第32回 介護福祉士試験問題

人間の尊厳と自立

問題1
 Aさん(78歳、女性、要介護3)は、訪問介護(ホームヘルプサービス)を利用している。72歳から人工透析を受けている。透析を始めたころから死を意識するようになり、延命治療を選択する意思決定の計画書を作成していた。しかし、最近では、最後のときを自宅で静かに過ごしたいと思い、以前の計画のままでよいか気持ちに迷いが出てきたので、訪問介護(ホームヘルプサービス)のサービス提供責任者に相談した。
 サービス提供責任者の対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。


1 「この計画書は、医療職が作成するものですよ」
2 「一度作成した計画書は、個人の意向で変更するのは厳しいですよ」
3 「意思確認のための話し合いは、何度でもできますよ」
4 「そんなに心配なら、特別養護老人ホームに入所できますよ」
5 「この計画書は、在宅ではなく病院での治療を想定したものですよ」


答え
 延命治療を選択する意思決定の計画書の変更に関する設題につき、正解は3。
本人の気持ちは変化するものであることから、意思決定のための話し合いは何度でもできることを伝えることは適切である。
問題2
 利用者の意思を代弁することを表す用語として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 インフォームドコンセント(informed consent)
2 ストレングス(strength)
3 パターナリズム(patermailsm)
4 エンパワメント(empowerment)
5 アドボカシー(advpcacy)



答え
  利用者の意思を代弁することを表す用語に関する設題につき、正解は5
アドボカシーは、「権利擁護」「代弁」などと訳される。自らの権利を主張できない弱い立場にある人を代弁して権利を守るという意味で用いられる。 

補足

・インフォームドコンセント(informed consent)…説明と同意。

・ストレングス(strength)…本人の持つ強み。

・パターナリズム(
paternalism)…父権主義。本人の意思を問わずに行動介入、干渉等すること。

・エンパワーメント(empowerment)…潜在的な能力を引き出すことで、問題解決能力を高める。

人間関係とコミュニケーション

問題3
 他者とのコミュニケーションを通した自己覚知として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 自己の弱みより強みを重視する。
2 自己の感情の動きとその背景を洞察する。
3 自己の行動を主観的に分析する。
4 自己の私生活を打ち明ける。
5 自己の価値観を他者に合わせる。

答え
 自己覚知に関する設題につき、正解は2
自己の感情の動きとその背景を洞察することは、自己覚知の基本。
 自己覚知とは、一般には自分自身のものの考え方について自ら理解することをいう。援助の場面では、援助を受ける人に対して偏見などの先入観や思い込みなどをもって援助を行うことがないように、援助者が自分自身の考え方を理解しておくという意味で用いられる。
問題4
 高齢者とのコミュニケーションにおける配慮として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 相手と視線が合わせられる一で話す。
2 相手には座ってもらい、自分は立ったまま話す。
3 初対面の時から相手と密着した距離で話す。
4 相手の表情があまり見えない薄暗い場所で話す。
5 たくさんの人がいる、にぎやかな場所で話す。

答え
 高齢者とのコミュニケーションにおける配慮に関する設題につき、正解は1。
相手と視線の合う位置で話すことは相手に安心感を与えるものであり、対面時のコミュニケーションの基本である。
 

介護の基本

問題17
 Fさん(72歳、女性、要介護2)は、中度の認知症(dementia)があり、自宅で夫と生活している。ある日、訪問介護員(ホームヘルパー)が訪問すると、夫が散乱したコーヒー豆を片付けていた。Fさんは、「わけがわからなくなっちゃった」と言っていた。訪問介護員(ホームヘルパー)が夫に事情を聞くと、「今も日課でコーヒーを豆から挽いて入れてくれるんだが、最近は失敗することが多くなって、失敗すると自信を失ってしまうしね。でも、毎朝、『コーヒーを入れなくっちゃ』と言うんだ」と寂しそうに話した。
 訪問介護員(ホームヘルパー)の夫への助言として、最も適切なものを1つ選びなさい。


1 「そばにいて、Fさんと一緒にコーヒーを入れてはどうですか」
2 「Fさんと一緒に、喫茶店にコーヒーを飲みに行ってはどうですか」
3 「おいしいコーヒーを買ってきて二人で飲んではどうですか」
4 「私がFさんからコーヒーの入れ方を教えてもらいましょうか」
5 「新しいコーヒーメーカーを買ってはどうですか」

答え
 訪問介護員(ホームヘルパー)から利用者の夫への助言に関する設題につき、正解は1。
まず、夫に毎朝「コーヒーを入れなくちゃ」と言うFさんの思いと生活習慣を尊重する必要がある。また夫の発言からは、Fさんを心配する様子が伝わってくる。よって、訪問介護員は、夫がFさんのそばにいて、一緒にコーヒーを入れるという方向性で助言することが適切である。
問題18
 Gさん(80歳、女性、要介護3)は、脳卒中(stroke)の後遺症により左片麻痺があり、からだを思うようにコントロールができず、ふらつきが見られる。以前は、2週間に一度は美容院で長い髪をセットしてもらい、俳句教室に行くのを楽しみにしていた。病気になってからは落ち込むことが増え、介護が必要になったため、介護老人福祉施設に入所した。
 ノーマライゼーション
(normalization)の考え方を踏まえた、Gさんへの生活支援として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 洗髪しやすいように、長い髪のカットを勧める。
2 共同生活のため、夕食は施設の時間に合わせてもらう。
3 落ち込んているため、居室での生活を中心に過ごしてもらう。
4 おしゃれをして、施設の俳句クラブに参加するように勧める。
5 転倒予防のため、車いすを使用してもらう。

答え
 ノーマライゼーションの考え方を踏まえた生活支援に関する設題につき、正解は4。
ノーマライゼーションでは障害のある人もない人と同じように尊厳をもって普通の生活を送ることを目指すため、周囲の生活環境を改善していくことが重要となる。Gさんは左片麻痺になる前、2週間に一度は美容院で長い髪をセットして、俳句教室に行くのを楽しみにしていた。よって、ノーマライゼーションの考え方を踏まえれば、おしゃれをして、施設の俳句クラブに参加する等、可能な限り以前のような生活が送れるよう支援していくことが求められる。
 
問題19
ICF(nternational Classification of Functioning, Disability and Health:国際生活機能分類)の視点に基づく環境因子と心身機能の関連を表す記述として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 電気スタンドをつけて、読書を楽しむ。
2 車いすを使用して、美術館に行く。
3 聴力が低下すると、コミュニケーションがうまくとれない。
4 ストレスが溜まると、活力が低下する。
5 床面の性状が柔らかいと、バランスを崩す。

答え
1CF(国際生活機能分類)の視点に基づく環境因子と心身機能の関連性を表す記述に関する設題につき、正解は5。
環境因子には物的環境や人的環境、社会的環境がある。「床面の状態が柔らかい」は物的因子に入るため、環境因子を表す。一方、「バランスを崩す」は身体の動きに関連するため、心身機能に該当する。
 
問題20
 Hさん(80歳、女性、要介護1)は、アルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimer’s type)である。20年前に夫が亡くなった後は、ずっと独り暮らしをしている。これまでの生活を続けていきたいので、訪問介護(ホームヘルプサービス)を利用することにした。
 訪問介護員(ホームヘルパー)のHさんへの対応として、、最も適切なものを1つ選びなさい。


1 Hさんの意向を確認して、今まで通り畳で布団の使用を継続した。
2 入浴後、手拭いで体を拭いていたが、バスタオルに変更した。
3 訪問介護員(ホームヘルパー)の判断で、食事の前にエプロンをつけた。
4 整理整頓のために、壁に立てかけてあった掃除機を押し入れに片付けた。
5 Hさんの気持ちを切り替えるために、家具の配置を換えた。

答え
 訪問介護(ホームヘルパー)の利用者への対応に関する設題につき、正解は1。
介護福祉員は「利用者主体」「利用者本位」を念頭に支援を展開す必要がある。Hさんは「これまでの生活を続けていきたい」と希望し、訪問介護を利用することになったので、今までどおり畳で布団の使用を継続する等、Hさんの意向を確認・尊重し、今後も主体的に一人暮らしを行えるよう支援していく必要がある。
問題21
 「平成30年版高齢者白書」(内閣府)で示された65歳以上の者の家庭内事故の発生割合が最も高い場所(屋内)として、正しいものを1つ選びなさい。

1 怪談
2 台所・食堂
3 風呂場
4 トイレ
5 居室

答え
 「平成30年版高齢社会白書」(内閣府)で示された65歳以上の者の家庭内事故の発生割合が最も高い場所(屋内)に関する設題につき、正解は5。
 自分が暮らす住宅(自宅)等で発生する事故を家庭内事故と呼ぶ。
「平成30年版高齢社会白書」(内閣府)をみると、65歳以上の者の家庭内事故の
発生割合が最も高い場所(屋内)は「居室」で45.0%となっている。以下「階段」18.7%、「台所・食堂」17.0%と続く。
問題22
 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)での介護に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 テレビのニュースを見て、新しい出来事を覚えてもらう。
2 利用者それぞれの要求には応えられないので、同じ日課で過ごしてもらう。
3 利用者の、現在よりも過去の身体的・精神的状態の把握が優先される。
4 利用者の、なじみのある人や店との関係は継続していく。
5 環境になれるまでは、車いすでの移動を勧める。

答え
 認知症対応型共同生活介護(認知症グループホーム)での介護に関する設題につき、正解は4。
 認知症の利用者も含めて利用者には、なじみのある人や通い慣れた店等、一人ひとりにとっての関係性が存在する。
問題23
 訪問解除事業所のサービス提供責任者の役割に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 利用者の生活課題に沿って、居宅サービス計画書を作成する。
2 具体的な援助目的及び援助内容を記載した訪問介護計画を作成する。
3 利用者の要望に応じて、他の事業所との利用調整を行う。
4 判断能力が十分でない人に対して、日常的な金銭管理を行う。
5 居宅サービス事業者を招集して、サービス担当舎会議を開催する。

