豚舎・設備のお悩み解決147『分娩舎離乳舎の暖房とコスト』

最近は豚舎火災、とくに離乳舎や分娩舎が火元と思われる事案が多くなりました。そこで、「ガス暖房は使いたくない」という話も聞こえてきます。そこで、豚舎の暖房はガス、石油、電気のどれがよいのかを安全性とコストの両面から考察してみました。

その前に、読者から、「離死豚(とくに母豚)の運び出しで楽になる方法。また処理業者が来るまでの保管」について質問がありましたので簡単に回答します。運び出し用器具としては、ウインチつきの運搬車が市販されています。模型ではストール豚舎の通路幅が狭い豚舎では曲がり角を曲がれないので、不向きです。そのような豚舎では離乳(豚を切り上げて縦にして固定するタイプ)のほうが良いでしょう。ただし、価格は縦型のほうが高いようです。著作権の関係から、写真や販売店名は掲載できませんが、「動物運搬カート(死豚運搬用)」と検索するとヒットします。

また、死豚保管庫は、野菜用保冷庫や、業務用冷凍庫を購入して使っている農場もありますが、廃車になった冷凍車を購入してそのまま使っている農場もあります。中古コンテナ専門業者でも保冷車の荷台を販売しています。

さて、本題に入ります。まず分娩舎の暖房ですが、母豚が暑くならないように子豚スペースだけを安全に温めることがベストです。この観点からすると、床暖房プラス保温ランプの組み合わせがベストでしょう。ガスブルーダーは、保温ランプよりも火災の危険性が高いことと、室温を高めてしまう特性があるためです。床暖房の形式には電熱パネルと灯油ボイラーによる温水循環式があります。ランニングコストは灯油ボイラーのほうが安い傾向があります。一方、イニシャルコストは工事費を含めると温水循環式のほうが高くなります。 

次に離乳舎ですが、柵のレイアウトによって最適な暖房器具が異なってきます。1豚房40頭未満の小豚房方式では、ガス温風ヒーターや、ガスブルーダーを使用している農場が多い傾向にありました。ランニングコストはガス温風ヒーターのほうが一定の温度でON-OFFがされるので有利です。

しかし、豚房の仕切りがパネルを利用している豚舎では、部屋の上部だけが温まって、豚が寝ているスペースが寒くなる欠点があります。また、ガスの燃焼で酸素が消費されますので、換気量も豚の呼吸量以上に必要です。そこで、写真1のように温水循環式床暖房プラス保温ランプ・プラス跳ね上げ式中屋根の組み合わせが私のお勧めです。イニシャルコストは高くなりますが、ガスを使わない分、火災の危険度は下がります。欠点は、離乳子豚導入時点では室温が上がらないので、慢性疾病のある農場では子豚の発育が悪くなる傾向にあります。新築豚舎で慢性疾病のない種豚を新たに導入した農場では予防が順調に進んでいます。

写真1 温水循環式床暖房プラス保温ランプ、跳ね上げ式中屋根

写真2 プラスチックスノコ一体型床下配管タイプ

写真3 スノコ上に乗せて施工する床上配管タイプ

写真4 大型ガスブルーダー

1豚房100頭以上の大群飼養方式でも、新築豚舎で慢性疾病のない種豚を新たに導入した農場では、写真1のような温水循環式床暖房プラス保温ランプ・プラス跳ね上げ式中屋根の組み合わせが私のお勧めです。温水循環式床暖房にもメーカーの違いで、プラスチックスノコ一体型で床下配管タイプ(写真2)と、全面スノコの上に乗せて施工するボード上配管タイプ(写真3)があります。破損したときの補修がしやすいのは後者のタイプです。

一方、慢性疾病のある農場では大型ガスブルーダー(写真4)がお勧めです。これは火力が強いので、子豚200頭に対して1台設置すれば十分です。ガス温風ヒーターのように設定した温度で燃焼がON-OFFします。また、遠赤外線でブルーダーの下の床面を広く温めるので、子豚の寝床を温めつつ、温風ヒーター方式よりも室温を低めに設定できます。ですから温風ヒーター方式よりもランニングコストを少なくできます。欠点は、エアフィルターの掃除をまめに行わないと、不完全燃焼が起きて黄色い炎が天井まで吹き上がることがあることです。取扱説明書にも「フィルターは毎日清掃してホコリを落としてください」と書いてあります。最低でも1週間に1度は掃除してください。

このように一概にはどの方式がベストとは言いにくいので、火災予防を優先するか、ランニングコストを優先するか、イニシャルコストを優先するか、経営体ごとの事情を鑑みて採用の参考にしてください。