対策教室

領域Ⅰ:人間と社会

人間の尊厳と自立

 人間の尊厳は「人間として尊ばれるべき誇り」という意味で、人権ともいわれる。

 人権の思想は、18世紀のメリカ独立宣言(1776年)やフランス革命における人権宣言(1789年)に明記され、20世紀にはいると、人権の具体化のために社会権がうたわれ、ドイツのワイマール憲法で生存権が明記された。

 すべての人は生まれながらにして自由であり、尊厳と権利について平等である

 第二次世界大戦後、1948昭和23)年に国際連合が世界人権宣言で「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳権利とについて平等である」と宣言した。また、1975昭和50)年の国連総会で採択された障害者の権利宣言には、「障害者は、その人間としての尊厳が尊重される生まれながらの権利を有する」と明記されている。

 日本国憲法第25条では、生存権が保障されている

 わが国において人間の尊厳は、日本国憲法の基本的人権の尊重(第11条)、個人の尊厳(第13条)に明記されており、また、第25条では基本的人権を日常生活の面で具体化した生存権が保障されている。

 福祉サービスの基本理念は、「個人の尊厳の保持」である

 社会福祉法第3条に、福祉サービスは、「個人の尊厳の保持」を旨とし、利用者が健やかに育成され、また「能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように支援するもの」であるよう規定してある。そのほか、障碍者基本法、介護保険法、社会福祉及び社会福祉法などでも尊厳の保持を明記している。

 自立生活運動(IL運動)は、従来の障害者援助のあり方を批判し、障害者の自己決定を主張した。

 自立生活運動(Independent Living Movement)は、1960年代に、アメリカの障害を持つ大学生が始めた運動で、ADLの自立重視や専門的援助者の障害者支援のあり方を批判し、障害者の自己決定権を主張した。ノーマライゼーション思想と共に広まり、わが国でも展開されている。

 糸賀一雄は、『この子らを世の光に』を著し、知的障害児施設『近江学園』を設立した

 糸賀一雄は、『この子らを世の光に』の中で、生まれながらにしてもらっている人格発達の権利を徹底的に保障せねばならないと訴え、人間の発達する権利とその保証を目指す発達保障について主張した。また、知的障害児を療育するしせつとして「近江学園」を設立した。

 福祉サービスの基本理念は、「生前県の保持」である

×
福祉サービスの基本理念は、社会福祉法第3条において「個人の尊厳の保持」を旨とすることが示されている。

 糸賀一雄は、『この子らに世の光を』を著し、知的障害児施設「近江学園」を設立した。

×
糸賀一雄は、「このこら世の光」を著し、日本初の知的障害児施設「近江学園」を設立した。

 

ぼやき…
 
『この子らに世の光を』ではなく、『この子らを世の光に』ですって。「を」と「に」の順番が入れ替わっているわけですが…。「出題者、性格悪いんちゃう??」と、思わず関西弁で突っ込みを入れたくなったのだ。
 それはともかく、『この子らを世の光に』だと、象徴的な存在?彼らの生活ベースが世の中の基準的な意味合いに感じます。
 『この子らに世の光を』だと、太陽の光も当たらぬ暗い部屋で監禁でもされてるんですかね??的な意味合いに感じてくるから日本語って面白いと、今更ながら思うのです。

介護における尊厳の保持・自立支援

 アドボカシーとは、利用者の権利を守り、利用者の立場に立って代弁することである

 アドボカシーは、一般に代弁または権利擁護などと訳されるもので、自分の権利を主張し行使することが困難な人(高齢者、障害者、児童など)のもつ権利が侵害されないように、本人に代わって援助者が代弁することによって側面的に支援することをいう。 

ソーシャルインクルージョンとは、すべての人を社会の構成員として包み込み、共に支えあうという理念である

 ソーシャルインクルージョンの理念とは、障害のある人も障害のない人も、すべての人々を孤独や孤立、排除や摩擦から守り、同じ社会の構成員として包み込み、健康で文化的な生活の実現につなげるよう共に支えあう社会を目指すことである。

 利用者の自己決定権を、尊重する

 介護を必要とする人が自分の意思で自分の生き方を決めれるよう、自己決定を最大限尊重する。また、自己決定が難しいと思われる場合でも、自己決定できるようできる限り支援する。

 Check!
自己決定は、個別援助の原則の1つですが、あくまでも
自己決定の能力の有無や公共の福祉に反しない限りにおいて尊重されます。




ぼやき…
『意思(いし)と意志(いし)』の違い。
初見、意思という漢字は誤字だと思ったのだ。と申しますか、意思の漢字が読めなかったのだ。『いそう』と読んでしまった…。
 それはさて置き、
『意思』…考え 思い(法律)、「意思の疎通を欠く、個人の意思を尊重、意思表示」
『意志』…成し遂げようとする心(心理学)、「意志が固い、意思を貫く、意志薄弱」
このように情報を整理してみると、同じ読み方でも漢字表記?漢字表現次第では、受け取るニュアンスが違ってくるから面白いですね。

 自立支援の観点に立つ場合、介護者は手助けをしすぎないようにする

 自立支援を行う際には、利用者本人の意思を尊重し、意欲を引き出すことが重要であり、利用者の残存能力をできる限り活用して伸ばすことが大切である。すなわち、介護者が過剰な手助けをすることは、利用者の自立を妨げることになりかねない。


権利擁護

 日常生活自立支援事業の実施主体は、都道府県社会福祉協議会または指定都市社会福祉協議会である

 日常生活自立支援事業は、社会福祉法に基づく福祉サービス権利援助事業として位置づけられている。
 窓口業務などは市区町村社会福祉協議会に委託することができる。
 日常生活自立支援儀業の対象は、認知症、知的障害、精神障害などがあることによって、判断能力が十分でないため、適切な福祉サービスを受けることができないが、事業の契約内容については判断できる程度の者となっている。

●日常生活自立支援事業の主な支援内容
生活支援…   ・介護保険サービス事業者と契約締結の援助
        ・要介護認定に関する申請手続の援助
行政手続…   ・行政手続きの代行
日常的金銭管理…・通帳や印鑑等の預かり
        ・預金の引き出し
        ・公共料金、福祉サービス利用料、家賃の支払

書類等の預かり…・大切な書類の保管

 日常生活自立支援事業を実施する専門職には、専門員と生活支援員がある

 日常生活自立支援事業において、専門員は、支援計画の作成や契約の締結に関する業務を担当し、生活支援員は、支援計画に基づいて実際の支援を行う業務を担当する。専門員は原則常勤、生活支援員は非常勤となっている。