答え
 訪問介護事業所のサービス提供責任者の役割に関する設題につき、正解は2。
訪問介護事業所のサービス提供責任者は訪問介護サービスを計画・運営する責任者である。
(指定居宅サービス等の事業の人員、設備等運営に関する基準第24条)
問題24
 介護の実戦における多職種関連に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 医師が多職種連携の中心となる介護実戦のことである。
2 民生委員やボランティアは、多職種連携のチームから除かれる。
3 医療と介護の連携とは、利用者の体調不良時も医療機関を受診させることを指す。
4 要介護度の改善を優先して、多職種連携によるケアプランを作成する。
5 利用者のケアの方向に関する情報を共有して、課題の解決に取り組む。

答え
 介護の実践における多職種連携に関する設題につき、正解は5。
多職種連携では異なる専門性や背景を持つ多職種や関係者が同じチームとして、利用者のケアの方向に関する情報を共有し、連携を図りながら利用者の生活課題(ニーズ)の解決に取り組む。
課題25
 介護福祉職の倫理に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 介護の技術が伴わなくても、利用者の要望を最優先に実施した。
2 利用者が求めた医行為は、実施が可能である。
3 個人情報の取扱いについて、利用者に説明して同意を得た。
4 暴力をふるう利用者を自室から出られないようにした。
5 業務が忙しかったので、施設の廊下で職員同士の打合せを行った。

答え
 介護福祉職の倫理に関する設題につき、正解は3。
個人情報の取扱いを定めた個人情報保護法では、個別情報を第三者に提供する場合は利用者の同意が必要である(個人情報保護法第23条)。
問題26
 高齢者介護施設で、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)の保菌者が確認された時の対応に関する記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 入所者全員の保菌の有無を調べる。
2 接触感染予防策を実施する。
3 保菌者のレクリエーションへの参加を制限する。
4 保菌者は最初に入浴する。
5 通常用いられる消毒薬は無効である。

答え
 高齢者介護施設でMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)の保菌者が確認された時の対応に関する設題につき、正解は2。
 MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)の感染経路接触感染である。よって、うがい、てあらい、手指消毒等の接触感染予防策を実施する。

コミュニケーション技術

問題27
 直面化の技法に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 利用者との感情と行動の矛盾点を指摘する。
2 うなずきやあいづちを用いて、利用者の話を促す。
3 利用者が話した内容を、整理して伝える。
4 利用者が話した内容を、別の言葉を使って簡潔に返す。
5 「はい」や「いいえ」だけで答えれる質問をする。

答え
 直面化の技法に関する設題につき正解は1。
直面化は、利用者の感情と行動の矛盾点を指摘したり、心の葛藤をうかがわせる態度について話題にしたりする中で、利用差が自分自身と向き合う機会を提供するコミュニケーション技法である。
問題28
 意欲が低下した人とのコミュニケーションの基本として、最も優先すべきものを1つ選びなさい。

1 考え方を変えるように促す。
2 早く元気を出すように励ます。
3 意欲が自然に回復するまで待つ。
4 意欲低下の背景を考える。
5 自己決定してもらうのは避ける。

答え
 意欲が低下した人とのコミュニケーションに関する設題につき、正解は4。
意欲低下には理由があるので、介護福祉職は、まず、なぜ意欲が低下したのか、その背景を検討することが必要である。
問題30
 視覚障害者とのコミュニケーションに関する愚痴の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 挨拶するときは後ろから声をかける。
2 話しかけることは最小限にとどめる。
3 聴覚、触覚、嗅覚を活用する
4 声の強弱などの準言語の活用は控える。
5 方向を示すときは「あちら」「そちら」と表現する。

答え
 視覚障碍者とのコミュニケーションに関する設題につき、正解は3。
視覚障害の場合、視覚に障害があるため、聴覚や触覚、嗅覚等を活用しながらコミュニケーションを図るとよい。
次の事例を読んで、問題31、問題32について答えなさい。
(事例)
 Jさん(20歳、男性)は、中度の知的障害を伴う自閉症(autism)があり、2か月前から就労継続支援B型事業所を利用している。Jさんは、日常生活に関することは自分の感情を伝えることができるが、他者の感情を読み取ることや抽象的な言葉の理解は苦手である。また、社会的な善悪に照らして自分の言動を判断することが難しい。
 ある日、事業所で作業中にJさんが興奮して他の利用者を叩いた。介護福祉職は二人を引き離し、Jさんを個室に連れて行って対応した。
 作業終了後、同居している家族にJさんの出来事を伝えた。家族はJさんに、「どうしてそんなことをするの。いつもだめなことばかりして」とイライラした口調で叱った。
問題31
 Jさんを個室に連れて行ったときの、介護福祉職のJさんに対する最初の言葉かけとして、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 「人を叩くのは許されません」
2 「相手の気持ちを想像しましょう」
3 「自分のしたことを反省しましょう」
4 「ここで話をしましょう」
5 「なぜ叩いてしまったのですか」

答え
 中度の知的障害を伴う自閉症の利用者に対する介護福祉職の最初の言葉かけに関する設題につき、正解は4。
 自閉症の場合、抽象的な言葉の理解や過去を振り返ることが苦手なだけでなく、
情報量が多いと混乱してしまう。よって、場所を個室に移したので、まずは
「ここで話をしましょう」と簡潔に言葉かけを行う必要がある。その上で、
Jさんの思いを汲み取り、代弁していく姿勢が介護福祉職には求められる。
問題32
 Jさんを叱った家族への介護福祉職の対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 叱ることは正しいと支持する。
2 家族の対応は間違っていると否定する。
3 Jさんへのこれまでの対応や思いを聴く。
4 家族の対応には介入せずに黙認する。
5 介護福祉職の指示通りに対応するように伝える。

答え
 中度の知的障害を伴う自閉症の利用者を叱った家族への介護福祉職の対応に関する設題につき、正解は3。
 Jさんを支援するうえで家族の存在は重要となる。よって、jさんと家族の
関係性を把握するためにも、これまで家族がJさんとどのように関わってきた
のか、Jさんに対してどのような思いがあるのかを家族から聴くことは重要である。
次の事例を読んで、問題33、問題34について答えなさい。
(事例)
 Kさん(80歳、男性)は、中度の認知症(dementia)があり、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)に入居中である。16時頃、KさんがL介護福祉職に、「仕事は終わりました。家に帰ります」と伝えてきた。その後、L介護福祉職はがKさんの居室を訪問すると、Kさんは、「早く家に帰らなくては…」と言いながらタンスから衣類を取り出していた。
問題33
 L介護福祉職が居室を訪問したときに、最初にとる対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 衣類をタンスへ戻すように促す。
2 居室から出ないようにお願いする。
3 ここに入居したことを覚えていないのかと質問する。
4 ここは仕事場ではないことを説明する。
5 挨拶しながら表情や行動を観察する。

答え
 介護福祉職が認知症対応型共同生活介護の利用者の居室を訪問した際に最初にとる対応に関する設題つき、正解は5。
 利用者への挨拶は介護福祉職の基本である。L介護福祉職が居室を訪問した際に
「最初」にとる対応は、認知症のKさんに挨拶することで、そのうえで、Kさんの
表情や行動を観察し、Kさんを受け止めていく姿勢が求められる。
問題34
 客観的事実を表す介護記録として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 16時頃、「仕事は終わりました。家に帰ります」という発言があった。
2 自宅のことが心配になって「家に帰る」という発言があった。
3 不安時に無断外出が心配されるため、様子の観察が必要と考える。
4 認知症(dementia)が悪化して、ここがどこなのかを理解していないようだ。
5 帰宅願望があったが、特に問題はなかった。

答え
 認知症対応型共同生活介護の利用者の客観的事実を表す介護記録に関する設題につき、正解は1。
 利用者の思いや介護福祉職の判断といった主観的情報ではなく、事実つまり
客観的情報をそのまま記録したものが客観的事実を表す介護記録となる。

生活支援技術

問題35
 一戸建ての住宅に暮らす利用者の地震対策に関する訪問介護員(ホーム
ヘルパー)の助言として、最も適切なものを1つ選びなさい。


1 家具には、キャスターをつける。
2 書類の上部には、重いものを収納する。
3 食器棚は、ガラス扉を外す。
4 外への避難経路は、玄関の1方向とする。
5 非常時に持ち出すものは、リュックサックにまとめておく。

答え
 一戸建ての住宅に暮らす利用者の地震対策に関する訪問介護員(ホーム
ヘルパー)の助言に関する設題
につき、正解は5。
 自身等の非常時に備え、日ごろから持ち出すものはリュックサックに
まとめておき
、直ぐ持ち出せるようにしておく。
問題36
 介護保険の給付対象となる住宅改修を利用してトイレを改修するとき、介護福祉職が助言する内容として、正しいものを1つ選びなさい。

1 開き戸は、自動ドアに変更できる。
2 和式便器の上に、腰掛便座を設置できる。
3 滑りにくい床材に変更できる。
4 取り外しが可能な手すりを設置できる。
5 現在使用している洋式便器に、洗浄機能を付加できる。

答え
 介護保険の住宅改修でトイレを回収する際の介護福祉員の助言に関する設題につき、正解は3。
 滑りにくい床材に変更するのは、介護保険の住宅改修の給付対象である。
 
問題37
 ユニバーサルデザイン(universal design)の7原則に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 高齢者が優先的に使用できる。
2 使い方を統一する。
3 情報伝達の手段は一つにする。
4 使用するためには訓練が必要である。
5 誰にでも使える大きさと広さが確保されている。

答え
 ユニバーサルデザインの7原則に関する設題につき、正解は5。
ユニバーサルデザインの7原則には、
①誰でも公平に使える公平性
②使いやすいほうを選んで使える柔軟性
③使い方が簡単でわかりやすい単純性
④必要な情報がすぐに理解できる分かりやすさ
⑤うっかりミスが危険につながらない安全性
⑥無理な姿勢や強い力が必要でなく、楽に使える身体への負担軽減
十分な大きさと空間を確保できるスペースの確保がある。
このうち「誰にでも使える大きさと広さが確保されている」は⑦に該当する。
 
