対策教室

領域Ⅰ:人間と社会 

2⃣人間関係とコミュニケーション


人間関係の形成

 利用者と援助者の間で形成された信頼感(信頼関係)を、ラポールという

 援助者は利用者を理解しようとし、その心情に寄り添うことが必要である。ラポールの形成は対人援助において人間関係の土台であり、そうすることで利用者が真に必要としている支援が可能になる。

 利用者を理解するためには、援助者の自己覚知が前提となる

 自己覚知とは、援助者が自分自身のものの考え方、見方について、その癖や傾向に気づき理解することである。援助者が偏見や先入観を持ったままでいると、利用者をありのままに理解する妨げになるため、自分自身にどのような傾向があるのかを知り、自分の色眼鏡をはずすことが必要である。

 自己開示とは、自分自身の情報を、言語を介して他者に伝えることである

 自己開示は良好な人間関係を築くために行うもので、何の意図も持たずにありのままの自分の姿を伝えることで、援助者と利用者双方の情報が交換され、自己理解と他者理解が進むとされる。相手との親密性を高めたり、コミュニケーションを活性化したりするためにも有効なものである。

 共感的理解とは、相手の立場や思いを自分のこととして感じ取り、理解することである

 共感的理解とは、援助者が利用者の立場に立ってその感情を理解することであり、利用者は、援助者が共感的理解を示すことで「自分の気持ちを分かってくれた」と感じ、両者間にラポールが形成されていく。ただし、利用者を全体的に理解するためには、共感的理解と、客観的な事実からみた客観的理解の両方の視点が必要である。

 自己覚知とは、援助者が利用者に対して、自分の所属や役割を説明することをいう。

×
自己覚知とは、援助者が、自分自身のものの考え方や見方について理解することである。


コミュニケーションの基礎

 コミュニケーションの基本は、受容傾聴である

 利用者とのコミュニケーションの基本は、受容傾聴である。
 受容とは、相手の認知する世界をありのまま
受け入れることであり、傾聴とは、相手の認知する世界をよく理解するために、相手の発言に心を込めて耳を傾けることである。これらを行うことは、利用者が介護従事者を信頼することにつながる。

 コミュニケーションには、言語的コミュニケーション非言語的コミュニケーションがある

 言葉によるコミュニケーションを言語的コミュニケーションといい、話すこと(手紙、メールなど)、手話などがある。
 言葉によらないコミュニケーションを
非言語的コミュニケーションといい、態度、表情、しぐさ、視線、行動などによるコミュニケーションがある。

 人と人との距離には、物理的距離心理的距離がある

 援助者が利用者とコミュニケーションを図る際、物理的距離を小さくすることで心理的距離が縮まる場合もある。ただし、利用者のパーソナルスペース(他人に入り込まれること不快に感じる空間)に立ち入ると、利用者が不安や恐怖を感じることもあるので、適切な距離を保つことが大切である適切な物理的距離は、相手との心理的距離によって変わるものである。

 コミュニケーションを図る際は、環境にも配慮する

 利用者が安心して話せるかどうかは、コミュニケーションを図る環境に影響される。利用者にとってリラックスできる場所雰囲気を用意することは、よいコミュニケーションを促すことになる。援助者は、顔がはっきり見える明るい場所、清潔感のある場所を選ぶなど、コミュニケーションを図る環境に配慮する必要がある。

 相手の話の腰を折らずに、じっくりと耳を傾ける

 介護従事者が利用者の話を聴くときは、自分が話すことよりも、利用者の話に耳を傾けてじっくりと聴くことが基本であり、相手の話の腰を折らない(相手の話をさえぎらない)ことが大切である。

 関心をもって聴いていることを、態度や姿勢で示す

 相手が自分の話に関心をもって聴いてくれていると話がしやすくなる。利用者をより理解するため、利用者の自己肯定感をはぐくむためにも多くの話を引き出すことが望ましい、介護従事者は、利用者の方へ身体を傾ける、視線を合わせる、適度な相槌を打つなどによって、関心をもって聴いていることを示すように心がける。

 利用者の主訴を語ってもらう場合には、オーブン・クエスチョンを活用する

 答えが「はい」「いいえ」で終わってしまうような質問(クローズド・クエスチョン)では、利用者は自分の思いを十分に伝えることができない。一般的には、「はい」「いいえ」で終わらない質問(オープン・クエスチョン)を投げかけることにより、利用者に多くを語らせるように心がける。

 利用者が話したくない内容を無理に聞き出す必要はない

 コミュニケーション技法では、質問の内容や質問の仕方を工夫することが重要である。また、その質問に答えるかどうかは利用者が決める、ということを念頭に置いておく。

 利用者のコミュニケーション能力に応じた道具や機器を用いることによって、コミュニケーションがとりやすくなる

 コミュニケーション能力に応じた道具機器(点字器、コミュニケーションエイドなど)を適切に用いることによって、利用者が自分の伝えたい感情・意思・情報を相手に伝えることが可能になり、また、援助者が伝えたことを理解しやすくなるため、格段にコミュニケーションがとりやすくなる。

 介護記録を用いて情報共有することも、コミュニケーションの1つの方法である

 介護に携わるチーム内では、ケース記録や介護日誌などの介護記録によって、利用者に関する情報を共有することができる。このような記録を用いた情報共有もコミュニケーションの1つの方法であり、利用者により適切なサービスを提供するためにも有効となる。

 コミュニケーションにおける利用者と援助者の距離は、親密な関係をつくるために出来るだけ近い方がよい。

×
 コミュニケーションにおける利用者と援助者の距離は、利用者に不安や恐怖などのマイナスの心理的影響を与えないように配慮し、適切な距離を保つようにする。
 

 答えが「はい」「いいえ」で終わってしまうような質問は、クローズド・クエスチョンである。

×
 一般的に、「はい」「いいえ」で終わらない質問がオープン・クエスチョンである。