 日常生活自立支援事業では、苦情解決のため、運営適正化委員会を設置する

 運営適正化委員会は、①「福祉サービス利用援助事業」の適正な運営と、②福祉サービスの利用者からの福祉サービスに関する苦情解決(相談、助言など)のために、都道府県社会福祉協議会または指定都市社会福祉協議会に設置されている。

 成年後見制度には、任意後見制度と法定後見制度がある

 任意後見制度は、現在は判断能力が十分である人が、将来判断能力が不十分になった場合に備えて、あらかじめ任意後見人を選定し、契約しておく(任意後見契約)制度である。
 
法廷後見制度は、現に判断能力が低下している人のための民法に規定された制度であり、親族市町村長などの申立てにより、家庭裁判所が後見人を選定する。

 法定後見制度には、後見、保佐、補助の3類型がある

 法定後見制度には、後見、保佐、補助の3類型があり、本人の判断能力に応じて決定される。
後見…判断能力を喪失しているもの
保佐…判断能力が著しく不十分なもの
補助…判断能力が不十分なもの

 法定後見は、家庭裁判所が後見開始の審判をし、後見人を選任する

 法定後見制度は、親族や市町村長などの申立てにより、家庭裁判所が後見開始の審判をし、後見人保佐人補助人を選任する。

後見人…すべての法律行為に関する代理権、取消権を有する
保佐人…民法の特定行為に関する同意権、取消権、家庭裁判所の審判を受けた法律行為に関する代理権を有する。
補助人…家庭裁判所の審判を受けた法律行為に関する同意権、取消権、代理権を有する

 任意後見契約の発効に関する申立ては、本人、配属者、4親等内の親族などが行う

 本人配属者4親等内の親族などが家庭裁判所に申し立て、任意後見契約の発効時に家庭裁判所が任意後見監督人を選任したうえで、任意後見受任者が任意後見人として認められる。任意後見監督人は、任意後見人の不正や権限の濫用を防ぐため、任意後見人を監督する。

 養護者による虐待により生命や身体に重大な危機が生じている高齢者を発見した者は、速やかに市町村に通報する義務がある

 高齢者虐待防止法(高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律)により、養護者による虐待を受けたと思われる高齢者を発見した者は、高齢者の生命や身体に重大な危機が生じている場合、速やかに市町村に通報しなければならない。また、養護者による虐待が疑われる場合、速やかに市町村に通報するように努めなければならない。

 高齢者虐待防止法では、虐待者を養護者と養介護施設従事者等に区分している

 養護者とは、高齢者の世話をしている家族、親族、同居人等を指す。養介護施設従事者等とは、養介護施設はたは養介護事業等の業務に従事する者を指す。

 高齢者虐待防止法では高齢者虐待を5種類に分類している

身体的虐待…身体に外傷が生じる暴行(外傷が生じる恐れがあるものも含む)を加えること
心理的虐待…暴言や拒絶的な対応など著しい心理的外傷を与える言動を行うこと
介護等放棄…衰弱させるような著しい減食、長時間の放置、養護者以外による虐待行為の放置など養護を怠ること(ネグレクト)
性的虐待…わいせつな行為をすることやさせること
経済的虐待…財産の不当な処分などによって、高齢者から不当に財産上の利益を得ること

 障害者差別解消法は、障害者に対する「不当な差別的扱い」を禁止し、「合理的配慮」を行うことを義務付けている

 ◎「不当な差別的扱い」とは、正当な理由なく、障害者を障害者でない者より不利に扱うことをいう。
<具体例>
・サービスの提供を拒否したり、条件をつけたりする
・募集や採用にあたって、募集の対象から排除したり不利な条件を付す
・賃金、配置、昇進、降格、教育訓練などの項目で不利な条件を付す

◎「合理的配慮」とは、生活に支障が生じないように、一人ひとりの障害特性にあわせて行われる個別的な配慮や支援のことをいう。
<具体例>
・物理的環境への配慮(車椅子利用者のために段差に携帯スロープを渡す、高い所に陳列された商品を取って渡すなど)
・意思疎通の配慮(筆談、読み上げ、手話などによるコミュニケーション、わかりやすい表現を使って説明するなど)
・ルールや慣行の柔軟な変更(障害の特性に応じた休憩時間の調整など)

 障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)は、2016(平成28)年に施行された。

対象

国の行政機関・地方公共団体等

民間事業者(非営利事業者を含む)

不当な差別的取扱い

禁止

禁止

合理的配慮

法的義務

努力義務

 利用者に対する身体拘束・行動制限は、原則として禁止される

●介護保険施設の指定基準で禁止されている身体拘束となる行為。

①徘徊防止のためにいすやベッド等に縛りつける
②転落防止のためにベッドに縛りつける
③自分で降りられないようにベッドをで囲む
④チューブを抜かないよう四肢を縛る
⑤皮膚を掻くなどを抑えるためミトン型の手袋をさせる
⑥車いすなどからずれたりしないようY字帯などをつける
⑦立ち上がりを妨げるようないすを使用する
⑧おむつ外しなどを制限するため介護衣(つなぎ服)を着せる
⑨他人への迷惑行為を防ぐためベッドなとに縛りつける
⑩落ち着かせるため向精神薬を過剰に服用させる
⑪自分であけられない居室等に隔離する

 障害者虐待防止法では、虐待者を、養護者、障害者福祉施設従事者等、使用者に分けている

 2012(平成24)年に施行された障害者虐待防止法(障害者虐待の防止、障害者の擁護者に対する支援等に関する法律)では、障害者虐待を①養護者によるもの、②障害者福祉施設従事者等によるもの、③使用者によるものに分けて規定している。

 障害者虐待防止法では、障害者虐待を5種類に分類している

身体的虐待…身体に外傷が生じる(外傷が生じるおそれのあるものを含む)暴行を加えることや、正当な理由なく身体を拘束すること
性的虐待…わいせつな行為をすることや、わいせつな行為をさせること
心理的虐待…著しい暴言や拒絶的な対応など、著しい心理的外傷を与える言動を行うこと
介護等放棄…著しい減食、長期間の放置、養護者以外の同居人による虐待行為の放置など養護を著しく怠ること(ネグレクト)
経済的虐待…障碍者の財産を不当に処分することなど、障害者から不当に財産上の利益を得ること

 使用者による障害者虐待の通報・届出先は、市町村または都道府県である

 養護者による障害者虐待や障碍者福祉施設従事者等による障害者虐待の通報先は市町村であるが、使用者による障害者虐待については、市町村だけでなく、都道府県にも通報・届出をすることができる。
 使用者による障害者虐待を受けた障碍者本人も、その旨を市町村や都道府県に届け出ることができる。