問題38
 次の記述のうち、高次脳機能障害(higher brain dysfunction)による着衣失行のある人に対する着衣の介護として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 着替えができない理由を本人に確認する。
2 左右がわかるように衣類に印をつける。
3 着衣の前に全ての手順を口頭で指示する。
4 衣服を畳んで渡す。
5 着衣の方法を毎回買えるように勧める。

答え
 高次脳機能障害による着衣失行のある人に対する着衣の介護に関する設題につき、正解は2。
 高次脳機能障害のある人は、身体機能は保持されているが、物事の手順がわから
なくなる遂行機能障害や2つ以上のことを同時に行えなくなる注意障害等が現れやすい。
よって、左右の違いがわかるように目印をつける等の間接的な支援が必要となる。
問題39
 更衣のための介護に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 手指の細かな動作が難しい利用者に、マグネット式のボタンを勧める。
2 認知症(dementia)のある利用者に、ボタンエイドの使用を勧める。
3 下肢の筋力低下のある利用者に、ソックスエイドの使用を勧める。
4 視覚障害のある利用者に、ソックスエイドの使用を勧める。
5 片麻痺のある利用者に、袖ぐりの小さい上衣を勧める。

答え
 更衣のための介護に関する設題につき、正解は1。
手指の細やかな動作が難しい、つまり手指の巧緻性が低い利用者には、通常のボタンやファスナーの使用が難しいため、留めやすく、指でずらすだけで外せるマグネット式のボタンのほうが適している。
問題40
 介護老人保健施設の利用者の身じたくに関する専門職の役割として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 介護支援専門員(ケアマネジャー)は、洗面時の関節可動域の制限を改善する。
2 支援相談員は、着脱に使用する福祉用具を選定する。
3 栄養士は、破綻した技師を修復する。
4 看護師は、糖尿病(diabetes mellitus)に伴う管理が必要な利用者の爪切りを行う。
5 理学療法士は、身体状況に合わせて衣類を作り直す。

答え
 介護老人保健施設の利用者の身じたくに関する専門職の役割に関する設題につき、
正解は4。
 糖尿病の場合、進行すると足の感覚が鈍くなり、けがややけど等に気づきにくく、
化膿や壊死に至る場合もある。また、感染症も起こしやすい。そのため、糖尿病に
伴う管理が必要な利用者
の場合、爪切りは医療行為となり、看護師や医師が行う必要がある。
問題41
 次の記述のうち、ベッドから車いすへの移乗介護で最初に行うこととして、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 移乗の目的を説明して同意を得る。
2 移乗の方法を説明する。
3 衣類を着替えてもらう。
4 車いすを介助しやすい位置に調整する。
5 ベッドの高さを調節する。

答え
 ベッドから車いすへの移乗介護で最初に行ることにかんする設題につき、
正解は1。
一般的に介護福祉職が利用者に対して支援をおおkなう際は、最初に挨拶
および説明と同意が必要となる。よって、ベッドから車いすへの移乗介護で
最初」に行うことは、利用者に以上の目的を説明して同意を得ることである。
問題42
 立位をとり静止している利用者の重心線が、点Xから点Yに移動したときに考えられるふらつきとして、適切なものを1つ選びなさい。

1 左前方へのふらつき
2 右前方へのふらつき
3 左後方へのふらつき
4 後方へのふらつき
5 右後方へのふらつき

答え
 立位をとり静止している利用者の重心線が点Xから点Yに移動した時に考えられるふらつきに関する設題につき、正解は2。
 左右の足の位置がそのままの状態で、重心が点Xから点Yに移動した場合、
矢印が示すように、右前方へのふらふきが生じると考えられる。
問題43
 右片麻痺の利用者が、手すりを利用して階段を昇降するときの介護に関する次の記述のうち、適切なものを1つ選びなさい。

1 手すりが利用者の右側になるように声をかける。
2 階段を上るとき、利用者の左後方に立つ。
3 階段を上るとき、右足から出すように声をかける。
4 階段を降りるとき、利用者の右前方に立つ。
5 階段を降りるとき、左足から出すように声をかける。


答え
 右片麻痺の利用者が手すりを利用して階段を昇降する時の介護に関する設題につき、正解は4。
 右片麻痺の利用者が階段を降りる時は、患側(麻痺側)前方への転落を防ぐため、
介護福祉職は患側(麻痺側)の右前方に立つ必要がある。
問題44
Ⅿさん(78歳、女性)は、体格指数(BMI)は18.7である。病気や食事制限はない。この1年間で体重が2kg減少し、「最近、歩くのが遅くなり、疲れやすくなった」と言っている。Ⅿさんに普段の食生活を尋ねたところ、お茶漬けやうどんで済ますことが多いと答えた。
 介護福祉職が食事バランスガイドを用いて接種を勧める区分として、最も適切なものを1つ選びなさい。


1 主食
2 副菜
3 主菜
4 牛乳・乳製品
5 果物

答え
 介護福祉職が食事バランスガイドを用いて接種を勧める区分に関する設題につき、正解は3。
WHO(世界保健機構)の基準によれば、体格指数(BMI)が18.5未満で低体重となる。一方、厚生労働省「日本人の食事摂取基準」(2015年版)によれば、70歳以上では体格指数(BMI)目標値が21.5~24.9となり(同基準2020年版でも同値)、20を下回ると低栄養のリスクが高まるとされる。つまり、Ⅿさんは78歳で、この1年間で体重が2kg減少し、体格指数(BMI)が18.7であるため、低栄養のリスクがあると考えられる。よって、Ⅿさんは特に身体のエネルギー源となる主食と主菜を摂取することが重要となる。ただし、Ⅿさんは普段の食生活の中で、すでに主食となるお茶漬けやうどんといった炭水化物は摂取しており、また「最近歩くのが遅くなり、疲れやすくなった」と言っている。以上を踏まえると、身体のエネルギー源となり、さらに血や筋肉をつくる主菜(肉、魚、豆腐等)の摂取をⅯさんに勧める必要がある。
問題45
 いすに座って食事をする利用者の姿勢を確保する介護として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 顎を上げてもらう。
2 テーブルは、肘が付き腕が自由に動かせるものを用意する。
3 テーブルと体の間を30cm離す。
4 体幹を後方に傾けてもらう。
5 いすに浅く座ってもらう。

答え
 いすに座って食事をする利用者の姿勢を保持する介護に関する設題につき、
正解は2。
テーブルは高すぎず低すぎず、両肘がついた時、自由に動かせるものを用意する。
テーブルの高さは腕の載せて肘が90度に曲がる程度が望ましい。
問題46
 高齢者の食生活に関する助言として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 骨粗鬆症(osteoporosis)の予防として、ビタミンⅮ(vitamin D)の摂取を勧める。
2 高血圧症(hypertension)の予防として、果物の摂取を控える。
3 便秘の予防として、水分摂取を控える。
4 ドライマウス(dry mouth)の予防として、柔らかい食物を勧める。
5 逆流性食道炎(reflux esophagitis)の予防として、食後すぐに横になる。

答え
 高齢者の食生活に関する助言についての設題につき、正解は1。
骨粗鬆症の予防にはカルシウムのほか、サケ、ウナギ、サンマ、卵等に含まれるビタミンⅮの摂取が重要となる。
問題47
 左半空間無視のある利用者の食事介護として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 利用者の左側にトレーを置く。
2 トレーの右側に印をつける。
3 クロックポジションに従って配膳する。
4 食べる様子を観察して適宜食器の位置を変える。
5 利用者の右側にあるテレビをつけておく。

答え
 左半側空間無視のある利用者の食事介護に関する設題につき、正解は4。
左側にある食物が残った場合には、食器を右側に移す等、介護福祉職は利用者が食べる様子を見ながら、適宜、食器の位置を変えるようにする。
問題48
 清拭の介護として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 目のまわりは目じりから目頭に向かって拭く。
2 背部は患部を下にして拭く。
3 腹部は臍部から恥骨部に向かって拭く。
4 両下肢は抹消から中枢に向かって拭く。
5 皮膚についた水分は最後にまとめて拭く。


答え
 清拭の介護に関する設題につき、正解は4。
心臓への負担を芸減するため、両下肢や両上肢は抹消から中枢(心臓)に向かって拭く。また、筋肉の筋に沿って拭くので、マッサージ効果も期待できる。
問題49
 利用者の状態に応じた入浴の介助として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 血液透析を受けている人は、透析後に入浴する。
2 胃ろうを造設している人は、入浴を控える。
3 心臓機能障害がある人は、半身浴にする。
4 酸素療法を行っている人は、鼻カニューレを外して入浴する。
5 回腸ストーマを造設している人は、食後1時間以内に入浴する。


答え
 利用者の状態に応じた入浴の介護に関する設題につき、正解は3。
入浴の際、湯に肩まで浸かると静水圧作用で心臓への負担が増す。よって、
心臓に負担をかけさせないために、心臓障害がある人には浴槽内の水位を心臓より
低くした半身浴
が望ましい。
問題50
 右片麻痺のある利用者が、ベッドサイドでポーダブルトイレを使用するときの設置場所として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 A
2 B
3 C
4 D
5 E

答え
 右片麻痺のある利用者がベッドサイドでポータブルトイレを使用するときの
設置場所に関する設題
につき、正解は2。
 片麻痺がある場合、ポータブルトイレは、利用者がベッドで寝た位置の健側の足元に
設置
するとよい。よって、まず健側にも患側にも(麻痺側)にも該当しないCが不適切
となる。次に右片麻痺のある利用者がベッドで仰臥位となった場合、DとEは患側(麻痺側)の右側となるため、ベッド柵(サイドレール)を掴むことが難しく、端坐位にもなりにくい。よって、DとEも不適切となる。一方、AとBは健側の左側にある。その際、足元に位置するのはBとなる。仮にAの位置にポータブルトイレを置いた場合は、ベッド柵(サイドレール)が移乗の妨げとなる。以上を踏まえ右片麻痺のある利用者がベッドサイドでポータブルトイレを使用するときは、Bの位置にポータブルトイレを設置するのが適切である。
問題51
膀胱留置カテーテルを使用している利用者への介護福祉職の対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 水分摂取を控えてもらう。
2 カテーテルが折れていないことを確認する。
3 採尿バッグは膀胱と同じ高さに置く。
4 尿漏れが見られたらカテーテルを抜去する。
5 尿量の確認は看護師に依頼する。

