性認知症
が多くなっている。
若年性認知症で介護保険の第2号被保険者は、市町村が認めた場合に、障害福祉サービスを利用することもできる。
うつ病やせん妄は、
認知症の症状に似ている
ため、間違われやすい
うつ病
は、意欲の低下や無関心などの症状を示すため、認知症が現れたと間違われる場合がある。
また、
せん妄
も、幻視、幻聴、妄想などを示すことから、認知症が現れたと間違われる場合がある。
なお、
せん妄
の原因には、脱水、脳の器質疾患、感染症、栄養失調、手術の影響などがある。
軽度認知障害(MCI)は、
認知症の予備軍
ととらえられている
軽度認知障害
(
MCI
)は、認知症の前段階、健常状態と認知症の中間の状態とされる。診断を受けた人すべてが
認知症
になるわけではなく、適切な治療・予防をすることで健常状態に回復したり、認知症の
発症
を遅らせることができる可能性があるため、早期に受診し、診断を受けて適切な対処をすることが重要である。
認知症の症状は、
中核症状
と
行動・心理状態(BPSD)
に分類される
中核症状は認知症の
中核
となる症状で、原因疾患に罹患して認知症を発症した場合に
必ずみられる
ものである。
◆主な中核症状
記憶障害、見当識障害、理解・判断力の低下、実行機能障害、言語障害(失語)、失行・失認など
行動・心理症状(BPSD)は、
中核症状
の周辺にあると位置づけられるもので、必ずみられるとは限らない。
行動・心理状態(BPSD)の現れ方は多岐にわたり、
個人差
も大きい
行動・心理症状(BPSD)は、行動症状と心理症状に分けられる。
症状は多岐にわたり、置かれている
環境
や人間関係、
性格
などが絡み合って起きてくるため、人によって現れ方が異なる。
長谷川式簡易知能評価スケール
は、
認知症診断
のための知能検査である
長谷川式簡易知能評価スケール(
HDS-R)は、日本で最も普及している認知症診断のための知能検査で、主に
記憶力
に関係した9つの質問で構成されている。満点は30点で、
20
点以下の場合は、認知症の疑いありとされる。
リアリティ・オリエンテーション(RO)は、
現在認識
を強める
リアリティ・オリエンテーションは
現実認識
を高めるような情報を与えるもので、いつもそうした関わり合い方をする
24時間リアリティ・リエンテーション
と、同程度の認知機能障害をもつ少人数のグループに対して決まった時間の中で行う
教室リアリティ・オリエンテーション
がある。
回想法
は、認知症高齢者だけでなく
一般の高齢者にも有効
である
回想法
は、高齢者の過去の思い出について語り合い、
長期記憶
に働きかける心理療法で、老年期の発達課題である「自己の
受容
と
統合
」にも効果があり、高齢者全般に有効である。
音楽療法
には、
活動的
な方法と
受動的
な方法がある
音楽療法には、歌ったり演奏したり、音楽に合わせて身体を動かしたりする
活動的
な方法と、音楽を聴いて心身の統合を図る
受動的
な方法がある。認知症の
初期段階
で有効とされる。
動作法
では、
ゆったり
とした動作に集中する
動作法は、認知症高齢者や精神障害者などにも用いられる心理療法である。
ゆったりとした
動作に集中
することで
自分を客観視
することができ、心身をリラックスさせることができる。
認知症は、多数の高次脳機能の障害からなる症候群である。
〇
ICD-10(国際疾病分類10版)に定義されている。
アルツハイマー型認知症も、脳の病変によって引き起こされる。
〇
アルツハイマー型認知症は脳の萎縮、血管性認知症は脳細胞の壊死によって生じる。
アルツハイマー型認知症では、エピソード記憶の障害が著しい。
〇
エピソード記憶の障害とは、食事で例えると、「何を食べたか」ではなく、食べたこと自体を忘れてしまうこと。
軽度認知障害(MCI)は、診断を受けた人すべてが認知症になるわけではない。
〇
軽度認知障害(MCI)は、適切な治療・予防をすることで健常状態に回復したり、認知症の発症を遅らせることができる可能性がある。
認知症の症状には中核症状と行動・心理状態(BPSD)があるが、どちらも必ずみられるものではない。
×
中核症状は認知症の中核となる症状であり、必ずみられるものである。