 障害者虐待の防止などを図るため、市町村障害者虐待防止センター都道府県障害者権利擁護センターが設けられている

  市町村障害者虐待防止センターや都道府県障害者利権擁護センターは、障害者虐待防止法に基づき、障害者虐待の防止、虐待を受けた障碍者の保護、障害者虐待に関わる通報、届出の受理などを行うために設けられている。
 市町村障害者虐待防止センターや都道府県障害者権利擁護センターの業務は、委託することもできる。
市町村障害者虐待防止センター
都道府県障害者権利擁護センター
・障害者虐待に係る通報や届出の受理
・障害者や養護者に対する相談、指導、助言
・障害者虐待の防止や養護者に対する支援に関する広報などの啓発活動
など
・使用者による障害者虐待に係る通報や届出の受理
・市町村相互間の連絡調整、市町村への情報提供
・障害者虐を受けた障害者に関する各般の問題や養護者に対する支援に関する相談
など

 

日常生活自立支援事業の実施主体は、都道府県社会福祉協議会または指定都市社会福祉協議会である。


 日常生活自立支援事業は、社会福祉法に基づく福祉サービス利用援助事業として位置づけられている。

 法定後見制度には、後見、保佐、補助の3類型があり、本人の経済力に応じて決定される。

×
 後見、保佐、補助の3類型は、本人の判断能力に応じて決定される。
 

 養護者による虐待が疑われる高齢者を発見した者は、程度を問わず、速やかに市町村に通報しなければならない。

×
 高齢者の生命や身体に重大な危険が生じている場合には速やかに市町村に通報しなければならず、虐待が疑われる場合は速やかに市町村に通報するよう努めなければならない。
 

ぼやき…
 「ちょっと、あんまり意味が分からないんだよな~」ってなのが第一印象。重大な危険とそうでない危険の差や区分って何なんだろう??と言うか、『重大な危険』と言葉を濁すのではなく、具体的に事例の説明や判断基準を公表して欲しいのよね。
 それはさて置き、この設題のひっかけ箇所は、生命や身体に重大な危険が生じている場合には速やかに市町村に通報する義務があるが、虐待だと疑われる程度ならば市町村へ通報するか否かは、その人の価値観や気分次第ってことになるんですかね??
 また、生命や身体の他に、財産に対する虐待?財産に対しては虐待ではなく詐欺事件として取り扱われるのかな??
 知識の深堀のきっかけと成り有難いのですが、なんだかモヤっとした気持ちになったのよね。

 障害者差別解消法で規定する民間事業者には、非営利事業者は含まれない。

×
 障害者差別解消法で規定する民間事業者には、NPO法人などの非営利事業者が含まれる。
 

 利用者に介護衣(つなぎ服)を着せることは、身体拘束・行為制限に該当する。


 おむつを外すことなどを防ぐため利用者に介護衣(つなぎ服)を着せることは、身体拘束・行動制限に該当する。
 

2⃣人間関係とコミュニケーション


人間関係の形成

 利用者と援助者の間で形成された信頼感(信頼関係)を、ラポールという

 援助者は利用者を理解しようとし、その心情に寄り添うことが必要である。ラポールの形成は対人援助において人間関係の土台であり、そうすることで利用者が真に必要としている支援が可能になる。

 利用者を理解するためには、援助者の自己覚知が前提となる

 自己覚知とは、援助者が自分自身のものの考え方、見方について、その癖や傾向に気づき理解することである。援助者が偏見や先入観を持ったままでいると、利用者をありのままに理解する妨げになるため、自分自身にどのような傾向があるのかを知り、自分の色眼鏡をはずすことが必要である。

 自己開示とは、自分自身の情報を、言語を介して他者に伝えることである

 自己開示は良好な人間関係を築くために行うもので、何の意図も持たずにありのままの自分の姿を伝えることで、援助者と利用者双方の情報が交換され、自己理解と他者理解が進むとされる。相手との親密性を高めたり、コミュニケーションを活性化したりするためにも有効なものである。

 共感的理解とは、相手の立場や思いを自分のこととして感じ取り、理解することである

 共感的理解とは、援助者が利用者の立場に立ってその感情を理解することであり、利用者は、援助者が共感的理解を示すことで「自分の気持ちを分かってくれた」と感じ、両者間にラポールが形成されていく。ただし、利用者を全体的に理解するためには、共感的理解と、客観的な事実からみた客観的理解の両方の視点が必要である。

 自己覚知とは、援助者が利用者に対して、自分の所属や役割を説明することをいう。

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自己覚知とは、援助者が、自分自身のものの考え方や見方について理解することである。


コミュニケーションの基礎

 コミュニケーションの基本は、受容傾聴である

 利用者とのコミュニケーションの基本は、受容傾聴である。
 受容とは、相手の認知する世界をありのまま
受け入れることであり、傾聴とは、相手の認知する世界をよく理解するために、相手の発言に心を込めて耳を傾けることである。これらを行うことは、利用者が介護従事者を信頼することにつながる。

 コミュニケーションには、言語的コミュニケーション非言語的コミュニケーションがある

 言葉によるコミュニケーションを言語的コミュニケーションといい、話すこと(手紙、メールなど)、手話などがある。
 言葉によらないコミュニケーションを
非言語的コミュニケーションといい、態度、表情、しぐさ、視線、行動などによるコミュニケーションがある。

 人と人との距離には、物理的距離心理的距離がある

 援助者が利用者とコミュニケーションを図る際、物理的距離を小さくすることで心理的距離が縮まる場合もある。ただし、利用者のパーソナルスペース(他人に入り込まれること不快に感じる空間)に立ち入ると、利用者が不安や恐怖を感じることもあるので、適切な距離を保つことが大切である適切な物理的距離は、相手との心理的距離によって変わるものである。

 コミュニケーションを図る際は、環境にも配慮する

 利用者が安心して話せるかどうかは、コミュニケーションを図る環境に影響される。利用者にとってリラックスできる場所雰囲気を用意することは、よいコミュニケーションを促すことになる。援助者は、顔がはっきり見える明るい場所、清潔感のある場所を選ぶなど、コミュニケーションを図る環境に配慮する必要がある。

 相手の話の腰を折らずに、じっくりと耳を傾ける

 介護従事者が利用者の話を聴くときは、自分が話すことよりも、利用者の話に耳を傾けてじっくりと聴くことが基本であり、相手の話の腰を折らない(相手の話をさえぎらない)ことが大切である。

 関心をもって聴いていることを、態度や姿勢で示す

 相手が自分の話に関心をもって聴いてくれていると話がしやすくなる。利用者をより理解するため、利用者の自己肯定感をはぐくむためにも多くの話を引き出すことが望ましい、介護従事者は、利用者の方へ身体を傾ける、視線を合わせる、適度な相槌を打つなどによって、関心をもって聴いていることを示すように心がける。