答え
 膀胱留置カテーテルを使用している利用者への介護福祉職の対応に関する設題につき、正解は2。
 カテーテルが折れていると尿が詰まって流れなくなる。よって、カテーテルが
折れていないことを確認
する必要がある。
問題52
 解熱を目的にした坐薬(座薬)の挿入に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 挿入時は仰臥位(背臥位)で膝を伸ばす。
2 挿入時は腹式呼吸を促す。
3 坐薬(座薬)はとがっていない方から挿入する。
4 挿入後は坐薬(座薬)が排出されないことを確認する。
5 衣服を整えてから手袋を外す。

答え
 解熱を目的とした坐薬(座薬)の挿入に関する設題につき、正解は4。
挿入後は坐薬(座薬)が排出されないことを確認する。排出されないために、
可能な限り排便を済ませてから使用する。
問題53
 肉入りのカレーを常温で保存し、翌日、加熱調理したときの食中毒の原因菌として、最も注意しなければならないものを1つ選びなさい。

1 ウェルシュ菌
2 カンピロバクター
3 サルモネラ菌
4 腸炎ビブリオ
5 黄色ブドウ球菌

答え
 肉入りのカレーを常温で保存し、翌日、加熱調理した時の食中毒の原因菌に関する設題につき、正解は1。
 ウエルシュ菌は加熱しても死滅せず、カレーやシチュー等を常温で保存すると
大量に増殖
し、食中毒を起こす恐れが高まる。
問題54
 ノロウイルス(Norowirus)に感染した人の嘔吐物のついた衣服の処理に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 嘔吐物を拭きとったペーパータオルはごみ箱に捨てる。
2 汚染された部分にアルコールを噴霧する。
3 汚染された部分を強くもみ洗いする。
4 嘔吐物を取り除いた後、次亜塩酸ナトリウム溶液につける。
5 40℃の湯で洗濯する。

答え
 ノロウイルスに感染した人の嘔吐物のついた衣類の処理に関する設題につき、正解は4。
嘔吐物を取り除いた後、汚染された衣類は、ノロウイルスの消毒に効果がある
次亜塩素酸ナトリウムを含む水溶液につける必要がある。その後、十分にすすぎ、高温の乾燥機を使用するとよい。
問題55
 Aさん(85歳、女性、要介護1)は、認知症(dementia)があり判断能力が不十分である。独り暮らしで、介護保険サービスを利用している。訪問介護員(ホームヘルパー)が訪問したときに、物品売買契約書を見つけた。Aさんは、「昨日、訪問販売の業者が来た」「契約書については覚えていない」と話した。
 訪問介護員は(ホームヘルパー)がら連絡を受けたサービス提供責任者が、迅速にクーリング・オフの手続きを相談する相手として、最も適切なものを1つ選びなさい。


1 行政書士
2 消費者生活センター
3 家庭裁判所
4 保健所
5 相談支援事業所

答え
 訪問介護員から連絡を受けたサービス提供責任者が迅速にクーリング・オフの
手続きを相談する相手に関する設題
につき、正解は2。
 消費生活センターでは、商品やサービス等、消費生活全般に関する問い合わせや
苦情に対して専門の相談員が公正な立場で対応しており、クーリング・オフの手続きの相談にも応じている。
問題56
 眠れないと訴える高齢者に介護福祉職が行う助言として、最も適切なものを
1つ選びなさい。


1 起床時に日光を浴びるように勧める。
2 日中、長い昼寝をするように勧める。
3 夕食後2時間以内に就寝するように勧める。
4 寝る前に緑茶を飲むように勧める。
5 決まった就床時刻を守るように勧める、

答え
 眠れないと訴える高齢者に介護福祉職が行う助言に関する設題につき、
正解は1。
 起床時に日光を浴びることで、脳内ではセロトニンという覚醒を促す
ホルモンが分泌
され、「朝になった」というメッセージが全身に伝わり、体内時計が
リセット
される。この結果、爽快な気分での目覚めにつながり、日中を活動的に過ご
せる等、睡眠と隔世のリズムが整い、夜間の質の良い睡眠に繋がる。
問題57
 施設における安眠を促すための環境に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 湿度は20%以下に設定する。
2 寝衣は、身体に密着した形のものを選ぶ。
3 冷暖房の風が、体に直接あたるようにする。
4 夜間の照明は、部屋全体がはっきり見える明るさにする。
5 介護福祉職同士の会話が響かないようにする。

答え
 施設における安眠を促すための環境に関する設題につき、正解は5。
施設内で介護福祉職同士の会話が響くと、中には「うるさい」と感じたり、
気になったりする利用者もいて、安眠できない恐れもある。よって、介護
福祉職は会話が響かないように配慮する必要がある。
問題58
 睡眠薬を服用している高齢者への介護福祉職の対応として、適切なものを1つ選びなさい。

1 アルコールと遺書に服用してもらった。
2 服用後、1時間は起きているように伝えた。
3 日中、ふらつきがみられたので医師に伝えた。
4 通常の量では眠れないと言われたので、追加して飲むように伝えた。
5 体調に合わせて服薬時間を変更した。

答え
 睡眠薬を服用している高齢者への介護福祉職の対応に関する設題につき、
正解は3。
 睡眠薬の副作用には頭痛、倦怠感、注意力の低下等のほか、ふらつきもある。
日中、睡眠薬を服用している高齢者にふらつきがみられた場合、介護福祉職は医師に対し、その旨を速やかに伝える。
問題59
 Bさん(83歳、女性)は、介護老人福祉施設に入所している。終末期で、「最後はこの施設で迎えたい」という本人の希望があり、家族もそれを望んでいる。昨日から死前喘鳴が出現し、医師から、「あと数日でしょう」と言われた。
 「呼吸が苦しそうだ」と言っている家族への介護として、最も適切なものを1つ選びなさい。


1 「自然な経過なので体位の工夫をして一緒に見守りしましょう」
2 「Bさんに意識はないので心配いらないですよ」
3 「痰の吸引をすると楽になるので準備しますね」
4 「Bさんを励ましてください」
5 「すぐに救急車を呼びましょう」

答え
 「呼吸が苦しそうだ」と言っている家族への介護に関する設題につき、正解は1。
死期が迫った人にみられる死前喘鳴では、呼吸のたびに痰がからんだような「ゴロゴロ」音や「ゼコゼコ」音が聞かれるものの、これは亡くなる前にみられる自然な経過でもある。ただし、それを見守る家族にとっては「呼吸が苦しそうだ」等の心配につながりやすい。介護福祉職は家族に対して死前喘鳴が自然な経過であることを伝えるとともに、体位を工夫して、そうした呼吸音を小さくするなどして家族を安心させる。
問題60
 高齢者施設において介護福祉職が行う死亡後の介護について、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 ペースメーカーを取り除く。
2 口が閉じない場合は紐で顎を固定する。
3 衣服は着衣がしやすい服を選ぶ。
4 全身清拭には水を使用する。
5 家族に、死亡後の介護を一緒に行うかどうかを確認する。

答え
 高齢者施設において介護福祉職が行う死亡後の介護に関する設題につき、正解は5。
家族が死亡後の介護に参加することは、大切な人の死を悲しみ、それを受け入れる
ために必要な過程である。しかし、中には一緒に行いたくない家族もいるため、それぞれの家族の意向を十分に確認した上で検討する。

介護過程

問題61
 介護過程の目的に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 利用者の価値観を変える。
2 利用者の療養上の世話をする。
3 利用者の経済的負担を軽減する。
4 利用者の望んでいる、よりよい生活を実現する。
5 利用者の生活習慣を改善する。

答え
 介護過程の目的に関する設題につき正解は、4。
介護過程とは、利用者が望む生活の実現に向けて、場当たり的で思い付きの介護ではなく、意図的な(個別性に応じた計画的で根拠に基づいた)介護と展開するためのプロセスである。介護過程の目的や意義をまとめると以下のようになる。
①利用者の望む生活・より良い生活の実現
②利用者一人ひとりに応じた個別支援(個別ケア)
③利用者の尊厳の保持、自己決定の尊重、自立支援
④根拠に基づく的確な支援
⑤多職種連携・協働による支援

 選択肢のうち「価値観を変える」「療養上の世話をする」「経済的負担を軽減する」「生活習慣を改善する」は、上記①~⑤に当てはまらない。一方「利用者の望んでいる、より良い生活を実現する」は上記①に該当する。
問題62
 介護計画の作成に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 抽出されたニーズを踏まえて目的を設定する。
2 内容が明確であば支援方法の記載は省略する。
3 支援方法は「~させる」と使役文で記載する。
4 利用者の正しい理解を促すために専門用語をよいる。
5 計画の見直しの時期は決めない。

答え
 介護計画の作成に関する設題につき、正解は1。
 介護計画は介護福祉職が利用者の生活課題(ニーズ)に基づき作成した利用者支援のための計画で、利用者ごとに作成するものである。具体的には、まず抽出された生活課題(ニーズ)を踏まえて長期目標を設定し、次にその長期目標を達成するための短期目標を設定する。その上で短期目標を達成するための具体的な支援内容・方法を記載することになる。
次の事例を読んで、問題64、問題65について答えなさい、
(事例)
 Cさん(75歳、男性、要介護1)は、脳梗塞(cerebral infarction)を発症した。2か月前から在宅復帰を目的として介護老人保健施設に入所している。次女は遠方から時々面会に来ているが、長女とは音信不通の状態が続いている。 
 Cさんは現在、右片麻痺で歩行には杖を使用している。担当の理学療法士から、「レクリエーションには積極的に参加するなど意欲はあるが、歩行状態が思うように改善しないと悩んでいた」との報告があった。
 その後、歩行訓練やレクリエーションに参加しなくなり、居室のベッドで寝て過ごすことが多くなった。また、時々尿失禁をするようになった。
 Cさんは、「自宅に帰りたいのに、このまま車いすになったらどうしよう」と担当の介護福祉職に打ち明けた。
問題64
 Cさんの介護過程の展開に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 長女から入所前の情報を収集する。
2 現状を再アセスメントし、生活課題を抽出する。
3 自宅に戻った後の介護計画を立案する。
4 尿失禁に対応する介護計画の実施を優先する。
5 介護計画の最終的な評価は理学療法士が担当する。

