豚舎のお悩み解決148『PRRS撲滅と豚舎設備』

 今年は10月まで夏でしたね。秋が無くてすぐに冬が来たように感じるのは私だけでしょうか。10月の気温の乱高下に耐え切れず、私は風邪をひいてしまいました。カーテン豚舎の農場でも環境調節が間に合わずに事故が増えたところもあります。
風邪は万病のもとと言われていますが、豚ではPRRSが万病のもとと言えると思います。
PRRSが豚が本来持っている免疫力を低下させてしまうからです。PRRS陽性農場と陰性農場を比較すると、母豚では受胎率、子豚では事故率に有意差が認められます。
農場の規模が大きくなるほどPRRSによるダメージが大きいように感じられます。今回は規模拡大や農場リフォームに合わせてPRRS撲滅を果たした農場の事例を簡単に紹介します。

図1

1つ目は四国地方の母豚300頭一貫農場(A農場)です。リフォーム前の豚舎レイアウトは図1の通りです。繁殖豚舎群と肥育豚舎群は道路を隔てて直線距離が50mくらいです。畜産クラスター補助事業を使って、直線距離で約100m離れた場所にストール舎、分娩舎、離乳舎を新築しました。私は、PRRS撲滅のため既存の豚はオールアウトして、新豚舎には病気の無い種豚を導入することを提案しました。
そこでネックとなったのが、「肉豚出荷ゼロの期間をできるだけ短くしたい」という農場主さんの希望です。そこで、農場の防疫エリアを3つに分けて、作業員や作業車両も分けて管理する防疫ルールを作って実行しました。そのエリア分けは図2の通りです。

図2

図3

エリアごとの作業スケジュールは図3の通りです。既存豚の出荷日令は180~190日でしたが、まっさらな状態からケンボローを導入すれば平均160日齢で出荷できます。図3を見ていただくとわかりますが、種付け停止期間は3か月半ですが、肉豚出荷停止期間は2か月半でできました。

結果は初産では1腹11頭離乳で計画していたのですが、12頭以上離乳出来ています。予想以上に繁殖成績が良かったため、離乳舎や既存農場を改造した前期肥育舎が密飼いになってしまい、事故率が目標の5%を超えてしまいました。でも出荷頭数は目標を超えました。母豚を減らせば密飼い状態は解消するので、事故率は減ると思います。ただ、離乳舎や前期肥育で死ぬ豚は育ち負けの弱小豚なので、発育の良い豚だけ目標頭数以上に販売できるのだから、経済的にはこれで良しとする考え方もあります。
 
 2つ目は東北地方の母豚200頭一貫経営農場(B農場)です。リフォーム前の豚舎レイアウトは図4の通りです。
この農場でも畜産クラスター施設整備事業を使って増頭しようと計画しました。しかし、平成28年度にもクラスター事業で母豚150頭から200頭へ増やした経過があり、その時の目標出荷頭数を達成できていないために、新たにクラスター事業で豚舎建設することが認められませんでした。古い豚舎群がボロボロで、修繕必要箇所が多すぎて追い付かない状態。
慢性疾病もたくさんあって衛生費も多い状態。
繁殖能力の低い品種を使ってブランド肉生産をしていました。このような理由で、このままではクラスターの目標縛りから到底抜け出せない、と私は判断し、農場オールアウトを提案しました。昨年時点で私が予測したのは、2024年は飼料価格の高止まりで年間同一価格販売の契約では赤字になることが見えていました。

図4

だから、赤字を出して生産を続けるよりも、豚をオールアウトして、その間に豚舎のリフォームを徹底的に行う計画を立てました。従業員の雇用を守るために、自分たちでできるリフォーム工事は自分たちでやるように、私が実践指導を行いました。一番古い肥育豚舎は、もみ殻踏み込み式だったので、スノコ床とスクレーパー式に改造しました。リフォーム後の農場レイアウトは図5の通りです。図6が各エリアの作業スケジュールです。

図5

図6

今年5月からピクア種豚を導入し、10月20から分娩が始まりました。こちらも初産の成績予測を1腹哺乳開始頭数12頭、離乳11頭で計画していましたが、今のところ1腹哺乳開始頭数は13.5頭を超えています。離乳では12頭越えは確実でしょう。
 PRRSだけではなく、慢性疾病を排除し、家畜衛生管理基準を遵守できるようにリフォームをすることは、一見無駄な投資に思えるかもしれません。しかし、病気と闘わない豚飼いは、本当に楽で儲かるものです。