 利用者の主訴を語ってもらう場合には、オーブン・クエスチョンを活用する

 答えが「はい」「いいえ」で終わってしまうような質問(クローズド・クエスチョン)では、利用者は自分の思いを十分に伝えることができない。一般的には、「はい」「いいえ」で終わらない質問(オープン・クエスチョン)を投げかけることにより、利用者に多くを語らせるように心がける。

 利用者が話したくない内容を無理に聞き出す必要はない

 コミュニケーション技法では、質問の内容や質問の仕方を工夫することが重要である。また、その質問に答えるかどうかは利用者が決める、ということを念頭に置いておく。

 利用者のコミュニケーション能力に応じた道具や機器を用いることによって、コミュニケーションがとりやすくなる

 コミュニケーション能力に応じた道具機器(点字器、コミュニケーションエイドなど)を適切に用いることによって、利用者が自分の伝えたい感情・意思・情報を相手に伝えることが可能になり、また、援助者が伝えたことを理解しやすくなるため、格段にコミュニケーションがとりやすくなる。

 介護記録を用いて情報共有することも、コミュニケーションの1つの方法である

 介護に携わるチーム内では、ケース記録や介護日誌などの介護記録によって、利用者に関する情報を共有することができる。このような記録を用いた情報共有もコミュニケーションの1つの方法であり、利用者により適切なサービスを提供するためにも有効となる。

 コミュニケーションにおける利用者と援助者の距離は、親密な関係をつくるために出来るだけ近い方がよい。

×
 コミュニケーションにおける利用者と援助者の距離は、利用者に不安や恐怖などのマイナスの心理的影響を与えないように配慮し、適切な距離を保つようにする。
 

 答えが「はい」「いいえ」で終わってしまうような質問は、クローズド・クエスチョンである。

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 一般的に、「はい」「いいえ」で終わらない質問がオープン・クエスチョンである。
 


生活と福祉

 家族の機能には、生命維持機能生活維持機能ケア機能の3つがある

 家族の機能には、食欲、性欲、安全の要求を満たす生命維持機能、経済に支え合う生活維持機能、高齢者や乳幼児、障害者に対するケア機能がある。

 家族は、規模や構成によって分類される

・生殖家族(創設家族)…自分が結婚してつくる家族
・定位家族(出生家族)…自分が生まれ育った家族
・核家族…1組の夫婦とその子どもだけの家族
・拡大家族…核家族に親やきょうだいなどそれより上の世代も含む家族
・修正拡大家族…非同居だが子世代の核家族と親世代が頻繁に行き来し、相互援助の関係にある家族
・直径家族…このうちの1人が親と同居し、財産を相続
・複合家族…複数の子どもの家族(核家族)が親と同居

 世帯とは、住まいと生計を同じくしている人々の集まりである

 家族とは、基本的に親族によって構成される住居を共にする集団をいう。一方、世帯は行政上の考え方で、「住まい生計を同じくする人の集まり、または1人で住んでいるか、あるいは自分だけで生計を営んでいる単身者」のことである。

※単身赴任の父親(母親)や、離れて暮らす子ども(学生など)は、家族ではありますが、別世帯です。

 近年、高齢者のいる世帯が増加し、三世代世帯が減少している

 近年、社会的な変化(経済構造の変化、女性の就職率の上昇、晩婚化、未婚化、少子化、平均寿命の伸長など)を受けて、世帯のあり方が変化・多様化している。

・増加したもの…
家族(ひとり親世帯を含む)、単独世帯、高齢者のいる世帯
・減少したもの…
三世代世帯、1世帯当たりの人員

 親族とは、6親等内の血族配偶者3親等内の姻族をいう

 親族とは、民法上、親等内の血族(親子、きょうだい、叔父、おばなどの血のつながりのある者)、配偶者(結婚相手である妻や夫)、親等内の姻族(結婚によってできる義父母、義きょうだいなど)をいう。

 親族的扶養には、生活保持義務生活補助義務がある

 親族的扶養では、親が未成年の子どもを養う扶養と、夫婦間の扶養を生活保持義務という。それ以外の親族の間の扶養は生活補助義務といい、生活に余裕がある範囲内で相手を援助すればよいという義務である。原則として「直系親族」と「兄弟姉妹」が扶養義務を負うが、特別な事情がある場合は、家庭裁判所親等内親族に扶養義務を与えることができる。

 過疎地域では、共同体の維持が困難な限界集落が数多く存在する

 65歳以上の高齢者が住民の50%を超え、共同体機能、住民生活の維持が困難な集落を限界集落と呼ぶ。

 地域ケアシステムにおいては、さまざまな生活課題を「自助・互助・共助・公助」の連携によって解決していくことが必要である

 ●4つの助(自助・互助・共助・公助)
自助(個人)…自らの健康に注意を払う、貯金をするなど、自発的に自身の生活課題を解決する力
互助(近隣)…家族、友人、サークル活動仲間など、個人的なつながりをもつ人間同士が助け合い、それぞれが抱える生活課題をお互いが解決しあう。
共助(保険)…制度化された相互扶養のこと。医療、年金、介護保険、社会保険制度など被保険者による相互の負担で成り立つ。
公助(行政)…自助・互助・共助では対応できないこと。(困窮など)に対して必要な生活保障を行う社会福祉制度のこと。公による負担(税による負担)で成り立つ。


ぼやき…
「自助・互助・共助・公助」の言葉から、真っ先に令和おじさんこと菅義偉内閣総理大臣を連想してしまった。

 

 なにげに気になって検索してみると菅首相が掲げたのは「自助」「共助」「公助」の3つで、「互助」は掲げてなかったのね。
参照記事/DIAMONDonline

 地域ケアシステムの意味合いから考えてみると「自助・共助・公助」ではなく、「自助・互助・公助」にした方がしっくりくるのですが…。
 と言いますか、共助=保険、そう、「保険」という言葉が気になるのよね。保険には2種類ありますよね? 税金から成り立つ保険(介護保険、健康保険等他)と、民間企業の保険会社が提供する保険。共助とは税収から成り立つ保険だけを指すなら、それはそれでいいのですが、そうなってくると「それって公助に分類されるのでは??」と思い始めたり…。なん言いましょうか、共助と公助の区別の差がいまいちピンとこないのよね。
 

 限界集落とは、65歳以上人口が総人口の約30%を占めたことで、共同体機能の維持が困難になっている集落をいう。

×
限界集落とは、過疎化や高齢化により、65歳以上人口が総人口の50%以上を占めたことで、共同体機能や住民生活の維持が困難になっている集落をいう。


社会保障制度の発展

 日本の社会保障・社会福祉制度は、創設・改正・廃止を繰り返して発展してきた

昭和20年代……戦後混乱の収拾……
1946:旧生活保護法成立
1947:児童福祉法成立
1949:身体障害者福祉法成立
1950:現行生活保護法成立
 【福祉三法体制】
1951:社会福祉事業法(現・社会福祉法)成立