答え
 利用者の介護過程の展開に関する設題につき、正解は2。
当初、Cさんはレクリエーションには積極的に参加する党の意欲があった。しかし、その後、歩行訓練に加え、今まで参加していたレクリエーションにも参加しなくなり、居室のベッドで寝て過ごすことが多くなり、時々失禁をするようになった。このことからCさんの状況が変わってきていることがわかるため、Cさんの状況について再アセスメントして新たな生活課題(ニーズ)を抽出し、それに応じた介護計画を作成することが求められる。
問題65
 次の記述のうち、Cさんの短期目標として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 車いす使用方法を理解する。
2 居室のベッドで安静に過ごす。
3 次女との同居を実現する。
4 今まで以上に、意欲的に歩行訓練に取り組む。
5 居室を出てレクリエーションに参加する。


答え
 利用者の短期目標に関する設題につき、正解は5。
Cさんが、このまま居室にとどまることは廃用症候群(生活不活発病)につながり、さらに心身機能を低下させてしまう。よって、まずは居室を出て、以前の様にレクリエーションに参加することを目標とする必要がある。
次の事例を読んで、問題66、問題67について答えなさい。
(事例)
 Dさん(77歳、男性、要介護2)は、妻と二人で暮らしている。定年まで、高校の体育の教師で野球部の監督をしていた。起居動作に問題はないが、認知症(dementia)と診断されたため、現在、通所介護(デイサービス)を週3回利用している。通所介護(デイサービス)では、短期目標を「役割を持ち意欲的に生活する(3か月)と設定し、体操を指導する役割をお願いしていた。
 実施1か月が経過したころ、テレビで高校野球を見たⅮさんは暗い表情で、「生徒を全国大会に連れていけなかったのは私の責任だ」と嘆いていた。この日は、担当の介護福祉職が体操の指導をお願いしても、「今すぐに行かなければ」と断った。
問題66
Ⅾさんが体操の指導を断った理由の解釈として、最も可能性が高いものを1つ選びなさい。

1 介護福祉職に依頼されたため。
2 妻に会いに自宅に帰りたいため。
3 高校野球のことが気になっているため。
4 立ち上がり動作が不安定なため。
5 体育の授業を行うため。

答え
 Ⅾさんが体操の指導を断った理由の解釈に関する設題につき、正解は3。
Ⅾさんは定年まで高校の体育の教師で野球部の監督をしていた。そしてテレビで高校野球を見た時、暗い表情で嘆き、この日は体操の指導を断った。このことからⅮさんが体操の指導を断った理由として「高校野球のことが気になっているため」と解釈するのが適切である。
問題67
 その後も体操の指導を継続していたⅮさんは、参加者から体操の順番が違うと指摘されて指導の意欲を失い、一人でいることが多くなった。しかし、体操の時間になると遠くからその様子を眺めていた。
Ⅾさんが今後も現在の役割を継続するために、優先して取り組むべき課題として、最も適切なものを1つ選びなさい。


1 体操に対する関心を取り戻すこと。
2 体操の内容を変更すること。
3 体操を指導する自信を回復すること。
4 体操の正しい順番を学び直すこと。
5 指摘した参加者に謝ること。

答え
Ⅾさんが今後も現在の役割を継続するために優先して取り組むべき課題に関する設題につき、正解は3。
Ⅾさんは参加者から「体操の順番が違う」と指摘され、指導の意欲は失ったものの、体操の時間になると遠くからその様子を眺めている。このことから体操に関心があるものの、指導に自信がないため、体操に参加できないでいると推測できる。よって、Ⅾさんが体操を指導する自信を回復することを優先して取り組むべき課題とする必要がある。
問題68
 Eさん(70歳、女性、要介護1)は、夫、長男と共に農業をしていた。半年前に脳梗塞(cerebral infarction)で左片麻痺になった。現在は介護老人保健施設に入所し、リハビリテーションに取り組んでいる。介護福祉職が居室を訪れたとき、Eさんが、「料理は苦手なの」「そろそろ夏野菜の収穫の時期ね。収穫は楽しいし、採れたての野菜を近所に配るとみんな喜ぶのよ」と言った。その後、「夫は家事に専念しなさいと言われているから…」とうつむいて言った。
 介護福祉職は介護福祉職間のカンファレンス
(conference)でEさんの思いを共有した。Eさんの思い出として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 農業に関わっていきたい。
2 家事に専念したい。
3 後継者の育成に関わりたい。
4 家でのんびりしたい。
5 料理の自信をつけたい。

答え
 介護福祉職間のカンファレンスで共有した利用者への思いに関する設題につき、正解は1。
 Eさんは「そろそろ夏野菜の収穫の時期ね。収穫は楽しいし、採れたての野菜を近所に配るとみんな喜ぶのよ」と野菜の収穫やそれおを近所に配ることに対しては意欲があることがうかがえる。つまり、Eさんには「農業に関わっていきたい」という思いがあることがわかる。

発達と老化の理解

問題69
 Aちゃん(1歳3か月)は、父親に抱かれて散歩中である。前方から父親の友人がやってきて、父親がにこやかに友人と話をしていると、Aちゃんは父親にしがみつき、父親と父親の友人の顔を交互に見ている。しばらくすると、Aちゃんは緊張が解けた様子で、友人が立ち去るときには少し笑顔を見せた。
 Aちゃんの様子を説明する用語として、最も適切なものを1つ選びなさい。


1 3が月微笑
2 社会的参照
3 クーイング
4 自己中心性
5 二項関係

答え
 乳幼児の倫理的機能の発達に関する設題につき、正解は2。
社会的参照とは、1歳頃より経験のないことや初めての人に会っても信頼できる大人の表情・反応を見て、自分の行動を決めることをいう。
問題70
 高齢者の年齢規定に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律では、高齢者を75歳以上としている。
2 「高齢者虐待防止法」では、高齢者を65歳以上としている。
3 高齢者の医療の確保に関する法律では、後期高齢者を65歳以上としている。
4 道路交通法では、免許証の更新の特例がある高齢運転者を60歳以上としている。
5 老人福祉法では、高齢者を55歳以上としている。
(注)「高齢者虐待防止法」とは、「高齢者虐待の防止、高齢者の擁護者に対する支持等に関する法律」のことである。

答え
 高(年)齢者の年齢規定に関する設題につき、正解は2。
「高齢者虐待防止法」は、老人福祉法と同じ65歳以上としている(同法第2条)。
問題71
 加齢に伴う嚥下機能の低下の原因に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 舌骨の位置の上昇
2 咽頭の位置の上昇
3 舌骨上筋の増大
4 咽頭挙上の不足
5 咳嗽反射の増強

答え
 加齢に伴う嚥下機能の低下に関する設題につき、正解は4。
加齢により咽頭挙上の不足で咽頭の閉鎖が弱まり、誤嚥を引き起こす。
 
問題72
 老年期の記憶と注意機能に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 自分の若い頃の記憶では、40歳代のころの出来事をよく覚えている。
2 数字の逆唱課題で答えられる数字の個数は、加齢による影響を受けない。
3 複数のことを同時に行う能力は、加齢によって低下する。
4 騒がしい場所での作業効率は、若年者より高齢者が高い。
5 エピソード記憶は、加齢に要る影響を受けない。

答え
 老年期の記憶と注意機能に関する設題につき、正解は3。
複数のことを同時に行うことは注意力を要する。加齢によりこの機能が低下する。
問題73
 高齢者において、心不全(heat failure)が進行したときに現れる症状に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 安静にすることで速やかに息切れが治まる。
2 運動によって呼吸苦が軽減する。
 チアノーゼ(cyanosis)が生じる。
4 呼吸苦は、仰臥位(背臥位)の方が軽減する。
5 下肢に限局した浮腫が生じる。

答え
 高齢者の心不全が進行した時の症状に関する設題につき、正解は3。
チアノーゼは、肺のガス交換や全身への血液量が不十分な時などにおこる。
心不全の進行により、チアノーゼが起こりうる。
問題74
 Bさん(82歳、男性)は脳卒中(stroke)による右片麻痺がある。ほとんどベッド上の生活で、排泄もおむつを使用している。一週間前から痰と鼻汁があり、37.2℃の微熱で、元気がなく、いつもよりも動きがすくなかった。食欲も低下して食事を残すようになっていた。今日、おむつの交換をしたときに仙骨部の皮膚が赤くなり一部に水疱が出来ていた。
 Bさんの皮膚の状態とその対応に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。


1 圧迫によって血流が悪くなったためである。
2 仙骨部にこうしたことが起こるのは、まれである。
3 食事量の低下とは無関係である。
3 体位交換は、できるだけ避ける。
5 おむつの交換は、できるだけ控える。

答え
 事例による対象者の褥瘡の皮膚の状態と対応に関する設題につき、正解は1。
仙骨部の皮膚が赤くなり水疱ができたのは、ベッド上での動きが少なく、圧迫箇所の血流が悪くなったからである。
問題75
 次のうち、高齢者の栄養状態を良好に維持するための対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 歯科健康診断を受ける。
2 複数の薬剤を併用する。
3 外出を控える。
4 一人で食事する。
5 たんぱく質を制限する。


 高齢者の栄養状態を良好に維持するための対応に関する設題
につき、正解は1。
歯科健康診査を受け、噛み合わせ、義歯・口腔内の状況を改善することにより、嚙み砕くことができ、栄養が吸収できるようになる。
問題76
 糖尿病(diabetes mellitus)のある高齢者(要介護1)が転倒して、骨折(fracture)した。入院治療後に再び自宅療養を続けるための専門職の役割として、正しいものを1つ選びなさい。