認知症高齢者に対する心理療法として、回想法や音楽療法などがある。
〇
回想法は、長期記憶に働きかけ、自己の受容と統合にも効果があるので、高齢者全般に有効である。
認知症への支援
認知症初期集中支援チームは、認知症の疑いがある者などに対する
初期支援
を行う
認知症初期集中支援チームは、
地域包括支援センター
などに配置され、自立生活のサポートとして、看護師、保健師、作業療法士などの複数の専門職が、認知症の疑いがある者、認知症がある者およびその家族を訪問し、アセスメントや家族支援などの
初期支援
を包括的かつ集中的に行う。
認知症地域支援推進員は、
地域包括支援センターや市町村
に配置されている
認知症地域支援推進員
は、医療機関、介護サービス、地域の支援機関等をつなぐコーディネイターの役割を担っている。
認知症地域支援推進員
の業務には、専門医療の専門機関などについての紹介、認知症に関する情報提供、認知症と確定診断を受けた高齢者の情報の把握、家族等からの認知症に関する総合相談などがある。
認知症カフェ(オレンジカフェ)
は、認知症の人や家族、地域住民、専門職などの誰もが参加できる
集いの場
である
認知症カフェ
(
オレンジカフェ
)は、認知症の人や家族、地域住民、専門職などが参加して情報交換等を行う場であり、
誰でも
利用することができる。
認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)では認知症の人の介護者への支援として設置が推進されている。
認知症対応型共同生活介護は、
家庭的環境
と
地域住民の交流
の下でサービスを提供する
認知症対応型共同生活介護(認知症高齢者グループホーム)は、居室は原則として個室で、
家庭に近い環境
で「その人らしさ」を大切に生活する。
1日の日課はなく
、
個々人のペースを尊重
している。家事を行ったりする程度の適度な刺激は認知症の進行を抑える効果がある。
認知症対応型通所介護は、
認知症がある要介護者
を対象にした地域密着型サービスである
認知症がある要介護者を対象にした地域密着型サービスには
認知症対応型通所介護
と
認知症対応型共同生活介護
がある。
どちらのサービスも利用者に認知症があることを利用要件としているが、認知症の原因疾患が
急性
の状態にある者は対象外となる。
認知症対応型共同生活介護では、
少人数
での共同生活を営むことに支障がないことも要件に含まれている。
認知症疾患医療センターは、
都道府県や政令指定都市が指定する病院
に設置される
認知症疾患医療センターは、
都道府県
や
政令指定都市
が指定する病院に設置されるものであり、認知症の
鑑別診断
、医療機関等の紹介、援助方法の相談などを実施している医療機関である。
パーソン・センタード・ケア
とは、認知症の人の
気持ちに寄り添って
行うケアである
パーソン・センタード・ケアとは
個性
(その人らしさ)を中心に据え、
尊厳
に配慮し、認知症の人の
気持ちに寄り添って
行うケアであり、さまざまな視点から「
ひとりの人間
」としてとらえるために、5つのアプローチ(認知障害、健康状態や感覚機能、個人史・生活歴、性格、社会心理学)をあげている。
ユマニチュード
は、包括的コミュニケーションに基づいたケアの技法で、
人間らしさを支える
ことを理念としている
ユマニチュードは、知覚・感情・言語などによる包括的コミュニケーションに基づいたケアの技法で、
見る
(しっかりと見つめ合う)、
話す
(優しく話しかける)、
触れる
(体に優しく触れる)、
立つ
(立つ力を引き出す)の4つを柱にして人間らしさを支えることを理念としている。
認知症対応型共同生活介護は、認知症の原因疾患が急性の状態にある者は対象とならない。
〇
認知症対応型共同生活介護は、認知症の原因疾患が急性期でなく、少人数での共同生活を営むことに支障がないことなどが要件となっている。
領域Ⅰ:人間と社会
1.人間の尊厳と自立
2.人間関係とコミュニケーション
3.社会の理解
領域Ⅱ:介護
4.介護の基本
5.コミュニケーション技術
6.生活支援技術
領域Ⅲ:こころとからだのしくみ
7.介護過程
8.発達と老化の理解
9・認知量の理解
領域Ⅰ:人間と社会
10.障害の理解
11.こころとからだのしくみ
12.医療的ケア