昭和30年代……国民生活安定化政策……
1958:国民健康保険法全面改正
1959:国民年金法成立
1960;精神薄弱者福祉法(現・知的障害者福祉法)成立
 【1961:
国民皆保険皆年金体制の確立】
1963:老人福祉法成立
1964:母子福祉法(現・母子および父子並びに寡婦福祉法)成立

※寡婦(かふ/夫と死別又は離別し、再婚していない女性、夫のない独身の女性を意味する。 別名では、寡(やもめ)、女寡(おんなやもめ)、後家(ごけ)、未亡人(みぼうじん)などがある。寡〈やもめ〉という言葉は男女双方をさすことがあり、男性の場合は寡夫(かふ)、鰥・鰥夫・寡男(やもお)、男鰥・男寡(おとこやもめ)などという。
 【福祉六法体制】


昭和40年代……高度経済成長下での社会保障拡充……
1970:心身障害者対策基本法(現・障害者基本法)成立
1973:老人医療費無償化


昭和50年代……経済安定成長と社会保障制度の改革……
1982:老人保健法(現・高齢者医療確保法)成立


平成元年から11年……少子高齢社会への計画的対応……
1989:ゴールドプラン(高齢者保健福祉推進10か年戦略)策定
1994:新ゴールドプラン制定・エンゼルプラン策定
1999:ゴールドプラン21策定・新エンゼルプラン策定


平成12年以降……社会福祉基礎構造改革の推進……
2000:社会福祉法成立・介護保険法施行
2005:障害者自立支援法(現・障害者総合支援法)成立
2006:高齢者医療確保法成立(老人保健法改正・改称)
2008:後期高齢者医療制度創設
2012:障害者総合支援法成立(障害者自立支援法改正・改称)
2017:介護保険法改正

 

 児童福祉法身体障害者福祉法生活保護法の3つの法律を、福祉三法という

 福祉法は、第二次世界大戦終戦直後の生活困窮者を救済する目的で、昭和20年代に制定された。

 福祉三法に、精神弱者福祉法(現:知的障害者福祉法)、老人福祉法、母子福祉法(現:母子及び父子並びに寡婦福祉法)を加えた6つの法律を福祉六法という

 福祉法は、いずれも、高度成長期を迎えた昭和30年代に成立した。制定の背景には、国民の暮らしが豊かになる中で社会的弱者が時代に取り残され困窮するといった状況があった。

 福祉関係八法改正以降、市町村への権限移譲が進んだ

 1990(平成2)年の福祉係八法改正により、老人・身体障害者の施設への入所措置権限などが都道府県から市町村に移譲された。その後、社会福祉法改正に伴い、知的障害者に対する措置権限も市町村に移譲されている。

 すべての国民を対象とした国民皆保険国民年金基金体制は、1961(昭和36)年に確立された

 国民皆保険は、1958(昭和33)年の国民健康保険法改正に伴い1961(昭和36)年に実現されたもので、すべての国民から何らかの公的医療保険に加入できるようになった。国民皆年金は、1959(昭和34)年の国民年金法成立によって実現したもので、すべての国民が何らかの年金制度に加入できるようになった。

 特別養護老人ホームは、創設時には「生活の場」ではなく「収容の場」と位置づけられていた

 1963(昭和38)年に創設された特別養護老人ホームは、創設時には、身体上または精神上の著しい欠陥があるために常時の介護を必要とする65歳以上の者を措置として入所させる「収容の場」であった。

 社会福祉事業法は2000(平成12)年に社会福祉法に改正・改称され、福祉サービスの利用制度化がはかられた

 社会福祉事業法では措置制度(サービス提供者である行政がサービスを決める)がとられていたが、社会福祉法では、利用者とサービス提供者の立場は対等であるとし、利用者が自分でサービスを選ぶことができる利用制度(契約制度)が原則となった。

 利用者が話したくない内容を無理に聞き出す必要はない

 コミュニケーション技法では、質問の内容や質問の仕方を工夫することが重要である。また、その質問に答えるかどうかは利用者が決める、ということを念頭に置いておく。

 昭和20年代に成立した児童福祉法、生活J保護法、老人福祉法の3つを福祉三法という。

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 福祉三法とは、戦後の昭和20年代に成立した、児童福祉法、身体障害者福祉法、生活保護法の3つをいう。

 社会福祉事業法では、サービスは利用者が選択する利用制度(契約制度)がとられている。

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 社会福祉事業法では、行政が福祉サービスを決める措置制度がとられていた。サービスは利用者が選択するとしているのは、社会福祉法である。


社会保障制度のしくみ

 わが国の社会保障制度は、①社会保障、②公的扶助、③社会福祉、④公衆衛生及び、医療、⑤老人保健に大別できる

わが国では、ライフサイクルの各場面において、次のような社会保障制度が整備されている。
◆社会保障制度の範囲と主な種類
 

社会保険は被保険者が支払う保険料を原資とし、防貧機能をもつ

 社会保険は、被保険者が支払う保険料を原資として保険事故に備えるもので、防貧機能をもつ。原則として強制加入で、被保険者資格を満たした場合には自動的に加入することになる。
*保険事故とは、保険者が被保険者に対して保険金や給付金の支払を行う事由となるできことのことをいう。

 公的扶助は、租税(税金)を原資とし、救貧機能をもつ

 公的扶助は、租税(税金)を原資として貧困者の経済的な生活支援と自立支援のために給付されるもので、救貧機能をもつ。具体的な制度として生活保護があり、セーフティーネットの役割を果たしている。

 国民健康保険の保険者は都道府県と市町村で、保険料は市町村ごとに条例で定める

  国民健康保険は、都道府県市町村が共同保険者で、保険料は市町村ごとの実績に応じて条例で定めることになっている。また、保険料の納付義務は世帯主にある。
 

 2008(平成20)年4月に創設された後期高齢者医療保険制度では、75歳以上の者(65歳以上75歳未満で広域連合が認めたものを含む)を被保険者としています。運営主体は、後期高齢者医療広域連騰で、すべての市町村が都道府県を単位として加入しています。