1 看護師は、糖尿病(diabetes mellitus)の薬の処方箋を交付する。
2 理学療法士は、糖尿病(diabetes mellitus)の食事メニューを考える。
3 管理栄養士は、自宅で料理ができるような作業訓練をする。
4 訪問介護(ホームヘルパー)は、居宅サービス計画を立案する。
5 訪問支援専門員(ケアマネージャー)は、訪問リハビリステーションの利用を提案する。

答え
 事例において専門職の役割に関する設題につき、正解は5。
介護支援専門員(ケアマネージャー)は、介護保険制度においてケアプラン(介護計画サービス)の作成、介護サービスの調整・管理を行う。利用者・家族の望む生活を一緒に考え介護サービスを組んでいく。

認知症の理解

問題77
2012年(平成24年)の認知症高齢者と2025年(平成37年)の認知症高齢者数に関する推計値(「平成29年版高齢社会白書」(内閣府)の組合せとして、適切なものを1つ選びなさい。

1 162万人 → 約400万人
2 262万人 → 約500万人
3 362万人 → 約600万人
4 462万人 → 約700万人
5 562万人 → 約800万人
(注)平成37年とは令和7年のことである。

答え
 認知症高齢者数に関する設題につき、正解は4。
462万人 ― 約700万人が正しい。
問題78
 認知症(dementia) の行動・心理状態(BPSD)に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 トイレの水を流すことができない。
2 物事の計画を立てることができない。
3 言葉を発することができない。
4 親しい人がわからない。
5 昼夜逆転が生じる。

答え
認知症の行動心理症状(BPSD)に関する設題につき、正解は5。
昼夜逆転は、睡眠障害であり、行動・倫理症状(BPSD)である。
問題80
 認知症(dementia)の初期症状に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 血管性認知症(vascular dementia)では、幻視が認められる。
2 性状圧水頭症(normal pressure hydrocephalus)では、歩行障害が認められる。
3 前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia)では、エピソード記憶の障害が認めれれる。
4 アルツハイマー型認知症(dementia fo dhe Alzheimer’s type)では、失禁が認められる。
5 レビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies)では、もの盗られ妄想が認められる。

答え
 認知症の初期症状に関する設題につき、正解は2。
正常圧水頭症は、治療可能な認知症といわれている。歩行障害の他にぼーっとする認知症のタイプに似ていて、尿失禁も認められる。
問題81
 認知症(dementia)の発症リスクを低減させる行動に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 抗認知症薬を服用する。
2 睡眠時間を減らす。
3 集団での交流活動に参加する。
4 運動の機会を減らす。
5 飽和脂肪酸を多く含む食事を心がける。

答え
 認知症の発生リスクを低減させる行動に関する設題につき、正解は3。
集団での交流活動に参加することは、脳への刺激もあり、人とのかかわりの中で認識や理解・判断するといった認知機能にも働きかけ、発症リスクを低減させる。
問題82
 抗認知症薬に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 若年性アルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimer's type with early onset)には効果がない。
2 高度のアルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimer’s type)には効果がない。
3 レビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies)には効果がない。
4 症状の進行を完全に止めることはできない。
5 複数の抗認知症薬の併用はみとめられていない。

答え
 抗認知症薬に関する設題につき、正解は4。
抗認知症薬は、進行を遅らせる効果はあるが、根本的治療薬だはない。
問題83
 前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia)の症状のある人への介護福祉職の対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 周回がある場合は、GPS追跡機で居場所を確認する。
2 甘い食べ物へのこだわりに対しては、甘いものを制限する。
3 常同行動がある場合は、本人と周囲の人が納得できる生活習慣を確立する。
4 脱抑制がある場合は、抗認知症薬の服薬介護をする。
5 施設内で職員に暴力をふるったときは、警察に連絡する。

答え
 前頭側頭型認知症に対する対応に関する設題につき、正解は3。
常同行動は、本人や家族が納得できるようにその行動を生活習慣化するち良い(ルーチン化療法)。
問題84
 Cさん(78歳、男性、要介護2)は、4年前にアルツハイマー型認知症(dementia of the Alzhemer's type)と診断を受け、通所介護(デイサービス)を週1回利用している。以前からパソコンで日記をつけていたが、最近はパソコンの操作に迷い、イライラして怒りっぽくなったと娘から相談を受けた。
 介護福祉職が娘に対して最初に行う助言の内容として、最も適切なものを1つ選びなさい。


1  パソコンの処分
2 パソコンの使い方の手助け
3 日記帳の購入
4 薬物治療について主治医に相談
5 施設入所について介護支援専門員(ケアマネージャー)に相談

答え
 認知症のある家族支援に関する設題につき、正解は2。
パソコンの操作に迷っているので、その時に支援すると日記を書く習慣ができる。
問題85
 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)で生活している軽度のアルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimer's type)のⅮさんは、大腿骨の頸部を骨折(fracture)して入院することになった。認知症対応型共同生活介護(グループホーム)の介護福祉職が果たす役割として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 理学療法士に、リハビリテーションの支持をしても理解できないと伝える。
2 介護支援専門員(ケアマネージャー)に、地域ケア会議の開催を依頼する。
3 医師に、夜間は騒ぐ可能性があるので睡眠薬の処方を依頼する。
4 看護師に、日常生活の状況を伝える。
5 保佐人に、治療方法の決定を依頼する。

答え
 大腿骨頸部骨折で入院をした利用者に対するグループホームの介護福祉職の役割に関する設題につき、正解は4。
入院生活を円滑にするために、介護福祉職は看護師に日常生活の状況を伝える。
問題86
 Eさん(75歳、男性)は、1年ほど前に興味であった車の運転をやめてから、やる気が起こらなくなり自宅に閉じこもりがちになった。そのため、家族の勧めで介護予防教室に参加するようになった。最近、Eさんは怒りっぽく、また、直前の出来事を覚えていないことが増え、心配した家族が介護福祉職に相談した。
 相談を受けた介護福祉職の助言として、最も適切なものを1つ選びなさい。


1 「認知症(dementia)でしょう」
2 「趣味の車の運転を再開するといいでしょう」
3 「老人クラブに参加するといいでしょう」
4 「音楽を流して気分転換するといいでしょう」
5 「かかりつけ医に診てもらうといいでしょう」

答え
 家族の相談に対する介護福祉職の助言に関する設題につき、正解は5。
今の状態について、かかりつけ医に診てもらうことで治療や介護サービス等につなげることができる。

障害の理解

問題87
ICIDH(International Classification of Impairments, Disabilities and Handicaps:国際障害分類)における能力障害として、適切なものを1つ選びなさい。

1 日常生活動作(Activities of Daily Living:ADL)の障害
2 運動麻痺
3 失語
4 職場復帰困難
5 経済的不利益

答え
ICIDH(国際障害分類)の能力障害に関する設題につき、正解は1。
「能力障害」とは、日常生活動作やコミュニケーションが上手くできない状態をいう。
問題88
 「障害者差別解消法」に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 法の対象者は、身体障害者手帳を持っている人である。
2 合理的配慮とは、全ての障害者に同じ配慮をすることである。
3 共同社会の実現を目指している。
4 障害者は、合理的配慮の提供に努めなければならない。
5 障害者差別解消支援地域協議会は、民間事業者で組織される。
(注)「障害者差別解消法」とは、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」のことである。

答え
 障害者差別解消法に関する設題につき、正解は3。
障害者権利条約の国内制度の一環とし、共生社会の実現にむけた法律である。
問題89
 痙直型や不随運動型(アテトーゼ型 /athetosis)などの分類がある疾患として、正しいものを1つ選びなさい。

1 筋ジストロフィー(muscular dystrophy)
2 脊髄小脳変性症(spinocerebellar degeneration)
3 脳血管疾患(cerebrovascular disease) 
4 脳性麻痺(Cerebral palsy)
5 脊髄損傷(Spinal cord injury)

答え
 痙直型や不随意運動型などの分類がある疾患に関する設題につき、正解は4。
脳性麻痺は、生後4週間までの間に発症した脳への損傷によって起こされる運動機能障害をいう。 
問題90
 内因性精神障害に分類される疾患として、正しいものを1つ選びなさい。

1 脳腫瘍(brain tumor)
2 アルコール依存症(alcohol dependence)
3 パニック障害(panic disorder)
4 認知症(dementia)
5 総合失調症(schizophrenia)

答え
 内因性精神疾患に関する設題につき、正解は5。
統合失調症は、外因性や心因性では明らかな原因を説明することができない内因性精神障害である。
※精神疾患は、内因性、外因性、心因性に分類されている。現在は、ICD(国際疾患病分類)DSM(精神疾患の診断と統計マニュアル)などが用いられている。 
問題91
 Fさん(26歳)は重度の知的障害があり、施設入所支援を利用している。
 次のうち、Fさんが地域移行するときの社会資源として、最も適切なものを1つ選びなさい。


1 ケアハウス
2 共同生活支援(グループホーム)
3 自立支援医療
4 精神病院
5 同行援護

答え
 重度の知的障碍者の地域移行の社会資源に関する設題につき、正解は2。
共同生活援助(グループホーム)は、障害者総合支援法の自立支援給付の中の訓練等給付である。主に夜間、共同生活を行う住居で、自立した生活を送るための地域移行である。
問題92
 自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder)の特性として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 読み書きの障害
2 社会性の障害
3 注意の障害
4 行為障害
5 運動障害


答え
 自閉症スペクトラム障害の特性に関する設題につき、正解は2。
社会性の障害として、対人関係やコミュニケーションへの影響がある。
問題93
 筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 免疫疾患である。
2 振戦や筋固縮が主な症状である。
3 視力や聴力は保たれる。
4 運動失調が現れる。
5 全身の臓器に炎症を起こす。

答え
 筋萎縮性側索硬化症(ALS)に関する設題につき、正解は3。
保たれる機能として、視力・聴力の感覚、知性、膀胱直腸機能などがある。また、褥瘡にもなりにくい。
問題94
 Gさん(56歳、男性)は、糖尿病性網膜症(diabetic retinopathy)に伴う眼底出血を繰り返して、治療を受けていた。医師から失明は避けられないと説明を受けた。その後、Gさんは周囲に怒りをぶつけたり、壁に頭を打ちつけたりという行動がみられるようになった。
 このときのGさんの障害需要の状況として、最も適切なものを1つ選びなさい。


