思い起こせば私が就農した昭和50年代の豚舎は、ほとんどが床はコンクリート、腰壁はブロック、鉄骨造りで屋根はスレートまたはトタン葺きでした。
餌箱は鉄製なので、ほとんど燃えやすい資材はありませんでした。
火事は少ないですが、夏は暑く冬は寒い、豚の発育には劣悪環境でした。
一方、現代の豚舎は断熱材がふんだんに使われていますし、壁や豚房仕切りにプラスチックパネルも多く使われています。
これらの資材は、燃えやすいので、一旦火災が発生すれば、たちまち燃え広がります。
ですから消火を考えるよりも、早く逃げて消防署へ通報するという、身を守る行動を優先すべきだと思います。
ここで話が終わってしまっては元も子もありませんので、まずは初期消火に役立つ情報を挙げてみましょう。
皆さんの豚舎には消火器が設置してありますか。
近年クラスター補助事業などで豚舎を建てたところでは、消火器の設置義務があるので、必ず設置されたことと思います。
ただ、私が知る限り大抵の場合は、最初の設置場所が通路に床置きでした。
すると仕事の邪魔になりますので、農場スタッフは消火器をどこかへ片づけてしまいます。
いざ火災が発生したときにすぐに取り出せる場所に無いのです。これが第一の問題です。
豚舎の設計時に設計会社では、消防法に従って豚舎内に均等に消火器を配置します。
しかし、実際に火災が起きやすい場所は、電気器具や暖房器具を使う場所です。
たとえば、配電盤、高圧洗浄機の差し込みコンセント、ガス器具の近く、溶接機、円盤カッターを使う場所などです。
床暖房用ボイラーを設置している農場では、その近くにも必要です。
このように火元になりやすい場所から5~10m離れた場所に設置しましょう。
火元の直ぐ近くに消火器があっても、火の勢いで近づけなかったら使うことができませんので。
消火器を床置きにすると豚移動の邪魔になります。
私のお勧めの設置方法は、腰壁の上に置くことです(図1)。
このようにすれば、仕事の邪魔になりませんし、手に取って使うにも素早く対応ができます。
腰壁の上に置くことができない構造の場所では、壁掛け金具を使って壁に掛けておくと良いです(写真2参照)。
消火器には使用期限があります。
また使い方をわかりやすく書いたラベルが張ってあります(写真3)。
ですから、期限の切れた消火器を使って消火練習をしてください。
このようにして普段から消火器の設置場所や、使い方を従業員と共有しておくことが重要です。
ただ、実際の火災の場合は天井まで燃え移っていたら手遅れですから、消火活動よりも逃げて通報してください。
次にこれから豚舎を新築・改築する場合に参考となる、燃えにくい素材をご紹介します。
分娩舎の柵パネルは、ステンレス板が最良と言えます。
燃えませんし、腐食もしない。汚れ落ちも良い。
イニシャルコストは高いですが、長い目で見ればコストに見合うと思います。
離乳舎の柵パネルは防火の面では金属製の柵がベストです。
コストを削減するには、柵を廃止して大群飼育にすることです。
ワクチン注射の時には大群ですと苦労しますので、可動柵にしてワクチン接種時のみ小分けできる構造にすることをお勧めします。
最後に屋根や天井や壁に使う断熱材です。
ベストは断熱材の両面がガルバリウム鋼板またはZAM鋼板でサンドイッチされているものです。
断熱材そのものも難燃性素材のものがベストです。
ここでは特定の商品名は出しませんので、詳細はパネルメーカーへお問い合わせください。
あるメーカーのホームページでは燃焼実験のYouTube映像を掲載しています。
両面が鋼板ですとネズミの食害も防げますので、最良の選択です。
しかし、イニシャルコストは高くなりますので、悩みどころかと思います。
融資が可能であれば、ちょっと頑張って難燃性資材を使うのが賢い選択ではないかと筆者は考えています。