 労働者災害補償保険は、社会保険に含まれる。


 わが国の社会保障には、労働者災害補償保険のほか、医療保険、年金保険、雇用保険、介護保険がある。


現代社会の動向

 わが国の障害者の総数は約937万人で、全人口の7.4%を占めている

 わが国の障害者の総数は、約937万人と推計されている。
   ◆在宅・施設(入院)別にみた障害者数◆

*平成28年度「生活のしづらさなどに関する調査:結果の概要」より

主な介護者の要介護者等との続柄をみると、「配偶者」が最も多い

 介護の状況における主な介護者の要介護者等との続柄の最新の調査である平成28年国民生活基礎調査によると、「配偶者」が25.2%を占めて最も多く、次いで「」が21.8%、「子の配偶者」が9.7%となっている。

 労働者災害補償保険は、社会保険に含まれる。


 わが国の社会保障には、労働者災害補償保険のほか、医療保険、年金保険、雇用保険、介護保険がある。


介護保険制度

 介護保険法では、社会保険方式がとられている

 介護保険法は、高齢者の介護を社会全体で担うことを目的に、2000(平成12)年に施行された。介護保険法では、それまでの公的扶助に変わって社会保険方式がとられ、利用者本位のサービス提供を行うこととなった。

 わが国の社会保険には、医療保険、年金保険、雇用保険、介護保険、労働者災害補償保険の5種類がある。

 介護保険の保険者は、市町村および特別区である

 介護保険の保険者は、市町村および特別区であり、保険者は要介護認定・要支援認定に関する事務や、介護保険の財政運営に関する事務などを行う。なお、保険に加入している者を、被保険者という。

 介護保険の被保険者には、第1号被保険者と第2号被保険者がある

◎第1号被保険者 ⇒ 市町村の区域内に住所がある65歳以上の者
◎第2号被保険者 ⇒ 市町村の区域内に
住所がある40歳以上65歳未満の者で医療保険に加入している者  

 第2号被保険者は、介護保険法に規定された特別疾病(16種類)により要支援・養介護状態になった場合に限り、保険給付の対象となります。

 保険料の徴収方法は、第1号被保険者と第2号費保険者で異なる

  第1号費保険者の保険料は、特別徴収または普通徴収される。

第2号被保険者の保険料は、加入している医療保険者が医療保険料と一体的に徴収する。

 要介護・要支援認定は、要介護認定基準に基づき判定される

  被保険者から認定申請があると、保険者は全国一律の要介護認定基準に基づいて、要介護・要支援認定を行う。要介護・要支援状態区分に応じて、介護給付や予防給付の支援限度額、施設給付などが認定されている。

 要介護状態区分は要介護1~5、要支援状態区分は要支援1~2に区分される

  要介護度は、段階に区分されている。要介護者は、居宅サービス、地域密着型サービス、施設サービスを利用することができ、要支援者は、介護予防サービスや地域密着型介護予防サービスを利用することができる。要支援者は、施設サービスを利用することはできない。

 要介護認定の申請手続きは、事業者が代行できる

  要介護人認定を受けるには市町村に申請をしなければならない。本人、家族のほか、地域包括支援センター、省令に定められた指定居宅介護支援事業者介護保険施設が申請できる(代行申請)。

 要介護認定審査・判定は、介護認定審査会で行う

  

 介護認定に不服があれば、介護保険審査会に審査請求できる

  介護認定結果に不服がある場合は、都道府県に設置されている介護保険審査会に審査請求ができる。

 認定の効力は、その申請のあった日に遡る

  認定が行われた場合、その効力は申請時遡及し、認定申請時からサービスの利用がなされていた場合にも、保険給付の対象となる。

 要介護認定の有効期間は、市町村が必要と認める場合、短縮や延長ができる

  要介護認定の有効期間は、原則の認定有効期間が定められているが、介護認定審査会の意見に基づき市町村が必要と認める場合は、一定の範囲内で短縮延長ができる。

 介護保険の給付には、「介護給付」「予防給付」「市町村特別給付」がある

 介護保険給付には、介護給付予防給付市町村特別給付がある。介護給付は、要介護認定された保険者に対する給付である。予防給付は、要介護状態になるおそれがあると認定(要支援認定)された被保険者に対して、予防を目的に給付される。市町村特別給付は、保険者である市町村がそれぞれ独自に行う給付である。

 介護給付と予防給付は、保険料と公費で1/2ずつ負担する

  介護保険給付のうち、介護給付と予防給付の財源は、50%を被保険者からの保険料でまかなう。

公費の内訳
居宅給付 国
25%(20%が定率負担、5%が調整交付金)、都道府県12.5%、市町村12.5
施設等給付 国
20%(15%が定率負担、5%が調整交付金)、都道府県17.5%、市町村12.5

 介護保険の利用者は、サービス費用の1割、2割または3割を負担する

 介護保険の利用者負担割合は、介護保険制度創設時には一律1割だったが、2014(平成26)年の法改正により、一定以上の所得がある者は割になり、2017(平成29)年の法改正により、割負担者の中でもより高い所得がある者は割に引き上げられた。

 介護保険サービスの形態として、訪問系サービス、通所系サービス、入所系サービスがある

 介護保険サービスの形態には、居宅等に訪問してサービスを行う訪問系サービス、居宅等からサービス事業所に通ってサービスを受ける通所系サービス、介護保険施設等に入所してサービスを受ける入所系のサービスがある。
 そのほか、居宅介護支援、住宅改修、福祉用具(貸与、販売)が保険給付対象となっている。

 2017(平成29)年の介護保険法改正では、地域包括ケアシステムの深化・推進と介護保険制度の持続可能性の確保などに重点が置かれた

 2017(平成29)年の改正は、高齢者の自立支援と要介護状態の重度化防止、地域共生社会の実現を図るとともに、介護保険制度の持続可能性の確保などに重点が置かれた。

 居宅介護支援の指定権限は、市町村が持つ

 指定居宅介護支援事業者の指定・指導監督の権限は、2018(平成30)年4月より、都道府県から市町村へ移行した。

 介護医療院では、医療と介護を一体的に提供する

 2017(平成29)年の法改正により新設された介護医療院は、介護老人保健施設、介護老人福祉施設と同じ介護保険施設に位置づけられ、医療介護を一体的に提供する。

 共生型サービスは、介護保険障害福祉制度に位置づけられている

 2018(平成30)年4月に創設された共生型サービスは、障害者総合支援法、介護保険法、児童福祉J法にまたがるもので、同じ事業所を引き続いて利用しやすくなった。

 介護保険の保険者は、介護保険に関する収入及び支出について、特別会計を設ける

 介護保険の保険者は、介護保険における収入と支出に関して介護保険特別会計を設け、他の会計項目とは区別して管理しなけらばならない。ほかに、被保険者の資格管理、保険料徴収、要介護、要支援認定、保険給付(審査・支払)、事業者・施設の指定・指導・監督、地域支援事業及び保健福祉事業、市町村介護保険事業計画期)の策定などを行う。