1 ショックではあるが、不安はそれほど強くない。
2 自分には障害はないと否認する。
3 前向きに自己努力を図ろうとする。
4 否認ができずに混乱する。
5 新しい価値観や役割を見出す。

答え
 糖尿病性網膜症で失明の告知を受けた人の障害受容に関する設題につき、正解は4。
事例のように周囲にあたったり、自称行為をするなど現実的な状況に混乱や苦悩が生じたりする時期である。
問題95
 パーキンソン病(Parkinson's disease)のHさんは、最近、立位時の前傾姿勢が強くなり、歩行時の方向転換が不安定になり始めた。日常生活動作には介助を必要としない。
 Hさんのホーエン・ヤール重症度分類として、最も適切なものを1つ選びなさい。


1 ステージⅠ
2 ステージⅡ
3 ステージⅢ
4 ステージⅣ
5 ステージⅤ

答え
 パーキンソン病の事例によるホーエン・ヤール分類に関する設題につき、正解は3。
ステージⅢは、姿勢反射障害ある。一人での生活はなんとか可能である。
※パーキンソン病は、運動がスムーズに行えなくなる疾患である。 
問題96
 制度化された地域の社会資源として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 家族会が行う悩み相談
2 近隣の住民からの善意の声かけ
3 同居家族が行う身の回りの介護
4 コンビニエンスストアによる見守り
5 民生委員が行う相談・援助

答え
 制度化された地域の社会資源(フォーマルな社会資源)に関する設題につき、正解は5。
 民生委員は、民生委員法によるのでフォーマルな社会資源である。

※フォーマルな社会資源には、行政、保健所、児童、障害福祉、教育、医療、社会福祉協議会などが含まれる。 

こころとからだのしくみ

問題97
 マズロー(Maslow.A)の欲求階層説の所属・愛情欲求に相当するものとして、適切なものを1つ選びなさい。

1 生命を脅かされないこと
2 他者からの賞賛
3 自分の遺伝子の継続
4 好意がある他者との良好な関係
5 自分自身の向上

答え
 マズローの欲求段階説の所属と愛情欲求に関する設題につき、正解は4。
好意がある他社との良好な関係は、所属・愛情欲求である。
問題98
 皮膚の痛みの感覚を受ける大脳の機能局在の部位として、正しいものを1つ選びなさい。

1 頭頂葉
2 前頭葉
3 側頭葉
4 後頭葉
5 大脳辺縁系

答え
 大脳における皮膚感覚の受容部位に関する設題につき、正解は1。
頭頂葉には、体性感覚野があり、感覚器で物を感じたことを解析する機能がある。
問題100
 口臭に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 歯がない場合に起こりやすい。
2 唾液量が多いと生じる。
3 ウイルス感染の原因となることがある。
4 食事量が増加した場合に起こりやすい。

5 他者との交流を避ける原因となることがある。


答え
 口臭に関する設題につき、正解は5。
口臭が気になると、会話するのをためらうようになることから、他社との交流を避けるようになってします。
問題101
 高齢者の大腿骨頸部骨折(femoral neck fracture)に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 転落によって生じることが最も多い。
2 骨折(fracture)の直後は無症状である。
3 リハビリテーションを早期に開始する。
4 保存的治療を行う。
5 予後は良好である。

答え
 大腿骨頸部骨折に関する設題につき、正解は3。
早期からリハビリテーションを開始し、起立・歩行を目指すことが必要である。
問題102
 摂食・嚥下のプロセスに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 先行期は、唾液分泌が増加する。
2 準備期は、嚥下性無呼吸がみられる。
3 口腔期は、咽頭が閉鎖する。
4 咽頭期は、食塊を形成する。
5 食道期は、随意的な運動である。

答え
 摂食・嚥下のプロセスに関する設題につき、正解は1。
先行期では、食べ物を認識するので唾液量が増加する。
問題103
 Jさん(80歳、男性)は、アルツハイマー型認知症(dementia of the alzheimer’s type)と診断された。半年前から認知症対応型共同生活介護(グループホーム)に入居している。最近、Jさんは、トイレに行きたいと言ってグループホーム内を歩き回った後に、失禁するようになった。
 Jさんの排泄の状態として、最も適切なものを1つ選びなさい。


1 反射性尿失禁
2 心因性頻尿
3 溢流性尿失禁
4 機能性尿失禁
5 腹圧性尿失禁

答え
 事例の尿失禁の種類に関する設題につき、正解は4.
機能性尿失禁は、排尿機能は正常であるが身体機能低下認知症が原因で起こる。事例は、トイレを探せずに失禁してしまう排泄の状態である。
問題104
 正常な尿に関する次の記述のうち、適切なものを1つ選びなさい。

1 1日に約1gのたんぱく質が排出される。
2 1日に約10gのブドウ糖が排出される。
3 排尿直後はアンモニア臭がする。
4 排尿直後はアルカリ性である。
5 排尿直後は淡黄色で透明である。

答え
 正常な尿に関する設題につき、正解は5。
正常な尿は、黄色や薄い茶色がかった透明で弱酸性の液体で無菌である。
問題105
 弛緩性便秘の原因に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 食物繊維の摂取不足
2 排便を我慢する習慣
3 腹圧の低下
4 大腸のけいれん
5 がん(cancer)による通過障害


答え
 弛緩性便秘の原因に関する設題につき、正解は1。
弛緩性便秘は、腸蠕動の低下による。その原因は、加齢による運動不足や食物繊維の摂取不足などである。
問題106
 抗ヒスタミン薬の睡眠への影響として、適切なものを1つ選びなさい。

1 就寝後、短時間で覚醒する。
2 夜間に十分睡眠をとっても、日中に強い眠気がある。
3 睡眠中に足がかゆくなる。
4 睡眠中に無呼吸が生じる。
5 夢の中の行動が、そのまま現実の行動として現れる。

答え
 抗ヒスタミン薬の睡眠への影響に関する設題につき、正解は2。
抗ヒスタミン薬は、アレルギー反応(蕁麻疹、アレルギー性鼻炎、皮膚炎など)に効く薬で、脳の活性化が抑えられ眠気が現れる。従って、昼間の眠気につながる。
問題107
 終末期に自分が望むケアをあらかじめ書面に示しておくことを表す用語として、正しいものを1つ選びなさい。

1 ターミナルケア(terminal care)
2 インフォームドコンセント(informed consent)
3 リビングウィル(living will)
4 デスカンファレンス(death conference)
5 グリーフケア(grief care)

答え
 終末期に関する設題につき、正解は3。
リビングウィルとは、「終末期医療における事前指示書」で自分の望むケアをあらかじめ書面に示すことをいう。
問題108
 死亡直前にみられる身体の変変化として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 関節の強直
2 角膜の混濁
3 皮膚の死斑
4 下顎呼吸の出現
5 筋肉の硬直

答え
 死亡直前にみられる身体の変化に関する設題につき、正解は4。
死亡直前には、下顎呼吸チェーンストークス呼吸が現れる。

医療的ケア

問題109
 介護福祉士が医療に指示の下で行う喀痰吸引の範囲として、正しいものを1つ選びなさい。

1 咽頭の手前まで
2 咽頭まで
3 喉頭まで
4 気管の手前まで
5 気管分岐部まで

答え
 介護福祉士が行う喀痰吸引の範囲に関する設題につき、正解は1。
口腔内・鼻腔内の喀痰吸引については、咽頭手前までを限度とするとされている。
問題110
2011年(平成23年)の社会福祉士及び介護福祉士法の改正に基づいて、介護福祉士による実施が可能になった喀痰吸引等の制度に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 喀痰吸引や経管栄養は、医行為から除外された。
2 喀痰吸引等を行うためには、実施研究を終了する必要がある。
3 介護福祉士は、病院で喀痰吸引を実施できる。
4 介護福祉士は、この制度の基本研修の講師ができる。
5 実施できる行為の一つとして、インスリン注射がある。


答え
 平成23年社会福祉士及ぼ介護福祉士法の改正に基づく喀痰吸引等の制度に関する設題につき、正解は2。
 登録事業者(登録喀痰吸引研修棟事業者)において実施研修を修了する必要がある。
問題111
 Kさん(76歳)は、日ごろから痰がからむことがあり、介護福祉士が喀痰吸引を行っている。鼻腔内吸引を実施したところ、吸引物に血液が少量混じっていた。Kさんは、「痰は取り切れたようだ」と言っており、呼吸は落ち着いている。
 このときの介護福祉士の対応に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。


1 出血してそうなところに吸引チューブをとどめる。
2 吸引圧を弱くして再度吸引をする。
3 血液の混じりがなくなるまで繰り返し吸引をする。
4 鼻腔と口腔の中を観察する。
5 鼻腔内消毒をする。

答え
 吸引後の対応に関する設題につき、正解は4。
出血した場所がわかるように観察をする。それから、すぐに実施と観察した内容を看護職に報告する。
問題112
 口腔内・鼻腔内の喀痰吸引に必要な物品の管理に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 吸引チューブの保管方法のうち、乾燥法では、浸漬法に比べて短時間で細菌が死滅する。
2 浸漬法で用いる消毒液は、72時間を目安に交換する。
3 吸引チューブの洗浄には、アルコール消毒液を用いる。
4 吸引チューブの洗浄水は、24時間を目安に交換する。
5 吸引物は、吸引びんの70~80%になる前に破棄する。

答え
 吸引の必要物品の管理に関する設題につき、正解は5。
吸引びんに吸引物が多く溜まるとモーター部分に入り込み吸引機が故障してしまう。吸引物が吸引びんに70~80%溜まることは限界であるので、その前に廃液を行う必要がある。
問題113
 経管栄養の実施時に、冷蔵庫に保管していた栄養剤を指示どおりの温度にせずにそのまま注入したときに起こる状態として、最も可能性の高いものを1つ選びなさい。