 介護給付費審査委員会は、市町村から委託を受けて介護保険給付の審査・支払業務を行う

 国民健康保険団体連合会(国保連)は、国民健康保険事業の健全運営のために設置された公法人で、同連合会に置かれた介護給付費審査委員会では、市町村から委託を受けて介護保険給付の審査・支払業務を行っている。また、介護保険サービスの向上のため、介護保険事業者への指導・助言、介護サービスに関する苦情処理なども行っている。

 市町村介護保険事業計画は、市町村計画との整合性の確保を図る

 市町村介護保険事業計画は、①市町村老人福祉計画と一体で、②市町村計画と整合性の確保が図られ、③市町村地域福祉計画などと調和が保たれたものでなければならない。

 都道府県介護保険事業支援計画は、都道府県老人福祉計画一体のものとして作成する

 都道府県介護保険事業支援計画は、①都道府県老人福祉計画と一体で、②都道府県計画・医療計画と整合性の確保が図られ、③都道府県地域福祉支援計画高齢者住居安定確保計画などと調和が保たれたものでなければならない。

 都道府県は、3年を1期として都道府県介護保険事業支援計画を策定する

 都道府県は、都道府県介護保険事業支援計画策定のほか、介護保険審査会や財源安定化基金の設置、事業者や介護保険施設の指定等、介護サービス情報の公表などを行う。

 地域支援事業には、介護予防・日常生活支援総合事業包括的支援事業任意事業がある

 地域支援事業は、2014(平成26)年の介護保険法改正により下図のように再編され、介護予防・日常生活支援総合事業総合事業)についても、2017(平成29)年4月からすべての市区町村で実施されている。
 

 介護予防・生活支援サービス事業は、介護予防・日常生活支援総合事業の1つである

 介護予防・生活支援サービス事業は、訪問型サービス、通所型サービス、生活支援サービス、介護予防支援事業で構成されており、居宅要支援被保険者などを対象に提供する。

 市町村は、包括的支援事業を委託することができる

 市町村は、老人介護支援戦tナーの設置者などに対し、包括的支援事業の実施に係る方針を示して、包括的支援事業を委託することができる。この委託は、包括的支援事業を一括して行わなければならない。

 一般介護予防事業は、介護予防・日常生活支援総合事業の1つとして位置づけられている

 一般介護予防事業は、法改正により、介護予防事業から改称され、一次予防事業と二次予防事業の区分も廃止された。

 厚生労働大臣は、介護予防・日常生活支援総合事業の実施に係る指針を公表する

 厚生労働大臣は、介護予防・日常生活支援総合事業の適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公表する。

 認知症総合支援事業では、認知症初期集中支援チームなどが配置される

 認知症総合支援事業では、医療系・介護系の多職種からなる認知症初期集中支援チームや、認知症地域支援推進員(保健師・看護師等)が配置される。

 生活支援体制整備事業では、生活支援コーディネーターが配置される

 生活支援体制整備事業では、生活支援コーディネーター(地域支え合い推進員)を配置し、地域におけるサービス提供体制の構築をコーディネートする。

 家族介護支援事業では、介護方法の指導等を行う

 家族介護支援事業では、在宅介護をしている家族等に対し、介護に関する知識・技術の習得や情報交換等を行う機会を提供し、家族の介護負担の軽減を図る。

 介護保険法では、社会保険方式がとられている。


 介護保険法では社会保険方式がとられ、利用者本位のサービス提供が行われる。

 介護保険の第1号費保険者の保険料は、医療保険料と一体的に徴収される。

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 医療保険料と一体的に徴収されるのは、第2被保険者の保険料である。第1号費保険者の保険料は、特別徴収(年金からの天引き)または普通徴収(直接)である。

 要介護認定を受けるには、本人または家族が市町村に申請をしなければならない。

×
 要介護認定の申請手続きは、本人や家族のほか、地域包括センター、指定居宅介護支援事業者、介護保険施設が代行申請することができる。

 介護保険の給付には、介護給付、予防給付、市町村特別給付がある。


 介護給付は要介護認定を受けた者への給付、予防給付は要支援認定を受けた者への給付、市町村特別給付は市町村が独自に行う給付である。

 2017(平成29)年の介護保険法改正により、利用者負担1割の者のうち特に所得の高い層の利用者負担割合が2割に引き上げられた。

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 2017(平成29)年の介護保険法改正では、利用者負担2割の者のうち特に所得の高い層の利用者負担割合が3割に引き上げられた。

 市町村介護保険事業計画は、市町村計画と一体のものとして作成されなければならず、市町村老人福祉計画と整合性の確保が図られたものでなければならない。

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 市町村介護保険事業計画は、市町村老人福祉計画と一体のものとして作成されなけらばならず、市町村計画と整合性の確保が図られたものでなければならない。

 介護予防・生活支援サービス事業は、介護予防・日常生活支援総合事業の1つとして位置づけられている。


 介護予防・生活支援サービス事業と一般介護予防事業は、介護予防・日常生活支援総合事業に位置づけられている。

 認知症総合支援事業では、生活支援コーディネーターが配置される。

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 認知症総合支援事業では、認知症初期集中支援チームや認知症地域支援推進員が配置される。生活支援コーディネーターは、生活支援体制整備事業に配置される。


障害者総合支援法

 障害者総合支援法の体系は、自立支援給付地域生活支援事業で構成される

 障害者総合支援法(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)のサービス体系は、自立支援給付地域生活支援給付で構成されている。

 障害者(18歳以上の者)の定義には、難病疾患者も含まれる

 障害者総合支援法による障害者の定義は、①身体障害者、②知的障害者、③精神障害者(発達障害者を含む)④難病患者となっている。
  また、障害児(18歳未満の者)の定義は、①
身体に障害のある児童、②知的障害のある児童、③精神に障害のある児童(発達障害児を含む)となっている。
治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病で、障害の過程が厚生労働大臣が定める程度の者をいう

 介護給付を利用するためには、障害支援区分の認定を受ける必要がある

 介護給付を利用するまでの流れは次のとおり。

①申請手続き(居住地の市町村、居住地特例あり)
②認定調査(アセスメント調査、概況調査、特記事項)
③障害支援区分の認定(区分

④サービス等利用計画案作成(市町村に提出)
⑤支給決定(
障害福祉サービス受給者証の交付を受ける)
⑥利用の
契約締結(利用者が指定事業者・施設と契約する)

 給付対象となる補装具は、医師の診断書等に基づいて使用されるものでなければならない

  ●給付対象となる補装具の3つの要件

障害個別に対応して設計・加工されており、身体の欠損もしくは損なわれた身体機能を
 補完代替するもの
②身体に装着して日常生活・就労・就学に使用するもので、同一製品を継続して使用するもの
医師などの診断書や意見書に基づいて使用されるもの