1 呼吸困難
2 胃ろう周囲のびらん
3 下痢
4 褥瘡
5 低血糖

答え
 経管栄養の栄養剤を冷所保存したまま注入した時の影響に関する設題につき、正解は3。
冷たい栄養剤を注入すると腸管を刺激し下痢を起こす。

総合問題(総合問題1)

次の事例を読んで、問題114から問題116までについて答えなさい。
(事例)
 Lさん(78歳、女性)は一人暮らしをしている。「もったいない」が口癖で、物を大切にし、食べ物を残さないようにして生活している。
 半年前、脳の細い血管が詰まっていることがわかり、入院して治療を受けた。左半身にしびれがあり、右膝の変形性関節症(osteoarthritis)で痛みもあったために、介護保険の申請をしたところ、要介護1になった。
 家事はできるだけ自分でしたいという希望から、週に2回、訪問介護(ホームヘルパー)と一緒にしている。
問題114
 Lさんが入院するきっかけになった脳の疾患として、適切なものを1つ選びなさい。

1 ラクナ梗塞(lacunar infarction)
2 くも膜下出血(subarachnoid hemorrhage)
3 慢性硬膜下血腫(chronic subdural hematoma)
4 正常圧水頭症(normal pressure hydrocephalus)
5 高次脳機能障害(higher brain dysfunction)


答え
 利用者が入院するきっかけになった脳の疾患に関する設題につき、正解は1。
クラナ梗塞は、脳血管障害(脳卒中)のうち脳の血管が詰まる脳梗塞の一種で、脳の奥深くにある、こぐ細い血管が詰まることで発生する。Lさんは「脳の細い血管が詰まっている」とあるため、クラナ梗塞が原因で入院したと考えられる。
問題116
 介護保険の申請をしてから半年がたち、更新申請の時期になった。この半年でLさんは、訪問介護員(ホームヘルパー)が来ない日もいすに座って調理をするなど、回復してきている。更新申請の結果、Lさんは要支援1になった。
 次のうち、Lさんの介護予防サービス・支援計画書を作成する者として、適切なものを1つ選びなさい。


1 訪問介護事業所の訪問介護員(ホームヘルパー)
2 生活支援体制整備事業の生活支援コーディネーター
3 地域包括支援センターの主任介護支援専門員
4 訪問介護事業所のサービス提供責任者
5 生活介護のサービス管理責任者

答え
 Lさんの介護補棒サービス・支援計画書を作成する者に関する設題につき、正解は3。
要支援1・2の利用者に対し、介護予防ケアマネジメントに基づき介護予防サービス・支援計画書の作成を担うのは地域包括センターの主任介護支援専門員である。

総合問題(総合問題2)

次の事例を読んで、問題117から問題119までについて答えなさい。
(事例)
 Mさん(80歳、男性)は、2年前にアルツハイマー型認知症(dementia of the alzheimer's type)
と診断された。Mさんは自宅で暮らし続けることを希望して、介護保険サービスを利用しながら妻と二人で生活していた。
 その後、Ⅿさんの症状が進行して妻の介護負担が大きくなったため、Mさんは、U社会福祉法人が運営する介護老人福祉施設に入所することになった。
 Mさんの入所当日、担当のA介護福祉職は、生活相談員が作成した生活歴や家族構成などの基本情報の記録を事前に確認したうえで、Mさんと関わった。
問題117
 次のうち、A介護福祉職が確認した記録として、適切なものを1つ選びなさい。

1 施設サービス計画書
2 インシデント報告書
3 エコマップ
4 プロセスレコード
5 フェイスシート

答え
 A介護福祉職が確認した記録に関する設題につき、正解は5。
フェイスシートは利用者の氏名、年齢、性別、要介護度、生活歴、家族構成等、その利用者がどのような人かを把握することができる基本情報をまとめた記録である。事例では「A介護福祉職は、生活相談員が作成した生活歴や家族構成などの基本情報の記録を事前に確認した」とあるため、A介護福祉職が確認した記録はフェイスシートとなる。
問題119
 面会に訪れた妻はA介護福祉職に、「最初は夫を施設に入れて申し訳ない気持ちもあったが、元気そうな夫を見て、今はこの施設を利用してよかったと思っている」と話した。A介護福祉職は、妻の発言を受けて、介護サービスをもっと気軽に利用してもらうための取り組みが必要であると考えた。そこで、A介護福祉職は施設職員と検討した。その結果、地域の地域家族介護者を対象に、介護に関する情報提供や交流を図る場を無料で提供することを、独自の事業として継続的に行うことを法人として決定した上で、必要な手続きを行うこととした。
 U社会福祉法人が行うこととした事業に該当するものとして、適切なものを
1つ選びなさい。


1 公益事業
2 日常生活自立支援事業
3 相談支援事業
4 自立相談支援事業
5 地域生活支援事業


答え
 社会福祉法人が行うこととした事業に関する設題につき、正解は1。
社会福祉法人は社会福祉事業に支障がない限り、社会福祉に関する相談や情報提供、ボランティアの育成、コミュニケーションやスポーツ等の交流支援といった公益性の高い公益事業を行うことができる。U社会福祉法人の「地域の家族介護者を対象に、介護に関する情報提供や交流を図る場を無料で提供すること」は公益事業に該当する。

総合問題(総合問題3)

次の事例を読んで、問題120から問題122までについて答えなさい。
(事例)
 Bさん(22さい、男性)は、19歳の時に総合失調症(schizophrenia)を発症し、精神保健指定医の診察の結果、入院の必要があると診断された。Bさん自身からは入院の同意が得られず、父親の同意で精神科病院に入院した。
 その後、数回の入退院を繰り返したのち、21歳から居宅介護を週1回、訪問看護を月2回、デイケアを週3回利用しながら一人暮らしをしている。
 居宅介護では、料理や掃除、買物などの介護福祉職の支援を受けているが、Bさんも調子の良いときは一緒に行っている。訪問看護では、Bさんは、服薬を忘れることがあるため、看護師と一緒に飲み忘れがないかを確認してしる。また、デイケアでは、運動と園芸のグループに参加している。

問題120
 Bさんが19歳で精神病院に入院したときの入院形態として、正しいものを1つ選びなさい。

1 任意入院
2 医療保護入院
3 応急入院
4 措置入院
5 緊急措置入院

答え
 利用者が19歳で精神科病院に入院した時の入院形態に関する設題につき、正解は2。
医療保護入院では、入院を必要とする精神障碍者で、自傷他害の恐れはないが、本人の同意に基づく任意入院を行う状態にないものが対象で、精神保健指定医の診察に加え、家族等のうちいずれかの者の同意が必要となる(同法第33条1項)。Bさんの場合、19歳の時に総合失調症を発症し、精神保健指定医の診察の結果、入院の必要性があると診断されたものの、Bさん自身からは入院の同意が得られず、父親の同意で精神科病院に入院している。
問題122
 Bさんは、C介護福祉職と話したことをきっかけに、服薬できるようになり、以前と同じ支援を受けながら一人暮らしを続けている。最近は、デイケアで就労を目指すグループ化都度に自ら参加するようになった。Bさんは、「就労に挑戦してみたい」という気持ちはあるが、就労経験のあるほかのメンバーの失敗談を聞くと、「自信がない」とも言っている。
 Bさんへの支援に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。


1 自分で料理と掃除ができるようになることが優先であると話す。
2 服薬ができなかったことを取り上げ、治療に専念するように話す。
3 無理せず、今の生活を維持することが大切であると話す。
4 長所を一緒に探し、どのような仕事が向いているのかを考えようと話す。
5 他のメンバーの失敗原因を考え、失敗しない対策をしようと話す。

答え
 Bさんへの支援に関する設題につき、正解は4。
介護過程では、アセスメントにおいて利用者本人の思いや意欲(~したい)、能力(~できる)、嗜好(~好き)等、利用者の強みや長所であるストレングスを活かした介護計画を作成して実施していくことが求められる。Bさんの場合も、Bさんの長所・強みとなる好きなことや得意なこと等を一緒に探し、どのような仕事が向いているかを検討していくことが重要である。

総合問題(総合問題4)

次の例題を読んで、問題123から問題125までについて答えなさい。
(事例)
Ⅾさん(59歳、女性)は、30年前に関節リウマチ(rheumatoid arthritis)を発症して、現在、障害者支援施設に入所している。
Ⅾさんは、朝は手の動きが悪く痛みがあるが、午後、痛みが少ないときは関節を動かす運動を行っている。足の痛みで歩くのが難しく車いすを使用しているが、最近は手の痛みが強くなり、自分で操作することが難しい。また、食欲がなく、この1か月間で体重が2kg減っている。夜中に目が覚めてしまうこともある。
問題123
Ⅾさんの朝の症状の原因として、最も可能性が高いものを1つ選びなさい。

1 睡眠不足
2 低栄養
3 平均感覚の低下
4 筋力低下
5 関節の炎症

答え
 Dさんの朝の症状の原因に関する設題につき、正解は5。
Dさんは30年前に関節リウマチを発症している。関節リウマチの症状には関節の炎症による関節の痛みや腫れ、朝の手のこわばり・動かしづらさがあり、Dさんの朝の手の動きの悪さや痛みは関節リウマチによる関節の炎症が原因として最も可能性が高い。
問題125
 Ⅾさんは、「ここ数日、朝だけでなく1日中、何もしないのに手足の痛みが強くなってきた」と訴えている。
 日常生活で、Ⅾさんが当面留意すべきこととして、最も適切なものを1つ選びなさい。


1 前あきの衣類より、かぶりの衣類を選ぶ。
2 ベッドのマットレスは、柔らかいものを使用する。
3 関節を動かす運動を控える。
4 できるだけ低い椅子を使う。
5 頸部が屈曲位になるように、高めの枕を使用する。

答え
 日常生活でDさんが当面留意すべきことに関する設題につき、正解は3。
Dさんの手足の痛みは、関節リウマチによる炎症の悪化が原因である可能性が高い。炎症が強い場合、無理して関節を動かすとさらに悪化するため、関節にはできるだけ負担をかけず、安静にするのが原則である。