 相談支援には、基本相談支援地域相談支援計画相談支援がある

  相談支援事業の種類としては、一般相談支援事業と特定相談支援事業に区分されており、一般相談支援事業では基本相談支援と地域相談支援を行い、特定相談支援事業では基本相談支援と計画相談支援を行うことになっている。

 介護給付や訓練等給付を利用するためには、障害程度区分の認定を受ける必要がある。

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 従来の障害程度区分は、障害者総合支援法の改定により障害支援区分に定められた。


介護実践に関する諸制度

 国民生活センターは、消費者問題における中核的機関としての役割を果たしている

 国民生活センターは消費者庁が管轄する独立行政法人で、消費者基本法に基づき、国や全国の消費生活センター等と連携して、消費生活相談などの情報を収集する。収集した情報を消費者被害の未然防止、拡大防止に役立てるほか、商品テストや専門相談、教育研修、生活に関する調査研究を実施している。

 消費生活センターでは、消費生活全般に関する消費者からの相談を受け付けている

 消費生活センターは都道府県市町村の消費者行政機関であり、消費生活全般に関する消費者からの相談を専門の相談員が受け付けている。また、国民生活センターと連携して消費者からの情報を提供したり、商品テスト、苦情処理などを行っている。なお、誰もがアクセスしやすい相談窓口として、消費者ホットライン(局番なしの188)が開設されている。

OnePoint…
国民生活センターと、消費生活センターの違いを理解する。

 クーリングオフ制度により、契約後、一定の期間内であれば無条件で契約を解除できる

クーリングオフ制度では、一定期間内に消費者が申し出ることで契約を解除できるが、対象となるのは、通信販売を除く特定商取引法の対象取引(訪問販売、電話勧誘販売、マルチ商法)、特定継続役務提供(エステティックサロン、英会話教室など)、クレジット契約、生命・損害保険契約などで、自らの意思で店舗に出向いて購入した場合は、原則として対象とならない。

 バリアフリー新法は、ハートビル法交通バリアフリー法を統合して制定された

 2006(平成18)年に、ハートビル法、交通バリアフリー法が統合されて、バリアフリー新法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)が制定された。この法律は、建築物・道路・交通機関を一体としてとらえて、それらのバリアフリー化を図ることを目的としている。
 

 個人情報保護法は、個人の権利と利益の保護を目的とした法律である

 個人情報保護法は、個人の権利と利益を保護するために、個人情報取扱事業者に対して個人情報の取扱い方法を定めている。個人情報とは、生存する個人に関する情報であって、その情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるものや、個人識別符号をいう。

 個人識別符号とは、特定の個人を識別できる文字・記号・符号などのことでマイナンバーのほか、パスポート番号、基礎年金番号、免許証番号などが含まれる。

 個人情報取扱事業者は、個人情報の利用目的をできる限り特定しなければならない

 個人情報取扱事業者には、利用目的の特定、適正な取得、利用目的の通知・公表、安全な管理、従業員・委託先の監督、第三者提供の制限、保有個人データの開示等が義務付けられ、利用目的を変更する場合、変更前の利用目的と相当の関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えて行ってはならない。

 育児・介護休業法では、介護休業制度、育児休業制度、看護休暇制度などを設けている

 育児・介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)に基づく子の看護休暇は、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が、1年度において労働日(子が2人以上の場合は10労働日)を限度に、1日または半日単位で取得することができる。

 看護休暇については、2021(令和3)年1月より、1時間単位での取得が可能となります。

 別居の祖父母、兄弟姉妹、孫は、介護休業の対象となる家族に含まれる

 介護休業は、不詳や疾病などにより、週間以上にわたり常時介護を必要とする状態にある対象家族の介護や日常生活上の世話をするためのものである。対象家族には、配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫が含まれる。介護休業の期間は、対象家族1人につき、要介護状態に至るごとに通算93日まで回を上限として分割して取得できる。
※祖父母、兄弟姉妹、孫については、同居・扶養要件が撤廃された。

 生活保護法の目的は、最低限度の生活の保障と自立の助長である

 「生活保護法」第1条に述べられている。生活保障だけでなく、自立を助けることも目的であるところに注意する。

 生活保護は、世帯単位で行われる

 生活保護を受けるための要件として、世帯員全員が、利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することが前提となっている。

 収入が最低生活維持に満たない場合に、最低生活費から収入を差し引いた差額が生活保護費として支給される

 厚生労働大臣が定め
る基準で計算される最低生活費と収入を比較して、収入が最低生活費に満たない場合に、最低生活費から
収入を差し引いた差額が保護費として支給される。

 生活保護は、「4つの基本原理」に基づき、「保護の4つの原則」に則って行われる

 

 生活保護には、生活扶助、医療扶助、教育扶助など8種類がある

 生活保護は、保護の4つの原則に則り、以下の8種類の扶助から必要なものを給付する。④介護扶助と⑧医療扶助は原則として現物給付であり、ほかは金銭給付となっている。

 介護扶助の範囲には、居宅介護、福祉用具、住宅改修などが含まれる

 介護扶助の支給範囲には、①居宅介護、②福祉用具、③住宅改修、④施設介護、⑤介護予防、⑥介護予防福祉用具、⑦介護予防住宅改修、⑧移送が含まれる。介護扶助は、原則として現物給付の方法で支給されるものである。ただし、福祉用具、住宅改修、介護予防福祉用具、介護予防住宅改修については、金銭給付の方法によって支給される。

 就労自立給付金は、保護からの脱却を促すための給付金である

 就労自立給付金は、安定した職業に就くことにより保護からの脱却を促すための給付金として創設された。就労自立給付金は、安定した職業に就いたことにより保護を必要としなくなったと認めた者に対し、保護給付中の収入認定額の範囲内で仮想的に積み立て、保護脱却時に一括支給される。

 消費生活センターは消費者庁が管轄する独立行政法人で、消費者問題における中核的機関としての役割を果たしている。

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 消費者庁が管轄する独立行政法人で消費者問題における中核機関としての役割を果たしているのは、国民生活センターである。

 ハートビル法と交通バリアフリー法が統合されて、バリアフリー新法が成立した。


 2006(平成18)年に、ハートビル法と交通バリアフリー法が統合されて、バリアフリー新法が設立した。

 生活保護法の目的の1つに、「自立を助けること」がある。


 生活保護法の目的には、「生活保障」だけでなく、「自立を助けること」がある。

 保護の補足性の原理では、生活保護法を優先し、十分な場合にほかに定める扶養等を祖速的に用いる。

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 生活保護法を補足的に用いる。